「なあ、僕ちゃん」
「僕ちゃんと呼ぶな。なんだ?」
「このお嬢様は、中二病なのか?」
突然、真顔で吸血鬼の末裔とか言うとか…。
「お前、お嬢様が嘘を言っていると?」
「嘘というか、自分の中の設定というか…」
まぁ、剣豪将軍とか?
「八幡くん、嘘じゃないよ。あくまで伝承だけどね。私はルーマニアとのクォーターなの。金髪と瞳の色が証拠」
ずいっと、顔を近づけてくる。
「ち、近いです。わ、わかりましたから」
ほら、僕ちゃんが怖い顔になってる。
「月光浴が好きなのと、血が足りなく感じるのは、そのせいかもね」
ふむ。それで、あんな時間に海岸に居たのか。
「じゃあ、血を吸ったりとか?」
「心配しないで、それはしないから」
「お前の血なんて、誰が吸うか」
僕ちゃん、一言余計です。じゃあ、千夜の血なら吸うんですかね?
…ヤダ、想像したらなんかエロい。
「お前、卑猥なことを考えただろ」
だから、なんでわかるんだよ。
「考えてねぇよ」
そんなやりとりを遮るように、ちとせさんは言った。
「ねぇ、早く行こうよ。なんだっけ?え〜と、ご奉仕部?」
みるみる千夜の顔が般若のようになっていく。
「お前、お嬢様をそんないかがわしいところへ連れて行くつもりか」
「違う違う、奉仕部だ。『ご』はいらん」
「変わらない!!お前ぇ〜!!」
「誤解だ!奉仕部っていうのは、お悩み相談の部活だ」
「あははっ。千夜ちゃん、いかがわしいって、何を考えてたの?」
「そ、それは…」
千夜が真っ赤になって、うつむいてしまった。いかがわしい部活なんて、エロゲーでしかない。
「仕方ない、案内しますよ。実際に見れば千夜の疑いも晴れるだろ」
いつもとは違うルートで部室に向かう。
部室の前に立ちノックをする。雪ノ下の返事を聞いて中に入る。
「うっす」
「あら、比企谷君。今日は休みと聞いていたのだけど」
「そうそう。ヒッキー、転校生の案内するって」
「ああ、その転校生を連れてきた」
そう言って、二人を招き入れた。
「失礼しま〜す」
「失礼します」
奉仕部•先鋒は雪ノ下。
「はじめまして…。白雪さんは少し挨拶したわね。奉仕部•部長の雪ノ下雪乃です」
次鋒•由比ヶ浜。
「は、はじめまして。ゆ、由比ヶ浜結衣です」
「由比ヶ浜、何を緊張してんだ?いつものアホっぽい挨拶はどうした?」
「アホとか言うなし!ヒッキー、知らないの?アイドルだよ、二人とも」
ほう、それは初耳だ。
「『元』ね。アイドル辞めたんだ。私も千夜ちゃんも」
「えっ?そうだったの。ごめんなさい」
明らかにテンションが変わる由比ヶ浜。わかりやすいな。
「気にしないで。そんなに売れてなかったし、未練もないから」
「せっかく来て頂いたのだし、お茶にしましょう。紅茶はいかが?」
ナイス、雪ノ下。俺は椅子でも準備しますか。
「はい、どうぞ、お嬢様」
「ありがとう♪」
「お前、私の仕事をとるな」
なんでもお嬢様のことになると、なんでこうなるんですかね。
「とってねぇよ。ほれ、千夜お嬢様も座りな」
「お、お前ぇぇ!!」
顔赤くして怒っていらっしゃる。
「あはは、千夜ちゃん照れてる〜」
照れてるの?これ?
…由比ヶ浜が微妙な顔でこっちを見てるんですけど、なんですか?
「なんだよ、由比ヶ浜」
「ヒッキー、黒埼さんと白雪さんを名前で呼んでるなぁって」
「ん?二人にそう呼んでくれって言われたから」
「わ、私のことも名前…」
何を言ってるのか小声でよく聞こえない。
「なんだ?由比ヶ浜」
「なんでもない!バカ!キモイ!」
「キモイ関係ねぇだろ…」
「比企谷君が気持ち悪いのは当然として…」
「当然なのかよ…」
「何故、お二人は比企谷君を知っているのかしら?」
「昨日、偶々会ったんだよ。うちの学校に転校してくるなんて知らなかった」
「そうそう、八幡くんとは夜の海岸で二人っきりで過ごした仲なんだよ」
えっ?何を言ってるのこの人!嘘じゃないけどさ、ほら…。
「比企谷君…」
「ヒッキー…」
「お前…」
ほら、在らぬ誤解が!
…千夜は事情知ってるだろ。