ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

209 / 223
またも期間が空いてしまって申し訳ありません。

リアルで転職を考えていたり、それに伴って資格取得の為に勉強を始めたりなど忙しくて執筆の時間が中々取れませんでした。

これからも以前より更新が遅くなるかもしれませんが、どうかこの作品を最後までお付き合い頂ければ幸いです


とりあえず――――やっと会えたね♪


第百九十五話「再会は劇的に」

「ウィーンダムに魔物の大群? このタイミングでか?」

『そうです。それで王女は自分は街に残って陣頭指揮をとり、“作農師"の女達にウルから救援を呼ぶ様に要請していました』

 

 時間は少し前に遡る。ルプスレギナから緊急の“伝言(メッセージ)”を受け取ったアインズは、その内容に眉根を寄せた。

 

(解放軍のリーダーと作農師、組織の屋台柱の二人が本拠地を離れた所に魔物の襲撃……出来過ぎだな)

 

 これを偶然だとはアインズも思っていない。十中八九、解放軍を邪魔に感じてる者の仕業だろう。

 

「最近来たという勇者の元・仲間達はどうしている?」

『こっちも二手に別れました。一人は王女側、もう一人は私と一緒に“作農師”側ですね』

「……なるほど」

 

 ほぼクロだな、とアインズは直感的に思った。その二人が王女達と合流したタイミング、そしてわざわざ二手に別れた事など非常に怪しいと言わざるえない。

 

『アインズ様、どうしましょうか? さすがにこうなったら二人同時に守るのは難しいですが……』

「そうだな。とりあえずルプスレギナは畑山先生……“作農師”の女を何があっても守れ。王女の方は私がどうにかしておこう」

『申し訳ありません。アインズ様の御手を煩わせてしまって』

 

 念話からでも申し訳なさそうな気持ちが伝わってくるルプスレギナに気にするな、と告げてアインズは“メッセージ”を切った。これでルプスレギナは少なくとも愛子の保護はやってくれるだろう。解放軍の屋台柱という事もあるが、愛子がナグモのイジメに加担した教師ではなかったと知った今では出来る限り死んで欲しくなかった。

 

「サトル様。どうかされましたか?」

 

 アインズが“メッセージ”を終えたのを見て、ユエが声を掛けてきた。場所はウィーンダムから少し離れた冒険者ギルド併設の宿屋だ。リリアーナの要請は冒険者ギルドからの依頼という形で来ていた為、破談になったにせよギルドに報告しなくてはならなかった。転移魔法で魔導国まで一気に戻っても良かったが、冒険者モモンは徒歩でウィーンダムまで行った事になっているので、往復にかかる時間のアリバイ工作をする為に手頃なクエストでも受けようと立ち寄ったのだ。そうして仲直りしたので久々に個室でユエと二人きりになれたアインズだが、残念ながら二人の時間は早々に終わった様だ。

 

「ナグモと香織を呼んできてくれるか? 二人と話し合って決めたい」

 

 ***

 

「大規模な魔物の動員ですか……」

「ああ。仮にこれが勇者の仲間の仕業だとして、そんな真似ができる人間に心当たりはあるか?」

「う~ん……」

 

 部屋に呼び出されたナグモと香織はアインズから経緯を聞き、二人で思案顔になる。アインズ達と違って未だに仲直りできてない二人だが、ただならぬ事態に一先ずお互いのすれ違いを棚上げにしていた。ナグモは王国で潜入調査していた時の“神の使徒”達のデータから、アインズの言う条件に当て嵌まりそうな者を割り出した。

 

「……本人のステータスを考慮しなければ一人だけいますね。“闇術師”の清水幸利という男です。トータスの闇魔法は精神にバッドステータスを与える物ですから、応用すれば魔物の支配を行えると思われます」

「ふむ。それで、その男の協力者に心当たりはあるか?」

「えっと……ごめんなさい、思い付かないです。清水くんは教室であまり喋らない人だったし、親しい友人がいる様子もありませんでした」

 

 アインズの問いにナグモよりクラスメイト達と交流のあった香織が答える。とはいえ、まるでクラスで目立つ事を避けるかの様に大人しかった清水に関して、香織も知っている事は少なかった。

 

「そうか……だとすると、そいつには他に協力者がいるのか? 一緒に勇者達から逃げ出した者というのも、その男が洗脳した手駒という可能性もあるか?」

「アインズ様の御意見に異論を唱える愚をお許しください。あの男にそんな大それた事が出来るとは思いませんが……」

 

 アインズの呟きにナグモはどこか侮っている様な雰囲気で答える。基本的に人間を見下しているナグモにとって、清水幸利という少年の評価は低かった。成績優秀でもなく、身体能力が優れているわけでもない。それはトータスに来て天職を得ても変わらず、ナグモが調査していた期間でも“闇術師”の才能の開花させる様子もなかった為に“その他大勢の弱者”とナグモの脳内フォルダに分類されたのだ。そんなナグモにユエは注意する。

 

「その考え方は危険。窮鼠であっても、猫を噛む事があるという事は覚えておいた方が良い」

「……フン。まあ、一応頭に入れておく」

 

 遠藤浩介という特異的な存在を思い浮かべ、ナグモは面白くなさそうな顔をしながらも頷いた。それを見ながら、アインズは咳払いを一つする。

 

「それで……問題はどうするかという話だ」

「………どう、とは?」

「現在、解放軍の王女と教師は危機的状況にある。そして冒険者モモン達は、偶然にもまだそう遠くない場所にいる。これをモモンとして、助けるかどうかだ」

 

 その一言にナグモは押し黙る。そうして黙ってしまった少年の心情を代弁する様に、彼に忠実な少女(半NPC)が答えた。

 

「放っておいて良いと思います、アインズ様。あんな恩知らずな人達、助ける価値なんてありません」

「でも、それはハイリヒ王国内にあるエヒトルジュエの抵抗勢力を潰す事に繋がる」

「ユエ、悪いけど()()()()? エヒトルジュエはアインズ様が倒されるし、アインズ様が王国を支配されるから人間達がどうなっても関係ないでしょう?」

 

 香織の返答にユエは眉をしかめる。香織の変調についてアインズから聞かされたユエだが、思っていた以上に深刻だった。かつて慈愛に溢れていた少女は、今や異形種の集団(ナザリック)の一人として人間を犠牲にする事に何も疑問を感じなくなっている。

 

「香織。私は人間を必要以上に犠牲にするべきではないと思っている」

 

 香織に対してアインズはそう言った。

 

「私を王にする為に働いてくれるお前達の気持ちは嬉しいが……人間に限らず、魔導国の国民となる者達には慈悲を示すべきだと私は思う」

「アインズ様がそう仰るならば」

 

 それはアインズが望んだ答えでは無かったが、香織はそう言って引き下がった。そうしてアインズは改めてナグモに向き直る。

 

「ナグモ。お前はどうする? いや、どうしたい?」

「僕の意見など……アインズ様のご命令通りに致します」

「いいや。お前がどうしたいのか、と聞きたいのだ。確かに今後を考えると解放軍の瓦解は防ぎたいが、お前はあのクラスメイト達の事を嫌っているだろう。それなのに助けろ、と言うのはお前の心情を無視して無理強いする事になる」

 

 拗ねた子供の様にそっぽを向きながら答えるナグモに、アインズは膝を屈んで目線を合わせる様にナグモと向かい合った。

 

「もしも嫌だと思うなら、私は次善策を考える。だからお前が思っている事を聞かせて欲しい。ナザリックの守護者としてではなく、ナグモという一人の人間としての答えを」

「それは………」

 

 それはナザリックのNPCからすれば、あってはならない事だった。彼等は基本的に至高の四十一人(プレイヤー)達に仕える為に生み出された存在だ。道具である自分達の意思など関係なく、況してやそれで至高の御方が方針を変える事になるなど不敬の極みだ。

 だが、それでもアインズはナグモに聞いた。NPCの枠を超え、一人の人間となった少年に対して一方的な命令ではなく、意思を尊重したいと思ったのだ。

 

「………僕は」

 

 NPCとして生まれた時から持っている忠誠心。トータスに来てから育んだ人間の心。

 それらに板挟みになりながら、ナグモが出した答えは――――。

 

 ***

 

 ナグモは黒傘“シュラーク”を振るう。かつて“真の神の使徒”達から分析して取り付けた分解機能により、魔物達は黒傘に触れると同時に分解されていった。そうして周りの魔物を鎧袖一触にして、ナグモは優花に向き直る。それと同時に奈々や妙子の死体に気付いた。

 

「……そいつらは死んだのか」

「……っ!」

 

 淡々と事実を述べるかの様な感情の籠もらない口調。他人から言われた事で、優花は改めて友人達の死を認識して辛そうな顔になる。そんな優花にナグモはポーションの入った瓶を投げ渡した。

 

「それを飲んでおけ。いまモモンさ――んが、避難民の誘導に務めている。そこまで走り抜け」

「ま……待って!」

 

 必要最低限の情報だけ伝えて去ろうとするナグモの背中に優花は呼び掛ける。

 

「南雲……どうして来てくれたの? 私達、あんなに酷い事を言っちゃったのに」

 

 優花の問い掛けにナグモはどう答えるか迷っている様な雰囲気になった。

 今後に魔導国が解放軍に対してイニシアチブを取る為? あるいは香織を地球に帰す時にマスコミへの目眩ましになる高校生達が減るのが嫌だったから?

 それらの理由は確かにある。だが、それだけが自分を動かしてるわけではない気がしていた。

 

「……最初から、お前達の事なんて嫌いだ」

 

 しばらくして、ナグモはそう答えた。“人間嫌い”として生み出され、そしてクラスメイト達に対して良い印象などない。論理的に考えるなら、彼等をわざわざ助ける理由など皆無だった。おそらく、同僚である階層守護者達に事情を話しても理解に苦しむと顔をしかめられるだろう。

 

「でも………」

 

 トータスに来てからの精神の変化を喜ばしいものだと言ってくれた執事がいた。

 客観的に見ても優しい対応をしたとは言えないのに、自分の事を兄と慕ってくれた幼女がいた。

 大勢いるシモベの一人に過ぎない自分に、一人の人間として感情を聞いてくれる死の支配者がいた。

 そして――――――。

 

「……感情のままに流される様な低脳になったのか、と生みの親達にがっかりされたくないだけだ」

 

 ***

 

「西門、突破されそうです!」

「北門の守備軍からの報告です! これ以上はバリケードが保たないとの事です!」

「あ、ああ、どう、どうすれば……!?」

「落ち着きなさい、コーネリウス! 南門の人員を西門に回して下さい! 北門は“錬成師”か“土術師”の者達を向かわせてバリケードを再補強です! 市井の方からも該当の天職がいないか確認して下さい!」

 

 ウィーンダムでは魔物の大群による大規模な攻撃が始まっていた。領主のコーネリウスがあわあわと狼狽える中、リリアーナが街の守備兵達に矢継ぎ早に指示を飛ばしていた。この非常事態に至って普段は派閥同士でいがみ合っているウィーンダムの家臣団も、頼りにならないコーネリウスよりマシだとリリアーナの指示に従っていた。

 

「くっ……いくらなんでも魔物達の侵攻速度が早過ぎる!?」

「先に避難した者達は無事なのか? まさか、既に……」

 

 昨日までは遠くの地平線に見える程度だった魔物の大群が、今日になって()()()()()()()()()()()()かの様に距離が一気に縮まって街を包囲していたのだ。ウィーンダムには堅牢な城壁があるから持ちこたえているものの、昼夜問わずに襲い掛かる魔物達の猛攻に守備兵達の体力も精神力も限界が近く、一部の者達は心に絶望が差し込んでいた。

 

「弱気にならないで!」

 

 兵達の会話を聞いたリリアーナの叱咤する声が飛ぶ。

 

「私の仲間が必ず解放軍から助けを呼びます! それに既に帝国やフューレンにも救援要請を出したでしょう? 彼等が来るまでの辛抱です! それまで私がついてます! このリリアーナ・S・B・ハイリヒは、ウィーンダムの民を見捨てません!」

「リリアーナ王女様……!」

 

 本来ならやんごとなき身分でありながら、自分達を鼓舞する為に危険な前線で指揮を執るリリアーナの姿を見て、兵達は感極まった様に再び武器を握る手に力が籠もった。

 とりあえずの士気の崩壊は防いだものの、リリアーナは内心で焦燥していた。

 

(これはただの魔物達の襲撃じゃない……歴とした攻撃です)

 

 突然距離を詰められて不意打ち気味にされた事といい、魔物達の攻撃は統制が取れすぎている。裏で操っている者がいるとリリアーナは即座に看破していた。先程は解放軍や帝国などに救援を出したと言ったものの、それを見逃すほど敵も甘くはないだろう。リリアーナは奇跡を信じて救援を待つしか手立ては無かったのだが、それをウィーンダムの守備兵達に悟られない様にしていたのだ。

 

(こんな時にデビッド達は何処へ行ったというのですか!?)

 

 自分の護衛であり、そして守備兵達の指揮をとる筈だったデビッド達はこの場にいなかった。それどころか、デビッドとクリス、相川達すらも昨日から姿が見えなくなったのだ。

 

「リリィ」

 

 唐突にリリアーナに声を掛ける者がいた。振り向くとそこに雫がいた。

 

「雫? 今までどこに……いえ、それよりデビッド達を見ませんでしたか?」

「その事なんだけど……ちょっと相談しなきゃいけない事があるから一緒に来てくれる?」

 

 雫の言葉にリリアーナは怪訝な顔になる。いま、一時的に魔物の侵攻が小康状態になったとはいえ、自分がこの場を離れるのは避けたかった。

 

「この場では駄目なのですか? 一体、デビッド達に何が……」

「そのデビッドさんに呼ばれたの。だから一緒に来て」

 

 雫は何故か頑として譲れない口調で同じ事を繰り返し言った。ここで押し問答になっても埒があかないとリリアーナは即座に判断して、仕方なく雫の言葉に従う事にした。

 

「分かりました、すぐに向かいましょう。申し訳ありませんが、すぐに戻りますので」

「で、では……その間に私が―――」

「彼の指示に従って下さい、コーネリウス」

 

 この場の守備兵の隊長を指差し、コーネリウスに釘を刺すのは忘れなかった。

 

 ***

 

「こっちよ」

 

 雫の後をリリアーナはついて行く。城壁から下り、何故か入り組んだウィーンダムの路地裏に入っていった辺りでリリアーナもさすがにおかしい事に気付いた。

 

「雫、一体どこに行こうというのです? こんな所で時間を浪費してる場合じゃないんです。この先にデビッド達がいるのですか?」

「うん、その事なんだけど――――」

 

 住民も避難してしまった為に周りに人の気配のない路地裏。とうとう堪えきれずにリリアーナはつい責める様な口調で雫に聞いた。リリアーナに聞かれた雫はいつもの様子で振り向き――――抜刀。

 

「え………」

 

 思わずリリアーナから間の抜けた声が漏れる。雫は振り向くと同時に腰帯に挿していた細身の剣を抜き放ち、リリアーナに斬りかかっていた。それは天職である“剣士”に相応しく、そして地球の剣道でも何度も見せていた鋭い太刀筋だった。

 突然の事態にリリアーナの思考は停止する。そして命の危機を感じる刹那、硬直した身体とは裏腹に感覚だけが鋭敏化されていた。鋭敏化されたリリアーナの眼には雫の剣がゆっくりと迫ってくる様に感じる。だが、それに反応するだけのステータス(身体能力)などなく、リリアーナは驚きに眼を見開いたまま、自分に斬り掛かる雫の姿を見つめ――――――。

 

 ヒュッ―――ガガガッ!

 

 突然、空から何かが降ってきて、リリアーナと雫を隔てる様に地面に突き刺さる。湧き上がった砂埃にリリアーナが思わず顔を覆う中、雫はバッと飛び退いて距離を取った。そうして砂埃の中、地面に突き刺さった物―――まるでクナイの様に硬質化した真紅の羽がサラサラと実体を解く様に砂埃に紛れて消えた。

 

「ああ、こんな所にいたんだ」

 

 バサリ、と空から羽ばたく音と共に自分の近くに聞き覚えのある声が降り立った様に感じた。

 

「香織……?」

 

 砂埃が入って目が痛む中、一瞬だけ香織の背中に血に濡れた様な羽が生えてる様に見えたが、リリアーナが目を拭ってようやくはっきり見える様になった時には香織の背中の羽は消えていた。

 

「いったい、どうしてここに?」

「別に貴方の事なんて見捨てても良かったのだけど、ナグモくんがなんかやる気になったから来ただけ。勘違いしないで」

 

 リリアーナが驚愕する中、香織は冷たい声で応じる。背中に羽を生やして高速で飛んできたものの、ナグモやアインズからの命令でなければリリアーナの命など、どうでも良かった。

 

「それで? ナグモくんのお願いを邪魔する人って、いったい誰……え?」

 

 もうもうと立ちこめていた砂埃が晴れていく。上空で見た時は距離があってはっきりと見えず、そして湧き上がった砂埃で今まで見えてなかった襲撃者の姿に、香織は呆然と呟く。

 

「雫……ちゃん……?」

「あら。久しぶりね、香織」

 

 幽霊でも見た様に香織が顔を凍り付かせる中、雫は剣を構えたまま笑顔で応じた。

 




因みにですが、デビッドもお亡くなりになっております。雫に心を許さなければ……南無。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。