私立、八二卜学園のJKたち   作:氷の泥

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14 クォーツァーと怪しい仮面

 私立、八二卜(やつふたうら)学園。通称はにとー学園。そこに所属する天才JK三人組とそのスポンサー絡みの一件は、まだほんの少しだけ完結していなかった。

 巫女野(みこの)こみみ。笹良(ささら)そよ。雛里(ひなさと)あずさ。……この話は、以上の三人がどうでもいいお喋りをする様を延々と垂れ流したり、そうでもなかったりする、基本的にナンセンスなコメディです。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の昼休み、約二名の通学鞄には十万円の入った封筒が忍ばされていた。

 

「で、クォーツァーってなんだったの?」

「わたしも気になる〜」

「そう言われると思って持ってきましたよ。グリムに送ったクォーツァーっていうのは、この懐中時計のことです」

「お〜?」

「見たところ普通っぽいけど、これにどういう仕掛けが?」

「上の方にカチカチするボタンが付いてるでしょ? 12時の真上に」

「あるね。これ押していいの?」

「今押しても何も起こらないよ。そのボタンは鏡の前で押さないとダメ」

「鏡の前で押したらどうなるの〜?」

「鏡の前で押すと、なんとぴったり一分間で、押した人に自動で化粧が施されます。いわゆる変身的な感じで、光に包まれてピカーンってなって完了する」

「えっ、それが本当なら普通に便利じゃない?」

「お化粧がたったの一分で〜? しかも自動〜……!」

「すごいでしょ。十万なら安いってくらいすごいでしょ」

「……普通にすごいけど、話に違和感があるな」

「違和感〜?」

「今までこみみが作ってきた発明品を思い返してみてよ。大体何かしら欠点があったでしょ。だから「普通にすごい」って部分にすさまじい違和感がある……」

「え〜そう〜? 泳げるようになるマシンとか普通に良かったけどな〜。見た目は透明になるし〜、レーザーも出せるし〜」

「泳ぎのための道具としてレーザーが出るのは賛否あると思うけど……」

「さすがあずさ、お目が高い。そう、その高速自動お化粧アイテム「クォーツァー」には、一つ無視できない欠点があります。さてそれはなんでしょう? 正解した人には今手元にある現物をそのままプレゼント」

「はいは〜い! 早くて自動だけど、化粧の出来がイマイチになっちゃうとか〜」

「ぶぶー、違います。クオリティの方はちゃんといい感じになります」

「えー、本当かな? こみみは化粧なんかとは無縁でしょうに。巨乳の時と同じくらい」

「なんでそんな断言できるのさ」

「外見だけ見たら小学生女児でしかないからだよ」

「女児だって化粧に興味くらい持つやい。……まぁ確かにクォーツァーはお母さんとの共同開発だけど」

「えっ、お母さんも発明できるの〜!?」

「いや? 化粧のことをいろいろ参考にさせてもらっただけ」

「それでクオリティが確保できるってことは、問題は全然違う部分にあるってこと……?」

「そうなるね」

「一分で化粧できるけど、一分一秒で時計が爆発するとか」

「ぶぶー、違いまーす。ヒント、その欠点は一分間の間にだけ現れます」

「わかった〜! 電流が流れる〜!」

「惜しい!」

「惜しいの!?」

「じゃあ〜、一分間ピクリともせずじーっとしてないといけない〜?」

「ううん、遠ざかった。時計を持って鏡の前から離れなければ、多少動くのは大丈夫」

「え〜、分かんないよ〜」

「正解は?」

「正解は、ベートーヴェンの第九がとんでもない音量で一分間流れ続けることでしたー」

「わかるかっ! なんじゃそりゃ」

「いや、たった一分とはいえずっと突っ立ってるのも暇かなーと思って、気分を盛り上げるために壮大な音楽を流そうとしたんだけどさ。そしたら解除できなくなっちゃった」

「とんでもない音量ってどれくらい〜?」

「音割れするくらい」

「それが手元から一分はきついな……」

「グリムさんはそのことなんて言ってた〜?」

「あー、グリムはさぁ、いつも実際に使ってる時の様子を動画にして送ってくれるんだよね。……で、めっちゃ顔しかめてた」

「まぁそうなるでしょ」

「でも「よろしい。また何か出来たら報告してください」って言って締めてたよ」

「物好きな金持ちだなぁ」

「え〜、でもわたしもこみみちゃんの発明品好きだよ〜? また次のやつ見たい〜って思うもん〜」

「本当? じゃあそのクォーツァーはそよにあげる」

「やった〜! 今度使ってみよう〜」

「ご近所迷惑にならないようにね……」

「ところでこみみちゃんってさ〜、わたしたちに見せてない発明品もたくさん持ってるの〜?」

「あるよ?」

「それって〜、グリムさんには見せたの〜?」

「見せたっていうか納品した」

「え〜いいなぁ〜、わたしも見たかった〜」

「予備があるから見せれるよ? 別に何の役にも立たないけど」

「見たい〜!」

「いや、なんで何の役にも立たない物を作ったの……?」

「それは言葉のあやっていうか、役立つかどうかは状況次第だからさ。泳ぎに関する物を真冬に持ってきてもしょうがないみたいな」

「なるほど、使い所に困る物がたくさんあるってことか。たしかにさっきのクォーツァーも、学校で使う機会はないかもね」

「でしょ? 即決彼氏ロボも話の流れがなかったら絶対見せてなかったし。……でもまぁ、明日はその中でもマシっぽい物を選んで持ってくるよ」

「わ〜い楽しみ〜」

 

 翌日の昼休み。

 

「はい、持ってきたよ。持ち出せるサイズで面白そうな物はこれしかなかった」

「なにこれ、フルフェイスのヘルメット?」

「違うよ〜、仮面だよ〜」

「なんか目元部分から怪しげな光を放ってるんだけど……」

「これは「バカと煙は明星へ登る(ギャグウェ〜イ)」っていう、被った人がとても面白いギャグを言えるようになる仮面です」

「おぉ〜、パーティグッズだ〜」

「解説の時点でハードル上がりすぎてない……?」

「そこは実践してみてのお楽しみ。というわけで、二人のどっちかこれ被ってみてよ」

「はいは〜い! わたし被りた〜い!」

「はい、じゃあそよに装着〜」

「…………」

「えっ、なんかうなだれちゃったけど大丈夫……!?」

「大丈夫、ちょっと起動に時間かかるだけだから」

「……おや? わたしは何を……(イケボ)」

「そ、そよの声が変わった……」

「ギャグを面白くするために、装着した人の声を低めのイケボにする効果があるんだよ」

「首から下はそよだから吹き替え感がすごい」

「そよー、何か面白いこと言ってー」

「面白いことですか……。では…………麒麟です(イケボ)」

「パクリじゃん」

「まあまあまあまあ、まだ始まったばかりだから」

「では次のネタを……(イケボ)」

「なんか立ち上がったぞ……?」

「いいですか、よく見ていてください。……右足を出して、左足を出すと、……歩けるのです(イケボ)」

「いやパクリじゃん」

「まあまあまあまあ、もう一個強化アイテムがあるから。ほらそよ、これを手にはめて」

「強化アイテム? ……その人形みたいなやつが?」

「これは「噺手(アングラハンズ)」っていう二体一組の小道具で、見ての通りウサギとクマのぬいぐるみだよ。それ以上でもそれ以下でもない」

「おぉ……これは素晴らしい。新しいネタを思いつきました(イケボ)」

「……もう先が読めたけど一応やってみて」

「ショートコント「花粉症」。 はーっくしゅん! はーっくしゅん! おやおやクマくん風邪かい? いやー風邪っていうか花粉症でさぁ、あっ良いところに鼻セレブが。 痛てててて! いや鼻セレブじゃないから! ……アングラハンズ!(イケボ)」

「やっぱりパペットマペットじゃん」

「はい、終了ー。仮面はずしまーす」

「ぷはっ……。……あれ〜? なんか記憶がおぼろげな感じがする〜……。わたし面白いこと言えてた〜?」

「えっ、その仮面記憶飛ぶの……!? つまんないくせに危険すぎる……」

「いやーそうなんだよね。私が持ってる「面白い」の感覚じゃこれが限界みたいで、こう見えてすでにバージョン3なんだけど、どう頑張ってもパクりネタしか出てこないんだよね」

「その仮面もグリムさんに送ったの?」

「うん。なんか部下に被らせて遊んでる動画が送られてきた。グリム本人は超真顔だった」

「でしょうね」

「でも「よろしい。また何か出来たら報告してください」って言ってたよ」

「金持ち云々の前に、グリムさんも立派な変人なのでは……?」

「あずさちゃん、お金持ちな人がタイプって言ってなかったけ〜? グリムさんは女の人だけど〜、もし男の人だったらって考えるとタイプに近くない〜?」

「いや、全ての金持ち男がそういう変人なら、あたしもさすがに宗派変えかな……」

 

 言いながら、鞄の中の十万円に思いを馳せるあずさだった。

 

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