稼いだルピーでマイホーム建築に凝り出し、未だにゼルダ姫に会いに行く予定がないです。いやその、マスターソードを貰った時はね……メインクエストを一刻も早くやらねば! と思ったんだけどね……ネタバレになるから言わないけど、龍の泪を見た上でやってるから外道リンクになってる気がする(笑)
「ミュウはね、エリセンという所にママと住んでたの」
朝食を食べ終わり、アインズ達はナグモに保護されるまでの経緯について聞いていた。
「ママと一緒に海を泳いでいたら、気が付いたらママがいなくなって……海岸でママを待とうと思ったら、領主様の兵隊さんが来たの。兵隊さんが“ママの所まで連れて行ってあげる”と言ってくれて、馬車に乗ったら知らない場所にいたの……」
「領主の兵隊……それは確かなのか?」
「うん。その人は初めて見る人だったけど、いつも街の見廻りをしているおじちゃん達と同じ格好だったの」
アインズの質問にミュウが頷く。トータスでは大きな街の治安組織は、その土地の領主の衛兵が務めている。ミュウも“街のお巡りさん”と同じ格好をした大人だから、気を許してしまったのだろう。
(衛兵に扮した奴隷商人の類いか……あるいは、領主が直接人攫いに加担しているのか? まさか……)
様々な可能性がアインズの中で思い浮かぶが、いま考えるべき事ではないとして思考を中断してミュウの話の続きを聞く事にした。
「そうしたらミュウは……っ、知らないお屋敷にいて、その家の人がミュウに“今日からお前はペットだ”って言って、それで……うう、あぁっ……!!」
「大丈夫、無理に話さないで良いから」
苦痛の日々を思い出したくないのか、ミュウの表情が苦痛に歪むのを見てユエが慌てて宥める。ミュウはしゃくり上げながらも、話を続けた。
「ひっく……それで、それでミュウは……毎日……痛くて、恐くて……! ミュウのいた地下のお部屋で、水の音がした所があったから飛び込んだの……それで泳いで……」
チラッとミュウはナグモを見る。つまり、地下水道に繋がる排水口にでも飛び込んで逃げた後、ナグモに拾われたという事なのだろう。
「可哀想……ミュウちゃん、小さいのに頑張ったんだね」
香織がミュウを撫でようとするが、何故かミュウは香織を怖がる様に避けてナグモの背に隠れてしまった。香織は残念そうな表情になるが、当のナグモは憮然とした表情のままだった。
「なあ、ユエ……念の為に聞くが、ヴェルヌが他人の奴隷を盗んだという事にならないな?」
アインズはこっそりとユエに聞いた。いくら
「海人族はハイリヒ王国の法律で保護が明言された種族です。むしろ、それを奴隷として売買した人間の方が違法です」
「そうか………」
もしも
「とにかく、君の話は分かった。さて、そうなるとどうしたものか………」
アインズはそう言いつつも、ナグモの反応を伺った。ミュウを助けたのは彼だ。だからこそ、ナグモの意思を尊重しようとしたのだが———。
「保安署に預けましょう。それで問題ありません」
ナグモはミュウの方を見る事なく、アインズに対してそう提案した。
「……良いのか?」
「僕達は重要な任務をこなしている最中です。こんな海人族の子供に構っている時間などありません」
「ヴェルヌくん……それはそうだけど……」
周りから冒険者の依頼の最中に聞こえる様に大迷宮の事を伏せて言うナグモに、香織は少しだけ迷う表情になる。香織に残った人間性が小さな女の子をここで放り出してしまう事に忌避感を覚えていた。
「海人族は王国の保護を受けた亜人族です。保安署に預ければ、正規の手続きに則ってエリセンまで送り返される筈です。保安署まで連れて行けば、この件はそれで済みます」
「うむ………確かにその通りであるが………」
ナグモの言っている事は正論ではある。アインズが頷く中、ミュウは自分の事で雲行きが怪しくなっているのを察したのか、ナグモを不安そうに見た。
「お兄ちゃんは……? お兄ちゃんはミュウと一緒にいてくれないの?」
「あのね、ミュウちゃん。今からミュウちゃんをお家に帰してくれる人達の所に行くから、その人達と一緒に帰ろうね?」
「……やっ!」
「やっ、て………」
「やー、なの! ミュウはお兄ちゃんと一緒がいいの!」
香織が優しく言うが、ミュウは強い拒絶を示してナグモの腕を掴もうとする。
その手を———ナグモは振り払った。
「縋りつくな、海人族の子供。僕はお前に関わっている時間などない」
ビクッとミュウが肩を震わせる。ナグモはそんなミュウを冷たい無表情で———ナザリックの守護者としての顔で拒絶した。
「……お前を助けたのはただの気紛れだ。それ以上にかける慈悲などありはしない」
「っ、ヴェルヌ!」
ミュウに対する態度を見かねて、ユエは批難の声を上げる。だが、ナグモはユエに対しても冷たい目線を向けた。
「お前も分を弁えろ。
ナザリックの階層守護者代理としての威厳で、新参者のユエの意見を黙殺しようとする。さすがにパワハラだろう、とアインズはナグモに苦言を言おうとして———。
「ひっく……うっ、ひっく………」
唐突に泣き声がアインズ達の間に響く。ミュウは両目を押さえながら、さめざめと泣き出した。
「ごめんなさい……我儘を言って、ごめんなさいなの……! だから、ケンカしないで……!」
ナグモと一緒にいたいという自分の要望が叶えられなかった事より、目の前でナグモとユエが自分の事で揉めている雰囲気を察してミュウは泣いていた。
これにはアインズ達もさすがに気まずくなり、どう声を掛けるべきか迷ってしまう。その中で、ナグモはガタッと席を立つ。
「………すぐに保安署に行ける様、チェックアウトの手続きをして参ります」
「あ、ナグ……ヴェルヌくん! えっと……ごめんなさい、アイ……モモンさん!」
アインズの返事も聞かず、ナグモは食堂を出る。香織は泣いているミュウを見て迷う素振りを見せたが、アインズ達に頭を下げると慌ててナグモの後を追った。残ったのは泣いているミュウと、気まずい沈黙に包まれたアインズとユエだけとなっていた。
***
「本当にこれで良かったのだな?」
「……僕は最善の方法を取ったまでです」
あの後、ミュウはまだ泣き止まないながらも俯いてアインズ達に連れて行かれるままに保安署に預けられた。転移魔法で移動する為に街の外へ歩いて行く道すがら、アインズはナグモに再確認する様に聞いたものの、返ってきたのは頑なな声だった。そんなナグモをユエは不満がありありと浮かんだ目で見ており、香織はナグモとユエに目線を行ったり来たりさせながら、どちらにどう話しかければ良いか迷う様な表情をしていた。はっきり言って、アインズがユグドラシル時代の時でも味わった事の無いほどパーティー内の空気はギスギスしていたが、それでもアインズはナグモに話し掛ける。
「確か残る大迷宮がある場所の一つは、エリセン近海の海底遺跡だろう? あの子供をついでにエリセンまで送り届けるのも可能だぞ?」
「世界征服計画もそろそろ大詰めです。アインズ様の覇道を思えば、あんな海人族の子供に関わるのが間違いでした」
ナグモは自分に言い聞かせる様にアインズにそう返す。その間にもまるで保安署から一刻も早く離れようとするかの様に、街の外へ出ようとする足は止まらない。
(そもそも世界征服なんて、俺からすればどうでもいいんだよ………なんて、今更言えないけどさ)
アインズからすれば、NPC達が何故か勘違いして計画を進められ、エヒトルジュエへの対抗勢力を作るのに丁度良いと思ったから了承したに過ぎない。
(それがエヒトルジュエの手からナザリックの皆を守る事に繋がるなら、俺は王様でも何でもやってやるさ。だけど———)
アインズはナグモを見る。以前ならば、ナグモの発言は自分への高過ぎる忠誠心から、と思っていただろう。だが、氷雪洞窟や先程の朝食の時の姿を見た後では、ナグモの態度が意固地になっている子供そのものに感じていた。
アインズは足を止める。それに合わせてユエ達も足を止めた。
「ヴェルヌ……いや、ナグモ。少し話がある」
周りに盗み聞きしている者がいない事を確認して、敢えて冒険者の偽名ではなく本名を呼んだ。アインズ達が足を止めた為に先を歩く形となったナグモは、足を止めてゆっくりと振り返る。その表情が心なしか硬く見えたが、アインズには教師から叱られる事を恐れた小学生に見えていた。
(こんな所も子供っぽいんだな………やまいこさんも、こんな気持ちだったのかもな)
小学校の教師だった仲間の事をふと思い出して、アインズは内心で苦笑する。そしてナグモに対して———アインズは優しく声を掛けた。
「ナグモ。私はお前をじゅーるさんの息子の様なものだと思っている」
ナグモの目が見開かれる。だが、すぐに目を伏せてアインズに頭を下げた。
「過分な評価をして頂き、ありがとうございます。でも、じゅーる様からすれば僕なんて………」
「じゅーるさんがどう思っていたか、ではない。
顔を上げるナグモに、アインズは少ししゃがんで目線の高さを合わせた。
「私にとって、ナザリックの皆は去ってしまった仲間達の子供の様なものだ。私が一方的にそう感じているだけだが……仲間達から自分の子供を託されたと思っている」
最初はNPC達の中にギルドメンバー達の面影が見えた事が純粋に嬉しかった。仲間達との黄金の日々は、今も尚続いているのだとアインズは思えた。
だが、あくまで彼等は創造主と似ている所があるだけだ。かつての仲間達そのものではない。ユエと話していく内に、アインズはユグドラシル時代は輝かしい思い出であっても、それは戻らない過去なのだと悟り始めていた。
「だからこそ……私はナザリックの子供達の幸せを第一に考えたい。お前達の幸せに比べれば、はっきり言って世界征服計画など取るに足らない」
「それは……それは間違っています! ナザリックのシモベは至高の御方の為に存在していて、アインズ様のご意思がシモベ風情に捻じ曲げられるなど、あってはなりません!」
「私は、そうしたいのだ。それこそが私の意思だ」
驚愕するナグモに対して、アインズははっきりとそう言った。今までNPC達の意見に流される形で話を進められる事が多かったが、アインズは初めて自分の願望をはっきりと口にした。そして、昨夜から言おうと決めていた事を口にする。
「……じゅーるさんが、どうしてあれだけ思い入れのあったナザリックを去ったのか。私は遠くへ行く必要がある、としか言われなかったが、他に理由があったのかもしれない」
「…………え?」
「だが、あの人は最後に私にこう言った………自分が手塩にかけて作った第四階層———そして自分の
アインズの言葉にきょとんとした顔になったナグモだったが、それは更なる驚愕に塗り潰された。
「それは……じゅーる様が……本当に?」
「ああ。ナザリックを去る事をひたすら詫びながら、それを私に頼んだよ」
NPCを子供だなんて、大袈裟な表現だと当時は思っていた。るし★ふぁーの様に、芸術家が自分の作品を子供と呼ぶ様な物だとアインズは思っていた。だが、今になって分かる。じゅーるにとって、ナグモやミキュルニラはただのNPC以上に何か思い入れのあった存在なのだろう。だからこそ、わざわざ引退前にアインズにそう言ったのだろう。
「………じゅーる様………っ」
「だからこそ、大事な友人の息子が私の為に自分の意思を封じようとするのが見ていて気の毒になる。『人間嫌い』だったお前が、ナザリックの為ではなく子供を助けた……それはきっと心が成長した証なのだろう。その心を私は大事にしてもらいたいと思っている」
それが、一方的とはいえNPC達の面倒を見ると誓った者として。一部のギルドメンバー達からすれば、そこまで思い入れは無かったかもしれないが、NPC達の父親代わりになった者としてアインズはそう思っていた。
「………私はあなたの幼稚な態度に、一言言いたくなる時が沢山ある」
ユエは静かにナグモに話しかける。深く息を吐きながら、年長者が少年に助言する様に。
「でも、あなたは今まで精神を成長させる機会を得られなかっただけなんだと思う………だから
「ナグモくん、私はいつでもナグモくんの為にありたいと思うの」
香織が優しく声を掛ける。それはナグモに忠実なNPCとして————それ以前に、ナグモを愛した少女として。
「ナグモくんの恋人だもの、私は誰よりもナグモくんの味方でいたい。だからさ、本当にしたい事があるなら言ってみて。何でもやってあげるから」
「それは……でも……」
ナグモは俯きながら、自分を気に掛けるアインズ達の言葉を噛み締める。
『人間嫌い』でいる事が、いなくなってしまったじゅーるの遺志を守る事だと思っていた。だからこそ、
あの海人族の子供をどうしたかったのか?
ミュウを助けた時、ナグモの脳裏にはかつて立ち寄った街で出会った人間の子供を思い起こしていた。あの子供みたいな結末にならない様に、本当は————。
「あれ………ちょっと待って。この声………ミュウちゃん?」
ふいに香織が耳を澄ませる様に今来た道———保安署の方向を振り向く。数多の魔獣の集合体であるキメラアンデッドの香織は、アインズ達よりも遥かに優れた聴力でそれに気付いた。
「どうした?」
「ミュウちゃんの声……怯えてます。それに、複数の男の人が言い争っている声が———」
それを聞いた途端、ナグモの顔色がはっきりと変わる。ナグモは走り出しかけ———すぐに自制する様に足を止めた。そして縋る様にアインズの方を見る。
「……行くといい」
その心情を察してアインズは頷く。ナグモは目を見開き———アインズに頭を下げた。
「ありがとうございます、アインズ様」
ナグモはすぐに保安署に向かって走り出した。
>じゅーるさん
息子扱いしていたNPCを置いていく事に、モモンガに対して何も言わないというのもおかしいよね? という事でモモンガに言付けをしていた事にしました。
>ナグモ
自分で書いていながら、本当に面倒くさい奴です。反抗期というか、駄々を捏ねてる子供を相手にしている気分になる時があります。まあ、これからちょっとは良い子になるかもしれません。いやー、良い子、良い子。
改心しても犯した罪は消えないけどネ?