五等分の花嫁 四葉のいなくなった世界で生きていく   作:ぷー太郎

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第8話 花嫁姿の四葉

「お前ら、今までありがとな。今までの家庭教師人生楽しかったぜ…」

「ちょっと上杉君!」

「お前たちはここを離れて早く5階に行ってくれ…」

「フータローくん、私達がフータローくんのことを放っておかないってこと、知ってるよね?」

「そうだよフータロー」

 みんなが風太郎を何とか説得しようとする。

 

「これはな、俺がケジメをつけないといけないことなんだよ…」

 情けないことに俺は体が震えていた。四葉に一体どんな顔して会えばいいのか分からないという後ろめたさがあったからだろうか。

 

「あんた分かってるの? 四葉はもう死んだのよ! 扉の向こうのやつが四葉の訳がないじゃない!」

「ああ、分かってる。だから俺1人だけが残るんだ」

「何バカなことを言ってるのよ! フーくんも私達と一緒に5階に行くのよ!」

「ダメだ! 俺はここに残るんだ」

 風太郎は幾度となく説得されても動くことはない。

 

「フータローくんしっかりしてよ、二乃言う通り四葉はもういないんだよ。そんなこと分かってるんでしょ!?」

「分かってる。そんなことは俺が一番よく分かってるだって…。俺が四葉を殺しちまったようなもんだからな。俺は事故の瞬間をしっかり目に焼き付いてるよ。」

「だったら…」

「それでもいいからもう一度四葉に合わせてくれ…。俺、あいつに謝らなきゃいけないことが…。いや違う、俺は言いたいんだよ。俺にしてくれたことに対してのお礼を言いたいんだよ。もう嘘でも何でも良いからさぁ…」

 風太郎は扉に両手をつきながら胸の内を明かした。

 

「上杉さん会いたいよ…」

 扉の向こうからはまた四葉のすすり泣く声が聞こえてくる。

 

「こんなことを言われて残るなって方が俺には無理なんだよ…。頼む、俺をここに置いていってくれ…。」

「上杉君、いい加減にしてください! 私達4人にはあなたが必要なんです! もうあなたは1人じゃないってことを自覚してください!」

「五月、人生最後のお願いだ…。俺はな、もしも本当に四葉が生きているならって期待しちまうんだよ…」

「上杉君…」

 もう怖い思いをこの建物の中で何度もしてきたから分かっているのだ。正直この扉は危険な可能性の方が高いことぐらい。

 みんなを死なせたくないから一人でこの扉を開けるのだ。

 

「あなたがそんなおバカな人だとは思いませんでした。みんな、行きましょう」

「で、でも…」

 みんなは名残惜しそうに風太郎を見つめながら5階へと向かっていく。

 

「あぁ…」

 最後までこんなダメダメな家庭教師でごめんな…。五月、俺のわがままを許してくれてありがとな。

 キツイことを言っているが、それは五月なりの優しさなんだよな。そして家庭教師の仕事を放り投げることになってすまない。

 

「上杉さん、早く会いたいよ…」

「ああ、今開けてやるからな。四葉」

 俺に会いたくて泣いている四葉の声をもうこれ以上聞いていられないんだよ。だが、危険ということも分かっているので恐怖で手が震える。

 風太郎は一旦一呼吸を置いて扉を開けることにした。

 

「よし、次こそ本当に開けるぞ」

 風太郎が意を決してドア開けようとしたその時だった。

 

「本当に上杉くんはしょうがない人ですね。あなたが意外におバカってことは前から知っていましたよ」

 聞き慣れた声が聞こえた。そこには五月達がいた。

 

「お前ら、なんで戻ってきた。俺は今からとても危険なことをしようとしているんだぞ! このまま行けばお前らも元の世界にも戻れないかもしれないんだぞ! お前らは下がってろ!」

「上杉くんは何にも分かっていないんですね」

「そうだよ、フータローくん!」

「フーくんの分からず屋!」

「フータローのバカ!」

「お前ら…」

 風太郎は地味に傷付く。

 

「あなたのいない世界に戻ったって意味がないんです。私たち姉妹にはあなたが必要なんです」

「フータローくんは、もう私達にとってかけがえのない存在なんだよ」

「そうよ! フーくんはもう家族みたいなものだわ!」

「フータロー、お願いだから私達の前からいなくならないで!」

 風太郎は心が揺れ動く。

 

「なぁ、俺どうすれば良いのか分からなくなったまったよ。もっとお前らと生きていたいって思いが強くなっちまってる」

 風太郎は扉に両手を付いたままでそう言った。

 

「上杉くん、私たちはあなたと一緒なら何も怖くなんてありませんよ」

 扉に手を付いた風太郎の手に五月の手が添えられた。手を通してホワホワとした優しい気持ちが流れ込んでくる。

 

「そうだよフータローくん、私たちが一緒ならどんな困難だって乗り越えていけるよ」

「そうよ、みんなで一緒に進級出来たみたいに不可能なんてないわ!」

「フータロー、私はフータローと一緒に死ぬ覚悟は出来てるから」

 一花、二乃、三玖も続いて風太郎の手に手を添えた。

 

「お前ら、ありがとな。でも三玖だけちょっと怖いな」

 風太郎がそう言うと、三玖はほっぺが膨れて少し不機嫌になる。

 

「でも三玖の言う通りだ。今からやろうとしていることはそういうことだ。それでも良いのか?」

 風太郎は「危険だけどいいのか?」ということを言った。

 

「そうはならないですよ。だって私たちは今から四葉に会うだけなんですからね!」

 五月は笑ってそう返した。

 

「それもそうだな。ふぅ…。よし、開けるぞ!」

 そして風太郎は両手を押して思いっきり扉を開けた。その瞬間に風太郎の左右の手の甲には一花、ニ乃、三玖、五月の手がぎゅっと重なっていた。

 

「私たちはずっと一緒ですからね」

 そして扉は開かれた。そこには…。

 

「引っ掛かったなお前ら! 食ってやる! ぐげぇっ…!?」

 扉を開けた瞬間に禍々しいオーラがどこかへと消し飛んだ。そして、そこには結婚式場にいる花嫁姿の未来の四葉がいた。

 風太郎達は驚きを隠せなかった。

 

「ほ、本当に四葉なのか…!?」

「風太郎くん…!? それにみんなも…!?」

 花嫁姿の四葉は高校生の頃の風太郎達が目の前に現れて驚いていた。

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