ただそれでもコメントにも反応は遅れますが、とても励みになってます。次回はいつほど更新するか分かりませんが、引き続きよろしくお願いします。
アマラ深界の最奥に待つ閣下。又は、人修羅を創った者。又は、大魔王ルシファー。それを最後に打ち倒した人修羅は、大いなる意思の下に侵攻した筈が、全く別の世界で目を覚ました。
人修羅は勇者と呼ばれ、世界を救えと命じられた。
しかし人修羅はそれを拒否。最後の決戦前に、別世界で道草を食っている暇は無いと。
その結果、人修羅は今、その世界の人間に刃を向けられていた。
世界を救わないと言うのなら、絶大な力を持った彼を決して逃がしはしない、力でねじ伏せ、従わせるまでだと。
だがその言葉、その行動は人修羅の逆鱗に触れることになる。
逃す必要も生かす必要も無い。命知らずなのか、目が節穴なのか。相手が殺すつもりで来るのならば、それ相応の力で返すだけ。
「ここの兵士全員を、我が国を敵に回したことを後悔するがいい! 我々には力が必要なのだ! お前に拒否権は無い! 行け! 全員で掛かればこんな小僧。造作も無いわ!」
人修羅を円陣にして剣や槍を構え、囲う銀色の鎧を全身に纏った兵士は、王の命令と同時に一斉に人修羅に突撃する。
すると人修羅は腰を低く構え、両腕を胸の前でクロスする。そうすれば、腹の中心部から黄色く眩い光が溢れ出す。
周囲の光が一気に収束し、魔力を急速高める人修羅。
この間約一秒。兵士は一斉に人修羅へ武器を振りかぶり、人修羅が次に何かをしてくるなど、思っても自分らがやられるなどは微塵も考えていなかった。
そして次の瞬間。
【ゼロスビート】
溜め込んだ力を一気に解放すれば、人修羅を中心に全方向へ無数の光線が発射され、兵士は次々と無惨に身体を鎧ごと貫かれる。
どんなに重い鉄の鎧でも吹き飛び、さらに真上まで発射された光線は、光の雨となって追い討ちを掛けるように兵士の身体へ降り注ぐ。
全身を撃ち抜かれ、頭も動体もズタボロに穴が空き、その光線は床さえも貫通していき、瞬く間に兵士何十人とも言える数が、惨い姿となった。
「ひ……ひいいいぃ! な、なんなんだ貴様はぁああ!?」
辺りには血が飛び散り、人修羅は返り血で身体が赤く染まり、その一部始終を見ていた王は足が竦み、玉座から立ち上がれず顔は青ざめ、間抜けな悲鳴を上げることしか出来なくなっていた。
「やめろ! 許してくれ! 金はいくらでもやる! 今すぐ国から出て行っても良いから! 殺すな! 殺さないでくれええええ……」
顔を両手で覆い、遂には王というプライドを捨て咽び泣く。
目の前で見せられた恐ろしい死という光景に、王は涙で表情を崩し、その瞳には、人間ではなく『悪魔』そのものが映っていた。
自分も今のように身体に無数の穴を空けられて殺されるのか。という計り知れない恐怖の中には、最早余裕の感情は一切含まれておらず、玉座の上で身体を縮こませる。
人修羅はその哀れな王の姿を、目の前で見下す。
王は人修羅に殺されまいと、金やもう何もしなくても良いと叫ぶが、人修羅にはどちらもどうでも良いことだった。
今は、目の前の王の処分をどうするべきかを考えていた。
いや、考えるまでも無い。戦いの能も無く、恐怖で一瞬でプライドを捨てる男など、カリスマのカの字も無い。
またいざとなれば力でねじ伏せようとする頭は、人修羅にとってはあまりにも単純過ぎる。
ほんの一欠片の慈悲を持って、この王を仲魔することも一瞬頭を過ぎったが、なんの能もないただの人間を仲魔の一人として数えるのは無駄にも程がある。
人間の心を捨てた人修羅に慈悲という言葉は既に無いが、例え無くとも慈悲という言葉を彼に与えるなら、人修羅は目の前の王を一思いに殺す。
【アギ】
人修羅は黙って片手を王にかざす。そうすれば王の体は一瞬にして灼熱の炎に包まれる。
「ぎゃあああああ!! 熱い! 熱い! 熱いいい!」
悲痛な叫び声を上げながら、玉座の上で転げ回る王の姿を横目に、人修羅は何も思うことなく出口であろう、背後の扉へ踵を返した。
最早人修羅に王の死のことなど頭に無く、この別世界についてのことを考えていた。
もしこの世界に来たのが閣下の策略ならば、それは必要なことだから必ず引き受けただろう。
だが生憎閣下からは何も聞いていない。ただ大いなる意思という決戦に向けて、無数の従える悪魔ともに歩いて来たかと思えば、見知らぬ別世界だった。
だからまだこの世界から脱出する方法も、何をすべきかも理解してなかった。
ただ人修羅は、何も考えずにその場を去った。