ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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第一話「ナザリックへの帰還」

「ナグモ、だと………?」

『はっ、お久しぶりでございます。長らくナザリックを離れ、申し訳ありませんでした』

 

 頭の中に響いてくる少年の声にモモンガは今は無くなった眉間を寄せた。

 

(一体、どうなっているんだ? サービス終了時刻を過ぎてもユグドラシルが終わってないと思ったら、ゲームのアバターに憑依? して、NPC達が自我があるかの様に動き回って、オマケに〈伝言(メッセージ)〉が来たと思ったら相手はじゅーるさんが作ったナグモだって??)

 

 先程からモモンガの身に降り掛かる異常の数々に混乱して頭痛を感じてくる。だが、すぐに自分の身体が光り、それと同時に精神が沈静化された。アンデッド特有の状態異常無効の効果が働いたのだろう。この光は自分以外には見えないらしく、都合の良い事にモモンガが混乱で取り乱す姿は誰にも見られていなかった。

 

『モモンガ様………まさか、またお声を聞ける日が来るとは思っていませんでしたっ』

 

 感嘆極まった様に〈伝言〉ごしの声が震える。演技とは思えない声を聞きながら、モモンガは素早く思考を巡らせた。

 

(今のところ対情報系魔法の反応は無し、攻勢防御にも引っかからないから普通の〈伝言〉でこちらに話しかけている事は確かだけど………本当にナグモか?)

 

 普通の人間なら、ナグモの感嘆極まった声ですぐに信じてしまうだろう。しかし、そこはかつてギルメンから「石橋を叩いて壊した後に別の橋を架けて、その橋を影武者に渡らせて自分は魔法で空を飛んで河を渡る」と評価された慎重派のモモンガ。今まで一度も声を聞いた事の無いNPCの声に相手が本物かどうか確証を持てなかった。

 

「モモンガ様」

 

 声をかけられ振り向くと、スッと純白のドレスを着た美しい女性———守護者統括のアルベドがモモンガの前に跪いていた。

 

「申し訳ありません。全階層守護者の集合を命じられていましたが、第四階層守護者代理のナグモの姿が見えません。研究所副所長のミキュルニラ並びに第四階層にいるシモベ達を問い詰めましたが、その者達もナグモの行方には心当たりが無いと証言していました」

「ふむ………」

 

 骨そのものになってしまった手で尖った顎骨を撫でながらモモンガは思考する。少なくとも現在のナザリックにナグモがいない事は確かな様だ。

 

『モモンガ様は今どちらに? 場所を教えて頂ければ、必ず———いかなる障害があろうと駆けつけます』

「いかがいたしましょう、モモンガ様。御許可を頂ければ、即座にナグモの捜索部隊を編成いたします。至高の御方に階層守護者代理を任せられながら勝手に持ち場を離れた愚か者を、必ずやモモンガ様の前に引き摺り出してご覧にいれましょう』

「待て、アルベド。ナグモならば今、私と〈伝言〉で話をしている」

 

 剣呑な雰囲気を出すアルベドにモモンガは慌てて制止をかける。放って置くとナザリック全軍を動かしてナグモの捜索ではなく討伐へと行きかねない雰囲気だった。本当ならもう少し〈伝言〉で情報のやり取りをしたかったが仕方ない。

 

「ナグモ、今から私の位置情報を魔法で伝える。確かお前は〈上位転移(グレーター・テレポテーション)〉が使えたな? 大墳墓の地上入り口に迎えの者を寄越す。即座に転移し、その者達と合流せよ」

 

 はっ! と威勢の良い返事と共に〈伝言〉が切れる。すぐにモモンガは地上に情報収集に向わせたセバスへ〈伝言〉を繋げた。

 

 ***

 

 一瞬の浮遊間の後、ナグモの姿が宙から現れる。同時に服が黒いコート姿へと変わる。至高の御方にお会いするのに、学校の制服なんて物でいるわけにいかないのだ。

 

「おお………!」

 

 それを目にした瞬間、ナグモの喉から万感の喜びが漏れる。中央に聳える霊廟を取り囲む様に東西南北に小さな霊廟が並び、古代の神殿を思わせる入り口には六メートル近い高さの戦士像が並ぶ。

 

「帰ってきた……ようやく……! 長かった……!」

 

 ナグモの目に熱い物が込み上げてくる。それをどうにか抑え込むのに、ナグモは全神経を使わなくてはならなかった。

 ナザリック地下大墳墓。

 ナグモは十年の時を経て、ようやく在るべき場所に戻れた感動に打ち震えていた。

 

「失礼します。ナグモ様、でよろしいですかな?」

 

 そんなナグモの感動に水を差す様に渋い老人の声(ただし枯れたイメージは一切感じさせない)がかけられる。少しの苛立ちを感じながらナグモはいつもの鉄面皮の表情になって声の方向へ振り向いた。そこには執事服を着た大柄な初老の男と、黒髪をポニーテールにした武装メイドが立っていた。

 

「人間……いや、竜人とドッペルゲンガーか。君達は?」

「これは失礼しました。私はナザリック地下大墳墓の執事を務めておりますセバス・チャンと申します。こちらはプレアデスのナーベラル・ガンマ」

 

 初老の男———セバスと共にナーベラルは軽く一礼した。

 

「セバスに、プレアデスのナーベラル………確か、第九階層を守護する戦闘メイドがいるとは聞いていたが」

「はい、お初に御目にかかります。ナグモ様」

「様はよして貰いたい。敬称をつけるべきは至高の御方であり、僕ではない」

「ではナグモ殿、そうお呼びいたしたます。これよりモモンガ様の元へ御同行頂きますが、その前に失礼ながら幾つか御質問に御答えお願いします」

 

 ズンっとセバスからの圧力が強くなる。同時にナーベラルもさりげなく距離を取った。仮にナグモがセバスの拳より早く攻撃を仕掛けようとしても、ナーベラルの魔法の援護が即座に襲い、そのナーベラルを先に潰そうとしてもセバスによって叩き潰される。そんな絶妙な距離感を二人は取っていた。

 常人なら卒倒しそうな濃密な殺気が襲うが、ナグモはまるでプレッシャーを感じてないかの様に平然としていた。

 

「………良いだろう。僕に答えられるものなら」

「御理解頂き、大変恐縮です。では、まず貴方を創造された至高の御方の名を教えて頂きたい」

「じゅーる・うぇるず様だ。六本腕の機械の偽神(デウス・マキナ)であり、ガンナーだった」

「ふむ。それでは、じゅーる様が作られた存在は貴方以外にどなたがいらっしゃいますか?」

「ミキュルニラ・モルモット。ネズミの耳を持つ人間種で、ナザリック技術研究所の副所長という肩書きだ。レベルは40と高くはないが、僕の不在時は彼女が第四階層の指揮をとる」

「なるほど。では次に、ナザリックに所属する貴方以外の人間を御答え頂きたい」

 

 むっ、とナグモは言葉に詰まった。

 

「………すまないが、それは御方から与えられた知識に無いな。じゅーる様とモモンガ様の話でチラッと耳にした事はあるが……確か、プレアデスの末妹がそれにあたるという話だったはずだ」

「………よろしいでしょう。では———」

 

 その後もセバスはいくつか質問を重ねていく。その中にはナグモが知らないナザリックに関する質問もあったが、それは「自分の知識には無い」と答えていく。

 

「———質問は以上となります。さすがはナグモ殿。第四階層を貴方に任せられたじゅーる・うぇるず様、タブラ・スマラグディナ様、死獣天朱雀様の御判断はお間違い無かった様です」

「なにか勘違いしているみたいだが………第四階層の製造に関わったのはじゅーる・うぇるず様、タブラ・スマラグディナ様、るし☆ふぁー様の御三方だ。ヘロヘロ様やモモンガ様も素材集めを手伝われたと言っていたが、メインで製造されたのはじゅーる・うぇるず様と聞いている」

「ふむ………」

 

 セバスはしばし目を閉じて———先程までの圧力を消してスッと頭を下げた。同時にナーベラルもまたセバスと共に頭を下げる。

 

「失礼いたしました。モモンガ様の命により、貴方様を試させて頂きました」

「まあ、当然の配慮だろう。僕が答えられない問いをしてきたのも、モモンガ様が?」

「はい。ナグモ殿が知り得ない情報を知っていた場合、偽物と判断せよ、と」

「なるほど………」

 

 もしもナグモが与えられていない情報を得ていた場合、それはナザリックの情報を抜き出してナグモになりすましたスパイと見做される。最後に第四階層の創造主達を間違えて言ったのも、質問に全て答えられたと思って油断した者が馬脚を現す事を狙ったものだろう。

 

(さすがは至高の四十一人の統括であるモモンガ様だ。そこまで考えておられたとは………あの御方を統括に推されたじゅーる様の目に狂いは無かった)

 

 十年間。ナグモから見て、十年を経っても全く隙の無い主に畏敬を禁じ得ない。

 スッと半身を引き、セバスとナーベラルは中央霊廟への道をナグモに示した。

 

「モモンガ様は第六階層の円形闘技場でお待ちです。どうぞこちらへ」

 

 ***

 

「素晴らしいぞ。守護者達よ。お前達ならば私の目的を理解し、失態なくことを運べると今この瞬間、強く確信した」

 

 円形闘技場に集まり、一寸の乱れもなく整列して跪拝する階層守護者達を前にして、モモンガの喜色が大きく出た声が響く。

 生命を吹き込まれた様に動き出したNPC達に「裏切られるんじゃないか?」、「一介のサラリーマンでしかなかった自分に従うなんて嫌がるんじゃないか?」と疑念を抱いていたが、今やそんな思いは朝日が昇った闇夜の様に消えていた。

 

(過去の遺物なんかじゃない……ギルメンの皆が残した結晶がここにいる。皆の想いは……今もここに存在している!)

 

 自分を支配者として拝めるNPC達に優越感を感じる? いや、そんな下衆な考えはない。

 アインズ・ウール・ゴウンの皆が設定した性格通りに動き、言動の端々に製作者の面影が見える彼等が、モモンガにはギルドメンバー達が残した子供の様に見えていた。

 

「さて心して聞いてほしいが、現在ナザリックは原因不明の事態に陥っている。セバスに地上の偵察へ向かわせたが、外が毒の沼地から普通の草原に変わっているそうだ。また、地上から行方不明だった第四階層守護者代理であるナグモから連絡がきた」

 

 ざわっと守護者達の間に動揺が走る。しかし流石は守護者と言うべきか、誰も跪拝の姿勢を崩せない。そんな中、眼鏡をかけたオレンジ色のスーツの悪魔———デミウルゴスが声を上げる。

 

「モモンガ様。失礼ながらお伺いしたい事があります。つまりナグモは、至高の御方の御命令に逆らって勝手に外に出た、と?」

 

 何処か険のある口調でこの場への召集に応じなかったナグモを責める。他の者達も同様だった。程度の差はあれど、皆、ナグモの謀反とも取れる行動に強い不快感を示す。

 

「待て、デミウルゴス。ナグモが我々に叛旗を翻したかはまだ定かでは無い。セバスと合流してこちらへ向かっているところだ。時間的にはそろそろだと思うが………」

 

 と、まるでタイミングを図ったかの様に小走りで向かってくるセバスの姿が見えた。その後ろにはナグモの姿もある。

 

(あ、来た。やっぱり、じゅーるさんが作ったナグモも普通に動いているんだな。ええと……取り敢えず、支配者っぽいオーラでも出して迎えた方が良いか?)

 

 階層守護者達の忠誠は理解できたものの、何故か一人だけ外に出ていたナグモも自分に従うのかは定かではない。初対面で舐められない様に、という意味合いも込めて特殊能力である黒いオーラをエフェクトとして纏った。

 

「………!」

 

 効果は絶大だった。セバスとナグモは一瞬で足を止め、その場に平伏した。ナグモの顔色は血色が悪いを通り越して土気色に染まっていた。

 

(あ、あれ? もしかしてやり過ぎた?)

 

 恐怖で凍り付いた様に動かなくなった二人を見て、モモンガは慌てて黒いオーラを解除する。先に来ていた階層守護者達も固唾を飲んで見守る中、身体の震えを必死で抑えながらセバスが言葉を発した。

 

「恐れながらモモンガ様……ただ今、周辺の偵察を終えました。それと………ナグモ殿をお連れしました」

「御苦労だった、セバス。さて———」

 

 ビクリ、とナグモの肩が震える。見た目が十代な少年なだけにモモンガは新入社員をいびる嫌な先輩になった気分だった。

 

(いや、そんなに恐縮しないで欲しいんだけど………とりあえず、こういう時はまずあまり怒ってないですよー、という空気を出すべきだよな、うん)

 

 鈴木悟だった頃、何度か後輩を指導した時の要領を思い出してモモンガはナグモに話し掛ける。

 

「面を上げよ、ナグモ」

「は、はっ………」

「まずは私の下に馳せ参じてくれた事に感謝しよう。よく来てくれた」

「感謝など………十年経った今でも、僕は至高の御方に忠誠を誓った身ですから当然の事です」

「うむ………ん? 十年、だと?」

 

 支配者らしいムーブを意識しながら尤もらしく頷いたモモンガだが、聞き逃せない一言に首を傾げる。

 

「どういう事だ? 私がお前を最後に見たのは、確か二時間ほど前だぞ? お前はその間にナザリックの外に出ていたのではないか?」

「………失礼ながら、ご確認させて下さい。それは、ガルガンチュアを整備していた僕にわざわざ仕事の労いに来て頂いた時の事ですか?」

「あ、ああ。その通りだ」

 

 ほんの数時間前の出来事を思い起こしながら答えるモモンガに対して、ナグモは難しい顔になった。やがて、意を決したかの様にナグモはまっすぐとモモンガの顔を見る。

 先程までモモンガのオーラに恐怖していた姿は微塵も無くなっていた。

 

「モモンガ様、是非とも御耳に入れて頂きたい話が御座います。突拍子の無い夢物語に聞こえるかもしれませんが………今から話す事は、僕が見聞きしてきた真実です」

 

 

 

 

 

 

 




 まさか、未だにステータスプレートを貰う所まで来ないとは書いている時には思ってもいませんでした。でもオーバーロードを読み返していると、モモンガ様ことアインズ様は本当に慎重に対応しているから、ナグモを即座に迎え入れるなんてしないと思うんですよね……。
 それとこのSSは基本的にナグモとアインズ様のダブル主人公みたいな感じで書いていこうと思っています。それに伴い、原作のハジメハーレムは崩壊する予定です。こう、別のキャラとくっつくとかそんな感じ。
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