私立、
天才A、
天才B、
天才C、
……この話は、以上の三人がどうでもいいお喋りを展開していく様を、ひたすら垂れ流すナンセンスコメディです。
例によって、その会話は昼休みに行われた。それは土日明けの月曜日のことだった。
「うっせぇわって曲あるじゃん?」
「あるね」
「あれの歌詞みたいなことって、やっぱり社会に出たら実際にあるのかな……?」
「あ~、どうなんだろうね~?」
「実際にあるから流行ってるのかな……って思ったりした」
「あー、あたしとしてはだけどさ。流行り云々というか、なんかそういうオーラ感じない? って思う。あたしたち三人はまだ誰も社会に出てないけど、うっせぇわっぽいことが実際にありそうだな~っていう、そういう
「あ~、ちょっと分かっちゃうかも~。わたし、親戚の集まりとかが少し苦手で~」
「そよが? どうして?」
「彼氏できた? って毎回聞かれるから~。わたしだって彼氏ほしいのに~って思っちゃうのよね~」
「まさに「うっせぇわ」の一言に尽きる案件じゃん」
「そよも大変なんだな……」
「そうでもないけど~」
「いや、まぁそういうわけでですね? 昨日そういうことを考えた私は気が滅入ってしまったわけですよ。それで「絶対に空かないグラス」とか「超食べやすいし焼きやすい焼き鳥の串」とか開発してたんだけど」
「すごいっていうか、串の方はガチでめっちゃ便利そうじゃない……?」
「売れそう~!」
「そうなんだよ、そよ。そこなんだよ。発明品で解決しようとすると結構いい物が出来ちゃって、まるで人の嫌な部分が「世を良くする原動力」になってるみたいな感じになっちゃうんだよ……! それはすごく不本意!」
「あー、まぁ分からないでもない話だね。戦争が技術進めちゃう的な」
「いろいろと複雑なのね~」
「というわけで、なんとか発明に頼らない解決策を導き出したいわけですよ、私は」
「というと?」
「まず第一に、全てのことはちょっとしたゲームで決めればいいと思うの。ジャンケンとかくじ引きとか」
「さっそく無理がありそうだけど……。なんでそう思ったの?」
「我が家ではお風呂とかお皿を誰が洗うのかって、いつもジャンケンで決めてるから」
「めっちゃ平和な家じゃん」
「仲良さそう~」
「だから飲み会?ってやつも、そのノリでいけばいいんじゃないかなと思って。一回シミュレーションしてみない?」
「あたしたちで?」
「そう」
「楽しそう~! やってみたいやってみたい~」
「じゃあまずくじ引きで、我々の序列を決めます」
「序列て。もう嫌な響き」
クジの結果。
そよ……社長。
こみみ……真ん中くらいの人。
あずさ……下っ端。
「なんだこのアホが考えたような役名は……」
「はい、じゃあそよは偉そうにして」
「ふぁ~ふぁっふぁっふぁっ~、今日もご苦労様ぞよ皆の衆~」
「この会社アホしかいねぇぞ……」
「じゃあみんな立って立って。はい、そういうわけで飲み会をするお店に来ました! 席順はどうする!?」
「そこからか。まぁ普通に社長が上座に」
「ストーップ! あずさ、1うっせぇわペナルティ!」
「な、なにそれ」
「全てはミニゲームで決めるって言ったでしょ? それ以外の決め方をした人にはペナルティが付きます。一番ペナった人が今日の支払い持ちです」
「ペナルティがエグすぎる」
「というわけで、席順と来たらやっぱりこのゲーム、椅子取りゲームで決めましょう! ねっ、社長?」
「くるしゅうない~」
「カオスだなぁ……。で、どうやってやるの? BGMは?」
「特に用意してないので私が歌います。止まったら座ってください」
「言い出しっぺなのに用意してないんかい。ていうかそれ歌う人絶対有利でしょ」
「はい、あずさ、言い出しっぺが用意して当然という圧力を出したから2うっせぇわペナルティ」
「独裁じゃねーか!」
「じゃあ行くよー、ミュージックスタート! ……てれてれてれん♪ てれてれてれん♪」
「…………」
「…………」
「てれてれてれん♪ てれてれてれん♪ てれてってってってっ↑てってってってっ↓ てれれれれれれれれれん♪」
「……いや、なんでマリオの地下BGM?」
「地上より合ってるかなと思って。飲み会って夜だし」
「選曲が気になりすぎて集中できなかった。もう一回」
「え~? じゃあなんのBGMならいいのさ」
「なんのって、なんかこう普通のBGMというか歌というか……あるじゃんそういうの」
「具体的には?」
「……そよ何かない?」
「う~ん、じゃあ歌詞が付いている曲にするとか~? イントロクイズみたいに~」
「なるほど、イントロかぁ。……よーし分かった任せろ! みんな準備はいいか!」
「よし!」
「いつでも来~い」
「ダン! ダン! ダン! シャーン! スモスモ♪スモスモ♪スモスモ♪ス~モ♪」
「待て待て待て待て」
「えっ、これもダメ? 歌詞つけたのに」
「選曲の角度が特殊すぎて「えっ」ってなるんだよ! ていうかスーモの歌の歌詞に「ダンダンダンシャーン」の部分って含まれるの!?」
「こみみちゃん、こみみちゃん。誰でも分かるくらい有名な歌手の曲にするっていうのはどう~? マリオとかスーモとか、聴いたことはあるけど作った人の名前まではなかなか知らないでしょう~?」
「うーん、言われてみれば確かになぁ。よし分かった、作った人の名前が分かる有名な曲にすればいいのね。……じゃあいくよ!」
「よし!」
「ドンと来~い」
「ウオ゛オオオオオオオ!! ハッピィライフ!! ハッピィホーム!!」
「おいッ! お前もうわざとやってるだろ!!」
「いやこの流れ完全にこれだと思って」
「伏線回収ってやつだ~」
「いや違うから……。もういいや、次いこう次。席順は適当に決まりましたとさ。それで? 次は何するの?」
「席についた我々の目の前には、巨大なサラダの山が!」
「なるほど~。誰が取り分けるのか決めるってことね~」
「ここはジャンケンで決めよう」
「よし、さーいしょーはグー」
「ジャアアアアアアアアン!! ケエエエエエエエン!!」
「うるせぇ……」
ジャンケンの結果。
そよ……パー
あずさ……パー
こみみ……グー
「くっ……グルメスパイザーが頭をよぎったばっかりに……」
「なにそれ」
「当社の製品ですよねっ、社長!」
「そうぞよ~。地球全土で売れまくっているぞよ~」
「社長適当すぎでしょ……。……で、次は?」
「あっ! 社長のグラスが空いてる!」
「まだ乾杯もしてないのに!? よし、お酒注ぐ人は何で決める?」
「ババ抜きで決めよう」
「いや、長くない?」
「誰がババアぞよ~怒るぞよ~」
「女社長だった」
「まぁ演者そよだし。……それでなんかもっと短いゲームないの?」
「仕方ない、さっきのくじ引きを流用するかぁ」
「これこの先全部くじ引きになるのでは……?」
「課題が見えてきたね。短いミニゲームの充実が求められるっていう課題が…………あら?」
「あれ、社長自分でハズレ引いたぞ」
「ラベルの向きが勝手に上に来る瓶はどこぞよ~」
「社長、こちらにっ」
「結局それも作ってあるんかいっ」
数分後。
「いやー、なかなか実りのあるシミュレーションでしたね。いつか飲み会に行く時はサイコロとか持っていこうっと」
「まずこみみのノリについてきてくれる上司がいると思ったら大間違いだと思うんだけど」
「でも楽しかったね~」
「だね! あずさの奢りだし!」
「その部分だけはすっごいパワハラだと思う!」
「……あっ、ハラスメントで思い出した。そういえば一個想定し忘れてたシチュエーションがあるんだけど」
「なんだろう~?」
「最初にそよの話聞いて思ったんだけど、…………セクハラへの対処法ってどうすればいいと思う?」
「あー……」
「ミニゲームじゃ決められないものね~……」
「そこは、それこそこみみ博士の出番なのでは?」
「セクハラ男の舌を引きちぎるマシンとか?」
「全体的にペナルティが重いんだよ」
「じゃああずさはセクハラされたらどうするのさ? へいへい下っ端ちゃんよ~何色のパンツ穿いてんのよ~」
「今日日そんなこと言うやつもいないと思うけど……。……でもそうだなぁ、言うてまぁ、あたしは我慢できる方かもなぁ。適当に笑って流すわ」
「えっ、人間じゃねぇ」
「セクハラ超えてヘイトスビーチ!?」
「う~ん、でもわたしも、そういうのは本当に苦手かも~」
「へいへい社長~おっぱい大きくない~?」
「潰れちまえそんな会社」
「じゃあもう私たちが社長になるしかない……か」
「それが出来れば苦労しないってやつだなぁ。…………あれ? そういえばこみみって身長いくつだっけ?」
「うん? 145だけど」
「……こみみって、20歳超えたとして外で酒飲ませてもらえるのかな。なんか今見ててふと思ったんだけど」
「えっ? いや、うっせぇわ」
結局、実戦的な「上司との飲み会対策」は何一つとして思いつかない三人だった。