私立、八二卜学園のJKたち   作:氷の泥

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06 暗記バン

 私立、八二卜(やつふたうら)学園。通称はにとー学園。その2年A組には天才……だけれども勉強はそんなに得意じゃない三人の女子高生が所属している。

 実は体重が絶対に増減しない人、巫女野(みこの)こみみ。不老不死実験の副産物として全女子が渇望する体質を手に入れたが、胃袋の大きさも小学生並なので食べ放題やバイキング形式の時は損した気分になる。

 実は三人の中で一番成績が悪い人、笹良(ささら)そよ。こう見えて小学生時代から一度もまともに宿題を終わらせたことがないアウトロー系女子。課題とは、人望を糧に写させてもらう物のことだ……!

 実は生野菜全般が苦手な人、雛里(ひなさと)あずさ。幼稚園時代から皆勤賞を途切れさせたことがない地味な超人なので、野菜を食べないと健康が云々言ってくる人のことは実績で黙らせることが出来る。

 ……この話は、上記の三人がどうでもよかったりよくなかったりする話を繰り広げる様子を、ひたすら垂れ流すだけのナンセンスコメディです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それははにとー学園に、学生にとって恐るべき日が近付きつつある時期のことだった。……要するにテスト一週間前の日のことだった。

 

「はぁ〜……。憂鬱〜……」

「私も……」

「こみみはともかく、そよはなんでそんなダメージ受けてるの……? プールの時は死なないから大丈夫って言ってたのに」

「プールはすぐ終わるけど、テストは一日中あるでしょう〜? さすがにメンタルがね〜……」

「ちょっと、なんで私はともかくなの」

「いやこみみは、ほら、フィーリングで生きてるから。テストなんかやらせる方が間違いなんだししょうがないって」

「くっ、自分がまあまあ出来るからって上から物を言って……。私がその気になればね……本気出せば……あずさの学力をチンパンジーにすることだって出来るはずなんだ……」

「いやそんな物作ってる暇あったら暗記パン的な物でも作りなよ」

「暗記パンかぁ……」

「わたしそれ欲しい〜。こみみちゃんなんで作らないの〜?」

「なんでって……。あのねぇそよ、簡単に言ってくれちゃうけどね、別にそんな物作ったって何も楽しくないじゃない」

「出来ることには出来るんかい」

「まあ出来るけど……。でもそれでテストの点が良くなったとして、いったい何の意味があるの……?」

「急に哲学的なことを……」

「いい点が取れればいい大学に入れて〜、いい大学に入れれば社会が優しくしてくれるかも〜」

「急にシビアなことを」

「まぁそうなんだけどさ……。どうにも乗り気にならないっていうか、たぶんテストが嫌いすぎて発明のモチベも湧かないんだよねー……。発明に必要なのはとにかくモチベなんだよ……」

「そこをなんとか〜、こみみちゃんお願い〜。いや、もうお願いしますこみみ様〜、お礼はきっとしますから〜……!」

「うーん……。そこまで言われたらやらないわけにもいかないか……」

「作るの? 暗記パン」

「そうだねー、うん、作ろう。暗記パン的な効力のある、なんかもっとこう格好いい物を。格好いい方がやる気出るから」

「わ〜! こみみちゃんありがとう〜!」

「格好いいって、なんかすごい嫌な予感がするな……」

 

 三日後。

 

「そよお待たせー! 出来たよー!」

「わ〜! 待ってました〜!」

「こみみにしては結構時間かかったね」

「いやドラえもんが思ったより面白くて」

「サボってんじゃん」

「え〜、わたし勉強もせずに待ってたのに〜」

「サボってんじゃん!」

「まあまあまあ。というわけでこれが私の力作、暗器「(ばん)」です」

「へー。小さいピストルに見えるけど」

「そう、暗記パンがパン型の暗記アイテムなら、これはピストル型の暗記アイテムってことさ。しかも小さいから持ち運びも簡単! 暗器だけに!」

「どうやって使うの〜?」

「えーとね、まずは暗記したい本を一冊用意して、表紙をこのピストルの銃口に押し当てます。今回はたまたま手に取った世界史の教科書にしよう」

「ふむふむ〜」

「するとなんかこう、弾が装填されたような感触がするので、そうなったら暗記させたい人に銃口を向けます。……さぁそよ! 命乞いをしろ!」

「ひえ〜。どうか命と赤点だけは〜」

「あれ? こみみ、その銃引き金がなくない?」

「ないよ。だから引き金を引く代わりに、口で言う。……ばんっ!」

「ぎゃっ」

「えっ、そよ!? ちょ、なんか仰け反ったけど!?」

「大丈夫、大丈夫。今暗記してるところだから」

「あ……あう……うぅあうあ〜……」

「こみみ、これ本当に大丈夫なの……? やばそうじゃない……?」

「誓って大丈夫。ちゃんとテストしてるから」

「……う……せ……せかいしぃ……タラ-」

「なんかそよ鼻血出してるんだけど! お前これ絶対やばいだろ!」

「いや絶対大丈夫だって。脳への負荷とかはないってちゃんと確認してるからさすがに」

「…………スッ」

「あ、なんか急に真顔になった……。そよ……? 大丈夫か……?」

「あずさちゃん……。うん、大丈夫。わたしの全てを世界史に捧げる」

「おいやっぱりダメだろこれ」

「いやいや、これでもう、そよは世界史の教科書を完璧に暗記したよ。一ヶ月くらいで綺麗さっぱり忘れるけど」

「ふふふ〜、ありがとうこみみちゃん〜。全ての道はローマに通じるのよ〜」

「こみみさん、これ暗記の方が失敗してない?」

「してないしてない。あずさも自分で体験したら分かるよ」

「え、やだよ。なんか怖いし。……こら! 世界史を再装填しようとするな! 嫌だって言ってるでしょうが!」

「まあまあ、案ずるより撃たれるが易しだって。……ばんっ!」

「うわ危ねっ。コラ! こみみ、お前なぁ……!」

「えっ……? 嘘でしょなんで避けれたの……? 暗記パワーは本物の銃弾と同じ速度で飛ぶはずなんだけど……? 弾見えたの……?」

「え? いや見えるわけないでしょ。銃口の先から退けば当たらないってだけで」

「え……? えっ……? いや怖っ……マジで……? そんなこと出来る人いる……?」

「それはこみみの発明品を見た人の台詞だけども」

「やば……。私もうあずさに逆らわないようにするわ」

「また大袈裟な。……まぁでもそういうことなら、なんか物騒だからそのピストルはもう封印すること。いいね?」

「はーい。……でも最後に一発だけ」

「は? あっ、おまっ、自分に」

「ばんっ! …………あっ、せっ、世界史に全て捧げる……」

「めっちゃ鼻血出てるし……」

「テルマエロマエ〜、ルネッサ〜ンス」

「そよは絶対バカになってるし……」

 

 後日、こみみとそよの両名は、他の教科は全て平均点以下なのに世界史だけ100点を取ってみせた。しかしあずさは「なんか怖いから」ということで暗器「卍」の封印を撤回しなかったという。

 

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