吸血鬼の始祖がヒーロー社会で自分勝手に生きる話 作:鈴木颯手
保須市にいるヒーローの一人ライトニングは何が起きたのか分からないまま仰向けで倒れている。起き上がろうにも彼は四肢を失い胴体に大きな穴が開いていた。口からは血がとめどなく溢れており自身の死が近い事が分かる。しかし、何故そうなったのか考えても分からなかった。
彼は突如として始まった保須への攻撃を止めるべく現場に急行したがそこで見たのはゴシックロリータを身に纏った少女たちだった。当初こそこんな少女が?という思いが強かったがヒーローの一人が殺されるところを見て油断はできないと考えて身を引き締めた。
そして自身の個性【疾風】を用いて少女たちに攻撃を行う。見た目が見た目なので心苦しいがこれ以上の被害を抑えるべく少女たちの腹や顎を狙い気絶させる。
しかし、【疾風】という素早く動ける個性を持っている自分に少女たちはまるで
「くそっ! これ以上はもたな……!」
その瞬間、彼は何が起きたのかが分からなかった。彼が分かったのは唐突に目の前に何かが降って来たという事だ。しかし、彼が分からなくても仕方がない。何しろ振ってきた物は彼の頭上から音速のスピードで落ちて来て大爆発を起こしたのだから。しかし、とっさの判断で両腕で防御したため両腕と両足は失ったが命を長らえる事は出来た。しかし、続けて放たれたモノが彼の体を貫通して遠くの方で爆発を起こす。
「な、ぜ……?」
「あれ? 姉さま、この男まだ息してるよ?」
「何? まさか耐えられたのか? 仕方ない。徴弐、後始末は任せるわ」
「任せてよ! 姉さま!」
そんなライトニングの耳に聞こえてきたのは二人分の声だった。両方とも女性らしい声をしており片方は明るくて元気な声、もう片方は真面目という印象を受ける声だった。そして唐突に彼の視界一杯に女性の顔が映る。年齢的には10代後半ごろだろうか。女子高生にも見えるが制服を着て居なければ女子大生にも見える、そんな大人と子供の間に位置するような容姿。もし、こんな女性と付き合う事が出来れば男にとっては一生に残る思い出となるだろう。
しかし、それはあくまで”ここにいなければ”の話だ。この場においてはこの女性がいる事も、ましてや
「君、意外と整った顔立ちをしているんだね!」
マスクを外され素顔を晒したライトニングに向かってそう評価する女性。先程の会話から徴弐という女性という事が分かる。中国っぽい名前にライトニングは薄れそうな意識で誰なんだと考えるが直ぐに彼の瞳は見開かれた。
「それじゃ始めようか♪」
「……!?」
そう言うと同時に見せられたのは彫刻刀や手術用のメス、ドライバーやアイスピックなどだった。今この場で出される事によりライトニングはこれから自身がたどる運命を悟ると同時にそれから逃げようともがく。しかし、元々死にかけで四肢は失っているのだ。一歩もその場から逃げられず結局徴弐が興奮を覚えるだけで終わり彼女は恍惚とした笑みと何処か艶っぽい視線をライトニングに向けた。
「ふふ♪ 楽しみましょう」
保須戦争終結後にライトニングは死体で発見された。しかし、死体がライトニングだと判断するのにはDNA鑑定を行い結果が出た後だった。何故ならいくつもの細く、鋭利な物で刺された穴が体中にあり、皮膚が剥がされ肉が露出していた事。顔は脳が見える位に皮膚は削られ穴が開き目玉はくりぬかれて近くの地面に踏みつけられて潰されていた。鼻が陥没し歯は全て
最初に発見したものはあまりの惨状に気絶し大きなトラウマを植え付けられる事となった。そして、彼が死ぬまでの間、どれほどの苦痛を感じていたのか想像するだけで誰もが吐き気を覚える事となる。
「くそっ! なんだ此奴は!?」
緑谷出久のインターン先のヒーロー、グラントリノは対峙する少女に対して吐き捨てるように言う。新幹線を襲撃したこの少女を自分と共に外に出したグラントリノはそのまま拘束しようと動くが予想以上の動きを見せ軽い膠着状態に陥っていた。周辺では爆発音に破壊音が連鎖して怒っており保須市は大きな襲撃を受けている事が分かるが彼はこの場を離れる余裕などなかった。
少女は襲撃時には持っていなかった短刀二つを両手で逆手に持つとグラントリノに向かって行く。普通の人間とは思えないスピードで突っ込んでくるがグラントリノの個性は【ジェット】。足裏に存在する噴出口より空気を出し素早い動きを可能としている。その個性を十全に使い少女の突進を躱すと同時に瞬時に背中に回り込み蹴りを放つ。
確かな感触と共に少女は吹き飛ぶがまるで
「はっ! まさかこんなに早く出くわす事になるとはな!」
そして保須市全体で起こっている襲撃が全てこの吸血鬼たちの仕業ならヴィラン連合を超える脅威と言える。グラントリノはこれ以上時間をかけている暇はないと全力を出そうと決めた時だった。
横から炎が現れ少女の体を一瞬にして包み込んだ。更に二発、三発と続き巨大な火柱を形成する。
「あ”、あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!」
「ヒーロー殺しを狙っていたんだが……、タイミングの悪い奴だ。そこのご老人、後は俺に任せて置け」
そう言ってやってきたのはオールマイトに次ぐトップヒーローの一人、エンデヴァーである。個性【ヘルヘイム】を駆使してヴィランを倒すヒーローだ。
「あああああああっ!!!」
「ほう、これを耐えるか。なら!」
炎の中から飛び出しエンデヴァーに短刀を向ける少女。しかし、その動きは先ほどまでのグラントリノとの攻防の時よりも鈍くなっている。決して炎が効いていないわけではなく確かにダメージを与えてはいたが倒すには不十分だったのである。
しかし、エンデヴァーも流石はトップヒーローの一人というべきか。冷静に後方に下がり炎の槍を作り出すと自らの剛腕を持って槍投げの要領で放つ。少女の着地と同時に心臓の部分に突き刺さる炎の槍は少女の体を貫くとその体を引っ張って壁に突き刺さる。胸を炎の槍に焼かれながら壁に縫い付けられる形となったが絶叫を上げながらもがく。
「……こいつは本当に人間か?」
「雄英高校を襲った吸血鬼、知っておるな? それとは違う個体じゃろう」
「成程、つまりこの襲撃はヴィラン連合の仕業か」
グラントリノの言葉を聞き納得するエンデヴァー。しかし同時に手早く決着をつける必要を感じ少女の下に向かうとその顔を掴むと炎を起す。しかし、その炎の色は赤から青へと変わっていく。温度がどんどん上がって行っており少女は手足をばたつかせて抵抗するもやがてブランと手足が動かなくなり抵抗がなくなった。
エンデヴァーが手を離せばそこには炭化しつつある少女の顔があった。辛うじて呼吸音が聞こえている為生きてはいるが明らかな重症だったが人間離れした動きと回復力を見ているグラントリノからすれば当然とも言える対応に思えた。
「さて、この少女をさっさと拘束してヒーローに引き渡す。……と、行きたいところだがどこもかしこもヴィランだらけだ」
そう言うとエンデヴァーは炎の槍を消して少女を自由にすると俵担ぎの要領で肩に乗せる。どうやら連れて行くようだ。少女の方も抵抗する力が残っていないようで無抵抗のままである。はたから見ればエンデヴァーの姿は少女の誘拐犯にしか見えないが状況が状況である。誰も気にする余裕などないだろうし正体を知ればある意味で納得するだろう。
「さて、ご老人には悪いが今から言う座標に向かってくれ。襲撃犯への対応はこのエンデヴァー一人で事足りる」
そう言うとエンデヴァーはグラントリノに返事も聞かずに走り出す。グラントリノは全く……、と呆れつつも言われた座標に向かうのだった。
保須戦争は未だ収集の目途はたっていない。
「ハァ……、誰だ貴様」
”ヒーロー殺し”ステインは背後から現れた女性にそう問いかけた。一方でステインと対峙していた緑谷出久と轟焦凍、飯田天哉はその女性に見覚えがあった。何しろその女性、ジャンヌ・ダルクはUSJ襲撃の際の犯人の一人だからだ。ステイン並みに凶悪でこの場にいてほしくない存在の登場にその場の緊張が上がる。
「”ヒーロー殺し”ステイン。何やら信念のもとに行動していると聞きましたが、その程度の力で何をなそうというのですか?」
「……ああ、
「我が神の眷属の一人、ジャンヌ・ダルクと申します。
”人間だった頃は”。その言葉に三人は驚く。ジャンヌ・ダルクの正体に関しては緘口令が敷かれ雄英高校の教師及び一部の警察、”上”の人間以外には全く知らされていなかった。
しかし、驚く三人を置いて二人は話を続ける。
「それで……、ハァ……。何の用だ?」
「いえ、私があるのはそこの三人です」
そう言ってジャンヌ・ダルクの視線は三人へと向けられる。その瞳に宿るのは”享楽”。三人と戦い殺す事に快感を覚えているのだ。ステインとは違った殺意とは違う吐き気を催す不快感に三人は一瞬固まる。特に飯田天哉はステインの個性によって動けない。ジャンヌ・ダルクにとっては最初に狙うターゲットとなる。
ステインを無視して彼らに突っ込もうとするジャンヌ。しかし、その前にステインが立ちはだかる。
「……何の真似でしょうか? 邪魔をしないでいただきたい」
「それはこちらの台詞だ。こいつらの相手は俺がする。貴様はどこか別の所に行け」
「……私は神に仕える眷属。神以外の言葉などに従う気はありません」
「そうか……、ハァ……。ならば仕方ない」
ステインは刀を構える。ジャンヌも左手に炎を出し右手に西洋剣を持って構える。騎士の如き立ち振る舞いを見せるジャンヌだがその瞳は騎士の様な立派な物ではなく酷く濁り、歪んでいた。
「「っ!!!」」
両者はほぼ同時に行動を開始する。そしてそのまま刀と剣をぶつけ合うのだった。
俺はヒーローという存在が嫌いではない。何故なら彼らは総じて”強い”からだ。ヒーロー飽和社会にして超常社会。個性というこれまでにはない特殊な力を手に入れた今の世の人々はその力を振るう事に躊躇をしない。
ヴィランは当然としてヒーローも
故に、故に!俺はこの世界が好きだ!誰もが俺をヴィランと認定し襲い掛かって来る!そこには躊躇などはない!本気の攻撃だ!そしてそれを防ぎ!近づき!命を刈り取る!それがたまらなく楽しい!
かつての人間は剣を、槍を、弓を、棒を武器に襲いかかり!科学が進めば銃で、砲で、ミサイルで、核で襲い掛かって来た!そして今は個性という力を武器に俺と対峙する!
「ああ、本当に楽しいよ」
俺はそう語る。聞き手は周囲に倒れ伏すヒーローたちと我が眷属たち。血の池の上に立ち、役を演じるように大げさに話す。
「ヒーローは時に勝てない相手にすら立ち向かわなければいけない。逃げた者にヒーローを語る資格などはない。……この男のようにな」
「ひ、ひぃっ!」
そして俺は一人の男を舞台へと上げる。倒れ行くヒーローを前に逃げだした偽物。下半身を濡らし、恐怖で体を震わせるその姿はその辺の一般市民と変わらない。
「何故このような覚悟も、力もない偽物がいる? これが女で、好みの者なら構わない。だが、貴様のような男がその様な事をするなど反吐が出る」
「う、うぅぅぅぅっ!!??」
その屑を眷属が地面に抑え込む。両腕を伸ばし顔を地面に押さえつけられた男は情けない悲鳴を上げる。……ああ、反吐が出そうだ。俺は愛用する剣を取り出す。人間の骨やいらなくなった眷属の骨や皮を混ぜ込み、我が血に漬け込み出来上がった魔剣と呼ぶにふさわしい一品。屑に使うにはもったいない気もするがこの剣の力を考えれば仕方がない。
「さぁ、何か言い残す事は無いか? 逃げたとは言え貴様はヒーローだ。素晴らしい一言を期待するぞ」
「た、助けて……」
俺の期待に応える事も出来ずにその屑はそう言った。こういうのを失望というのだろうか?どこか読めていたとはいえヒーローなら「やれるものならやってみろ!」くらいの啖呵を期待したのだが……。
俺は剣を振り上げる。自分の死が近づく事に恐怖を感じたのかその屑はもがき暴れ泣き始める。ヒーローを語る屑よ。その命を持って償うがいい。俺は迷うことなく頭部へと振り下ろした。
何かが潰れる音と共に血が辺りにまき散らされる。しかし、クズの体から噴き出した血は一滴残らずに剣に集まり吸収されていく。我が最高の魔剣。切ったものから溢れた血をみずからに取り込む能力を持ちため込んだ血は腕を通して俺に供給される。吸血よりも簡単に吸収できる為この能力を重宝している。とは言えやはり屑の血。眷属たちの血とは比べ物にならない程不味い。これで俺の力にならないならただのウイルスと変わりはないな。
「……っと。どうやら次のお客様は常連のようだな」
「貴様ァッ!」
やってきたのはオールマイトに次ぐトップヒーローにして俺を何度も捕まえようとして来た相手、エンデヴァーだ。肩には……E-004を担いでいる。どうやらエンデヴァー相手では手も足も出なかったようだな。俺は彼を見て笑みを浮かべた。
「久しぶりだな。エンデヴァー。また出会うなんて奇遇だな」
「ほざけ! 貴様の周りにいるのは此奴と同じ吸血鬼だな? という事は貴様がこいつらのボスか」
「洞察力も高いな。その通りだ。俺は吸血鬼の始祖にしてこいつら眷属の主だ」
「……貴様が誘拐していた女性たちは皆眷属にしたのか? それとも吸血鬼らしく血を吸ったのか?」
「まさか! 両方だよ。眷属にして体力を増やし従順にした後で美味しくいただいたさ」
「なら貴様をこれ以上好きにさせる訳にはいかないな! 貴様はこの場で倒す!」
「君に出来るかな? 万年オールマイトに次ぐNo.2のヒーローさん。……おっと」
俺のあおりに対する答えは炎だった。俺はそれを軽く飛び跳ねる事で回避する。そのままエンデヴァーの後方に着地をすると剣を構える。何時もは攫った女を相手にする事を優先して逃げていたが今日は違う。オールマイトが弱っている以上最強のヒーローとの殺し合いを楽しもうじゃないか!
「行くぞエンデヴァー! 俺を楽しませて見せろ!」
「貴様に与えるのは刑務所への直行便だ!」
俺とエンデヴァーの戦いはこうして開始された。
ライトニング
本作オリジナルキャラクター。保須にいたヒーローってほとんど名前知らないから仕方なく作られたキャラ。序盤で徴弐の拷問を受けてむごたらしく死ぬ。
個性:【疾風】
素早く動ける。それ以上は特に考えていない
一応感想に会ったのですがジャンヌ・ダルクがUSJで使っていたのは個性ではなく吸血鬼の能力です。オール・フォー・ワンより貰った個性は別にあります。
ジャンヌ・ダルク以外の個性を貰った人物やその個性についてはその内出します
因みにヒロアカのWiki見て驚いたことが二つ
13号先生が女性だったこと
蛙吹梅雨の声優が碧ちゃんだったこと
今後の展開に関して(なお、劇場版は”二人の英雄”のみ視聴済み)
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一気に林間合宿に
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二人の英雄の話を挟む
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なんか小話挟んで