ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 GWは旅行に行くし、ゆっくり書こうかなぁ……と思っていたら、何故かお気に入り登録しているありふれ作者さんの更新ラッシュ。こんなのを見せられたら、こっちも対抗して書くしかないじゃないですか。


第百六十八話「深淵へと至る魔眼」

「ふッ!」

 

 先手を取ったのは浩介だった。彼は愛用の短剣を握り、ナグモへと踏み込んでいく。

 まだ浩介が“神の使徒”と呼ばれていた時、ナグモの戦闘方法は短い間であるが目にしていた。ナグモは非戦闘職の“錬成士”だが、地面を操って様々な形状に変える戦い方をしていた。素早く動き回る近接戦闘が主な手段である浩介からすれば、フィールドを変えられてしまう方が厄介だ。ナグモには他にも触れた相手の骨を変形させる技があるが、それを恐れて近寄らない方が下策だ。ここは危険を承知で自分の得意な戦闘に持ち込むしかないと判断していた。

 

 キィンッ! キィンッ! キィンッ!

 

 夜の森に金属音が幾重にも木霊する。浩介が繰り出す斬撃をナグモは手にしている黒傘で全て受けきっていた。

 

「この速度……王城にいた時よりも上がっているな。そこらのモンスターを倒した程度ではここまでのステータス上昇は見込めない筈だが。ふむ、興味深い」

「くっ、その傘は鋼鉄製か何かかよ!?」

 

 ナグモが涼しい顔で短剣の攻撃を防ぐ中、浩介は冷や汗を流していた。傘が武器など何の冗談かと思っていたが、見た目に反して高い硬度を持っている様で浩介の短剣で傷一つ付いていない。その上、“暗殺者”である浩介が本気で短剣を振るっているというのにナグモは汗一つかかないどころか、まるで自分を観察しているかの様な余裕さえも感じていた。

 浩介は知らないが、ナグモもまた成長していた。本来の戦闘職が“ガンナー”である為に以前は格闘などの近接戦を苦手としていたが、武器を黒傘“シュラーク”に変更してからはコキュートスに近接戦闘の指導をして貰い、自身でも鍛錬を行っていたのだ。その為に階層守護者内で最強格の面々には及ばないものの、近接戦闘でもそれなりに戦える術を編み出していたのだ。こうして浩介と斬り合いを演じているのも、ナグモの中では自身の格闘戦の動きがイメージとズレていないか、という確認作業でしかなかった。

 

「そうだな……まずはこれを試してみるか」

 

 しばらく浩介の攻撃を受けていたナグモだが、独り言の様に呟いた後に動き出す。カチッと柄からスイッチを押した様な音が響き、今度はナグモから黒傘“シュラーク”を浩介に向かって振るう。それを浩介は短剣で受け止めようとし―――。

 

「駄目っ! 避けて!」

 

 地面に倒れているノイントから叫び声が上がる。それに反応して、浩介は咄嗟に地面へ倒れ込む様に横っ跳びに避けた。

 そして、それが正解だった。

 ナグモが黒傘“シュラーク”を振るった先。先端から直線上の軌道の地面が抉れ、それどころか更に軌道上の先にあった木を粉砕した。

 

「なっ………なんだよ、これ………」

 

 間一髪で避けられた浩介は呆然と抉られた地面を見る。ノーモーションで“錬成”を使ったのか? そう思った浩介だが、軌道の先にある木がまるで分解でもされた様に粉状に崩れ落ちるのを見て考えを改めた。鉱物を変化させる“錬成”ではあんな現象は起きない筈だ。そう思ってナグモの黒傘“シュラーク”を見た時、彼が得た特殊な目が一連の現象の正体を見抜いた。

 

「いや……あの傘、魔力が渦巻いている……?」

「ほう……驚いた。よく分かったな」

 

 ナグモが意外そうな声を上げる。電磁波すら感知する浩介の眼力―――その目には今、ナグモの黒傘に魔力が螺旋状に纏われ、さながら掘削ドリルの様に振動している様に見えていた。それを見破った浩介にナグモは表情を変えずに称賛する。

 

「御明察の通り、この黒傘“シュラーク”は触れた物を分解させる機能が付いている。もっとも、つい最近ある魔物を研究して取り付けた新機能だがな」

 

 その言葉に地面に倒れたままのノイントが顔を伏せる。ナグモの黒傘が見せた“分解”が何を元にしたのか、彼女には身に覚えがあり過ぎた。おそらく自分の姉妹達を解剖して、その能力を徹底的に解析したのだろう。

 ナグモが黒傘を無造作に振るう。それだけで衝撃波が出て、地面にある石が微細な粒子状になって“分解”された。

 

「人間に当たればどうなるかは……言わなくても分かるだろう。まだやるのか?」

「くっ、ならば………当たらなければ良いだけの事!」

 

 浩介は“深淵卿モード”を発動させる。脳が活性化され、眼力のみならず全ての感覚が鋭敏化される。その中で浩介は動いた。

 当たれば死ぬ。それを理解しながらも、手を伸ばさなければ勝機は掴めない。紙の様に薄い可能性だが、ノイントと共に生きていく為の勝利を目指して。

 走り出すと同時に懐から複数のダガーを取り出す。そしてナグモへと投げ付けた。

 

「無駄だと分からないのか?」

 

 どこか苛立ちの混じった声でナグモが投げられたダガーを見る。そもそもナグモには“飛び道具無効化”の装備がある。先程、浩介が投げたダガーが当たらなかったのは既に見ていた筈だ。投げられたダガーは、やはりナグモに当たる前に勝手に軌道が逸れ―――。

 

「む?」

 

 ナグモは声を上げる。複数のダガーの内、他のダガーの影に隠れる様にして放たれた一本。それは“飛び道具無効化”の影響を受ける事なく、真っ直ぐにナグモへ向かっていた。見れば、そのダガーにだけ魔力が込められている。他のダガーは囮であり、本命として魔力を込めて威力を上げたダガーを放ったのだろう。

 通常の投擲武器なら無効化されるが、魔力を込めた特殊な投擲なら無効化されない。一度の攻防でその特性を見抜いた上に、有効的な策を瞬時に組み上げたのだ。しかし―――。

 

「遅い」

 

 ナグモが黒傘を振るう。それだけで浩介の魔力が込められたダガーは“分解”されて砕け散った。自分に迫っていたダガーを排除し終えたナグモは投げてきた浩介の方向を見ようとして――――――頭上に違和感。

 

「シッ!」

 

 頭の真上。すなわち普通の人間にとって死角となる場所から、浩介が刃を煌めかせて降ってくる。当たらないのを承知でダガーを投げ、ナグモがダガーの処理に気を取られた瞬間、超人的な跳躍力でナグモの頭上へと跳び上がったのだ。その速度はまさに一瞬の早業だ。頭上という死角、重力による落下速度、“暗殺者”として隙をついた絶死の瞬間。それら全ての要素が重なり合い、浩介の短剣は死神の刃の様にナグモへと迫る。

 

「……やはり、遅い」

 

 だが、その刃は届かなかった。悲しいかな、いかに“暗殺者”として絶技を極めた一撃であっても、浩介のステータスはナグモに遠く及ばない。浩介の不意をついた一撃など、ナグモにとっては十分に反応できる速度だった。ナグモは黒傘を反転させる。そして―――切先が浩介の身体を貫いた。

 

「ガッ!?」

 

 短剣は届く事なく、浩介の身体が刺し貫かれる。ナグモはいつも以上に表情を消した顔で、黒傘“シュラーク”に貫かれた浩介を見つめ―――すぐに眉を顰めた。

 ドリルの如く魔力を振動させる黒傘の切先。それで背中まで貫いた筈の浩介の身体は、血飛沫の代わりに魔力を霧散させて消えた。

 

「なるほど………“分身”だったか」

 

 消えていく浩介の分身を見ながら、ナグモは淡々と呟く。見れば、先程まで地面に放置されていたノイントの姿も消えている。おそらく浩介はナグモがダガーの対処に気を取られた瞬間に“分身”を行い、“分身”にダガーを囮にした必殺の一撃を繰り出したかの様に見せかけ、本体は気配を消した上でノイントを回収して逃げ出す作戦だったのだろう。

 ナグモとの力量差をすぐに感じ取り、正面切っての戦闘ではなく逃走に全力を注いで策を打った。それを瞬時に考えて実行に移した姿は、考えなしに動く愚か者を嫌うナグモからしても好ましく感じるくらい見事だった。

 

「だが………やはり逃すつもりはない」

 

 浩介が普段からして気配が薄く、況してや“暗殺者”を天職にしている彼が本気で隠れたらナグモでも察知するのが難しいのは承知している。しかし、それでも慌てた様子は無くナグモは呟いた。

 ここで“真の神の使徒”(ノイント)を逃せば、かつてエヒトルジュエが解放者達を追い詰めた時の様に、人間を洗脳して争いの火種を作るのだろう。アインズの世界征服の為―――そして、今日ようやく再会できた海人族の親子の為。ノイントは確実に始末しなくてはならなかった。

 ナグモが魔力を解放する。すると彼の周りに複数の魔法陣が展開される。

 反重力で浮かぶ円盤にロボットアームや銃が取り付けられた物、動きの滑らかさに生きていると錯覚させられそうな機械の大型の大鷲や猟犬―――ナザリック第四階層でも索敵能力に優れたマシン・モンスター達が次々と召喚された。

 

「追え。奴等を逃がすな」

 

 ナグモの命令を受け、マシン・モンスター達は一斉に動き出す。彼等の視界やレーダーと同期させたモニターを起動させながらナグモは呟く。

 

「……保険は打っておくか」

 

 ***

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 

 夜の森を浩介は駆ける。ノイントを抱えながらも、その速度は普通の人間が走るより速く、森の中の夜道でも物ともしない様だった。しかし、浩介の息はフルマラソンでもしているかの様に上がっていた。

 “分身”は囮や撹乱を行なうのに便利なスキルだが、体力や魔力を大きく消費してしまう。“神の使徒”として一般人より高いステータスを持つ浩介であっても、そう何度も打てる手段ではないのだ。

 

「コースケ、お願いですからもう私の事は置いて行って―――」

「絶対に嫌だ」

 

 胸の中でノイントが弱々しい声を上げたが、浩介は頑とした態度で譲らなかった。

 

「ノイントさんを置いて逃げるくらいなら、死んだ方がマシだ」

「私は……私は、貴方にそんな風に思われる相手なんかじゃありません!」

 

 ノイントは思わず大声で叫んだ。

 

「あの男のいう通りなのです! 私は神―――エヒトルジュエ様の配下であり、今まで人間達を操って危害を加えていました! エヒトルジュエ様がそう命じたから! 人間達を遊戯の駒ぐらいにしか思っていない狂った神の言う通りに動いていた人形、それが私の正体なのです!」

 

 それは血を吐く様な告白だった。今までひた隠しにして、誰にも言わなかった自分の正体。それをノイントは浩介へ涙ながらに語る。

 

「あの修道院にいたのも、追っ手である魔導王達から逃げる為だったのです! それで今まで人間のフリをして貴方達を騙してきただけ! そんな私の為に……命を捨てないで下さい!!」

 

 ふいに浩介の足が止まる。ノイントは堪らず顔を伏せてしまった。

 ああ、言ってしまった。真実を告白した恐ろしさで震えそうになる。後悔する気持ちが押し寄せてくるが、口に出したものは戻せない。

 だって、こうでもしないと彼は諦めてくれないからだ。あの魔導国の使者は自分など及ばないくらい強過ぎる。そんな相手から狙われたなら、もう自分の運命は決まってしまっている。死にたくないという気持ちはあるが、それに浩介を―――愛した男が巻き添えになるなんて耐えられない。

 

「………なあ、俺の事を好きだって言ってくれたこと。それも演技だったのか?」

「っ! ………そう、演技です………あなたの事など、私は最初から何とも………っ!」

 

 何とも想ってなどいない。そう続けようとした言葉が、どうしても出て来ない。ただの一言の筈なのに、それを口にしたくなかった。

 生みの親とも言えるエヒトルジュエからは、命令通りに動く人形ぐらいにしか見られていなかった。人間達からは“天使”として見当違いな畏怖の目で見られていた。浩介は、そんなノイントを生まれて初めて“真の神の使徒”という虚飾を抜きに見てくれた相手なのだ。

 生まれて初めて好意を抱かれ、生まれて初めて愛されて―――生まれて初めて、愛して。

 だからこそ、ノイントはこの感情を否定する言葉が吐けなかった。

 

「ふぅ………相手を騙すなら、そんな泣きそうな顔にならないでくれよ」

 

 やれやれ、という口調で浩介はノイントを近くの木の根本へ下ろした。

 

「あっ………」

「このスキルを開眼したからなのか、なんか目で見た相手の感情も分かる様になったんだ。ノイントさん、自分も騙せない様な嘘はつかない方が良いですよ?」

 

 浩介は優しく言いながら、懐中にあった物を取り出す。

 それは、ずっと渡せずにいたノイントへのプレゼント。セバスの店で買った綺麗な櫛だった。

 

「これ、ずっとノイントさんに贈ろうと思っていたんです。受け取って下さい」

「でも………」

 

 迷う素ぶりを見せるノイントへ、浩介は押し付ける様に渡した。そしてノイントの目を真っ直ぐ見ながら言った。

 

「ノイントさんの正体は驚いたけど、やっぱり俺はあなたの事が好きだ。俺は、ノイントさんを愛している」

 

 その言葉にノイントは涙が出そうになるほど嬉しくなる。胸が一杯で、言葉にも出ない感情。それがノイントの中を満たした。

 

「だから、俺は絶対にノイントさんを護るよ。たとえ神様が敵であっても」

 

 そう言って、浩介はノイントに背を向ける。来た道を戻ろうとする彼を見て、ノイントは彼のやろうとしている事に気付いた。

 

「ま、待って……コースケ! お願い、待って下さいっ!!」

「大丈夫。あいつに諦めてくれる様に説得するだけだから。ちゃんと戻ってくるから、ノイントさんはそこで待っててくれ」

 

 まるで、ちょっとした用事を済ませるかの様に浩介は笑顔を見せて歩き出す。その背に追い縋ろうとするが、ナグモとの戦闘で傷だらけになったノイントの身体は言う事を聞いてくれなかった。浩介が木立の中に消え、ただ一人残されたノイントは彼から貰った櫛を握り締めながら天へと祈る。

 

「神様……お願いします……! 私はどうなっても構いません……だから、どうか彼の命を助けてあげて下さいっ……!」

 

 元・主人である神は、決して助けない。それを承知しながらも、地に堕ちて天使から人間となった少女は祈り続けた。

 

 ***

 

 しばらく歩き、浩介の耳に異音が届いた。それは中世文明なトータスでは久しく聞かなかった音―――モーター音を内部から響かせたマシン・モンスター達が浩介を取り囲んだ。

 異世界だからってもうなんでもありなファンタジーだな、と他人事の様に考えているとマシン・モンスターの一体からスピーカー越しにナグモの声が響く。

 

『あの人形はどうした?』

「……彼女ならもう逃げた。とっくに遠くへ行ったさ」

『すぐにバレる嘘などつくな……あの人形をここへ連れて来い。そうすれば、お前の事は見逃してやる』

 

 それはナザリックの者として見るならば、破格の条件だった。人間などいくら潰しても構わない虫ケラという倫理観しか持ち合わせていないナザリック(異形種の集団)からするなら、浩介など一緒に殺しても何も問題はない。だが、ナグモは何故か浩介だけは見逃すという選択肢を与えたのだ。

 だが、たとえその事を知っていても浩介の答えなど決まっていた。

 

「それは出来ない。俺はノイントさんを心から愛している。ノイントさんが神が作った人形だとか、そんな事は関係ない。俺達を引き裂くなら………神様でも、元クラスメイトでも容赦はしない」

 

 スッと短剣を構えながら浩介は宣言する。立ち向かうは機械の身体のモンスター達。浩介にとっては未知の相手であり、そして特殊な眼で視る限り、今まで相手にしてきた相手の誰よりも強いだろう。

 

『………後悔しないのだな?』

「ない」

 

 即答だった。恐れを全く抱かず、浩介はマシン・モンスター達と対峙する。

 

「それにしても………南雲、お前って意外といい奴だったんだな」

『………どういう意味だ?』

「問答無用に殺しにくるかと思ったのに、わざわざ確認を取ってくれてるだろ。もっと冷たい奴だと思ってたよ」

 

 浩介の指摘に、スピーカー越しにナグモが押し黙る気配があった。それは予想外の事を言われた様な驚きや戸惑いが感じられた。だが、それも一瞬だ。再びスピーカーから聞こえた声は、ナザリックの階層守護者としての冷酷さを取り戻していた。

 

『……その恩情もここまでだ。自らの意志で僕の邪魔をするというなら、お前は取り除くべき障害に過ぎない』

 

 それが合図となった様にマシン・モンスター達の敵意が一斉に浩介に向けられる。内蔵されていた銃器や刃物を向け、レーザーポインターが浩介へと一斉に向けられた。

 

『お前はあの低脳な集団の中ではマシな部類だったが………ここで死ね』

 

 そして、一斉にマシン・モンスター達から銃声が鳴り響いた。

 無慈悲な銃弾の雨。それは人間一人をミンチに変えるには十分過ぎる火力だ。

 一秒後には無残な姿に変わった浩介がいるものとナグモは予想し―――次の瞬間、マシン・モンスターが一体崩れ落ちた。

 

『なに………?』

「俺は……“我”はここで死なぬ」

 

 一体からの映像が途切れ、別の個体から映している映像を見てナグモは驚きの声を上げる。そこには超人的な速さで銃弾を避け、マシン・モンスターに短剣を突き立てた浩介がいた。

 

『“限界突破”か? だが、その程度のスキルならば予測の範囲内だ。一定時間を過ぎれば、魔力切れを―――』

「否。もはや我に限界など無し」

 

 再び浩介が動く。センサーに反応したマシン・モンスター達が再び銃弾やレーザービームを発射する。その全てを―――浩介はアクロバティックな動きで避けた。そして、一閃。

 マシン・モンスターの装甲はナザリック技術研究所で独自に開発された金属で出来ており、軽量でありながら鋼鉄を凌ぐ硬度を持つ。それだというのに―――浩介に短剣を突き立てられた途端、マシン・モンスターの機能が停止した。

 

『何を……何をした?』

「我の魔眼………もはや気配を捉えるだけに非ず。我は今、死の極地へと至らん」

 

 浩介の目―――それは今、青く光っていた。それは蒼く、深淵へと沈み込む様な色でこの世に在らざる物を視ていると感じさせた。

 遠藤浩介は元々からして気配が薄い少年だ。地球にいた頃から素質はあり、異世界に来てエヒトルジュエによって“暗殺者”の天職を植え付けられた事でその才能は飛躍的に伸びた。ともすれば、“勇者”である光輝以上に浩介にとって“暗殺者”は文字通りの天職だったのだ。

 そうして電磁波を捉える程の眼―――それは死に瀕した危機を経て、そして大切な少女を守る為にどこまでも深淵へと至る決意をした少年に脳を変革させ、通常の人間とは異なる機能(せかい)すら視せる器官と化したのだ。

 それは―――電磁波を超え、原子そのものを視る魔眼。物体の最小単位の構成物質を捉え、そこに微かに視る原子構造の綻びを捉える程の魔眼。そうして綻びを『線』と捉え、線の重なりを『死点』と捉えてあらゆる物に死を与える眼。

 地球にいた頃、浩介がとある漫画で見た主人公の異能。それを脳を活性化させる“深淵卿”が再現させ、フィクションの能力を現実へと引っ張り出したのだ。

 

「教えてやる―――これがモノの死だ」




>ナグモ

 ……実は浩介を殺す事に迷いが生じている? いずれにせよ、あまり乗り気ではなかったりする。

>深淵へと至る魔眼

 はい、はっきり言います。型月の『直死の魔眼』です。もう“暗殺者”の究極能力となると、これかFGOの初代様ぐらいになってくるんですってば……。クロス作品で関係ない作品から能力を出すとかルール違反な気がしますけど、そこは漫画版月姫あたりを読んでいた浩介が“深淵卿”スキルで再現したという事で一つ。というか、これくらいのジョーカーを持たせないとナザリックの階層守護者と戦うなんて無理ゲー過ぎるんですってば。

 ……駄目?(土下座)
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