人修羅が異世界転移したらこうなる   作:Leiren

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計画

 人修羅は国の王を殺してから宮殿を出て、ただ1人。王都の大通りの道端にある木のベンチに腰を掛けて考えていた。

 自分は突如勇者として召喚され、放っておけば魔王と呼ばれる何かに世界が滅ぼされる。この世界に来た初めの時は、ただ意味の無い物に首を突っ込む必要はないと、否定し、王を殺した。

 だがそれは正しかったのだろうかと。倫理的な問題ではない。正直いえばこれが閣下の仕業なのか、それとも大いなる意思の力なのかは全く定かでは無いからだ。

 

 故に、初めから国王を殺すことは、人修羅がこれから行動するための情報を根本から断ったのではと考えた。恐らくあの時に逆に承諾しておけば、別の何か情報が手に入ったのだろう。

 

 さて、ならばどうするべきか。選択肢は一つ。もし人修羅が勇者だったら、今頃どこで何をしていたのか。それをやるべきだと。だが世界を救う気など毛頭無い。今人修羅に必要なのは、"目的"だ。

 

 今や王が死んだこの国は、国ごと死んだと言っても過言ではない。死体の後始末もしていないので、騒ぎになるのは時間の問題だろう。そうふと考えた側だった。人修羅が座るベンチから宮殿方面で悲鳴が響いた。

 

「お、王が死んでる!!」

 

 たちまち宮殿の前に多くの民が集まり、誰の仕業だ、何が起きた、どうして王が……。と、囁き声と憶測が飛び交う。しかし証人になるであろう騎士はもれなく全て死亡。

 勇者召喚の儀という国中でも大切な祭儀に、騎士が欠席するなどあり得ない。いるとしたら汚職騎士くらいだろうか。しかしそんな彼らも王が死んだ事など興味を示さない。つまり、この場を鎮められる人物は一人もいなかった。

 

 人修羅は立ち上がり、これ以上この場に居座る必要場無いと考え、王の急死で話が持ちきりのおかけで、門番もいない殺風景な出口から簡単に国を出ることが出来た。

 これから何処へ向かえばいいのか。人修羅は当てもなく、土の道を道のりに歩くことにした。

 

 歩くこと数十分。ふと気づけば人修羅より向かい側から、一つの馬車が王都方面へ走って行くのを見かける。だが馬車は丁度人修羅の前に止まる。

 

「お兄さん、王都から来たのかい? 知らないのか? 今日は勇者召喚の儀だって、今頃王都はお祭り騒ぎだろうよ。こんな丁度良いタイミングで出掛けちまうなんざ勿体無さすぎるぜ」

 

 恐らく彼は行商人か何かなのだろう。心は踊り、早くにも王都に向かいたい。そんな顔をしている。人修羅は普段から世間話なんてしたことが無く、無駄な会話は極力避けてきた。だが何か行動を移さなくては何も起こらないのも事実。だから簡潔に、一言で、馬車の御者に言葉を吐く。

 

 "王は死んだ"と。

 

 分かってはいたが、行商人はだんだんと表情を青くしていく。そして痺れを切らせば人修羅に叫ぶ。

 

「はあああぁぁ!!?? どう言うことだい兄さん! まさか王様が死んだから王都に用は無いとか言うんじゃないだろうな? 嘘だろ……。この荷車には……凡そ一週間分の商品が……全て無駄になるってか?」

 

 御者は慌てふためき、冷や汗を滝のように流す。今から帰れば何日かかるのかだの、商品が腐れば大損だの。

 何やら助けて欲しそうな目を人修羅に向けるが、勿論どうでも良く。遠慮なく王都から最も近い街や村はないのかと聞く。

 

「あ……あぁ……。そ、そうだなぁ……最寄りでもここから3日はかかる……。え? それは馬車で行く場合かって? なんだい。まるで馬車より速い手段があるみてぇに」

 

 馬車なら3日。なら人修羅が走れば30分あれば十分。御者から大体の方角を聞けば、人修羅は早速御者を置いて全力疾走した。

 かつてボルテクス界を制覇した人修羅にとって普通は3日など、近すぎるくらいだ。

 

 そうして約30分。人修羅は王都とはまた違った長閑な村の入り口に到着する。ただ見るからに規模はそこそこで、決して貧しいという雰囲気は感じとれなかった。

 

「んぁ……? お、いつのまに……。旅人か? すっげー変な格好してんなぁ……」

 

 村の入り口で居眠りしていた門番が目を覚まし、人修羅に声をかける。第一印象はまぎれもない変質者だった。全身刺青で、短パン一丁の半裸男を見る目としては正しい印象だろう。

 人修羅は門番の問いに当たり障りのない返事をして、なんでも良いから情報を求め、少しの間村に居座ることを申し出た。

 

「情報……? まぁ、変な気を起こしさえしなけりゃなんでもいいよ。お前、変な見た目だけど不思議と悪い感じはしねえからな……」

 

 人修羅は簡単にいえば悪魔である。しかし非戦闘時はその中にかつての学生だった頃の面影も入っているのだろうか。仲魔交渉の時のような落ち着きつつも張り詰めた雰囲気とはまた違う。一般人が見ても怯えることがない何かが。

 

 人修羅も無駄な殺生はしない。なんて信条は無いが、目的を果たすために不必要な手段は取らないといえば正確だろう。

 門番に快諾された人修羅は、村人達に聞き耳を立てるために、また道端のベンチに腰を下ろした。

 

 それからそれなりの時間が経つ。数時間後、村に突然見張り台の警鐘が鳴り響く。何事だと顔を上げて、音の聞こえる方へ耳を傾ければ、村人の叫び声が聞こえた。

 

「襲撃ー! 魔物の襲撃だぁああ!! 数は千……いや万は居る!! なんたってこんな小さな村を襲うんだ!! 全員!! 逃げろおおぉ!! とにかく逃げるんだぁあ!!」

 

 大規模の魔物の群れが村に向かって来ているようだ。この世界にきてまともな戦闘かと思いながら、村を破壊されては情報が消えると考え、人修羅はベンチから立ち上がった。

 

 

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