ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

117 / 223
 こちらの方を書きたい気分だったので、書きました。
 またもや、やりたい展開ありきで書いてますが。


第百四話「チャン・クラルス商会 後編」

 老婆を家まで送り届け、セバスは帰路に就いた。フューレンの都市内でも高級店が並ぶ様な一等地にその店はあった。真新しい看板には『チャン・クラルス商会』と書かれており、店舗も周りの老舗の商店に見劣りしないくらいに大きい。

 セバスが扉を開けると、様々な品が置かれた広い店内が迎えた。衣服、調度品、ポーション類などと商品の種類はかなり豊富だ。しかし、雑貨屋の様な庶民的なイメージは無く、綺麗に整理整頓された店内は地球で例えるなら総合デパートを連想させた。奥へと進むと、ピカピカに磨き上げられたカウンターから複数人の声が聞こえてきた。

 

「———この染め物は本当に綺麗ね。王都でもこんな物は手に入らないわ」

「そうでしょうとも。妾達には独自のルートがあります故」

「ねえ、あなた。これを買って下さらない?」

「ふぅむ、どれ値段は……おお、結構安いな」

 

 富裕層らしき夫婦の接客をしているのは、黒い艶やかな着物を着こなす黒髪の美女———ティオ・クラルスだった。彼女は上品な笑顔を浮かべ、商品を売り込む。

 

「奥様にぴったりな品と存じ上げまする。ご注文を頂ければ、当店の一流の針子達が奥様のドレスを数日以内にお届けしましょう」

 

 ティオが指し示す先にはガラス張りで来客からもよく見える工房スペースがあり、その一角ではティオと同じ着物の美女達が洋服を縫ったり、生地の裁断などを行っていた。彼女達の手付きに澱みはなく、確かな技術を感じさせていた。

 

「よし、この値段なら三着程買おう」

「まあ、よろしいの? あなた」

「構わんとも、もうすぐ結婚記念日なのだ。ああ、そういえば娘の誕生日も近かったな。何か良い品はあるかね?」

「それでしたら………む?」

 

 ティオがセバスに気付く。そして夫婦の接客を別の者に任せた。

 

「申し訳ありませぬ、ここからはこちらの者が応対します故。……これ、妾の代わりに頼んだぞよ」

「はいっ! お任せ下さい、お嬢………ではなく店長!」

 

 着物を着た別の女性が夫婦に接客するのを見た後、ティオはセバスに向かって深々とお辞儀した。

 

「お帰りなさいませ、旦那様。ユンケル殿との商談は如何なりましたかや?」

「ええ、とても綺麗に纏まりました。それと頭を下げなくて結構ですよ。この商店では貴女が店長なのですから」

「何を申しますやら。我が“チャン・クラルス商会”の代表は支配人は旦那様であります故。それと同時に妾は妻でありますから、夫たる旦那様を礼をもってお出迎えするのは当然でしょう」

 

 スラスラと言われるティオの言葉に、セバスは逆に言葉に詰まってしまう。すると、そこへ目的の品を買えたらしい夫婦達が近寄ってきた。

 

「店長さん、そちらの方はどちら様かしら?」

「こちらは我が“チャン・クラルス商会”の支配人であるセバス様なのですじゃ。そして———妾の旦那様です」

「ほう、貴方が………この店は本当に良い。品揃えはとても豊富で、店員達は見目麗しい者が多く、対応もとても丁寧だ。いやはや良い店を開いたものですな」

「………ええ、ティオはとても良くやってくれています」

 

 セバスは一瞬だけ間を置いてから返事した。()()()()()そうなっているのだから、ここで余計な事を言うのは得策ではない。そんなセバスに対して、ティオは顔を少し赤らめながらセバスの横に並び立つ。凛とした姿は高級店を切り盛りする女主人であり、そして夫を支える良き妻を彷彿させた。

 

「今後とも、我々夫婦の“チャン・クラルス商会”をよろしくお願い致します」

 

 ***

 

 その後、“チャン・クラルス商会”は賑わいを見せ、日が落ちて通りから人の往来が無くなった頃に閉店した。そして――。

 

「さあ、セバス殿! 今日こそ妾と閨を共にして頂きたいのじゃ!」

 

 ドドンッ! と擬音が付きそうなくらいの勢いでティオはセバスに迫る。昼間、客の前で見せていた貞淑な姿から、完全に男を狙う飢えた龍となった()にセバスは内心で冷や汗を流す。

 

「いえ、しかしですね………ティオ様、夫婦というのはあくまで人間達に向けた演技ですから、そこまでやる必要はないかと………」

(さま)、など他人行儀ですじゃ! それに妾は真剣にセバス殿の御子を孕みたいと思っているのじゃ! ささ、妾を好きに………出来るなら、激しく抱いてたも〜♡」

 

 ハァハァと息を荒げ、着物の上からでもはっきりと自己主張する双丘を寄せながら迫るティオに、セバスは少し後退る。しかし、その退路に今度は竜人族の女性店員達が迫った。

 

「セバス様程に強い竜人族は、お嬢様の御相手として問題などない………それどころか、これ以上は無いと存じ上げます!」

「お嬢様にようやく出来た運命の御相手………逃しはしませぬわ!」

「お嬢様だけではご不満なら、私達も御相手させて下さいまし! セバス様なら………ポッ♡」

 

 ジリジリと女性店員達も迫ってくる。ティオ程では無いが、彼女達もかなりの綺麗所だ。複数の美女達から迫られるという、全世界の男達から嫉妬される様な状況に陥ったセバスだが———その姿が突然、フッと消えた。

 

「なっ! 消えた!?」

「窓の方じゃ!」

 

 ティオが指を差した先で、文字通りに目にも止まらぬ速さで擦り抜けたセバスが、開け放った窓から身体を乗り出していた。

 

「少々、深夜の散歩に行って参ります。朝方には戻りますので」

 

 それでは、とセバスはバッと窓から外へ飛び出した。

 

「逃げられた!」

「ああん、セバス様〜!」

「追うわよ! アドゥル様に何としてもひ孫の顔を見せるのよ!」

 

 女性店員達がバタバタとセバスを追う中、今日も夜伽を果たせなかったティオは残念そうな顔になる。

 

「相変わらずいけずじゃのう。でも、こうして放置されると………はぅ♡」

 

 熱った身体を持て余す様に、ティオは身悶えした。

 

 ***

 

 話は魔導国の建国より前に遡る———。

 

「よくぞいらして下さいました、アインズ・ウール・ゴウン殿。儂が竜人族の族長、アドゥル・クラルスと申す」

 

 深い山合いにあり、和風な家屋が立ち並ぶ竜人族の隠れ里。その中でも一際大きな屋敷で、畳の上で正座した着物姿の竜人族にアインズは出迎えられていた。

 

「ティオとセバス殿よりお話は伺っていたが………なるほど、これほどに強大な力を感じさせる者は儂の生涯で初めてお会いする」

「竜人風情がアインズ様を値踏みするなど無礼な――」

 

 人外であるアインズ達を前にしてもアドゥルは遜った態度は取らず、どっしりと構えて鋭い眼光を向けていた。長年の風月と共に磨き上げられた威厳は、まさに天然の巨岩の様に堂々としていた。しかし、それがデミウルゴスには不敬な態度に見えたらしい。

 

『平伏———』

「待て」

 

 アインズはデミウルゴスを手で制した。主人の意図を察したデミウルゴスは、即座に<支配の呪言>を使おうとした口を閉じる。

 

「今日は話し合いに来たのだ。その程度の事で、一々腹を立てては話が進まん」

「はっ。申し訳ありません、アインズ様! 私めの浅はかな配慮をお許し下さい」

「構わん、デミウルゴス。私の為に常に働くお前に免じて、全てを許そう」

 

 深々と頭を下げるデミウルゴスに、アインズは鷹揚に頷いた。アインズに負けず劣らずの力を持つだろう悪魔を完全に従え、それでいながら無闇に偉ぶる事の無いナザリックの支配者を見て、アドゥルは「ふむ………」と興味深そうに頷いた。

 

(ホッ………良かった。ここはセバスが話を通してくれた案件だからな。営業が頑張って相手側の社長の面談を取り付けてくれたのに、こっちの社長が出て来た途端に御破算になったとか目も当てられないぞ………)

 

 内心、かなり小心者な考えをしながらアインズは傍に控えるセバスを見る。竜人族の族長とのトップ会談において、アインズは先に派遣して信頼を得たセバスと、自分より何倍も頭が良いからミスをしても指摘してくれるだろうという理由でデミウルゴスを連れていた。

 

「ゴウン殿、とお呼びしてよろしいであろうか?」

「構わない、アドゥル・クラルス殿。呼び難いならば、アインズでも良い」

「ではアインズ殿。まずは御礼を申し上げまする。我が孫、ティオの命の危機をよくぞ救って下さった」

 

 アドゥルはここで初めて、頭を深々と下げた。それは孫娘を助けたアインズに対して、嘘偽り無い感謝が籠っていた。

 

「そう畏まらないで良い、アドゥル殿。私からすれば、亜人族のついでで助けたに過ぎないのだから」

「しからば———そのティオから聞いたのじゃが、貴方はエヒトルジュエを倒し、あらゆる種族が平等に暮らせる世を目指しているとな?」

 

 アドゥルは再びアインズに対して、目線を鋭くした。一族を預かる長として、目の前のアンデッドにどう対応すべきか見定めるように。

 その目にアインズは真っ向から受けながら答える。

 

「当然だ。私の配下にはここにいるセバスやデミウルゴスを始め、人ならざる者が多数いる。エヒトルジュエがいる限り、私達の安全は保証されない。だからこそ、エヒトルジュエは亡き者にしなくてはならない」

「かの神は強大な力を持つ。故にこそ、我ら竜人族はこの様な隠れ里に身を隠す羽目になった。それでも尚、神に対して剣を向けると?」

「そうだ」

 

 じっ、とアドゥルはアインズを見る。アインズは緊張で唾を飲み込みたくなったが、アンデッドの身体では唾など出る筈もなく、見た目は平然としていられた。そうやってしばらく無言の睨み合いをしていると、やがてアドゥルの方から折れた。

 

「………よそう。貴方が不断の決意と、それに足る力を持つ事はティオの話やセバス殿が力を示してくれた事で証明してくれている」

 

 スッとアドゥルは改めて頭を下げる。

 

「失礼した。アインズ()。かの神を討つは、竜人族の悲願。その為であれば、我ら一族は貴方の為に力をお貸ししましょうぞ」

「———うむ。共に狂った神を倒し、平和な世を築こう」

 

 え? なんか最初から話がすんなり通る感じ? とアインズは思ったが、いつもの支配者ロールで鷹揚に頷いてみせた。

 

「しからば———ティオ、入って参れ」

「はっ。爺様」

 

 スッと襖が開けられ、アインズがフェアベルゲンで出会った竜人族———ティオが部屋に入ってきた。なのだが………。

 

(………何、あの格好? 竜人族は客人を迎える時は白い着物を着る風習でもあるのか?)

 

 ティオの服装を見て、アインズの無い目が点になる。ティオは以前会った時とは異なり、表裏を白一色で染めた着物を着ていた。髪を結い上げ、その姿は知識でしか知らない白無垢衣装の様———などど悠長に考えていたアインズに、アドゥルは爆弾発言をした。

 

「我ら竜人族がアインズ様の傘下に入る証として———孫娘のティオをセバス殿の嫁に貰って下され」

「………………はぁっ!?

 

 思わず、素でリアクションしてしまうアインズ。だが精神沈静化がすぐに働き、どうにか落ち着く事が出来た。セバスの方を見ると、セバス自身も寝耳に水なのか、驚いた顔をしていた。

 

「は………話が見えないのだが、アドゥル殿。何故、君達が私の傘下に入るのに君の孫娘が、セバスの………あー、花嫁に?」

「これは我々の忠誠の証。ティオは我が孫娘にして、儂の亡き後に竜人族の長となる者。人質として差し出す者として、適格かと思いまする」

「は? 人質?」

 

 竜人族と同盟を組む話でなんで人質の話が出るの? とアインズの頭に疑問符が浮かぶ。

 

「アインズ様………貴方はエヒトを倒し、いずれは凡ゆる種族が平等に暮らせる様な御国を作られるとセバス殿からお聞きしました。どうかその庇護下に、我ら竜人族も加えて頂きたいのですじゃ」

 

(お………お前もかセバスゥゥゥゥゥゥッ!?)

 

 ナザリックのNPC達は何故かアインズに過大な評価をしているが、まともだと思っていたセバスも例外では無かった様だ。果たして今日来るまでに、セバスがどんな風に自分を宣伝していたのか。アインズは無い筈の胃が痛くなる気がした。

 

「その為の約束の保証として、ティオを差し出しまする。何よりセバス殿程の方ならば、祖父としても安心で孫娘を嫁に出せるというもの」

「い、いや、別に人質など………あー、ティオ嬢の気持ちはどうなのだ? こういうのは本人の気持ちが重要というからな?」

 

 いくら一族の為とはいえ、祖父の命令で結婚させられるとか嫌だろう。そう思って、ティオに水を向けるが———。

 

「妾は………嫁になるなら、セバス殿の他に居ないと存じ上げるのじゃ」

 

 へ!? とアインズが内心で仰天する中、白無垢姿のティオは頬を赤らめる。

 

「あれ程の衝撃、生まれて初めてなのじゃ。今まで妾の身体の奥底にまで響かせる同族など居なかったというのに………あんな快感を知ってしまったら、もうセバス殿以外の殿方など考えられませぬ!」

 

 瞬間———アインズの時間が止まった。精神の沈静化を何度も感じながら、セバスに油の切れた機械の様に振り向く。

 

「セバス………お前、何やった?」

「いえ、ただ何度か彼女と手合わせしただけです。誓って、何もふしだらな事はしていません」

 

 思わず片言になってしまうアインズに、セバスは毅然と答えた。その態度はやましい事など何一つ無かった、と何も知らない者でも信じられるくらいに清廉だった。しかし――。

 

「———なるほど。そういう事でしたか」

 

 デミウルゴスの声が静かに響く。「なるほどって何が!?」とアインズは内心で思いながら振り向くと、奸智に長けた悪魔はいつもよりも口角を少し上げながら進言した。

 

「アインズ様、横から進言する愚をお許し下さい。この話、受けるのが良いかと存じ上げます」

「デミウルゴス、一体何を———」

「黙っていたまえ、セバス。これはナザリック全体の利益を考慮しての事だ。そもそも君の行動が原因となったのだろう?」

 

(セ、セバスが原因!? やっぱり何かやっちゃったの!? や、やばい、どうしようこれ!!)

 

 アインズが混乱する中、デミウルゴスはまさしく悪魔の笑みを浮かべながら意見を述べた。

 

()()()()()()()()()はともかく………この話、悪いものでは無いと判断致しました。ナザリックの防衛という観点から見ても、亜人族に続いて竜人族が傘下に入るのは好都合だと愚考致します。もっとも、アインズ様ならば全て見抜かれていると思われますが」

「う………うむ。お前も見抜いたか。その上でそう判断するとは、さすがだなデミウルゴス!」

「勿体なきお言葉です」

 

 デミウルゴスが深々と頭を下げる中、アドゥルはほんの少しだけ眉を動かした。しかし、アインズはそれに気付くどころでは無く支配者ムーブでスルーしてしまっていた。

 

(思惑って、何かあったの? い、いや、でもデミウルゴスがそれを見抜いた上で判断したなら、問題ない………か? 重要なのはナザリックを守る事だし!)

 

 とりあえず、コホンと咳払いをしてアインズはセバスに向き合う。鋼の執事は、主人からの沙汰を待つ様に姿勢良く控えていた。

 

「あー、セバス。お前の意見を聞こう。お前は、今後のナザリックの為にティオと婚姻を結ぶ事になる………のか? ともかく、お前に異論があるなら、この話は無かった事にしようと思うが?」

「………執事たる者、主が決断された事に自分の感情で異論を唱えるなどあってはなりません。私は、どの様な命令でもアインズ様に従います」

 

 そういう事じゃないんだってばあっ! と叫びたくなるのをアインズは何とか我慢した。『執事である』と創造主から設定された彼は、こんな時でもアインズの命令を第一とする姿勢を崩さなかった。

 

(ど、どうする!? いくらナザリックの為だからって、セバスを政略結婚の道具に使って良いのか? 相手方は悪い気はしてないみたいだけど………というか、セバスの方から何かしちゃったんだよなぁ! え? ナグモに続いて二人目のカップル誕生? ナザリックにマリッジブームが来ちゃった? 嫉妬マスク必要? ああ、もう………どうしたらいいんですか、たっちさーーーんっ!!)

 

 心の中でセバスの創造主に泣きつく死の支配者(オーバーロード)の叫びは、誰にも知られる事なく精神沈静化が起きるまで木霊していた。

 

 ***

 

「ふぅ………」

 

 時は戻り、女性店員達の追っ手を撒いたセバスは、一人寝静まった街を歩きながら溜め息を吐いた。

 アドゥルとの会談の後———アインズは心無しか、いつもよりも威厳を抑えてセバスに言った。

 

『ま、まあ………こういうのはお互いの気持ちが大事というからな。婚姻するかどうかはさておき、二人が一緒になれそうな仕事とかあったら頼むから、その時に付き合いをしてみると良いかもしれんな。うむ』

 

 恐らく、セバス自身に感情の整理をつけさせる為に言ってくれたのだろう。他の至高の御方達が何処かに去った後も、慈悲深くナザリックに留まってくれた様な御方だ。シモベに過ぎない自分の心を慮ってくれたのだろう、とセバスは解釈していた。

 

(恐れ多い事です。御方の御命令とあらば、たとえ老婆であっても閨を共にする事になっても従いますのに………)

 

 それでこそ忠義である。創造主のたっち・みーより『執事である』と設定された彼は、主人の為ならば我が身をも犠牲にする覚悟を普段からしていた。もっとも、幸いな事にティオは十人の内の十人が美人だと断言する美貌であり、性格も………まあ、一部分に目を瞑るなら、気立ての良い女性だった。それはセバスでも、十分に理解していた。

 

(そう、ティオは良い女性です………私などには、勿体ないくらいに)

 

 一体、自分が何故ティオに気に入られたのか。セバスは今でもイマイチ理解できない。なんでも、彼女はこれまで里の男達に一度も負けた事が無く、それ故に同じ竜人であるセバスの拳に圧倒された事で一目惚れしたと言われた。しかし、単に強さだけならば、それこそアインズの方が遥かに上だ。自分である必要など無いのでは? とセバスは首を傾げざるをえなかった。何よりも———。

 

(私はナザリックの執事………至高の御方々に絶対の忠誠を尽くす者。そこは変えられない。もし仮に、アインズ様よりティオを殺せと命じられれば、即座に殺さなくてはならない)

 

 恐らく、自分はそれを必ず実行するだろう。

 だからこそ———セバスにはティオを愛する資格など無いと思っている。

 命令があれば妻となる女性を殺せる様な男が、一体どの口で愛を語るというのか?

 

『別に、そう難しく考える必要はないとも』

 

 アドゥルとの会談後、アインズがいない場所でデミウルゴスに発言の真意をセバスは問い質していた。

 すると、かの悪魔は笑顔を崩す事なく言い放った。

 

『所詮は人間よりはマシ、という程度の下等な竜人族だろう? 適当に孕ませて、使えそうな子供は選別してナザリックで鍛え上げれば良いだろうさ』

 

 ———あの時程、あの悪魔を殴りたいと思った日は無いだろう。

 デミウルゴスとて、彼なりにナザリックの今後を考えての発言だとは理解はしている。しかし、彼の悪趣味に過ぎる提案に手を貸す気など毛頭無かった。ティオの好意に甘えて抱いた後、彼女が産んだ子供を取り上げる事になるかもしれないと思うとセバスは心が痛んだ。

 

「………彼女は、私などを好いてくれている。それは、分かってはいるのです」

 

 しかし、自分はティオをどう思っているのか?

 至高の御方とナザリックを第一とするなら、適当に愛に応えるフリでもして役立つ子供を産ませれば良いだろう。だが、セバスの性格的にそれは逆立ちしても出来そうになかった。

 

「どうしたら、いいのでしょうね………?」

 

 それは創造主から設定された性格(カルマ値)の為か、はたまた自分に愛を捧げてくれる女性を想った為か。

 愛を知らない執事(NPC)の呟きは夜の闇に消えていった———。




>アドゥル

 ティオをセバスの嫁に出したのは、戦国時代に武家が人質として娘を大名に嫁がせる様な感じです。ついでにアインズの側近であるセバスが親族となる事で、アインズが作る国(魔導国)での竜人族の地位も悪くない物になるだろうという強かな思惑もあったりする。何よりティオ自身はベタ惚れだし。
 因みにティオに付いている女性店員達こと竜人族の女性達は、アドゥルの命令を受けてセバスとティオをくっつける様に動いています。ついでに竜人の本能として、強い同族に惹かれてますけど。(裏設定的に竜人族は一夫多妻がOK。エヒトを倒す為に力強い子孫を残す為にも、強い同族に皆群がる傾向があるとか)

>デミウルゴス

 アドゥルの思惑などお見通し。そもそもアインズの命令一つで下等生物の運命など決まるのに、無駄な事を。
 そう思いつつも、ナザリックの防衛力の底上げなどを考えるとセバスの血を引いた子供を()()するのは悪くはない。そんなわけでアインズに進言しました。ついでにセバスの焦る顔が見れたので、とても満足。

>セバス

 我らの正義の執事、絶賛恋のお悩み中。そもそもセバスからすれば、会ったばかりの相手に「一目惚れしました!」と言われている状況なんです。しかし、アインズの命令(勘違い)で同居する事になり、グイグイと迫ってくるからどうしたものやら……。
 ティオの事は嫌いではないよ? でも、どうして好かれたのか分からないし、好きになってもアインズ第一の自分が彼女を幸せに出来るの? と色々と考えちゃってます。アインズから「いや別に妻子を殺せとか言わないから、幸せな家庭を築けよ」と言われたら一発解決するけど。

>ティオ

 昼は出来る女店主。夜は夫の(夜の)生活も支えるドラゴンワイフ。しかして、その正体は————!?

 とりあえず、このままでは終わらせないので彼女の恋路も見守ってあげて下さいな。共依存になりつつある、どこぞの主人公とアンデッドよりはいくらか真っ当なので。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。