五等分の花嫁 四葉のいなくなった世界で生きていく 作:ぷー太郎
「はぁはぁ…」
「おい一花! しっかりしろ!」
「風太郎くん…。私、もう限界かも…」
「殺してやるううううう!!!!! まずは1人目だあああああ!!!!!」
風太郎よりも前を走っていた一花がどんどん風太郎の後ろへと後退していく。
「一花ぁ!」
「フータローくん…」
一花はもう体力が限界に来ていた。このままだと確実に化け物に喰われる。
「俺はこれ以上大切な人を失うのはごめんだ…。もうこれ以上何も奪わないでくれぇ!」
風太郎は必死に手を伸ばす。一花に手が届く。そして一花の手を強く握った。この時、今まで一緒に過ごしてきた日々の記憶が手を通じて互いに流れ込むのを感じた。
そして風太郎は強引に一花を引っ張って走る。二人は息を切らして必死に走る。その時だった。
「おい…。次から次になんなんだよぉ…! はぁはぁ…」
半透明でウェディングドレスのようなものをまとった女の人が目の前に現れた。もはや絶体絶命のピンチだった。
「もはやこれまでか…」
「フータローくん、まだ諦めるのは早いよ」
半透明でウェディングドレスのようなものをまとった女の人は風太郎と一花を先導するかのように前へと移動し始めた。
「一体どうなってるんだ…!?」
「フータローくん、この人は何か信じられるような気がする。それに懐かしい気持ちがするの」
半透明のウェディングドレスの女の人は空中をスーッと移動する。そして風太郎と一花はその半透明の女の人の後を死に物狂いで走ってついていく。
「殺してやるううううう!」
当然後ろからは化け物がまだ付いてくる。しかも、気が付くと追ってくる化け物の数が増えていた。
どうやらこの建物には他にもたくさんの化け物がいたようだ。
「もう今はとにかく前のやつを信じて付いていくしかねぇ! 一花絶対に手を離すなよ! いや、俺は死んでもお前の手を離してやらないぞ!」
「フータローくん!」
息を切らしながらも必死に走っていると、この建物の2階への階段が見えてきた。階段のスペースが狭く、人が一人通れるくらいの幅だった。
そして階段が見えたと同時に、半透明のウェディングドレスの女は突然消えた。
「クソッ!どうすれば…」
だが、もう考える時間もぜんぜんない。早く決断しなければならなかった。もうここまで来たらやることはただ1つだった。
階段を上ること、それだけだった。
「うおおおおおおおお! 一花ぁ! ここから生きて帰って絶対に勉強教えてやるぅ!」
風太郎はもうこれ以上何も失いたくないという思いで一花の手を強く握って、ひたすら階段を駆け上がった。
「頑張れ! あともう少しだ!」
「うん!」
そして2人は無事に狭いスペースの階段を上りきった。階段を上り切ると、その瞬間に「バタンッ!」という音がした。
どうやらシャッターのような物が階段の通り道を塞ぐように下りたようだ。
「はぁはぁ…」
「はぁはぁ…」
2人は地面に倒れて、ひたすらに息を吸って吐く。
「俺達、何とか生きてるぞ…。さすがにもうダメかと思ったがな…。はぁはぁ…」
「そうだね…。私はもう一生分の走りをしたよ…。はぁはぁ…」
3分間、2人して地面に倒れて、ただひたすら空気を求めて呼吸をしていた。そして時間が経って呼吸も整ってきた。
「プハハハハハ!」
「ど、どうした一花…。まさか呪われたのか…?」
「いやー、久しぶりに青春っぽいことしたなってね」
「そ、そうだな。って、あんな化け物に追われる青春、俺はごめんだぞ」
「それもそうだね」
一花は笑った時に出た涙を拭う。
「まあとりあえず、今俺達が生きていられることを喜ぼう!」
「そうだね!」
走った時に出ていた汗も引いてきて、落ち着きも取り戻していった。
「それにしてもだ、俺たちをいきなり助けた花嫁姿のやつは誰なんだ? 助けてくれったってことは少なくとも害はなさそうだな」
「そうみたいだね。本当はあの人にお礼を言おうと思ってたのになぁ」
「一体誰だったんだろうな?」
「分からないよ。けどキレイだった。それに懐かしい感じがしたなぁ」
一花の顔が一瞬だけ寂しげに映った。