五等分の花嫁 四葉のいなくなった世界で生きていく 作:ぷー太郎
「ねぇフータローくん、あの人誰だろう…。こっちに近づいてくるみたいだけど…」
「さあな、でも俺には普通の人に見えるけど…」
「私もだよ…」
どこかの屋敷で雇われている執事のような見た目をした男がこちらへと歩いてくる。
「上杉風太郎様、中野一花様、お待ちしておりました」
「一体あんたは誰なんだ?」
「それはお答えできません。そんなことよりも四葉様がお待ちしているので、一緒について来てもらえないですか?」
「四葉だと…。はぁはぁ…」
風太郎は激しく動揺している。
「フータローくん、しっかりして! 四葉はもう…」
「そ、そうだな…。この男は一体何を言っているんだ。もう四葉はとっくに死んでいるんだ!」
「え、付いてこないのですか? 四葉様がお待ちしておられるのにですよ? あなたはまた四葉様に辛い思いをさせるのですか?」
「ぐっ…」
風太郎は心のどこかで死んだはずの四葉が生きていてほしいと願っていた。そう思ったら、この怪しい男に付いて行きたくなるのは当然なことだ。
「フータローくん! 何か嫌な予感がするよ!」
「四葉…。待ってろ!」
「クックックッ…」
「フータローくん! 待ってよ!」
風太郎は四葉に生きていて欲しいという希望があったので、確かめるべく付いていくことにした。
そして執事のような怪しい男は不気味に笑う。
「それでは早速ついてきてください。こちらですよ」
「あ、ああ…」
「フータローくん、これ絶対おかしいよ。だって四葉はもうとっくに…」
「四葉、待ってろ四葉…。四葉…」
「フータローくん…!?」
一花から見て、風太郎は明らかに何かに取り憑かれたかのようになっていた。まるであの男に洗脳されたかのようだ。
そして執事の男に付いて行っていると、どんどんと禍々しいオーラのようなものを感じる。
「フータローくん、お願いだから戻ってきて…! これ絶対おかしいよ…!」
「四葉ぁ…」
一花は風太郎に何度も呼びかける。だが風太郎はもう一花の声が届かなくなってしまったのか、執事のような男にそれでも付いていく。
明らかに周りの景色がおかしい。それに先ほどいた場所と比べてさらに空気が重苦しいのだ。
「もうすぐ到着でございますよ。クックックッ…」
「四葉…。もうすぐ会えるから待ってろ!」
「フータローくん、お願いだから戻ってきてよ…! 私には、私達にはフータローくんが必要だから…!」
一花は風太郎の手を握って強引に引っ張る。すると握った手と手から光が溢れた。風太郎は正気に戻った。
「俺は、一体何を…!?」
「風太郎くん、正気に戻ったんだね!」
その瞬間に執事のような男はぶつぶつと何かを喋り始めた。
「ああ、ああああ、ああああああ、あともう少しだったのにいいいいいいいいいいい! 扉にさえ…扉のところにさえ辿り着いていれば引き込めたのにいいいいいい!」
「フータローくん! とにかく逃げようよ!」
「あ、ああ!」
フータローと一花は来た道を走って引き返す。
「ここまで来て逃すと思っているのかぁぁぁ!!!!! 喰わせろおおおおお!!!!!」
「うわぁ…!」
「一花、絶対に振り向くなよ…!」
「え!?」
「そのまま前だけ向いて走れぇ…!」
「うん!」
執事の姿をしていた怪しい男は化け物のような姿に変身していた。肌は土色になり、身体の関節も異様なほどにあちこちに曲げながら走ってくる。
風太郎はその姿を見てゾッとした。正直おしっこをチビりそうな程にビビっていた。だからこそ風太郎は一花には振り向かずに走れと行った。
「あれは見ただけで分かる。捕まったら絶対にヤバイということが…」と風太郎は思った。
化け物はジリジリと確実に風太郎と一花との距離を縮めてきていた。
「フータローくん!」
「いいか、絶対に振り向くなよ! フリじゃないからな! とにかく走れぇ!」
「殺してやるううううう!!!!!」
2人はとにかく走る。息を切らしてひたすら走る。当然化け物は一花と風太郎を目掛けてものすごい形相で追いかけてくる。
そして、一花の体力の限界が風太郎よりも先に迫ってきていたのだった…。