ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 こんなSSに既に10件も感想を頂き、読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
 話の展開が遅いSSですが、皆様に楽しんで貰えれば幸いです。


第三話「情報収集開始」

 ナグモが再びナザリックでモモンガへ忠誠を誓った日から一週間後。

 ハイリヒ王国の王立図書館に彼の姿があった。ナグモは百科事典ほどの厚さもある本を高速でページを捲っていく。

 

(大陸の東に亜人種……いや、亜人族の国があるハルツェナ樹海、ヘルシャー帝国、南に魔人族の王国ガーランド、西にアンカジ公国、グリューエン大火山。その先に海上の町エリセン……ふむ)

 

 一見、本当に読んでいるのか疑わしい速度だが、至高の御方にナザリックの技術研究所のトップとして創造されたナグモは、超人的な早さと頭脳で文章を記憶していく。ものの十分もしない内に、『トータス世界地理』と表紙に書かれた本は読み終えられていた。

 

(これで地理関係の蔵書は網羅したが……しかし、もう少し詳細な地図は無かったのか?)

 

 縮尺も何もあったものではない、絵図と言っても差し支えの無い地図を見ながら溜息を吐く。そもそも内容からして、「亜人はエヒト神の恩恵を受けられなかった為に魔力を持たない劣等種であり、魔人族はエヒト神とは異なる邪神を信奉している唾棄すべき神敵。我々人族はエヒト神の寵愛を一身に受けた優れた人種なので、世界はエヒト神の名の下に人族によって管理されるべきである」と半分以上が著者の主観が入った内容だった。

 それでも異世界の地理を知るのは有益だから、と自分に言い聞かせて読了したが、これでは精神的疲労の方が大きい。そんな内容の本を何十冊も読んでいれば、いい加減嫌にもなってくる。いっそ燃やしてしまえば少しはスッキリするのではないか、と本気で考え始めていた。しかし、ここへ来る前に命じられた事がナグモの理性に歯止めをかけていた。

 

『今の我々は、この世界について右も左も分からない幼児と変わらないと言っていい』

 

 ナザリック地下大墳墓の支配者にして、最後まで残ってくれた至高の御方。モモンガはナグモを加えた階層守護者達を睥睨しながら話した。

 

『我々がこの世界———トータスにいるのはナグモが話したエヒト神とやらが関係しているのか、そしてトータスにいる者達や召喚された人間達の強さはどれくらいなのか? 調べなくてはならない事が多過ぎる。………ナグモよ』

『はっ』

『お前は人間達を救う勇者一味として王国に召喚された、と言っていたな。ある意味、今のナザリックでお前が一番この世界の情報を手に入れ易い位置にいると言っていい。お前は召喚された人間達と共に神の使徒とやらを振る舞いながら、この世界の情報———魔法、地理、モンスターなどあらゆる情報を集めて我々に流すのだ』

『はっ、了解しました』

『デミウルゴス、お前はナグモが集めた情報を分析して纏めよ。またナグモの支援の為に隠密に長けたシモベ達を派遣するのだ』

『承りました、モモンガ様』

 

 ナグモとデミウルゴスの返事にうむ、と頷いてモモンガは他の守護者達を見回す。

 

『他の者達も各階層の警備レベルを一段階上げよ。何が起こるかは不明なので油断はするな。侵入者がいた場合は出来る限り生かして捕えるのだ』

『はっ!』

 

 返答が綺麗に唱和される。偉大なる主人の為、守護者達は使命感に燃えていた。………実の所、当のモモンガは(とりあえず、これでいいよな? 間違ってないよな?)とおっかなびっくりに指示していたのは守護者達の預かり知らぬ事だった。

 

(全てはナザリックの為、ひいてはモモンガ様の為だ)

 

 読み終わった蔵書のページを閉じながらナグモは自分自身に言い聞かせた。

 

(せっかくナザリックに帰れたというのに、また低脳な人間達と過ごさなくてはならないのはイライラするが、僕個人の不平不満など至高の御方を思えば取るに足りない。次はこの世界の技術や文化関連の蔵書を読むとするか。しかし………)

 

 机に高く積まれた本を片付けながら思考する。今までトータスの歴史や魔法など様々な本を読んできたが、どの文書にも必ずと言っていいほどエヒト神を賛辞する内容が書かれていた。歴史書に至ってはエヒト神の信徒達がいかに素晴らしい事を為してきたか、を綴った出来の悪い小説の様だ。まるでそうしなければ許されないかの様に。

 

(しかし、異常に過ぎる。一国の王が教皇に跪いていた事から、この国では聖教教会の権力が大きいのは理解できた。だが、こうも聖教教会の教義が根付いているのは妙だ。地球では同一の神を崇めていても数えてもキリが無いくらい宗派が分かれたというのに………。加えて、歴史にも不自然な空白が複数ある。まるで意図的に削除したかの様に思える)

 

 今まで得てきた情報を元に考察を重ねていく。すぐに報告書を作成したいところだが、さすがに人目のある場所では無理だ。夜中にまた作成してデミウルゴスに送ろうと考えていた矢先だった。

 

(ナグモ様……)

 

 思念を通してカシャカシャと鋏同士が擦れる様な声が響く。人間以外の動物が無理矢理声帯を震わせている様な声だが、ナグモは驚かずに思念を返す。

 

(八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)か。どうした?)

(はっ、至急にお耳に入れたい事が御座いまして……先程からナグモ様を隠れながら覗き見している人間の女です)

 

 ナザリックからのサポートとして付けられたシモベの報告に、ナグモはまたかとうんざりした顔になる。

 

(昨日も一昨日も、その前も来ておりました。気配遮断をしている我々に気付いている様子はありませんが、いかがいたしましょう? 御命令を頂ければ我々の方で処理しますが……)

(不要だ。モモンガ様は目立たずに情報収集せよ、とお命じになった。ここで人間の死体が出れば、騒がれて面倒な事になる)

 

 はっ、と返事をした後に気配が消える。とはいえ、本当に消えたわけではないだろう。今もナグモのすぐ側で待機している様だ。

 

(それにしても毎日毎日飽きもせずに僕を覗き見るばかり……いったい何の用だ?)

 

 地球にいた頃、類い稀なナグモの頭脳には嫉妬や羨望の目が多く向けられていた。そういった視線を弱者の下らない感情として切り捨てていた為に今まで気にも留めていなかったが、今は事情が異なる。

 至高の御方の為に情報収集をしている以上、こちらを探ろうとする者を見過ごすわけにはいかない。エイトエッジ・アサシン達にはああ言ったが、相手の出方次第では()()()()()として姿を眩まして貰った方が良いだろう。そんな事を考えながら、ナグモは覗き見している不審者に近寄っていった。

 

(場所は……あそこの本棚か)

 

 魔力感知で特定し、足音をこっそりと消して近寄って行く。アウラの様にレンジャーのスキルなど持っていないが、100レベルともなれば常人の不意をつくくらいは容易い。

 

「おい」

「ひゃああっ! な、南雲くん!?」

 

 不意打ち気味に声をかけると、覗き見していた不審者こと白崎香織は飛び上がりながら驚いていた。

 

「い、いつからそこにいたの?」

「そんな事より、毎日僕を覗き見して何か用なのか?」

「私は覗き見なんて……え? 毎日って、もしかして気付いてた?」

「隠れる気があったのか?」

 

 ひゃあああっ〜、と真っ赤な顔で呻き声をあげる香織をナグモは訝しそうに見る。魔力も気配も垂れ流しだったのに、どうして気付かれないと思っていたのか?

 

「え、ええと……ここには本を探しに来て……で、でも、もう行くから! それじゃっ!」

 

 真っ赤な顔のまま、香織はナグモの横をすり抜け様とする。ドンっとその進路をナグモは腕で遮った。

 

「待て。先程の答えを聞いていない。僕に、何か用なのか?」

 

 いわゆる壁ドン状態でナグモは香織に迫る。ナグモからすれば逃がさない様に退路を塞いだだけだ。だというのに香織はモジモジと真っ赤な顔を伏せていた。

 

「あの……その………」

「ん、んんっ!」

 

 ゴニョゴニョと喋る香織を観察していたナグモの耳に、わざとらしい咳払いが聞こえた。見れば、図書館の入口にあるカウンターから司書が咎める様な眼差しでナグモ達を睨んでいた。

 

「……ここでは人目につくな。ついて来て貰おうか」

「え? ちょっ、南雲くん!?」

 

 ナグモは香織の手を取り、その場から引っ張っていく。何故か香織はされるがままに付いて来ていた。抵抗がない事に訝しみながらも、これ幸いとナグモは体温が高くなっている香織を図書館の奥へ連れて行った。

 

 ***

 

 ナグモが香織を連れて入ったのは、図書館の奥にある資料室だった。部屋には未整理の本が棚にジャンルを関係なく押し込まれ、作業用の机と椅子が二脚、ポツンと置かれていた。灯り取りの窓がある為に完全な暗闇では無いが、ドアを閉めてしまえば完全な密室となる部屋だった。

 

「さて、ここならゆっくりと話せるだろう」

 

 さり気無く香織を入り口から最も遠い椅子へと誘導し、ナグモは香織と入り口の通路の道を塞ぐ様に椅子に引いて座る。

 ついでにコッソリとモモンガからこの任務にあたって借り受けたマジックアイテムを起動させる。第八位階以上の空間魔法や80レベルの盗賊職などに介入されたらどうしようも無いが、普通の手段ではこの部屋に第三者が入ってもナグモ達の存在はこの次元に居ないものとして気配すら感じ取れないし、触れる事も出来ないだろう。

 つまり、ここで始末しても誰にも気付かれないというわけだ。エイトエッジ・アサシン達も香織からは死角となる位置に配置させ、いつでも襲える様に準備は整えてある。

 そんな風に確実に殺せる準備を整えているナグモに対して、香織はナグモに握られた手を熱に浮かされた様な表情で撫でていたが、ナグモの一言で現実に引き戻された。

 

「その……どうしても言わなきゃ駄目かな?」

「是非とも知りたい。お陰で読書に集中出来ないからな」

 

 あうう、とか、ええと、と呻いていた香織だったが、じっと見るナグモに観念してようやく口を開いた。

 

「その、ね………南雲くんの事が心配で見ていたの」

「僕を心配? 何故?」

「南雲くん、ここに来てから毎日、自由時間になるとずっと図書館に篭って勉強してるし、夜遅くまで部屋に灯りが付いてるから無理してないかな、って……」

 

 舌打ちしたくなる気持ちをナグモは何とか堪えた。香織の言う通り、夜通し自室で起きていたのは事実だ。昼に調べた内容を元に報告書や資料を作成したり、この世界に来て()()()使()()()()()()()()魔法の鍛錬をするなどしていた。

 普通の人間ならば連日の徹夜で健康に支障が出るだろうが、モモンガより疲労と睡眠を無効にするアイテムを与えられていたナグモは人が寝静まった深夜でも平気で作業を行えていた。

 

(失態だ………。皆が寝静まった深夜ならば、と思って作業を進めていたが、見ている人間がいたとは……。今度からモモンガ様から渡されたマジックアイテムで異空間を作ってから作業しなくては)

 

 あるいはそれを見越して至高の御方は自分にマジックアイテムを渡したのかもしれない。そう思うと、自身の浅慮さに自害したくなる。(実際のところ、モモンガはナグモが不測の事態で逃走する場合に備えて、時間稼ぎの為に渡しただけだが)

 内心を悟られない様に、極めて無表情で香織に答えた。

 

「問題ない。休息は十分に取っている」

「でも、本当にいつ休んでるの? って思うくらい、いつも勉強してるみたいだし………」

 

 それに、と香織は顔を上げた。気遣わしげな顔には打算や邪心などが一切浮かんでいなかった。

 

「ひょっとしてステータスの事、気にしてるんじゃないかな、って………」

 

 ああ、とナグモは王宮での訓練初日を思い出す。

 訓練教官の騎士団長のメルド・ロギンスから、自己紹介と共に生徒達はステータスプレートと呼ばれるアーティファクトを手渡されていた。アーティファクトとはこの世界の現代の技術では再現できないマジックアイテムだが、ステータスプレートは複製が可能で、身分証として一般にも出回っているそうだ。そしてステータスプレートは文字通り、所有者の体力や魔力などの数値、天職と呼ばれるその人間の才能、そして技能(スキル)が可視化されるという代物だ。

 生徒達は流石に神の使徒として召喚されただけの事はあり、天職は千人に一人の戦闘系、ステータスもレベル1の段階でこの世界の人間の数倍から十倍はあるという非常に恵まれたものだった。

 ただ一人、ナグモを除いて。

 

「みんな酷いよ、南雲くんのステータスが低いからって悪く言うなんて」

 

 その時を思い出してか、香織の顔が不満気になる。

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:30

体力:30

耐性:30

敏捷:30

魔力:30

魔耐:30

技能:錬成・言語理解

 

 これがナグモがメルドに見せたステータスだった。ステータスこそトータスの一般の人間の三倍だが、非戦闘系で天職は十人に一人はいるというありふれた錬成師。しかも技能は生徒全員が持つ言語理解と、錬成師固有の魔法である錬成だけ。他の生徒達に比べれば、圧倒的に見劣りするステータスだ。

 当然の流れというか、そんなナグモのステータスを檜山を初めとした生徒達は嘲笑った。何人かの生徒はそんな行為に眉を顰めるものの、表立ってナグモを擁護する者などいなかった。今やナグモは召喚された中で一番の無能だと陰口を叩き合い、それに比べて自分のステータスが訓練でどれだけ伸びたかを自慢し合うのがクラスメイト達の密かな楽しみとなっていた。

 

「別に、どうも。連中の陰口程度、何とも思わない」

「でも、人の悪口で盛り上がるなんて最低だと思う。私、今のクラスの雰囲気が好きになれないよ」

 

 ナグモのぶっきらぼうな返答に何を思ったのか、香織は顔を曇らせた。

 

「なんか、みんな変わっちゃった。光輝くんも、龍太郎くんも。前から自信過剰な所はあったけど、ステータスが分かる様になってから態度が更に大きくなった気がするの。他の人達も、召喚された神の使徒だからって、メイドさん達に失礼な態度を取る人もいるみたい」

 

 そう言われてもナザリックの者以外の他人という存在に興味をもたないナグモにはその違いが分からない。適当な相槌を打とうとして、ふとナグモは思い直した。

 

(いや、待て。確か白崎香織は学校のクラスの中では交友関係も広く、クラスの人間達のステータスなどをそれとなく聞くのにうってつけなのでは?)

 

 召喚された人間達を調査するのも命令の一つだが、こちらの方は梃子摺るだろうとナグモは覚悟していた。至高の御方に人間嫌いと定められた自分が、今更人間達と混じってニコニコと応対するなど寒気がはしる思いだ。もちろんモモンガからやれ、と言われれば努力はするが。

 

(そう考えれば、白崎香織と友好関係を結ぶのは悪くない。少なくとも有象無象の低脳達を複数相手にするよりはマシだ)

 

 内心の打算を悟られない様に、ナグモは努めて柔らかい声音(といってもいつも通りの無表情だが)を出した。

 

「君も大変だな。こんな非常事態に周りの人間に気を配るとは」

「え? そんな事ないよ! 大変なのは南雲くんも一緒だよ!」

「僕は別にいい。たとえ異世界だろうと、やる事に変わりはない」

 

 逆に異世界に来てナザリックに帰れたから良かったと言うべきだが。もちろんそれを顔には出さない。

 

「君が良ければ話を聞こう。話をするのはストレス解消にも良い、というのはメンタルヘルスでも実践されている」

「いいの!?」

「ああ、構わない。僕も気分転換になる」

 

 何故か嬉しそうな香織にナグモは内心でほくそ笑む。これで怪しまれずに神の使徒達の情報を手に入れる手段を確立できた。

 

(しかし、ステータスの低い僕を心配とは……見当違いと知ったらどんな顔をするやら)

 

 〈虚偽情報(フォールスデータ)・ステータス〉。

 情報系魔法に対して偽の情報を提示する位階魔法で、ナグモは自身のステータスを誤魔化していた。メルドが光輝のステータスが初期値で100もある事を褒める姿を見て、ナグモは表示された値がトータスにおいて規格外だと知った。その為、他の生徒達のステータスをメルドが読み上げるのを聞きながら、不自然に見えない程度の数値に偽装したに過ぎない。

 無防備に笑顔で話し出す香織を注意深く観察しながら、ナグモはポケットに入ったステータスプレートを握り締めた。

 

ナグモ ?歳 男 レベル:100

天職:錬成師

筋力:500000

体力:600000

耐性:500000

敏捷:500000

魔力:700000

魔耐:700000

技能:錬成・言語理解・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作] [+高速詠唱]・薬物精製[+効能上昇][+精製速度上昇][+毒物百般]・機械操作[+精密操作][+遠隔操作] [+複数操作]etc……。

 

 

 

 




 タグにも書きましたが、ナグモのヒロインは一応香織の予定です。つまりナグモはヒロインを殺そうとしたり、自分の目的の為に利用しようとしているわけなのです。最低だコイツ……(←そんな展開を書いた人)。
 あとナグモのステータスは適当に書いたものなので、あまり深く考えないで下さい。次回あたりにモモンガさんのステータスを書こうと思ってます。
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