私立、
天才どころじゃない発明家、
変わった死に方をする不死、
ポテンシャルが見え隠れする一般人、
……この話は、以上の三人がその時々のノリで展開する話を、その時々のノリでお送りするだけのナンセンスコメディです。
ある日の放課後。下駄箱を抜けてから。
「あっ、今日ジャンプの発売日だ」
「あ〜本当だ〜。言ってあげようって思ってたのに、忘れてた〜」
「毎週思うけど、女子高生がジャンプて……」
「何を言うのあずさ、最近の世間の流行りを見てみなよ。アニメは大体ジャンプ原作でしょ」
「あー、あれでしょ、鬼とか呪いとかのやつでしょ? そう言われるとジャンプってなんかイメージ変わったよなぁ。海賊とか忍者とかとは全然違うっていうか」
「ちょっと前には〜タコの先生のやつもあったよね〜」
「そうそう、そんな感じで時代の最先端なんだよ。だから毎週必ず購読する、たとえ学生の尊いお小遣いがすり減ろうとも」
「最先端って言ったら、雑誌より電子の方なんじゃないの?」
「何を言うのあずさ、漫画にとっての雑誌は映画にとっての映画館だよ。雑誌以外の媒体は、妥協という名の選択肢でしかないんだって」
「そんなもんかな。あたしは単行本でまとめ読みしたいタイプだけど」
「わたしは〜どの雑誌に何の漫画があるのか覚えられないタイプ〜。単行本はその点も安心だよね〜、新刊が出たらお店が分かりやすい場所に置いてくれるもん〜」
「そよって何読むの?」
「んっとね〜、少年漫画だと〜なんだっけ〜あれだよ〜、上昇負荷とかがあって〜、んなぁってやつ〜」
「それ少年漫画じゃないし。けどなかなかいい物読んでるね」
「なにそれ? あたし聞いたことない漫画かも」
「えー? アニメ化も映画化もしてるんですけど? その疎さだともうあずさは実質おばあちゃんだなぁー、早寝早起きが過ぎるし」
「早寝早起きはほっといてよ」
「漫画とおばあちゃんと言えば〜、よくコロコロコミックの話を聞くよね〜」
「なにそれ?」
「子どもがおばあちゃんにコロコロ買ってきて〜って頼んだら〜、コミックじゃなくて掃除する方のコロコロを買ってきちゃうって話〜」
「あずさならワンチャンやりそう」
「さすがにやらないわ!」
「……あ、じゃあちょっとそこのコンビニで買ってくるから。待ってて」
「は〜い」
「はいはい」
「…………」
「……こみみちゃん、めっちゃ小銭漁ってるね〜」
「十円玉ってすぐかさばるから。……まさか足りないとかだったら笑うけど」
「あ、帰ってきた〜」
「いやー、財布の中の十円玉綺麗に全部使ったー」
「女子高生が制服着てジャンプ置いてレジで小銭ジャラジャラしてるの、傍から見てたら結構面白かったよ」
「いや、私の場合はなぜか制服着てる女子小学生がそれやってるように見えるでしょ」
「自分で言うんだ……。一応女子高生扱いしてあげたのに」
「一応って!? 普通に女子高生なんですけど!?」
「逆鱗の位置が分からなさすぎる」
「あ〜! あのアニメの映画クリスマスの日にやるんだ〜」
「え?」
「裏表紙に書いてるよ〜」
「あっ、本当だ。クリスマスイブだ」
「みんなで見に行こうよ〜」
「そよは結構ハマるよなぁアニメ。あたしも誘われたら行くけど」
「いいね、行こう行こう。……あ、そういえばさっきのコンビニで文房具コーナーをチラ見して思い出したんだけど」
「文房具〜?」
「うん、クルトガっていうシャーペンあったじゃん? 中学の頃あれが欲しくてさー」
「あー、あったなぁ。使ったことないけど。その気になれば買えるのに、地味に高くてどうもね……」
「わたしも〜。一回くらい使ってみたいな〜って思ってるうちに、使わないまま高校生になってた〜」
「そうそう、それで当時の私はクルトガを自作したんだよ。そしたらお小遣いを圧迫しないかなーと思って。でもその途中で、逆に回転の限界を追求したくなってさー、あの時は」
「……あのさこみみ」
「うん? なに?」
「実はずーっと気になってたけど、なんか触れちゃいけない気がして聞いてなかったことがあってさ」
「え、なに急に。なんかこわい」
「……こみみの発明品の材料費って、どこから出てるの?」
「あ〜、たしかに〜! それわたしも気になる〜!」
「こみみ的にはクルトガって買うより作る方が安いの……?」
「……あー、そういえばまだ話してなかったっけ。いつ話そうかなーと思ってるうちに、別にわざわざ話すほどでもないかと思い始めちゃって」
「というと?」
「スポンサーがいるんだよ、私の発明品には。すっごい金持ちのお嬢様で、今は海外に住んでる」
「えっ、マジか」
「すご〜い! お嬢様と知り合いなの〜!?」
「うん。小学生の頃、ネットゲームで知り合って」
「小学生の頃からネットゲームを……」
「なんかそういう話聞いたことある〜! ゲームしてたら石油王と友達になって〜みたいな〜」
「だからまぁ、発明品の材料は全部その人から送ってもらってる。削り機能との両立を目指した鉛筆版クルトガもその人に協力してもらって……」
「いや、普通に衝撃の事実だよこみみ。あのわけわからん代物たちの後ろにそんなビッグな存在がついてたなんて、思いもしなかった」
「どんな人なの〜? わたしも話してみたいかも〜」
「別にいいよ? 二人のことはよく話してるし」
「マジで!?」
「やった〜!」
「……話すのはいいけど、それはそれとしてなんかあずさのリアクションが、私が作った物を見た時よりいい感じで不服なんだけど」
「いや、だってそんな本物の金持ちお嬢様と話せる機会なんてそうそうないじゃん。現実味が強くて興奮してきた」
「私の発明品だって全部現実じゃん!」
「こみみちゃんの発明品は〜、凄すぎて夢なんじゃないかって思っちゃう時多いよ〜?」
「分かる」
「そ、そんな……そよまで……。やっぱり世の中金なのか……」
「いや、こみみの発明は金で太刀打ちできる物じゃない。そこは分かってる」
「わたしも〜。お金持ちは世界にたくさんいるけど、こみみちゃんは宇宙に一人だよ〜」
「あずさ……! そよ……! これがプライスレス……!」
「で、いつ話せるのその人と」
「たぶん今日でも大丈夫。今日の今から」
「えっ、金持ちって暇なの……?」
「さぁ……? 宇宙一の私との連絡をいつでも最優先にできる力があるんじゃない? 金持ちだからこそ」
「本当に宇宙一だから一概に冗談とも言えない」
「じゃあ早く話しに行こう〜!」
「行こうっていうか、スマホでやり取りしてるから。今もう発信してる」
「連絡先に富豪が!?」
「すごいね〜!」
「はい、繋がったよ。カメラ付いてるから二人で話して」
「お、おぉ……」
「もしもし〜? こみみちゃんとお友達のお金持ちさんですか〜?」
「失礼すぎる」
「…………あぁハイ、もしもし? その話し方は、噂に聞いてる笹良そよさんですかね?」
「こ、これが……」
「こみみちゃんのスポンサ〜……!」
「(見た目金髪蒼眼の外国人美女なのに、日本語の発音がネイティブすぎる……! しかもこの人、あたしたちより年上か……?)」
「そうです〜、わたし笹良そよっていいます〜。いつもこみみちゃんがお世話になってます〜」
「いえいえ、かなりお世話してます金銭的に。……じゃあもう一人の方が雛里あずささん?」
「あ、はい、雛里です」
「銃弾を避けるというあの……ですか? …………見えませんね」
「いや避けれません」
「え、そうなんですか? 話と違いますね」
「お前なに話してんだこみみ」
「事実をありのまま伝えたんだけど? 頑丈に作ったはずのロボットの首を蹴り飛ばしたとか」
「えぇ、そう聞いていたので、ゴリラみたいな女性を想像していました。違いましたね」
「せめてゴリラみたいじゃないという事実の方も伝えといてほしかったな」
「あ、わたしはわたしは〜? わたしはどんな風に伝わってますか〜?」
「あー、笹良さんは不死ですよね。サメに食べられながらも給食の心配をしていたとか」
「え〜? そんなことしてないですよ〜」
「こみみ? なにこの伝言ゲーム状態は?」
「いや、私は事実をちゃんと伝えたって。グリムが間違って覚えてるだけで」
「グリム?」
「あぁすみません名乗り遅れました。グリムというのは私の名前です。本名ではなくハンドルネームですが、こみみさんにも本名は伝えていないので、どうか悪しからず」
「あぁ、そうなんですね。別にそれはいいですけど」
「グリムってハンドルネームにしてるのは〜、グリム童話が好きだからとかですか〜?」
「いえ、
「ぶ、物騒な……」
「かっこいい〜!」
「……それで、すみません失礼なのですが、私は今なぜ呼ばれたのでしょうか……? こみみの次の発明品は完成したのですか?」
「え? あ、いや、すみません。単にあたしたちが、グリムさんと話してみたいなぁという話をしてしまって。なにせ今日初めてグリムさんの存在を聞いたので」
「あぁ、そういうことですか。……それじゃあちょうどいい話が一つあるんですけど、お聞き願えませんか?」
「話?」
「はい。具体的にどことは言いませんが、実はつい最近まで紛争地の方にいたらしい女性が……こみみさんと同じくらい無茶苦茶な技術を持つマッサージ師が、あなたたちの高校の近くに居を移したようなのです。彼女の技術を実際に体験してみて、それを私にレポートしてくれませんか?」
「ま、マッサージ師……?」
「えぇ、若い女性の方ですよ。足つぼ専門のマッサージ師なのですが、なんでもつぼを突くことで人を不老不死にするとか……」
「不老不死!?」
「うわっびっくりした」
「こみみちゃんって、たまに急に大声になるよね〜」
「そうですよこみみ、あなたがその昔、気軽に望みすぎた不老不死です。その新たな手がかりになると思わしき人物の居場所を知るために、私がいったいどれだけの金と時間を……」
「いや、グリムが全貌を知りたいだけだよね。そしてあわよくばお近付きになろうとしてるでしょ。私にしたみたいに」
「当然です。というわけでまずはぜひレポートをと思うのですが……御二方はいかがですか?」
「レポートって、つまり足つぼマッサージを受けてこいって話ですか?」
「そういうことです。報酬は……そうですね……、子どもに大金を渡すのも危なっかしいので、一人頭十万くらいでどうでしょうか?」
「じゅ、十万……!?」
「大金だ〜」
「足つぼをぐりぐりっとされた感想を送ってくだされば、合計で三十万お出ししましょう」
「こみみ、やろう!」
「やろうやろう〜!」
「二人ってそんなに現金だったっけ……?」
「金で働いてくれるなら、それはいいことですよ、こみみ。あなた、作る作ると言って一向に納品してこない「クォーツァー」の件はどうなったのです?」
「クォーツァー?」
「こみみちゃん、何か作る予定なの〜?」
「あー、うん。まぁちょっとね」
「……それでは、クォーツァーと感想レポートの納品、両方達成で三十万です。出来るだけ迅速に頼みますよ」
「は、はい、頑張ります」
「はいはい、頑張りますよー。じゃあそういうことで、グリムまたね〜」
「はい、またランクマで会いましょう」
「……ってことで住所も送られてきたし、ここにマッサージ師がいるらしいけど、さっそく行ってみる?」
「こみみちゃん〜、ランクマってなに〜?」
「ランクマッチの略で、ゲームの真剣勝負をするコーナーみたいな物」
「なんかトントン拍子で話が進んでよく分かんないんだけど……。あたしたちって今からそこにマッサージ受けに行って、それで十万円もらえるの?」
「現実味、全然なかったね〜」
「こみみの友達相手じゃなかったら確実に詐欺だと思うレベルだわ」
「いや、実際詐欺だよ」
「は?」
「私、グリムから報酬金を受け取ったことなんてないもん。報酬は自動的に次の材料費のためにチャージされるっていうか、そんな感じでさ」
「え、じゃあさっきの話は……?」
「あずさたちにはちゃんと払うと思うよ。だから実質報酬は二十万だね。三分の一は詐欺」
「なんでこみみちゃんにだけ払ってくれないの〜……? 友達なんでしょ〜……?」
「私を適度に金に困らせておかないと、発明品を作らなくなると思ってるんだよ、グリムは。全然そんなことないのにね」
「……あー、でも中学の頃のこみみが十万円持ってたら、普通にクルトガ買って、その話はそこで終わってない?」
「……あれ? 確かにそうだ、一理あるじゃん」
「グリムさん鋭いね〜」
「くっ……金持ちめ……、元々ない金だと思えば惜しくもないから別にいいけど……!」
「で、マッサージ師の件は? こみみは行かないの?」
「行くに決まってるでしょ、不老不死だよ? 一刻も早くゴーゴーゴー」
「こみみちゃんって、なんでそんなに不老不死にこだわるの〜?」
「いや、それ自体にはそこまでこだわってないけど、失敗したきりどうしようもなくなってる分野だからさ。先へ進みたいじゃん」
「そういうもの〜?」
「
「え〜? 不死だって不老は憧れるよ〜? 永遠の18歳がいい〜」
「それはあたしも」
「知らないぜ……永遠の12歳児になっても……」
「さすがに今から巻き戻るってことはないでしょ……。……よし、それじゃあ永遠の18歳と実質二十万円を目指して……!」
「足つぼマッサージに突撃ー!」
「えいえいお〜!」
……次回へ続く。