五等分の花嫁 四葉のいなくなった世界で生きていく 作:ぷー太郎
「フータローくん、ねぇフータロくん起きて…!」
「はっ…! 四葉か!?」
風太郎は目を覚ました。目の前には心配そうに風太郎を見つめる一花の顔があった。それに見慣れない景色が広がっていた。どうやらどこかの古臭い建物の中のようだ。
「なんだ一花か」
「なんだとはなんだ。お姉さん傷付いちゃうなー」
一花は苦笑いをしながらそう答えた。風太郎はまずいと思った。
「すまない…」
それから互いに口を閉じてしまった。とても重たくて押しつぶれそうな空気が流れる。
そして一花が口を開く。
「ね…ねぇフータローくん。らいはちゃんに聞いたよ。ずっと家の中に引きこもりっぱなしなんだってね」
「………」
「やっぱり四葉のことで思い悩んで学校に来なくなったんだよね」
「………」
「大丈夫なの? 具合とか悪くなってない? フータローくんが辛いなら私達が力になるから」
風太郎は重い口を開く。
「わるい、どうしてもお前らには会わせる顔がなくてなぁ…。もう俺のことは忘れてくれ」
「フータローくん…。それは無理だよ…。フータローくんのそんな姿を見てたらとてもじゃないけど、ほっておくことなんて出来ないよ」
「………」
重苦しい空気が漂う。
「四葉が交通事故にあったその夜は、フータローくんと同じように私達も姉妹みんなして泣いちゃったっけな」
「………」
「私までも泣いちゃうなんてお姉ちゃんとして失格だよね」
「お前は立派に長女やってるよ…。お前が長女として失格だなんてあるもんかよ…」
「フータローくん、もしかしたら四葉が死んだのは私のせいかもしれないの。私がもっとお姉ちゃんとして四葉を見張ってあげていれば…」
「それは違う…! 四葉をを死なせたのは俺だ! 俺は四葉に助けられちまった…。本当は俺が死ぬべきだったんだ…」
「やめてよフータローくん…。そんなこと言わないでよ…。お願いだから…」
辺りが静寂に包まれるなかで、一花のすすり泣く声だけが聞こえる。
少し経って落ち着いたところで、今置かれている状況を冷静に分析し始める。
「それにしてもここは一体どこなんだ? なんか気味悪いよな。そもそもここは夢なのか?」
夢にしては妙にリアルな感じがしていた。それに目の前の一花を見て、とても夢とは思えない風太郎だった。
「フータローくん、とりあえずはこの建物から出る方法を探し出そうよ」
「そうだな」
一花と風太郎は古い建物の中を歩き出す。
「ねぇ、フータローくん」
「なんだ?」
「もしここから出られたら、また私達の家庭教師をやってくれる?」
「そのことなんだが…」
プルプルプルプル!と突然一花の携帯に電話がかかる。
「こんな時に誰よ。もしもし」
「私よ、二乃よ。一花、あんた今どこにいるのよ」
「二乃!、私は今フータローくんと一緒にいるよ」
「えっ、フーくんと!? ちょっとどういうことよ」
「あはは、私にも分からないよ」
「ところでそんな場合じゃないわよ! 私、起きたら気味の悪い建物の中に移動してたのよ! あんた達は今どこにいるの!」
風太郎は一花の携帯から聞こえる二乃の声を聞いていて、相当怖い思いをしているかもしれないと思った。
そして一花に携帯を貸してもらって風太郎が変わった。
「俺だ二乃、無事か!」
「フーくん! 分からないわ。とにかく早く助けて!」
「待ってろすぐ迎えに行ってやる」
そんな時だった。携帯から変な声が聞こえるようになった。まるで電話を妨害されているみたいな感じだ。
なんというかとてもこの世の者とは思えない声がした。そして二乃との電話は切れた。というより怖いから切った。
「フータローくん、今のなに!?」
「分からない。ただ、なんかまずい感じがする」
「二乃は大丈夫なの!?」
「それも分からない…。ただ、二乃もおそらくは俺達と同じ建物の中にいる」
「じゃあ早く助けないと!」
「当たり前だ! 俺は家庭教師としてキッチリ勉強教えてやらないといけねぇ! だからお前らを絶対に全員助けて勉強させてやる!」
「フータローくん! やっぱりフータローくんは家庭教師が似合うよ」
「そ、そうか…」
風太郎は少しずついつもの調子を取り戻していった。
そんな時だった。「コツン…コツン…」と何者かが風太郎と一花の元へ近付いてくるのだった。