ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 ②、と言いつつ決着なのですが。
 ちょっと来週の更新は遅れるかもしれません。FGOのクリスマスイベントの参加の為に、急いでトラオムを攻略しないといけないので。


第百五十三話「深淵郷VS殺人卿②」

 ―――痛い。

 腹を刺された浩介は自らの血で服が濡れていくのを感じながら、頭の中はそれだけで占められていた。

 

「ああ、やはりいい……。人肉を斬る感覚は何にも代え難い……」

 

 倒れた浩介の耳にハルモニアの恍惚とした呟きが聞こえる。どうにか顔だけ動かすと、先程まで地面に倒れたハルモニアがいた場所には何も無くなっていた。

 

「驚きましたか? 実体のある分身など、幻影魔法では不可能ですからね。まさに“暗殺者"だけに可能な妙技なのですよ。まあ、分身の数だけ魔力が等分されてしまうという欠点がありますがね」

 

 ハルモニアは得意気に話しているが、浩介は聞いてなどいなかった。

 痛い。腹の傷口が燃える様に痛い。それなのに身体が寒い。血の気がどんどんと引いていく感触に、浩介は吐き気を催す寒さを感じていた。

 ―――死ぬ。

 かつてオルクス迷宮でレベルが違いすぎる骸骨騎士(トラウムナイト)と遭遇した時。その時よりも明確な死の気配を浩介は感じていた。

 

「いやはや、ともかく。君はとても頑張りました」

 

 パン、パン、とハルモニアが拍手をする。それを浩介は薄れそうになる意識の中で聞いていた。

 

「いつもは逃げようとする獲物を狩ってばかりなのですが、偶には戦闘も悪くない。君との戦いはとても愉しめましたよ」

 

 称賛するような口振りだが、浩介はまともに聞いていなかった。流れていく血液に自らの命の終わりを予感していた。

 

(もう………終わりにしてもいいよな? 頑張ったんだ……でも、無理なんだ。漫画の主人公みたいに異世界で戦うとか、無理だったんだよ………)

 

 ボンヤリと浩介は思ってしまう。ワケの分からぬまま異世界に連れて来られて、クラスメイト達からは濡れ衣を着せられてパーティーを追放された。異世界の生活は浩介にとって辛い事の方が多く、腹の出血の痛みから逃れられるならここで意識を手放した方がマシだとすら思い出していた。

 

「ええ、本当に君は“殺人卿”の()を相手に頑張りましたとも。ですから、ご褒美に———君と君の恋人を私のコレクションに加えてあげましょう」

 

 死に逝く浩介を見ながら、ハルモニアは得意気に話し出した。

 

「私は今まで多くの人間を殺してきましたがね、特に気に入った人間は屋敷の地下室に保管しているのですよ。一月前に殺した兄弟達など、最期までお互いを庇い合って感動的でしたよ……だから寂しくならない様に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それはきっと、普通の人間が見れば吐き気を催す様な光景だろう。

 だが、ハルモニアは涙さえ浮かべた感動の面持ちで自分が作り上げた地下室の光景を思い浮かべていた。

 

「人というものは死の間際において極限の美しさが現れるのです! これこそはまさしく魂の昇華! 私はエヒト神に代わり、神の国に招かれる様に魂を浄化してあげているだけなのです!」

 

 ピエロの様に狂った笑みを浮かべながら、ハルモニアは演説する。

 キンキンと音程の狂った声に―――力の抜けかけた浩介の指が、ピクリと動いた。

 

「だから感謝をして下さい! 死とは救いに他ならないのですから! ああ、心配せずとも大丈夫! 売りに出された君の恋人は、私が買い上げましょう! そうしてあの兄弟達の様に、二人仲良く首を並べてあげて―――」

 

 ギィンッ!

 

 突然だった。もはや息絶えたと思っていた浩介の身体が再び動いた。まるでバネ仕掛けの様に身体が起き上がり、短剣がハルモニアへと一閃されたのだ。演説に夢中だったハルモニアは驚きながらも、手にした二刀の刃(ジャマダハル)を交差させて死にかけだった筈の浩介の刃を防いだ。

 

「っ、驚きました。これが火事場の馬鹿力というやつですか? しかし―――」

 

 ギィンッ!

 

 再び繰り出された短剣の斬撃をハルモニアは防ぐ。だが、その速度は死にかけの人間が放つ物では無かった。

 

「なっ―――」

 

 ギィンッ! ギィンッ! ギィンッ!

 下水道路に連続的に火花が散り、辺りが瞬間的に明るくなる。三度、四度と繰り返された斬撃をハルモニアは防いだが、その表情から徐々に余裕が消えていった。

 

(馬鹿なっ……あの出血量ではもはや動けない筈。いや、むしろ刃を振るうごとに動きが洗練されて………!?)

 

 ハルモニアは浩介を見た。血の気を失った半死人の様な顔。しかし、身体は機敏に動いており、確かな体術でハルモニアは受けるのに精一杯になっていた。それは先程までの“暗殺者”の能力を持っただけの一般人ではない。まさに自動機械(キリングマシーン)の様にハルモニアへ淡々と、しかし着実に追い詰める為に刃を振るっていた。

 その内にハルモニアは気付いてしまった。浩介は―――呼吸をしていない。それどころか、腹の傷は塞がってないというのに流れる血が止まっていた。

 

「馬鹿なっ、不死者だとでもいうのか!?」

 

 瞠目しながらハルモニアは浩介の短剣を必死で受けた。

 ―――これは浩介がゾンビなどになったわけではない。遥かな昔、武芸者達は武器を抜いた瞬間に精神が切り替わったという。それは心構えの話だけでなく、文字通りの意味で彼等は覚醒するのだ。

 殺し合う為だけの肉体、生き残る為だけの頭脳に。

 試合の前に気を引き締める、などという次元ではない。武芸者達は脳の神経(サーキット)を変え、肉体もそれに呼応して変化する。筋肉は生物が使用するべきでない用途で活動し、血液は巡回ルートを変えて呼吸すらも必要としない戦い続けられる肉体を造り出す。

 異世界で“暗殺者”の天職に目覚め、過酷な生活から人格変化をも齎した浩介の脳神経。その特殊な脳神経は電磁波の様に目に見えぬ物を知覚させ、肉体は人間の常識を凌駕した機能を発揮していた。

 

「っ、だが、技術ならまだ()の方に分が……っ!?」

 

 “暗殺者”としての経歴(キャリア)が長く、()()も豊富なのは自分だ。そう思おうとしたハルモニアだが、ゾクッ! と殺気を自分の左目に感じた。反射的に左目を庇う様に左手の刃を上げる。だが―――。

 

「な、ぁっ……!?」

 

 刹那。がら空きだった脇腹に向かって浩介の短剣が振るわれた。もう片手の刃を保険に残していた為に防げたものの、あと数瞬でも遅ければハルモニアの脇腹は抉られていただろう。

 

「これは……()の技術!? 学んだというのですか、この短時間で……!」

 

 “暗殺者”のスキル:幻踏。

 先程まで幻惑の殺気で浩介を翻弄していたハルモニアだったが、今度は浩介がそれを行っていたのだ。それは武術で言うならば気当たりと言うべきだろう。ハルモニアは浩介の放つ殺気によるフェイントにかかり、来るはずの無い刃に無駄な動きを強いられていた。

 

 そもそもの話として、ハルモニアはミスを犯していた。最初から浩介を殺すのならば、手早く殺すべきだったのだ。

 だが、獲物を甚振ってから殺すという彼の嗜虐的な性格、そして浩介が自分と同じ“暗殺者”と聞いて技術差を見せつけてから殺そうという遊び心が仇となった。

 オルクス大迷宮の悲劇以来、追放された浩介は王宮にいる他の“神の使徒”達に比べて戦闘経験が不足している。

 だが、命懸けの死闘は時に訓練よりも密度の濃い経験となる。

 自分より格上の、それも同じ天職との戦闘は浩介のレベルを格段と引き上げる切っ掛けとなったのだ。

 

 二刀の刃で必死で受ける中、ハルモニアは浩介の顔を見た。血の気が失せてきた青白い顔。だが、その眼光だけは決して死んでおらず、戦いながら自分を見ていた。

 ゾクリ、とハルモニアの背筋に寒気が走る。

 まさしく深淵。

 こうして向かい合っているというのに生気どころか気配すら感じさせず、ただ淡々と自分の命を刈り取ろうとしてくる。まるで闇の深淵を覗き込んだ様にハルモニアの背筋を震わせた。今まで数多の人間を"暗殺者(殺人卿)"として狩ってきていた彼は、生まれて初めて狩られる立場になったのだ。

 

「ふ、ふふっ……ありえない」

 

 受け止めるので精一杯の剣戟の中、ハルモニアからふと呟きが漏れる。

 

「こんな事が……あっていい筈がないっ!!」

 

 狂ったピエロの様な笑みを浮かべ、ハルモニアは自分の奥の手である分身体を実体化させた。残った魔力が等分され、かつてない程の虚脱感を感じる。だが、それを浩介への殺意で捻じ伏せた。

 

()は殺人卿! 誰よりも何よりも殺人を愛する者!』

 

 二人に増えたハルモニアにより、四刀の刃が浩介に襲い掛かる。手数が増え、押され気味だったハルモニアは浩介の刃と拮抗した。

 

『我殺す故に我在り! 故に私こそが……我こそが生まれついての狩人なのだっ!!』

 

 四方八方から四対の刃が振るわれる。浩介の命を刈り取らんと振るれた刃は―――二対の刃によって阻まれた。

 

「はっ―――!?」

 

 ハルモニアは見た。浩介の身体―――それが今、二人に増えてハルモニア達の刃を防いだ。分身の浩介が、ハルモニアの分身体の喉を短剣で斬り裂いた。

 

「嗚呼………」

 

 身体を維持できなくなり、霧散した分身体を見ながらハルモニアは呟く。分身と本体……二人の浩介が短剣を振るう。

 

『―――深淵に眠れ』

 

 二人の浩介が断罪の刃を振るう。ハルモニアは二刀の刃で身体を守ろうとしながらも、その目は浩介の振るう刃に見惚れていた。

 

「なんて美しい………」

 

 次の瞬間。ジャマダハルがバラバラに斬り裂かれ、二対の刃が描く幾閃もの斬撃にハルモニアは全身から血を流して地面に倒れた。

 

 ***

 

 セバスがその場に来たのは、全てが終わってからであった。

 囮として引き付けていたフリートホーフの用心棒を全員始末し、浩介の援護の為に下水道の通路へと入ったのだ。これがアウラならば浩介が残した足跡などの痕跡を頼りにすぐに追いつけただろう。しかし、その様な斥候(スカウト)のスキルを持たないセバスは、結局浩介の気配を頼りに入り組んだ下水道網を探すしか無かったのだ。それでようやくの思いで浩介のいる場所に辿り着いたのだ。

 そこには浩介とスーツを着た男が地面に倒れていた。セバスは浩介の元へ駆け寄る。背筋に冷たい汗が流れるセバスだったが、浩介の身体に触れて安堵の溜息を漏らした。

 傷は浅くない。だが息はきちんとしており、これならば気功で治せば助かるだろう。

 浩介の腹の傷をとりあえず塞いでいると、地面に倒れたもう一人の男がセバスに声を掛けてきた。

 

「ふっ……まさか貴方が報告にあった侵入者の老人とはね。こんな所でお会いするとは思いませんでしたよ、セバスさん」

 

 地面に倒れたまま、ハルモニアは苦しそうな顔ながらも笑ってみせた。ハルモニアの傷も中々に深い。特に両手足から出血しており、力が全く入ってない所を見るに腱を切られて動かす事が出来ないのだろう。

 だが見た目の出血こそ酷いものの、こうして口が利けるくらいには命が繋ぎ止められている。ある意味で理想的な手加減(半殺し)具合だった。

 

「何でしょうね……この少年と戦った事で私のレベルも引き上げられたのか、今の私なら分かりますよ……セバスさん、貴方は実はとても強いでしょう?」

 

 浩介が深淵郷モードで備わっていた電磁波を見る程の眼力。そのスキルを今になって、ハルモニアも目覚めていた。その目で視えるセバスの電磁波は隠しているのか感じ辛いが、それでも得体の知れない―――それこそ、()()()()()()()を前にしたかの様な威圧感を感じ取ったのだ。

 結局、自分の命運はこの化け物(セバス)に敵対した時点で尽きていたのだ。そんな事にも気付かずに殺人の愉悦に浸っていたなど、今となっては失笑するしかない。

 

「その少年も天職だけが取り柄の有象無象と変わらないと思っていましたがね………貴方達を侮ったのがフリートホーフ(我々)の運の尽きの様です。しかし………彼には少しガッカリさせられましたよ」

 

 浩介を見直す発言をしたと思えば一転、ハルモニアは自分の身体の傷を見て失望した声を漏らした。

 

「ええ、ガッカリです。短剣術、幻踏、夢幻(分身)……あれ程に鮮やかな技は初めて見ました。彼は私などよりずっと“暗殺者”の素質に恵まれているのでしょう。それなのに………私を殺していないなんて。全く以て理解できない」

「………それが彼の人間としての魂の本質なのでしょう」

 

 応急措置を終えたセバスは、浩介を優しく地面に横たえながらハルモニアに言った。

 もしもの時は躊躇うな、とセバスは言った。それは浩介が生き残る為に必要な事だと思ったからだし、仮に殺人を犯したとしても状況から見れば浩介を責める者はまずいないだろう。

 だが、浩介は最後まで敵を殺すという手段を取らなかった。自分が殺されるかもしれない、という状況にも関わらずだ。人間は極限の状況になると本質が浮かび上がると言うが、この選択こそが浩介の人間としての本質なのだろう。

 

「彼はとても優しい心を持った人間です。貴方の様に、血の臭いを香水と履き違える……下衆な人間では理解出来ないでしょう。そして………私も貴方の様な人など、理解したいとは思いません」

「………はっ」

 

 瞬間。ハルモニアの表情が何故か寂しげな色を見せた。だが、次の瞬間には法廷弁護士としてセバスの前に現れた笑顔の仮面を纏っていた。

 

「貴方には聞きたい事があります。貴方の口から伺えるなら、私も手間が省けるのですが」

「ふ、ふふ……残念ですが、これでも私は弁護士ですので。顧客の情報をおいそれと漏らすわけにいかないのですよ」

 

 セバスは溜息を吐きながら、ハルモニアに近寄る。彼の意思など関係ない。“傀儡掌”で操れば、ハルモニアは自分の意思と無関係に情報を話すだろう。

 そうして―――セバスが浩介から離れようとした時。セバス程の達人であっても、緊張が緩むほんの刹那の隙。

 ハルモニアは最後の力を振り絞って分身を顕現させた。

 

「っ!」

 

 セバスは即座に臨戦態勢に入る。その背にいる浩介を守る為に分身のハルモニアがどんな手段で浩介を狙おうとも、即座に迎え撃てる構えを取った。ナザリックでも指折りの実力を持つセバスが守りに入れば、ハルモニアの分身はどう足掻こうと浩介に指一本も触れる事なく拳で打ち砕かれるだろう。

 だが、そうして浩介を守ろうとしたからこそハルモニアの狙いを看破出来なかった。

 

「なっ………」

 

 セバスが驚きの声を上げる。ハルモニアの分身はセバスや浩介に向かわず―――本体の胸に刃を突き刺した。

 

「ぐ、ぶっ―――!」

 

 心臓を貫かれ、ハルモニアが断末魔の呻きを上げる。

 

(これで、いい……! 私からの最期の嫌がらせです。貴方達の探している恋人の居場所は、私ごと葬らせて頂きます……!)

 

 それが“殺人卿”だった自分の名を地に付けた罰だ。人質の少女が何処に運ばれたかなど自分以外は知らず、フリートホーフの人身売買所などフューレンにはいくつもあるのだ。その全てを一斉に摘発でもしない限り、彼等は人質の少女が売られる前に取り返すなど不可能となる。最期の悪足掻きに成功して、ハルモニアは笑顔を浮かべた。

 

(ははは………ああ、でも……残念だ……)

 

 本体であるハルモニアが致命傷を負った事で、分身体が消滅していく。

 狂ったピエロの様な笑顔―――幼少期、父親に毎日の様に折檻される中で出会えた自分の唯一の理解者であり、長年連れ添った唯一無二の親友でもある“殺人卿”。分身体の中に彼はその姿を見出していた。

 

(彼とお別れだなんて……それに……やっと、殺人卿()以外で、私を理解できる同族と……出会えたと……思った………のに……………)

 

 そうして。誰にも理解されなかった殺人鬼は一人きりのまま、この世から去った――――――。

 

 ***

 

「しまった……まんまとしてやられました」

 

 急いでハルモニアに駆け寄ったセバスだが、既に脈が無い事を確認して苦渋の面を浮かべていた。

 セバスが引きつけていた用心棒達は誰も浩介の人質である少女の居場所を知らず、唯一知っているとすればこの男だったのだ。その男が自ら命を絶った今、セバスは人質の少女―――ノイントへの手がかりを失ったも同然だ。それこそ浩介は何を頼りにしてこの場所まで辿り着いたのか、セバスの方が聞きたいくらいだった。

 セバスは渋面のまま、地面に横たわっている浩介を見る。腹の傷は気功で癒やしたものの、戦闘で無理をしたのか未だに目覚める気配は無い。このまま目覚めるのを待ちたい所ではあるが、そうしている間にも彼の人質は何処か知らない場所に連れて行かれる可能性がある。

 

「………致し方ありません。コースケくんには悪いですが、まずは彼の身を最優先にしなくては」

 

 浩介を背負い、セバスは下水道網を後にする決断をする。この場所は酷く入り組んでおり、セバス一人で探そうともしても見つからないだろう。そして敵地とも言えるこの場所に浩介を放置したままにはしておけない。とにかく地上に上がり、浩介を安全な場所に置いて手を講じなくては―――。

 そう思っていると、突然セバスに〈伝言(メッセージ)〉の魔法が呼びかける感触がした。

 

『セバス殿っ! いま何処におられるか!?』

 

 受信するとセバスの頭の中にティオの声が響いてきた。彼女は緊急連絡用にとナグモが作ったマジックアイテムを所持していた為に、セバスとだけは〈伝言(メッセージ)〉の遣り取りが行えたのだ。

 

「ティオ? どうしたのです、そんな慌てた声で―――」

『レミア殿が……レミア殿がいなくなったのじゃ!』

「なんですって!?」

 

 ティオらしからぬ冷静さを欠いた声に訝しんだセバスだったが、齎された報告にセバスも驚愕の声を上げていた。

 

『妾も今になってようやく気付いたのじゃが、レミア殿の部屋に書き置きが残されていて、妾達にはこれ以上迷惑はかけられぬと………とにかく、すぐに屋敷に戻って欲しいのじゃ!!』

 

 ティオも混乱しているのか、話の内容が要領を得なかった。しかし、切迫した声にセバスは自分の知らない所で事態が大きく動いていると知った。

 

「分かりました、すぐに向かいます!」

 

 セバスは〈伝言(メッセージ)〉を切り、浩介を抱えたまま地上への道を急ごうとした。こうなっては仕方がない。地上に出たら浩介は近くの救護院にでも預け、自分は屋敷へすぐにでも戻らなければならない。

 しかし、走りだそうとしたセバスに再び〈伝言(メッセージ)〉が掛かった。ティオから何か追加の報告かとセバスは受信し―――その声を聞いた。

 

『セバス。お前は今、何処にいる?』

「ア、アインズ……様………」

 

 それはセバスにとって何よりも優先しなくてはならない絶対の支配者の声。

 その声にセバスは走る事すら忘れ、しばし呆然としてしまった。




>浩介の覚醒

 元ネタは空の境界で刀を持った時の両儀式。あんな感じの自己暗示による変化が深淵郷モードの時に発動したと思って下さい。十分に人間を辞めてる気がするけども。

>我らがアインズ様

 来ちゃったよ……最悪のタイミングで、最凶な御方が。
 何しに来たよアインズ様? というのは次の話でやります。
 これでやっと……三ヶ月ぶりくらいに、本当にやっっっっっと! 主人公サイドにスポットライトを当てられますわ(笑)。
 いやもう、主人公は浩介で良いんじゃね? と作者も思いましたけどね?
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