俺は今、夜の海を見ている。月明かりに照らされて波しぶきがキレイだ。千葉の海最高…。
すべて俺が悪かったんだろうな。文化祭に修学旅行…。
文化祭の件に、修学旅行でのことが重なり俺の悪評はうなぎ登り。ん?評価が下がってるから下りか。まあどっちでもいいんだが。
月夜に海を見ていると吸い込まれそうになる…。
…って、危ねぇ。入水○殺するところだった。もっとメンタル強いと思っていたけど、思いの外すり減ってるのかもな。でも…。
「あんな奴らの為に死んでたまるか」
「よかった。踏みとどまったんだね」
急に声をかけられ、驚きながら声のした方を向くと、金髪に紅い瞳の綺麗な女性が居た。
「今にも海に入りそうな雰囲気だったか心配したよ」
その綺麗な女性は言った。
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、すいません」
まるで、童話やラノベの表紙のお姫様のような彼女に見惚れていた。
「よかった。たまたま来ただけなのに、自○を見届けるなんてことにならなくて」
「ええ、まあ。貴女はこんな夜中にどうしたんですか?」
「私?私は散歩のついでに月光浴。最近、こっちに引っ越ししてきたばかりなんだ」
月を見ながら彼女はそう答えた。
「ねぇ、何があったの?」
話すかどうか考えていると
「話すだけでも、軽くなることもあるから言ってみて。貴方の周りの人のことはしらないけど」
何も知らない彼女なら話をしてもいいと思い話をした。
中学時代の告白からのイジメ。高校入学式当日の事故。2年になってからの奉仕部での活動。特に文化祭や修学旅行での話は細かくした。
確かに、話をすると少し楽になった気がした。
ふわりと良い香りがしたと思うと彼女に抱きしめられた。
「な、なにを…」
「貴方はよくがんばったよ。そんな自己犠牲までして」
「自己犠牲なんて、そんなモンじゃない…」
自己犠牲なんかじゃない。誰があんな奴らの為に。
「じゃあ、誰かを守ったんだね」
守る?誰を?…あの二人の笑顔が目に浮かぶ。
「貴方は偉いよ、よくやったよ。私は貴方を認めて褒めてあげるよ」
俺を…認めてくれる…。俺がやったロクでもないことを…褒めてくれる。
涙が溢れて止まらなかった。
しばらく、彼女の胸で泣いた。泣いてしまった。
「すいません、泣いてしまって」
「ううん、いいんだよ」
そう言って頭を撫でてくれた。
すると、後ろから声がした。
「お、お前…。お嬢様に何をしている!!」
黒髪でショートの女性が憤怒の表情で立っていた。
「お嬢様から離れろ!」
金髪の女性から俺を引き剥がそうと、黒髪の女性が割って入ろうとしたが、金髪の女性が止めた。
「千夜ちゃん待って」
「ですが…」
「もう少しだけ…」
さすがにマズイと思い、金髪の女性から離れた。
「も、もう大丈夫ですから」
「そう?」
黒髪の女性は息を飲んだ。きっと、俺の涙の跡が見えたからだろう。
少し冷静になって、恥ずかしくなってきた。…この場を立ち去ろう。
「貴方も迎えが来たようですし、俺は帰ります」
「え?帰るの?」
「もう大丈夫ですから」
俺は足早にその場を離れようと歩きだした。
「ちとせ。私、黒埼ちとせ。ほら、千夜ちゃんも」
「白雪千夜です。こちらの名前を言ったんですから、お前も名乗りなさい」
「比企谷八幡だ」
もう会うことも無いだろう。そう思いながら、海辺を後にした。
彼女たちに会ったことで、もう少し生きていけそうだ。