私立、八二卜学園のJKたち   作:氷の泥

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04 理想のタイプ

 私立、八二卜(やつふたうら)学園。通称はにとー学園。その2年A組には天才JK三人組が所属しており、しょっちゅうどうでもいい会話に勤しんでいる。

 天才1号、巫女野(みこの)こみみ。ロリ体型の天才科学者……という触れ込みだが、彼女の作る発明品は全て理論無視の「勘」で作られており、それが現代の技術を遥かに超越した出来になるため、むしろ彼女こそがこの世で一番科学を冒涜している存在だと言える。

 天才2号、笹良(ささら)そよ。ちょくちょく面白い死に方をする星のもとに生まれた不死。結構おっちょこちょいな性格だが、それとは一切関係ない死因の数々が彼女を襲う。しかしまだパンツに轢かれたことはない。

 天才3号、雛里(ひなさと)あずさ。パッと見ただの一般人と見せかけて、体育の全記録で男子を含む全校生徒中一位を保持しているフィジカルの怪物。けどさすがにサメと水中戦をすれば負けるだろう。

 ……この話は、以上の三人がどうでもいい話を繰り広げる様を、ひたすら垂れ流すナンセンスコメディです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。いつもの三人組が、今日は珍しくそれなりに意味のある会話をしていた。

 

「ねぇ二人とも〜。理想の異性ってどんなタイプって聞かれたら、なんて答える〜?」

「あ〜、それ中学の頃も聞かれたな〜。自分のことながら未だに分からないんだよね。私あんまり恋愛に興味ないし」

「あたしは、金」

「あずさってそんなにお金好きだっけ」

「いや、ちょっと踏み込んで考えすぎたかも。付き合うくらいならともかく、結婚するとなると経済力は絶対だよなーと思って」

「へー。なんか意外」

「なんでよ。実際大事でしょ」

「いや、「付き合うくらいなら」とか、なんか恋愛慣れしてそうだなって」

「はっはっはっ、一回も彼氏できたことない」

「エアプじゃん」

「想像力だ、想像力」

「まあまあ〜。じゃああずさちゃんは相手に経済力があったとしたら~、その上で見た目とか性格の好みはある〜?」

「うーん……? そうだなぁ……。……なんかこう真面目で、嘘をつかなくて、普通くらいの見た目の人……?」

「平凡すぎてうさんくさい」

「どうしろってんだ」

「はいはい〜なるほどね〜。ここみちゃんは本当に何もないの〜?」

「ないことはない……かもしれない。私の趣味を一緒に楽しんでくれる人っていうのが、仲良くなれる相手の条件かなーって気はする。変な物ばっかり作りやがって! とか言われても困るし」

「ここみの作る物を「変な物」で片付ける男は何をやってもダメだと思う」

「あ、あずさちゃん……! トゥンク!」

「トゥンクて……」

「おお〜、なるほどなるほど〜。分かってきた〜」

「っていうと、なんかの性格診断とかだったの?」

「ううん〜。今のはね〜、わたしの理想のタイプと、みんなの理想のタイプを聞き比べしていたの〜」

「ほほう、聞き比べ。別にいいけど、なんでまた急に」

「えっとね〜、実はわたし、自分のタイプがおかしいんじゃないかって思ってて〜。それで最近、それを聞かれる機会があって~」

「……あー、もしかしてあれ? めっちゃチャラいのとか好きなタイプ? 意外と?」

「ううん〜、わたしが好きなのはね〜……。…………わたしの血と肉と骨を見ても、平気でいてくれる人かな」

「…………」

「…………」

「わたし、ちょくちょく死んじゃうし、その時に結構グロい光景も見せちゃうからさ〜。それで嫌いになられると、やっていけないかな〜って」

「……切実だなぁ」

「うん、恋愛に興味ないとか言ったことを後悔してきた」

「え〜、そんなに重かった〜? 大丈夫よ~、むしろ今みんなの好みを聞いて、安心できたんだから~」

「安心?」

「こみみちゃんが言ってたことが、大体わたしと同じだ〜と思って〜。わたし以外にも「こうじゃなきゃやっていけない!」っていう人いるんだ〜って、安心した〜」

「あぁ、そういう意味ならあたしとも同じじゃん。旦那に経済力を求めない女がいるだろうか? いや、いない」

「あ〜、確かに〜。お金持ちだと助かるよね〜。わたしたぶん、あんまりお仕事とか得意じゃないし〜。まだバイトもしたことないから分からないけど〜」

「(偏見だけど否めないな……)」

「(根拠はないけど、なぜかよくコピー機を詰まらせたりしそう……)」

「う〜ん、でも困ったな〜。人から好きなタイプを聞かれた時の、いい感じの答えをまだ用意できてないのよね〜。みんながみんな、わたしの死に目に合っているわけじゃないし、よく死ぬって言っても伝わらなかったりするから〜」

「死に目に合うって言い方物騒すぎる」

「実際に物騒だから」

「本当にね〜。この前のプールも、こみみちゃんから借りたビームがなかったらどうなってたか〜」

「いや、あの件は本当に申し訳なく思っております……。次からは足もカバーできるようにしておきますので……」

「発明品の用途すり変わってないか……? いや良くなる分にはいいんだけど」

「大丈夫、大丈夫〜。わたし二人のことは信用してるから〜。肉片と化したところを見られても嫌われない〜って」

「まぁね。見たくはないけどね」

「ていうか、肉片になることもあるの……? ……どうやって復活するのかちょっと興味あるかも」

「あたしはこみみがマッドサイエンティストの道に向かったら嫌いになるよ」

「そんな……。トゥンクさせておいて……」

「いや、向かうなよ」

「あはは〜」

「それでなんだっけ、人から聞かれた時用の無難な答えだっけ」

「あずさを参考にしたらいいんじゃない? 全てが無難だったじゃん」

「お金持ちがいいな〜って言うってこと〜?」

「金銭面にそこそこ余裕がある人、くらいにしとけば?」

「なるほど〜。じゃあこれからはそうする〜」

「私もそうしようかな……。いつも答えには困るけど、お金はあって困る物じゃないし」

「無難すぎてうさんくさいとか言ってたくせに」

「まあまあまあ」

「じゃあみんなお揃いの答えだね〜」

「そうなるね」

「うん。そうなるな」

「…………」

「…………」

「…………」

「(どうしよう、明日から無難な答えが全部「建前」に見えてきそうだ……)」

 

 恋愛の駆け引きを、世界一どうでもいいところで勃発させる三人だった。

 

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