五等分の花嫁 四葉のいなくなった世界で生きていく 作:ぷー太郎
「フータローくん、結構元気出てきたんじゃない?」
「ああ、そうかもな。俺、こんなに笑ったの久しぶりなような気がする」
風太郎と一花は談笑しながら歩いていた。そんな時だった。
「あんたたち、遅いわよ。私ずっと待ってたんだから…」
そこには隅っこで体育座りをしているニ乃がいた。
「ニ乃! 無事に生きてて良かったよ!」
「当たり前でしょ。私はこんなところでくたばるタマじゃないわよ」
ニ乃は強気に見せているが明らかに体がブルブルと震えていた。こんなところで一人でじっと待っていて、相当心細かったんだろうなと思った。
「ニ乃、一緒に行こう。そしてこの建物から出るぞ!」
「当たり前よ。そんなことよりフーくんこそ大丈夫なの? ずっと引きこもってるって聞いてたけど…」
「いや、その…。心配かけて済まなかった…!」
「ほ、本当よ! こっちは心が張り裂けそうになったのよ! 四葉の次にフーくんまでいなくなったらと思ったら…」
二乃は泣きそうになっていた。
「はい、ニ乃もフータローくんと次に行くよぉ」
「お、おう」
「そ、そうね」
二乃は少しこぼれ出た涙を拭いて歩き始める。
これで俺達は3人になった。後、残るのは三玖と五月と四…。いや、駄目だ。淡い期待は捨てるんだ。
「と、とりあえず三玖は3階にいる可能性がある。五月も4階か5階にはいるだろう」
「あの子達、きっと私たちが来るのを待ってるわ。早く探し出してあげましょ!」
「そうだな」
「それにしてもこの建物って、本当に薄気味悪いわね…。とてもこの世のものとは思えないわ」
「キャー! ワァー!」と遠くから聞こえる。
「さっきから時々変な叫び声が聞こえるのよね。だから、私は1歩もあの場所から動けなかったのよ…」
二乃は明らかに震えていた。それを見た風太郎は、とっさに二乃の手を握る。
「大丈夫だ。俺たちは絶対に生きて帰るんだ」
「そうだよ二乃。またフータローくんに勉強を教えてもらおうよ!」
そして一花は二乃のもう片方の手を握った。3人は手を握ることによって、とても温かい気持ちになった。
そこに絆を感じたのだ。
「そうね、私ならもう大丈夫だわ! 何も怖くないんだから!」
二乃はいつもの元気を取り戻した。その瞬間にまたさっきの半透明のウェディングドレスの女の人が現れた。
「な、なんなんのよ…。幽霊…?」
二乃は恐怖でびっくりして腰を抜かしそうになる。
「二乃、大丈夫だ。むしろ俺達の助かる可能性が上がったかもしれないぞ」
「そうだよ、それに何だか懐かしい気持ちにならない?」
「た、たしかに言われてみたら懐かしい気持ちになるかも…。それに、怖くないわ!」
「よし、付いて行くぞ!」
風太郎達は半透明の女の人に付いていく。先ほどと違って移動するスピードがあんまり速くなかった。
まるで離れないようにちゃんと付いてきて言わんばかりだった。
「よしみんな、固まってゆっくり歩くぞ」
「うん」
「分かったわ」
風太郎達の三人は歩いて半透明のウェディングドレスの女の人の後をついていく。
「キャー! ワァー! ガァー!」
このフロアでは変な叫び声のようなものが響き渡る。それにどんどん声が近づいていることに気付く。
二乃はまた体が震える。捕まったら終わりなのではという恐怖が襲ってきた。風太郎と一花はニ乃の震えに気付く。
「大丈夫だ、お前はもう一人じゃないぞ」
「そうよね」
二乃は少し微笑んだ。その横で一花も微笑む。そして危険という危険もなく、無事に3階への階段に着いた。
当然、半透明のウェディングドレスの女も役目を終えたかのようにまた消えた。
「よし、それじゃあ3階に行くぞ」
「うん」
「早く行きましょ」
3人で階段を1歩ずつ踏みしめて難なく3階へ到達した。その瞬間に1階の時と同様にシャッターがガタンと閉まる。
その時、風太郎はゾッとする考えをした。
「このシャッターってさぁ、階段を誰か上がったら閉まるようになってるよな」
「見た感じそうみたいだけど、何が言いたいのよ」
「いや、そうなったら置いてかれたやつは一生その階に閉じ込められちまうんだなって」
「…………。」
「今のところは一花もニ乃も誰も欠けることなく一緒に上がって来れて良かったなって思ってな…。ハハハ…」
この事実に気付いて背筋がゾクッとするような感じだった。
「大丈夫だよ、フータローくんは私達を置いていくような人間じゃないもん。当然私達もフータローくんを置いてなんていかないからね」
「そ、そうよ! フーくんがいないと分かったら、私はトイレの中へだって探しに行くわよ!」
「そ、そうだよな! よし、一花!二乃!次へ行こうぜ!」
俺、お前達の家庭教師になれて本当に良かった。と、この瞬間に思っていた。3人の結束が強まった瞬間だった。
そして風太郎はもう以上は何も失いたくないと同時に思った。