私立、八二卜学園のJKたち   作:氷の泥

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16 始点ポケモン

 私立、八二卜(やつふたうら)学園。通称はにとー学園。そこには最近のポケモンのことを全然知らない天才JK三人組が所属している。

 育成ゲームの育成部分が肌に合わないゲーマー、巫女野(みこの)こみみ。自身の発明品にも育成要素は絶対に取り入れない。ついでに自分の体も一生育たない。

 ゲームは誘われたその場でだけ遊ぶタイプ、笹良(ささら)そよ。ポケモンアニメを幼少期によく見ていた。ロケット団が好き。意外とタケシも好き。

 ポケモンは進化前の方が好き派、雛里(ひなさと)あずさ。子どもの頃、フリーザー(ポケモン)とフリーザ(ドラゴンボール)の名前がどっちがどっちだかよく分からなくなっていた。

 ……この話は、以上の三人が今回に限ってはポケモンの話をするところを、あるがままにお送りするナンセンスコメディです。

 

 

 

 

 

 

 ある日の昼休みにて。

 

「とんでもないことに気付いちゃったかもしれないから、二人ともちょっと聞いてくれる?」

「え、なに……? 嫌な予感……」

「聞くよ〜」

「順を追って話すんだけど、……アイデアにはスタート地点があるじゃん?」

「なにが……?」

「例えば私が作った「即決彼氏ロボ、両極端次郎くん」で言えば、私は先に「優柔不断な彼氏」の話を聞いて、それをきっかけにロボを発明したって言ったでしょ? 鬼滅の刃を見たから作ろうとしたってわけではなく」

「あー、言ってた気がするな」

「でも、絶対鬼滅が元ネタだったよね〜」

「まぁね、どっちが先だったにしても元ネタがあることには変わりないよ。でもそういうアイデアには「順番」があるよね、っていう話をしたいわけ」

「うん、言ってることは分かった。それで?」

「ポケモンのアイデアの始点ってさ、ピチューとピカチュウだったら絶対ピカチュウの方にあると思わない?」

「そうなの……?」

「だって、「光」の感じを表すピカピカと、ネズミの鳴き声チュウを合わせてピカチュウでしょ? それに比べてピチューって、ピ一文字だけで光とか電気感を表すのはさすがに無理があるじゃん。どう考えてもピカチュウありきのピチューでしょ」

「あー、言われてみればそうかも」

「ライチュウは〜? ライチュウも「雷」のライとチュウだよ〜。尻尾の形も雷っぽいし〜、ライチュウがアイデアの始点なんじゃないの〜?」

「そこはなんとも言えないけど、個人的にあのカラーリングは初っ端からは出てこない気が……って、まぁそこはどっちでもよくて。とにかく、ピチューが始点ってことだけはあり得ないよねって話」

「そうだね〜、それはわたしもそう思う〜」

「で、そこに気付いた時、私は次にこう考えた。「ポケモンの進化の順番」と「アイデアの順番」が一致しないなら、もしかしてあらゆるポケモンのアイデアって、むしろ進化後の方から先に考えられているのかなって」

「それは……そうでもないんじゃないの? 知らないけど」

「うん、実際そうでもなかった。ウパーってポケモンは知ってる?」

「知ってる〜! わたしあの子好き〜」

「ウパーはどう見てもウーパールーパーが元ネタのポケモンだけど、進化したらヌオーになるじゃん? そのヌオーっていったい何が元ネタなのって考えたら、いまいち分からなくない?」

「え、サンショウウオじゃないの?」

「サンショウウオと「ヌオー」って名前に繋がりがないじゃん」

「そこはほら、サンショウヌオー……的な」

「まぁそれでもいいんだけど……。それはそれとして、ウパーがヌオーに進化すると、水タイプから水+地面タイプに変わるんだけど」

「へ〜」

「それでネットで検索してみたら、ヌオーの由来は沼+王って言われてるんだって。水タイプに地面タイプをプラスしたら沼感が出る……っていうのもなんとなく分かる気がしない?」

「まぁ、分からなくはない」

「それでそれで〜?」

「明らかにウーパールーパーが元ネタなウパーと、それに比べたら元ネタが不鮮明なヌオー……最初に考えた人がどっちを先に思いついたのかは明らかでしょ」

「なるほど」

「進化の順番とアイデアの順番は〜、全然関係ないってことか〜」

「そうなんだよ。そうなんだけど、でも探してみると、明らかに「アイデアの順番」があるポケモンって結構いてさ」

「例えば?」

「九尾の狐を元ネタにしてるキュウコンは9+狐の鳴き声コンだけど、その進化前の名前はロコンだった。まぁ普通に考えて6+コンってことだけど、どう考えても九尾の方を先に思いついてるじゃん?」

「そうだね」

「それから、スプーンを持ってるエスパータイプのポケモン「ユンゲラー」が実在のマジシャン「ユリ・ゲラー」を元ネタにしているのは有名だけど、その進化先になってる「フーディン」の元ネタを調べてみたら、それも実在のマジシャンが由来になってるんだって。けどそのマジシャンの十八番は脱出マジックだって書いてあって」

「あ〜、じゃあそれは、ユンゲラーが先に考えられたっぽいね〜」

「いや、脱出ってことはテレポートってことじゃない? ケーシィとフーディンが繋がっていて、間にもう一つ必要だったからユンゲラーをあとから入れたって可能性はないの?」

「それは……どうなんだろう……?」

「そこは分からないのね……」

「まぁでも、順番の例はまだあるよ。ブーピッグっていう豚のポケモンがいるんだけど、そいつの進化前はバネブーっていう、足がバネになってる豚のポケモンなんだよ。ブーピッグにはバネの要素なんか、せいぜいグルグルした形の尻尾くらいにしかないのに、バネブーは名前も見た目もあからさまにバネなんだよ? 普通の豚のキャラクターを作ったあとで「よし、進化前にバネ付けてみるか!」とはならなくない? 絶対バネブーから先に思いついてるって」

「いや、うん、そういう視点があるっていうのはもう分かったよ。……で、それが重大なことなの?」

「いや、本題はここから。……二人はソーナンスのことをどう思う?」

「ソーナンスって〜、ロケット団と一緒にいる子だよね〜」

「あの青いやつでしょ? そぉ〜〜なんす! っていつも言ってる」

「わっ、あずさちゃんソーナンスの真似上手い〜!」

「似てたね」

「やめて恥ずかしくなってくる。……それでそのソーナンスが何なの?」

「ソーナンスの進化前はソーナノだけど、……その二体に順番ってあると思う?」

「え〜? どうだろう〜?」

「別にポケモンって、なんでもかんでも順番があるってわけじゃないでしょ?」

「うん。順番どころの話じゃない例で言うと、ドジョッチとナマズンとか、キャモメとペリッパーとかがあるね」

「あ〜、それ分かる〜! なんでドジョウが進化してナマズになったり、カモメが進化してペリカンになるの〜って、中学生の時くらいから気になってた〜」

「そうそう、そこまで来ると順番も何もないよねっていう。それにさっきのピカチュウとライチュウみたいに、どっちが先でもおかしくない例だって山ほどあるし」

「じゃあソーナノとソーナンスもそうなんじゃないの? どっちも「受け答え」が元ネタで、別に順番なんてなさそうだし」

「私も最初はそう思ってたんだよ。……でも不思議じゃない? 受け答えが元ネタなんだとしたら、ソーナンスの見た目ってどうやって決まったんだと思う?」

「見た目〜?」

「色も形も「受け答え」からは全くイメージ出来ないと思うんだよね。他のポケモンって大体元ネタが動物とかだったりして、最初からある程度見た目のイメージがあるじゃん? でもソーナンスにはそれがない」

「言われてみれば、まぁ確かに」

「考えたことなかった〜。他にもそういうポケモンっていないのかな〜?」

「それは分かんないけど……。でも、ソーナンスの見た目ってどこから思いついたんだろう?って考えた時、私は閃いたんだよ」

「なにを?」

「ソーナンスの見た目、あのツルっとして丸みを帯びて細長い感じ、ああいう感じを、私たちってどこかで見たことがない? …………ずばり言って茄子っぽくない?」

「あ〜、っぽいって言われたら、っぽいかも〜」

「ってことはソーナンスの見た目の由来って、……(ソウ)茄子(ナス)じゃない?」

「……えっ?」

「え〜……?」

「もしソーナンスが蒼茄子だったとしたら、ソーナノとソーナンスのアイデアの順番は、ソーナンスが先ってことになる。実はソーナンスって始点が明らかなポケモンなのでは……? と、私はそう思ったわけですよ」

「うーん……。それはさすがに陰謀論みたいなもんなんじゃないの……?」

「そのソーナンスの話って〜、ネットに書いてあったりするの〜?」

「いや、パッと見は書いてなかった。少なくとも一番上には出てこない感じ。むしろ一番上には「sonance(響き)」と「そうなんす(受け答え)」がかかってるって書いてた」

「へー」

「初めて聞いた〜」

「だからさ、もしかしてこの蒼茄子って発想は、まだあまり知れ渡ってない真実なんじゃないかなって」

「いやー……、どうかなー……」

「あっ、こみみちゃん〜! 大変〜!」

「なになに」

「今ググってみたら〜、こんな記事が〜」

「なになに……? 色違いのソーナンス? ……こ、これは!」

「なに、茄子の色だったの?」

「茄子ほど濃くはないけど、ピンク色だ……。ソーナンスの色違いは公式からピンク色に設定されているんだ……。……限りなく茄子に近い色だ!」

「こみみちゃん〜! これはもう決まりだよ〜!」

「ソーナンスは茄子だったんだー!!」

「えぇ……? 本当にそう……?」

 

 絶対に違う、と論理的に言い切ることの難しさに、陰謀論の厄介さを思い知った気分になるあずさだった。

 

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