少しだけ軽くなった心で学校に向かう。
教室に入り、イヤホンを装着して授業が始まるまで外界と自分の世界を切り離す。戸塚や川崎が心配して話しかけてくれていたが、二人にまで悪評が及ぶのは心苦しいので、距離をおいている。時々、心配そうにこちらを見ている。すまん、戸塚。
…。なんか教室出て行くヤツが多いな。移動教室でもないし関係ねぇな。
昼休みになり、ベストプレイスへ向かう。いつもより廊下が騒がしい気がしたが、俺には関係ない。
ベストプレイスでパンを食べ終え、昨日の夜のことを思い出す。
自分のことを吐露して泣くなんてな。しかも見ず知らずの女性の胸で…。思い出したら悶たくなってきた。
「…でも、認めてもらえるってのは嬉しいモンなんだな」
「そりゃそうだよ」
独り言に返事があるとは思わなかったので、声のする方を向くと、セーラー服を着た黒埼ちとせが立っていた。
「ここは風が気持ちいいね。月光浴の次ぐらいにはいいかな」
呆然と黒埼さんの方を見ていると、彼女は続けた。
「私、今日からこの学校に転校してきたんだ。よろしくね、比企谷くん」
なるほど。学校がざわついていてのは、黒埼さんが転校してきたからか。
「私だけじゃなくて、千夜ちゃんもいるよ」
「そうなんですね。でも、あんまり俺と一緒に居るところを見られると…」
「私にも被害が及ぶ?」
「はい」
「関係ないよ。私、3年だからすぐ卒業だし」
3年でこの時期に転校?
「ちなみに千夜ちゃんは2年だから」
「なんで、こんな時期に転校を?」
「秘密。女の子には秘密があった方が魅力的だって、奏ちゃんも言ってたしね」
奏ちゃん?誰だ?
そんなことを考えているとチャイムが鳴った。
「おっと、チャイムだ。またね比企谷くん♪」
小走りで黒埼さんは去っていった。
俺も教室に戻るか。
【またね】か…。向こうは3年で、あと少しで自由登校になるし、会う機会はほとんどないだろう。
午後の授業も終わり、放課後になった。
心が軽くなったとはいえ、あの雰囲気の奉仕部は行きづらい。それでも、足を向けてしまう社畜の血が恨めしい。
そんなことを考えていると、校内放送で呼び出された。何も心当たりはないんだがなぁ…。由比ヶ浜に一応伝えるか。
「由比ヶ浜、聞いての通りだ。部活には遅れる」
「あ、うん、わかった」
こんな短い会話もぎこちない。それに、由比ヶ浜に一言告げただけで、周りからヒソヒソと俺を蔑む会話が聞こえる。畜生、お前らに何がわかるんだよ。
その場を逃げるように職員室に向かう。
職員室に入り、俺を呼び出した平塚先生のもとへ向かうと、見たことある顔の美少女が二人…。
「やっほ~、比企谷くん」
「やはり、お前か…」
不思議そうな顔で平塚先生が聞いてくる。
「知り合い…なのかね?」
「まぁ、顔を知ってる程度ですけど」
「彼女たちからの指名でな。校内を案内してほしい」
正直、面倒臭い。それに…。
「何故、お前なんだ…」
白雪さん、睨んでくるし…。
「まあまあ千夜ちゃん。袖振り合うも多生の縁でしょ」
「はぁ、お嬢様がそうおっしゃるのなら…」
「俺以外にも適任者がいるでしょ?」
俺も面倒事は嫌なので食い下がる。
「黒埼が言ったように、何かの縁だと思いたまえ」
「…わかりました」
渋々、この二人を案内することになった。
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