私立、
発明家、
不死、
一般人?
……この話は、以上の三人がどうでもいい雑談を繰り広げていくところを、淡々とお送りするだけのナンセンスコメディです。
こみみが若干遅刻した日の昼休みにて。
「電車で乗り過ごしちゃって、あわてて反対路線に乗り換えて引き返すことってあるじゃん? あれって犯罪らしいよ」
「えっ、そうなの〜?」
「それ聞いたことある。無賃乗車的な扱いになるんだっけ」
「らしいよ。実際にしょっぴかれた例があるのかは知らないけど」
「ていうか、もしかして今朝遅れてきたのってそれ?」
「いやー、帰りの電車で寝過ごしたことは何度かあるけど、まさか朝にそれをやるとは。我ながらびっくり」
「このへんって、朝も座れるくらい空いてるもんね〜」
「どうせ夜遅くまでゲームとかしてたんでしょ」
「あー、あずさから見れば深夜だったかもなぁ」
「遅刻した分際でなんて言い草……」
「あずさちゃん寝るの早いもんね〜。やっぱりそれが、無遅刻無欠席の秘訣なのかな〜?」
「それはあたしにも分かんないけども。……そういえばゲームのやりすぎで思い出したけど、四国の方にゲーム禁止条例みたいなやつ出てたよね。あれって違反したらどうなるの?」
「分かんないけど、別に罰則があるわけじゃないんじゃなかった?」
「そんなんで律儀に守る人なんているのかな。電車の話だって、結局はみんなしれっとやってるでしょ。いちいち改札出たりしないでさ」
「わ、わたしもやったことあるけど〜、犯罪だなんて今日まで知らなかったし〜……」
「なんか探していけばそういうグレーな犯罪とか違反って大量にありそうだね。取り締まる側もいちいち気にしてられないレベルの」
「ポイ捨てとかも犯罪になるんだっけ?」
「さぁ……?」
「あ、そういう話なら〜、わたし前から一つ思ってたことがあるの〜」
「なんだろ」
「温泉とかでさ〜、小さい子がお父さんやお母さんと一緒に入るために、違う性別の方に入ってくることがあるでしょ〜?」
「あー、あるある。男湯の女児、女湯の男児」
「あれって、何歳までしていいのかな〜、そういうのって決まってるのかな〜? って、たまに見ると不思議に思うんだよね〜」
「まあ確かに、極論私たちの年齢で性別無視して行ったら逮捕だもんね」
「かといって年齢確認するようなことでもあるまいし……。適当にぼんやりしたジャッジでやってるんでしょ」
「う〜ん、たしかにそこから起こるいざこざとかは〜聞いたことないけど〜」
「でもまあ、言われてみればもやっとする気持ちも分かる」
「そうそう〜、グレーゾーンってなんだかもやもやするよ〜」
「分かる分かる。……でも温泉の件はあれじゃない? 問題は年齢より心の方にあるんじゃない? 精神年齢的な」
「っていうと〜?」
「仮に私よりもっと幼い段階で、体の成長がストップしちゃった男子がいたとするでしょ。そしたらその男子は女湯に入れるかもしれないけど、でも心は高校生なんだよ? それって犯罪じゃない?」
「あ〜、たしかに〜。コナン君がそういうことしてたら嫌だな〜」
「誰もコナン君とは言ってないけども。ていうかコナン君にそういうエピソードなかったっけ……?」
「ん? でもその話ってさ、他人の精神年齢が見えることが前提になってない? 極端な話、こみみが実は成人済みだったとしても、あたしらには分からないのにさ」
「た、たしかに〜!」
「それに逆に考えて、心が小学生だったとしても体が大人の男だったら、女湯に入ってこられるのは嫌でしょ」
「ほ、本当だ〜! その通りだ〜!」
「いや、あずさ、そこまで来ると話がかなり繊細になってくるよ。体の性と心の性が一致しない人もいるし」
「あ、そうか……」
「なるほど〜……。じゃあこの話は〜、グレーな感じにしておいた方が、実は一番よかったりして〜……?」
「グレーな行為で思い出したけど、別に犯罪ではないにしても、試食するだけしていって何も買わない人のメンタルって凄すぎじゃない? この前実際に見たんだけど」
「あー、確かに。でも試食って、むしろ向こうから押し進めてくることもない? ああいうのって押し売り禁止的なルールに引っかからないのかな」
「たしかに……。一理あるけど、押し売りも何もそもそも試食はタダだからなぁ……」
「そういうのって結構あるよね〜。列の割り込みとか〜」
「あー、身内が先にいて「おいでおいで」とかするやつね。いい歳した人がやってると確かにもやっとする」
「あと法律的にダメなことなら〜、自転車で歩道を走ることとかもダメだったよね〜」
「あー、あたしそれは法律の方がおかしいと思ってる派だ。じゃあどうしろと……って感じの道が多すぎる」
「分かる。バイクと同じ扱いって言うけど、エンジンの有無は大きいよね。しかし電動自転車のパワーがそのあたりの話をさらにややこしくしていく……」
「なんというかもう、気にした奴から損をしていく感じはするね。精神的に」
「じゃあわたし、すっごい損してる気がする〜……」
「そよはそういうの気になるタイプなんだ」
「だって〜、自転車に轢かれたことあるもん〜」
「気にするっていうかトラウマかぁ……」
「そよは、あたしたちが知らないところでかなりつらい目に遭ってるよね……」
「そうだよ〜? だから試食だけして帰っちゃっても許してほしいな〜」
「それはする側なんかい!」
「意外だ、そよにそんな鋼の対人メンタルがあったのか」
「えへへ〜」
「ていうか、グレーといえば、こみみの発明品ってグレーな物多くない? ビームを出すだの人の性癖を歪めるだの……」
「我ながら法律を追い抜いている自負はあるけど、大事なのは悪用しない心だよ、心」
「心か〜、たしかに〜。グレーなことって、みんなの良心で成り立ってるのかもね〜。そう考えたら平和の象徴だよ〜」
「まぁそういう考え方もできる……のか?」
「いや、それはちょっと異議あり! グレーな発明品を作っておいてなんだけど異議あり!」
「何にそんなに異議があるの」
「私は毎年思うんだけど、持久走の授業って、あれって拷問じゃない? なんで許されてるの?」
「何を言い出すんだ急に……」
「だって苦しいのに無理やり走らされるんだよ? それに体育って他にもいろいろあるじゃん、出来ないって分かってるのにやらされて、大勢の前で恥をかかされるようなことが」
「あ〜わかる〜。わたしも体育嫌い〜……」
「あれらの行いがまかり通ってる授業っておかしいと思うんですけど! なんでグレーなんですか!」
「いや、それはグレーというか、限りなく白に近いグレーだと思うけど……」
「あずさは自分が上手くできるから、出来ない人の気持ちが分からないんだー!」
「そうだそうだ〜!」
「だってそんなこと言い始めたら、やりたくない勉強をやらされてるなんておかしい……みたいな話にならない? でもそんな声に耳を傾けたところで、世の中が良くなるとは思えないでしょ」
「ぐ……ぐうの音も出ない……」
「でもでも〜、体育の発表とかで恥ずかしい思いをさせられるのは〜、生徒一人一人のテストの点を〜先生がみんなの前でバラしちゃうようなことだと思いま〜す。大問題だと思いま〜す」
「お、いいぞそよ、頑張れ! 論破しろ!」
「それは一理あるけど、紙のテストと違って体育は場所を取るから、致し方なく大勢を集めて一人ずつ発表してるんじゃない? 一人一人こっそりやってたら時間足りなさすぎるからってことで。小学校の頃のリコーダーのテストとかはちゃんと個室でやってたりしなかったっけ? 別に大勢の前でやらせたがってるわけではないと思うんだよね、先生たちも」
「……こ、こみみちゃん〜! 言い返せない〜!」
「これがグレーの力だというのか……?」
「自分で言ってて思ったけど、もしかしたら世の中のグレーなことって、「おかしいでしょ!」って感じで食ってかかると、今みたいに誰かから結構な反論をされるのかもね」
「関わらない方がいいってことか……」
「え〜、でももやもやする物はもやもやするよ〜」
「こうなったら、もやもやする物は全て私の発明品で焼き尽くすしかない……?」
「悪用しない心は……!?」
「力で解決するっていうのももやもやするよ〜」
「それは本当にその通りだ……」
しかし、話のオチがないことにはさほどもやもやしない三人だった。