ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 ゼル伝ティアキンが本当に面白くて……自分は前作をプレイしてないけど、それでも楽しくやれてます。短髪ゼルダがマジ可愛い(笑)

 あとゲーム内で瘴気を纏った触手群を高所から爆弾花でチマチマ倒して、その後に出て来たファントムガノンも同じ方法でイケる! と思っていたら、テレポートしてきて一方的にボコられたのは私だけだと思う。「舐めた口聞いてマジサーセンした!」と思わず画面前で叫びましたとも……。


第百二十七話「ロストチャイルドの慟哭」

 視界を白く染め上げた光はすぐに収まった。空間転移した時の独特の感覚を感じたナグモが素早く周りを見回すと、アインズや香織達がいなくなっている事に気付いた。

 

「分断されたか……ふん、これも試練か。低脳な人間風情が僕やアインズ様を試そうなど不敬極まる」

 

 どこか苛立った様子でナグモは呟く。それは面倒な大迷宮の仕掛けに付き合わされる事に辟易したものだ———と、()()()()()()()()()()()

 

「香織は……アインズ様は無事か? ユエは……まあ、一応は心配してやるか」

 

 気配や魔力を探ろうとするが、周りを取り囲んでいる氷壁の魔力が邪魔をしてアインズ達の正確な居場所が掴めなかった。

 

「………仕方ない。先に進むか」

 

 ナグモは溜息を吐きながら氷の通路を進む事にした。

 

 カツン、カツン———。

 

 壁や床が氷に覆われ、歪んだミラーハウスの様な通路をナグモは一人きりで進む。

 

「………この程度の迷宮など大した事はない。コキュートスがいる第五階層に比べれば、気温も全然過ごしやすいくらいだ」

 

 カツン、カツン———。

 

「精神に働きかけるトラップなど……そんな低俗な物が第四階層守護者代理である僕に通用すると思うな」

 

 カツン、カツン———。

 ———カツン、カツン。

 

「……そうとも。こんな物、恐れる必要なんか———」

 

『―――いつまで、目を逸らすつもりだ?』

 

 それは―――酷く冷たい声だった。相手を同じ生物だと思っていないかの様に感情が篭らない声が、ナグモの耳に響く。

 ナグモはバッと振り向いた。だが、そこには誰もいない。あるのは自分の姿を映している氷の鏡だけだ。氷の壁は普通の鏡の様に平面ではない為、自分の姿が歪んで映し出されていた。

 歪んだ姿の鏡像のナグモは———冷たくナグモを見つめていた。

 

「……っ、くだらない幻術だ」

 

 しばらく鏡像を警戒していたナグモだが、鏡像が襲い掛かる気配が無いと判断すると苛立ちを込めて吐き捨てた。ナグモは再び歩き出す。

 

 カツン、カツン———。

 カツン、カツン———。

 

 氷の通路に足音が二重に響く。苛立った様子のナグモの背中を鏡像のナグモは冷笑する様に見つめていた。

 

 ***

 

 ナグモがしばらく歩くと、ドーム状になった広い部屋に出た。部屋の中央で足を止めて、ナグモは背後を振り向いた。

 

「……いい加減、出て来たらどうだ?」

『ふん———ようやく直視する気になったか、低脳』

 

 カツン、カツン———。

 それは氷の壁から出て来る様に現れた。

 黒い髪は白髪に、肌は白磁の様に透き通る純白に。

 着ている服もまた雪の様に純白だ。まるでナグモを鏡映しに作った姿であったが、ナグモが黒傘“シュラーク”を握っているのに対して鏡像ナグモが持っているのは二丁拳銃―――歪な魔物だった時の香織に食べられて失った筈の“魔導銃ドンナー”も片手に握っていた。その姿にナグモは心がささくれ立つのを感じる。

 

「大迷宮内で僕の精神に干渉して作り上げたコピー体か……だが、不愉快だ。化けるつもりなら完璧にやれ。武器の違いなどという、あからさまな差異を残して僕に化けた姿を見せられるのはストレスが溜まる」

 

 下級のドッペルゲンガーでもやらない様な間違いを残して変身した姿にナグモは眉間に皺を寄せた。だが、鏡像ナグモは表情を人形の様に全く変えずに無機質な声を出した。

 

『これが僕のあるべき姿だ。じゅーる様によって創造された、ナザリックの第四階層守護者代理としてあるべき姿だ』

「……偽者風情がじゅーる様やナザリックを語るな」

 

 自分の創造主、そして誇りに思っている役職を語る鏡像にナグモは怒りの表情で殺気を向けた。だが、鏡像ナグモはそんなナグモを冷たく睨む。

 

『偽者? それはお前こそがそう断言されるべきだ。今のお前は何だ? じゅーる様より与えられた“魔導銃ドンナー”を失い、あまつさえ低脳な人間達と同じ様に感情をすぐに露にする……じゅーる様に“そう在れかし”と望まれた姿を損なったお前が本物だと? いつから僕はそんな低脳な答えを良しとする様になった?』

「武装の変更は状況に対応してのものだ。不出来なコピー風情が栄えあるナザリックの守護者を騙るなら、怒りを覚えて当然だ」

 

 ナグモが歯を剥き出しにした険しい顔で語るのに対して、鏡像のナグモはあくまで淡々と感情の篭らない声で語っていた。

 鏡像のナグモは髪の色などの差異を除けば、まるでかつてのナグモ———第四階層守護者代理として、じゅーるに設定された時の姿そのものだ。ナグモは鏡像ナグモが偽者だと頭では理解していながらも、その姿に酷く苛立ちを感じずにはいられなかった。

 

『あまつさえ、人間如きの低脳な存在に感情が揺れ動くなど………お前は最早、じゅーる様に創造された姿からかけ離れた』

「っ、香織の事を言っているのか? それならばアインズ様が直々にお認め下さった事だ。何より……今の香織はキメラアンデッドだ。僕がじゅーる様によって定められた在り方(人間嫌い)とは何も矛盾などしてないっ」

 

 だから、自分は創造主(じゅーる)から望まれた通りの姿のままに———。

 

『―――いつまで、目を逸らすつもりだ?』

 

 鏡像ナグモの冷たい声に、ナグモの胸に得体の知れない不安が湧き上がった。

 

「何の話だ? 僕は目を逸らしている事など———」

『僕が指摘した人間というのは白崎香織の事ではない……ナザリックの支配下ですら無い人間の子供やお前が殺した魔人族達の事だ』

 

 瞬間、ナグモの表情が凍りついた。その表情を見ながら、鏡像ナグモは冷たく言い放つ。

 

『何の価値も無いただの人間の子供……お前はそれに自分と重ね合わせて同情した。自分と低脳な人間を同一視したのだ』

「違う! あれは、あの子供がじゅーる様の信念に基づく行動を示したから気紛れを起こしただけだ!」

『あまつさえ、その子供が魔人族達に無惨に殺されたと知って魔人族達を怒りのままに殺した』

「あれは……! “仇には仇を返す”というアインズ様の言葉に基づいて!」

『ほう、そうか。ならば、その後にアインズ様に魔人族達の皆殺しを進言したのはどうだ? そして魔人族達が降伏しても、キラーマシーン達に殺させたのは? あの行動がじゅーる様がかつて設定した通り、“あらゆる物事を合理的思考に基づいて判断した”……そう思っているのか?』

「あれは………あれはっ……!」

 

 ナグモの負の感情、あるいは認め難い心の葛藤……それらを読み取って作り上げられた鏡像の容赦の無い指摘にナグモの精神は激しく揺さぶられる。

 ナグモには精神に干渉する魔法やスキルを遮断するスキルは確かにある。だが、それはあくまで創造主(じゅーる)から与えられたから持っているだけだ。いかに精神干渉を遮断するスキルがあろうが、ましてや人間(プレイヤー)となってから日が浅く、未成熟な精神しか持たないナグモは今まで見ない振りをしていた内心を暴かれた事に動揺していた。そして、それを抑える方法など幼い精神の彼は知らなかった。

 

『認めろ、低脳。お前もまた、低脳な人間へと成り下がった。だからこそ、自分と同じ人間達の死に動揺する様になったのだ』

 

 鏡像は冷酷な目で動揺する人間の少年にそれを告げた。

 

『そんな事だから———じゅーる様はお前を置いて去ったのだ』

 

 瞬間、ナグモは心臓に罅が入った様な錯覚に陥る。

 

「あ………」

『忘れたとは言わせない………じゅーる様がナザリックより去られた日———お前を置いていった日の事を』

「あ……ああ………っ!」

 

 大迷宮の試練として作られた鏡像の言葉が精神に直接作用する。本来なら防げた筈の精神作用も、精神が不安定となったナグモの心を大きく揺さぶった。ナグモの脳裏に彼が一番思い出したくない記憶———じゅーるがナザリックを去った日の出来事が蘇った。

 

 ***

 

 その日、ナグモはいつもの様にガルガンチュアのメンテナンス作業に勤しんでいた。NPCとして作られた彼は来る日も来る日も同じ動作しかしていないが、創造主からプログラミングされた(与えられた)役目に不満などある筈もない。ナグモはただ決められた通りの動作をただ忠実にこなしていた。

 

『ナグモ。元気にしているか?』

 

 不意にナグモに声がかけられる。ナグモは自分の創造主が近付いてきた事を感知して、プログラムに従ってメンテナンスの手を止めて一礼した。

 

『ははっ……ナグモは礼儀正しいな』

 

 ナグモに対して六本腕の機神は目を細める様に顔にあたる場所のセンサーカメラの光を弱めた。

 

『うん……本当に良い子だったよ。あの子が今も生きていたら、こんな感じだったんだろうなぁ………』

 

 いつもならじゅーるは最近あった出来事を息子を模したNPC(ナグモ)に話し出す筈だったが、今日は何か様子が違った。ナグモはじゅーるの命令があるまで直立不動のまま待機していた。

 

『本当に……ここに来れるのが、今日で最後だなんてな………』

 

 ポツリとじゅーるはそう呟いた。だが、ナグモはそれを聞いても微動だにしなかった。NPCとして作られたが故に、命令(コマンド)されていない動作をする自由などナグモには許されていなかった。

 

『騙し騙しで働いてきたんだけどな………とうとう医者から余命宣告をされたよ。電脳ダイブも治療用ナノマシンが誤作動する可能性があるから止めろってさ』

 

 ふう、とじゅーるは溜め息を吐く。寂寥感を滲ませながら天を仰いだ。

 

『本当に残念だよ。ここは、とても居心地の良い場所だったのにな……。モモンガさんも、俺がアーコロジーの出身だと知っても色眼鏡で見ない良い人だったのに……。同じアーコロジー出身のるし★ふぁーさんやたっちさん、アーコロジー外に住んでるペロロンチーノさんやヘロヘロさん……生まれも育ちも違う人達が、楽しく過ごせる場所だったのにな……』

 

 多くの人間が訪れる事が出来て、皆が一緒に楽しく遊べる場所を作る………テーマパークのクリエイターとして、じゅーるはその信念を胸に仕事をしていた。

 残念ながら現実では上層部の意向などから叶わぬ夢となったが、様々な出自の人間が一緒になって全力で遊んだ“アインズ・ウール・ゴウン”はじゅーるの夢を実現した様な場所だったのだ。

 

『モモンガさんには………結局本当の事を言えなかったな。彼は優しい人だからね………俺の事で気に病んで欲しくはないしな』

 

 だからこそ、じゅーるは自分の病気の事をギルドメンバー達には伝えなかった。夢の様に楽しい場所だからこそ———楽しい思い出を残したまま、去るべきだと思ったのだ。特にあのお人好しで、自分の事より友人達の事を第一に考えるギルドマスターは、きっと真実を告げたら我が身に起きた事の様に嘆き悲しむだろう。残った仲間達が彼を支えてくれるだろうが、楽しい時間を提供してくれた彼が一時的にでも悲嘆に暮れる姿など見たくはなかった。だからこそ、じゅーるは転勤になってユグドラシルにログインする時間を取るのも難しくなった、と適当な理由をでっち上げたのだ。

 

『だからな……今日でお前ともお別れなんだ』

 

 六本の腕に内の一本を動かして、じゅーるは亡き息子を模したNPCの頭を撫でた。ナグモは微動だにせず、されるがままにじゅーるを見ていた。

 

『………あの子が生きていたら、きっと第四階層(この場所)を気に入ってくれただろうな。モモンガさん達も、きっと仲良くしてくれたかもしれないな……ああ、そうだ』

 

 不意にじゅーるは余った手でコンソールを開き、いくつか操作をした。するとナグモの目の前に真紅の機械鎧———じゅーるがユグドラシルを遊び始めてから大事に持っていたパワードスーツが現れた。

 

『レア装備とかはモモンガさんに渡す予定だけど、これはお前にやるよ。モモンガさんは今更、パワードスーツなんて必要無いだろうしな』

 

 再びじゅーるがコンソールを操作すると、パワードスーツはナグモのアイテムの空きスロットに収まった。

 

「あとは………そうだな、ミキュルニラの方にも寄っておかないとな。どうせ最後なんだから………少し書き直すくらいは構わないだろう」

 

 そう独りごちて、じゅーるはナグモを撫でていた手を放す。そして名残惜しそうに見つめながら、もう一人の息子と呼ぶべきNPCに声を掛けた。

 

「―――じゃあな、ナグモ。“アインズ・ウール・ゴウン"を……モモンガさんを、よろしくな」

 

 それだけ言い残して、じゅーるはナグモから背を向けて部屋から去った。部屋にはじゅーるが手塩にかけて改造したガルガンチュア(鋼鉄の人形)と、創造主が去ってプログラム通りにメンテナンス作業に戻るナグモだけが取り残されていた—―――。

 

 ***

 

「ああ、あああっ……!!」

『思い出したか? じゅーる様がお前を置き去りにした日の事を』

 

 最も思い出したくない記憶が蘇り、ナグモの身体が震える。じゅーるに設定された無表情を崩してみっともなく動揺しているナグモは鏡像は冷たく見据えた。

 

「ち、違う……じゅーる様は、病気で……」

『ならば何故、じゅーる様はお前を頼らなかったのだろうな? 超古代文明の遺児(クローン)であるお前なら、不老不死にする医療技術も身につけているのに』

「そ、それは……きっと、至高の御方達には及ばない僕ごときにはどうしようもない問題だったからで……!」

 

 真相として、ナグモはあくまでユグドラシル(オンラインゲーム)のNPCの設定として“人智を超えた科学技術と医療技術の持ち主”と設定されただけなのだから、現実(リアル)に生きるじゅーるの病気などどうしようもなかった。だが、ナグモは元・NPCである故にそんな事情など知らない。その為にナグモのコピーである鏡像は、ナグモが恐れている事———考えない様にしていた可能性を容赦なく指摘していく。

 

『誰がお前などに至高の御方の治療を任せるものか! 見下している低脳(人間)共の様に感情的に振る舞い、論理的な判断が出来ないお前などに!』

「黙れ……」

『じゅーる様は正しい判断をした! お前などに治療を任せたら、確実に致命的な間違いを起こす! 自分の同類と気付かずに魔人族達を皆殺しにした時の様にな!』

「黙れっ……黙れっ……!」

『じゅーる様が“そうあれかし”と求めていたのは完全な人間! そして亡きじゅーる様の御子息! 本来からしてお前は所詮代替品として作られたに過ぎない!』

「黙れっ、黙れっ!!」

『そして低俗な感情に振り回される様になったお前は、その役目すら果たせていない! それを見越したからこそ―――』

 

 鏡像の口が三日月の様に裂ける。瞳が赤黒く光り、大迷宮の魔物としての本性を顕にした。

 

『じゅーる様はお前を捨ててナザリックを去った。御子息の代わりにすらならない偽者などに用はないからなぁっ!!』

「黙れええええええええええええっ!!」

 

 激昂して黒傘“シュラーク”を振りかぶったナグモに、鏡像はニタリと笑う。この試練の特性として挑戦者の負の感情が強くなれば、鏡像もまた力を増すのだ。

 

『はっ、やはり低脳だな! お前が心を乱せば、僕もまた———っ!?』

 

 ナグモの負の感情を読み取って力を増していく鏡像だが、すぐに違和感に気付いた。

 

『この力……馬鹿な、コピーし切れていないだと!?』

 

 ナグモの力をコピーしてパワーアップしている筈だというのに、目の前のナグモの魔力はそれ以上に上がっているのだ。それこそ強化された鏡像よりも、激昂して昂ったナグモの魔力の方が遥かに大きい。

 

 ———これは謂わば裏技の様な攻略法だが……鏡像の魔物は挑戦者が大迷宮に入った時点で読み取った精神や実力をコピーしている。鏡像の元の力は挑戦者が大迷宮内で見せた実力を基準にしており、後は実際に相対した時に負の感情を読み取って強化がかかるのだ。

 

 ならば、鏡像を倒す事だけを目的とするなら。

 自分の実力を圧倒的にセーブした状態で戦い、ワザと弱い実力をコピーさせるという手段もあった。そうすれば鏡像が強化されても、地力で上回っているなら鏡像を倒す事は可能だ。

 無論、普通の人間ならばここまでの道のりで全力を出さずに来るなど不可能だ。ヴァンドゥル・シュネーもそれをさせない様に、強靭な精神を見ることが目的の試練でありながら、大迷宮内に強力な魔物を放って戦闘も疎かにさせない様にしていたのだ。

 ところが、ナグモは……というより、アインズ達はそんなヴァンドゥル・シュネーの思惑を超えてしまった存在だった。ユエを除いて文字通りに人智を超えた戦闘力を持った彼等は、道中の魔物を実力の一割も出さずに倒しているのだ。それを基に鏡像がコピーした所で、況してや負の感情を読み取って強化されたとて本体に及ぶ筈もなかった。

 

『ふむ………』

 

 ナグモの頭脳をコピーしていた鏡像は、激昂したナグモから湧き出る魔力から限界まで強化した所で自分に勝利の可能性がない事を瞬時に悟った。

 コピーした二丁拳銃を構える事もせず、せめてもの抵抗の様に嘲笑った表情になった。

 

『やはりお前()は低脳だな』

 

 次の瞬間———黒傘“シュラーク”が振り下ろされ、鏡像の頭が砕かれた。

 

 ***

 

 アインズ達が音のした方向に向かうと、氷のドームの様な部屋に出た。

 

「ナグモくん……!」

 

 目的の人物を見つけ、香織が嬉しそうな声を上げる。見たところ、特に外傷はないようでアインズも胸を撫で下ろしかけた。

 

「待って、香織………何か様子がおかしい」

 

 駆け寄ろうとした香織をユエが制止する。ナグモはいま部屋に入ってきたアインズ達に気付く様子すらなく———。

 

「ハァッ……ハァッ……ッ!!」

 

 両手で黒傘を振り下ろした様なポーズのまま、荒い息を吐いていたナグモ。ナグモのいつもの様な無表情を崩して、鬼気迫る表情になっていた。そして床に散らばった鏡像の残骸に目を向けて―――ギリッと歯を食い縛りながら再び黒傘を振り下ろした。

 

「ナ、ナグモくん……?」

「捨てられてなんてない……捨てられてなんてない……!」

「お、おい! ナグモ! 止めんか!」

 

 香織やアインズの呼びかけに応えず、既に動かなくなっている鏡像の残骸に黒傘を振り下ろし続ける。ようやくただならない様子を悟ったアインズは、咄嗟に精神を沈静化させる魔法を唱えようして———。

 

「じゅーる様にっ! 僕はじゅーる様に、捨てられてなんてないっ!!」

 

 瞬間———アインズの頭が真っ白になった。

 

「ナグモくん、落ち着いて! もう終わっているから!」

「アインズ様、早く精神沈静の魔法を……! ……アインズ様!?」

 

 香織とユエがどうにかしようと動き出す中、アインズは衝撃を受けた様に立ち尽くしていた。

 かつての友人が遺した元・NPCの心からの慟哭に、ナザリックの支配者を演じている彼は言うべき言葉が何も出なかった———。




>大迷宮の鏡像

 まずはこういう方法で倒せる事にした事を土下座します。サーセン……。
 いやね? メタい事を言うとここでナグモはクリア出来なかった事にしたら、もう一度氷雪洞窟に来ないといけなくなるので……予定しているタイムスケジュール的にそんな暇無いのですよ。
 一応の理由付けをすると、原作のハジメが「お前が大迷宮に入った時の俺自身なら、俺がそれより強くなればいい」という理論で倒せたのがまず一点。
 それとこれは揚げ足取りになりますけど、そもそも鏡像が相手の実力を必ずコピー出来るなら解放者達も自分のコピー軍団を作るとか、エヒトコピーを従えて戦わせるとかやれば良いじゃんと考え、「鏡像にもコピーできる限界がある」という事にしました。
 こういった事から、「大迷宮内で手加減して戦い、弱いコピーにして鏡像を倒す」という裏技な攻略法が出来ました。試練的には鏡像を倒せばクリア扱いにはなるという事で。もっとも、ヴァン君がミレディみたいに生きてジャッジを務めたらアウト判定になりましたけどね。

>じゅーるの引退理由

 一部の人は予想していましたが、病気による引退です。自分はもうすぐ死ぬかもしれない、とモモンガ達には言えず、転勤と偽りました。事情を知っていたのはリアルでも友人なるし★ふぁーだけど、彼もじゅーるの意向を受けてギルメン達には喋りませんでした。その後、リアルが彼でどうなったかは……ご想像に任せます。

 もっとも、リアルの世界があるとは知らないナグモからすれば、「何でも病気を治せる自分に任せず、ナザリックを永遠に去った」と認識されたわけですが……もういっそ、笑い話と認識してあげよう。その方が心が軽くなるから(笑)

>アインズ

 ほれ、何か言うてみ? ナザリックの支配者様? 演技をしてでも遺されたNPC達の面倒を見ると決めたんですよね? 親に捨てられたと思って泣き叫ぶ子供をどうにかするくらい、完璧な支配者様には簡単でしょう?(全方位で曇らせると決めた人並感)
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