ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 ようやくモモンガ達のオルクス迷宮探索開始です。人選は割と御都合主義です。原作ならもう少しモモンガさんも過剰戦力にする気はします。


第二十六話「人間嫌い」

オルクス迷宮六十五階層。かつて神の使徒達がトラップに嵌り、今は転移の魔法陣しか作動してない場所にその男はいた。

 

「ハァ……ハァ……やった、やったぞ!」

 

 どこか目に危険な光を宿しながら、その男は血塗られた剣を片手に狂喜していた。

 

「これで僕は金ランクだ! ハハハ、どうだ! やはり僕は特別な人間なんだ!」

 

 すぐ側には未だハイリヒ王国で誰も倒した事のないベヒモスと———一緒に来た冒険者の死体が転がっていた。

 

「いやはや、君は実によく役立ってくれた。神の使徒ですら勝てなかったベヒモスを倒したとなれば、“閃刃"のアベルの名は国中に響く。そんな有能な私に役立って死ねた事を光栄に思い給え」

 

 男———アベルは国内ではそれなりに名の通った冒険者だった。冒険者として二番目の銀ランクまで破竹の勢いで駆け上がったものの、金ランクには後一歩の所でずっと足踏みしていた。そんな折に、聖教教会御墨付きの神の使徒パーティーが迷宮でベヒモスと遭遇して命からがら撤退したという話を聞いて、チャンスだと思ったのだ。

 

 神の使徒すら敗れた魔物を倒せば、自分の名は鰻登りとなる。名誉も美女も、自分の思いのままになる。

 

 そうして欲に駆られた彼は、いまパーティメンバーだった冒険者を盾にしながらも、ベヒモスを打ち倒す事が出来たのだ。ベヒモスまでの道のりは何とも都合の良い事に、神の使徒達がショートカットコースを作ってくれたので、アイテムにもまだ余裕はあった。後は道中のモンスターに気をつけて転移陣まで戻れば、彼はあのベヒモスを倒した冒険者として国中から賞賛と羨望の眼差しを受けるだろう。方法が褒められた手段とはないとはいえ、彼の実力は本物だった。亡くなったパーティメンバーは適当に戦死したとでも言えば、皆納得するだろう。

 

 ————ならば、これは。栄誉の為に仲間を切り捨てた彼への天罰だろうか。突然、彼と上層の階段を区切る様に闇が広がった。

 

「な、なんだ!?」

 

 アベルが警戒している間に、闇の中から人影が現れる。王族が着る様な豪奢なローブを纏い、ガントレットを纏った手には七匹の蛇が絡まった彫刻がされた国宝の様に芸術的な杖。しかしその顔には泣いている様な、怒っている様な奇妙な装飾が施された仮面を身に付けた邪悪な魔法師が闇から出てきた。

 

「ん?」

 

 邪悪な魔法師がアベルを見て、胡乱げな声を上げる。まるでここに誰かいるとは思わなかった、という声だ。

 

「な、なんだお前は!? どうやってここに来た!?」

「チッ、転移前に確認すべきだったか……洞窟内だから遠隔視の鏡(ミラーオブリモートビューイング)が使えなかったのが仇となったか」

「モモンガ様、何かご問題でも?」

 

 狼狽するアベルを無視して、邪悪な魔法師は舌打ちしていた。それを遅れて背後の闇から現れた若者が従者の様に恭しく伺っていた。

 

「人間の冒険者と鉢合わせしただけだ。ところで、これは冒険者としてどのくらいの物なんだ?」

「少々お待ちを………」

 

 顎をしゃくって示す魔法師に、若者は身に付けた片眼鏡でアベルを一瞥した。

 

「雑魚ですね、ただの」

「なっ……!」

 

 路傍の石でも見る様な目で断言する若者に、アベルの頭が沸騰した。何より、自分がパーティメンバーを盾にして戦った所を見られたかもしれないのだ。こいつらを生かして帰すわけにはいかない。

 

「この私に舐めた口をきいた事を後悔したまえよ……あの世でなぁっ!!」

 

 アベルは剣を振り翳して若者へと突撃する。その速度は閃刃の二つ名に恥じない物だった。

 されど、それより早く炸裂音が四度響いた。

 

「ギャアアアアッ!?」

「……この様に、飛び道具対策すら出来てない様です」

「ううむ、そのくらいはユグドラシルでは基本中の基本なんだが……こいつは駆け出しの冒険者だったのか?」

 

 若者が手にした見た事の無い武器から何かが撃ち出され、アベルの両手足に風穴が開けられていた。それを見ながら二人は淡々と話していた。

 

「な、何だ……何なんだよ、お前達は!?」

 

 地面に這いつくばりながら、アベルは二人を睨む。そして、ふと思い出した。若者の顔は見覚えがあった。

 

「お前……そうだ、思い出したぞ。あの時、神の使徒の中にいた奴だ……!」

「? 知り合いか?」

「いえ、全く面識がありませんが……」

 

 怪訝そうな顔をする若者だが、アベルは覚えていた。遠巻きに見ていただけだが、王宮の騎士達と共にオルクス迷宮の前に集まっていた神の使徒の一人だ。

 

「そうか、分かったぞ……神の使徒の中に魔人族に与した裏切り者がいたという噂だったが、お前の事か! そっちの仮面を被った奴の中身は、さては魔人族だな!? それで国内で有数の冒険者である私を殺しに来たのだろう!? 薄汚い魔人族に与したクズに相応しい下劣な発想———」

「もういい、耳障りだ」

 

 邪悪な魔法師がスッとアベルに向かって手を差し出した。

 

「<心臓掌握(グラスプハート)>」

 

 アベルが聞いた事の無い呪文と共に、邪悪な魔法師の手にドクン、ドクンと脈打つ心臓が握られていて———グシャッ。

 胸に奔った痛みと共に、アベルの意識は完全に闇に閉ざされた。

 

 ***

 

「弱いな……この程度で死ぬとは」

 

 事切れた冒険者の死体を前にして、モモンガは淡々と呟いた。そこに人を殺した事による罪悪感も高揚感も全くない。

 

「申し訳ありませんでした。情報は必要だと判断して、口は利ける様に加減してました。薄汚い低脳ごときに御身の手を煩わせてしまった事をお詫び致します」

「よい、許す。気にするな」

 

 魔導銃ドンナー&シュラークを手にしながら深々と頭を下げるナグモに、モモンガは支配者ロールで応えながら別の事を考えていた。

 

(予想はしていたけど……やっぱり俺は肉体だけでなく、心も人間をやめたんだな)

 

 五月蝿い虫を叩き潰した。そんな感慨しか思い浮かばないのだ。改めて自分が人間で無くなった事を思い知った気分だった。

 

(念の為に第九位階魔法を使ったけど、こんなにあっさり即死するなんてな。装備も大した事無さそうだし、国内有数とか絶対に(自称)ってやつだろ。傍に転がっているモンスターはユグドラシルでは見た事無いな……でも、こんな駆け出し冒険者に倒されるという事は、序盤の練習台モンスターか?)

 

 ついついユグドラシルの常識で考えてしまうモモンガだが、今はそんな事を考察している場合じゃないとかぶりを振る。次の魔法の実験を開始すべきだ。

 

 ———中位・アンデッド作成 デスナイト———

 

 モモンガの特殊技能の一つを使用する。未知のダンジョン探索の前に盾役として愛用しているアンデッドをとりあえず出しておこうと思ったのだ。しかし、ここでゲームの時とは違う現象が起きた。黒い泥の様な球体が現れ、先程まで五月蝿かった冒険者の死体に纏わりついた。

 

(げっ……死体に取り憑くのかよ。トータスに来てからスキルが変化しているのか?)

 

 冒険者の死体が泥の中でゴボゴボと泡立ちながら、見慣れたアンデッドモンスターに変化していく。一般人なら吐き気を催す様な光景だが、この場にいる人間(ナグモ)には何の感慨も浮かばない様だった。

 

「デスナイトよ、そこの上層への階段を警戒せよ。人間が来たら殺……いや、決して通さない様に死守せよ」

 

 本来の目的を思い出す。ナグモの探している人間はここより下層にいると思うが、万が一自力で脱出していた場合を考えての命令だった。デスナイトは唸り声を上げながら、階段を昇っていく。

 

(ユグドラシルと違って、召喚モンスターは離れて行動できるのか……こりゃ、引き続き魔法やスキルを要検討だな)

 

 引き続き、もう一体のデスナイトを生み出そうともう一つの死体にスキルを使おうとしたところで、背後の転移門から気配が生じる。

 

「お待たせして申し訳ありません、モモンガ様」

 

 渋みの掛かった男性の声が響く。閉じていく転移門からセバスが現れ、地面に転がった死体に眉を動かした。

 

「そちらの方は?」

「……どうやらそこのモンスターにやられた冒険者の様だ」

「そうでしたか………」

 

 死体に向かって静かに黙祷するセバスを見て、モモンガはスキルを使うのをやめた。たっち・みーの面影のある彼を見てると、どうも罰が悪くなる。気を取り直し、ナグモに命令を下した。

 

「ナグモよ。用意したマシン・モンスター達を展開せよ。不可視化と、念の為に攻性防御を怠るな」

「かしこまりました。……<第五位階機械召喚(サモン・マシン・5th)>」

 

 ナグモの発動したスキルにより、0と1の数字が組み合っていく様な演出と共に、次々とロボットアームを持った宙に浮く小型円盤の様なマシンモンスター達が現れた。

 

(サーチャー……いや、色が違うからステルス・サーチャーだっけ? 懐かしいなあ、不可視化対策してないと、姿が見えないのに次々と仲間モンスターを呼ばれて厄介だったよなぁ……)

 

 かつて『ヴァルキュリアの失墜』であった出来事をしみじみとモモンガが思い出している間に、ナグモはマシン・モンスター達に指示を出していた。

 

「1〜10号機は鉱物資源の探索、11〜15号機はモンスターの生態調査を行え。並行して迷宮内のマップ作成も行う様に……そして16〜30号機は、人間を探索しろ。特徴は、僕の記憶データを同期させる」

『Yes,sir』

 

 短い電子音声と共にステルス・サーチャー達は光学迷彩を発動させながら、散開していく。ナグモはホログラムの画面を出し、何やらタイピングを始めていた。画面にはステルス・サーチャー達の視界と、モモンガにはよく分からないグラフやら数字やらが高速で流れていく。

 

「ふむ……これ程のモンスターを展開して、魔力(MP)は足りているか? それに召喚時間が過ぎたら、消えてしまったりしないか?」

「ご心配なく、モモンガ様。これらは第四階層で製作されたマシン達です。通常の召喚と違って、僕自身の魔力を使っているわけではありません。こちらから命じない限りは、半永久的に稼働します」

「なるほど……媒体があるなら、通常よりも長く召喚できるのか? という事は、アンデッドも———」

 

 ブツブツと考察に入っていたモモンガだが、ナグモを見て口を閉じた。ナグモはいつもの無表情ながらも、鬼気迫るといった様子で画面を見ていた。ナグモの思いを知っているモモンガは気不味くなり、咳払いしながらセバスへと近寄る。

 

「セバス、今回の任務の目的は分かっているな?」

「はい。オルクス迷宮なる場所の調査であり、御身を御守りする為ですね?」

「うむ。同時に、ナグモが潜入調査をしていた折に世話になった人間がいる可能性がある。その者を見つけたら、私の元まで連れて来い。仮に死体だったとしても、蘇生魔法を使って復活させる」

「かしこまりました」

 

 恭しく礼をするナザリックの執事。

 

「「「………………」」」

 

 その後、三人の間に沈黙が流れる。中でもナグモとセバスの間にピリピリとした空気が流れていた。いや、正確には礼儀正しく沈黙を守るセバスに対してナグモは機械の操作に忙しい()()をして、話しかけようとしないのだ。

 

(うう………気不味い)

 

 モモンガも元々饒舌な方ではない。仲違いというより、お互いに触れてはならない一線を踏まない様に沈黙を守り続けるNPC達に、モモンガの無い筈の胃がキリキリと痛むのを感じた。

 

(そういやこの二人が言い争いしていたのが、ある意味、事の発端なんだよな………でも仕方ないだろ? 未知のダンジョンだから、連れて行くのはレベル100じゃないと不安だし、目的が人間の救出だからカルマ値が極悪なアルベドやシャルティアは論外。デミウルゴスは王国の諜報活動に当ててるし、人間が出入りしてるダンジョンだからアウラやマーレ、コキュートスを連れて行ったら目立ち過ぎるし………条件に合ったのがセバスくらいしか居ないんだよ)

 

 誰に言うでもなく、モモンガは心の中で言い訳する。カルマ値極善なセバスならば、人間を助けると言っても不満を言わないだろうという事と、前衛として優秀だという事も踏まえてだ。お陰で三人パーティというユグドラシルなら少ないと言われそうな布陣になったものの、足りない分の火力はナグモのマシン・モンスターやモモンガのアンデッド召喚で補えばいいと考えた。回復に関してはナグモが回復魔法を使えるのと、モモンガの手持ちのポーションを惜しげなく使う気でいるのでどうにかするつもりだ。

 

「………しかしながら、意外に思います」

 

 はたしてセバスも沈黙に耐えかねたのか、モモンガへ話しかけた。

 

「何がだ?」

「いえ……モモンガ様が慈悲深い方だとは理解していたつもりですが、まさか人間を救う為に御自らが動かれるとは。てっきり、人間に対してあまり良い感情を持っていられないのではないかと思っておりました」

「セバス、それは違うぞ。大体、人間を憎んでいるならば、オーレオールやナグモをナザリックに置こうなどとは考えん。アウラとマーレだって、広義的には人間種だろう」

「………そうなのですか?」

 

 ナグモがタイピングしている手を止めないながらも、モモンガに対して振り向いた。先程の事を思い出しているのかもしれない。

 

「不肖ながら、僕は至高の御方であるじゅーる様に『そうあれ』と望まれた故に人間として創られ、特別にナザリックに籍を置く事を許されたのだと考えていました。御方々にとって、人間は虫の様に踏み潰すべき弱者として見ているものかと」

「………あのな、私は何も人間を無差別に殺して回りたい等と思った覚えは無いぞ」

 

 お前もか……とナザリックNPC特有の人間蔑視に頭を痛めながら、モモンガは語り出す。そもそもそういう考えに縛られているから、ナグモは自分がナザリック外の人間を好きになるわけがない、と頑なになって薬に頼ったのかもしれない。

 

「元々、我等“アインズ・ウール・ゴウン"は異形種をPK……あー、迫害していた者達に対抗する為に集ったギルドなのだ。当時は異形種というだけでひたすら狩り尽くそうとする連中が多かったからな。人間だけではなく、亜人種、はたまた同じ異形種だっていたぞ?」

「なんと……その様な事が」

「ああ。懐かしいな…… たっちさん、弐式炎雷さん、ウィッシュⅢさん、武人建御雷さん、エンシェント・ワンさん、フラットフットさん、あまのまひとつさん……一人とは喧嘩別れしてしまったが、俺も入れて“ナインズ・オウン・ゴール(九人の自殺点)"を結成したんだよな。その後にウルベルトさんやペロロンチーノさんが入って……たっちさんが異形種狩りから俺を助けてくれなかったら、今の俺は居ないな」

 

 古い———本当に古い、ユグドラシルでの最初の記憶を思い出して、モモンガは支配者ロールを忘れてしみじみと呟いてしまった。ハッとモモンガが見ると、二人のNPCは驚いた顔でモモンガを見ていた。

 

「ん、んんっ! とにかく! 私はナザリックに敵対する者には容赦を微塵もする気はないが、少なくとも人間というだけで害を為そうとは考える気は無いという事だ! 恩があるならば、礼を尽くそうとは思ってはいる」

 

 気不味くなり、モモンガは支配者ロールをしながら、ナグモに水を向けた。

 

「大体、ナグモよ。お前はどうしてそこまで人間が嫌いなのだ? じゅーるさんにそう設定された、というのもあるだろうが、ナザリックに戻る前は十年間、人間と暮らしていたのだろう? 少しは愛着が湧くのではないか?」

「………人間と暮らしていたからこそですよ、モモンガ様」

 

 つい興味本位で聞いてみたが、ナグモはいつもの無表情で答えた。その声には、隠し切れない嫌悪感が滲み出ている。

 

「あの世界……地球という世界で、僕は人間達の歴史を学びました。そして、身近な場所で人間達を観察しました。どれだけ犠牲を払おうが、間違った選択を繰り返す進歩の無い低脳な生き物。恩も借りも返したがらないくせに、受けた恨みだけは絶対に忘れようとしない。喋らない分、猿の方がまだマシです」

「う、むぅ………」

 

 その言葉に何とも言えなくなるモモンガ(元・地球人)に対して、ナグモは訥々と語る。

 

「冷静に考える事なく、感情論だけの声が大きい意見に、碌に考えもせずに諸手を挙げて賛同する能無しな連中。そして期待通りの結果にならなければ、不平不満を他人にぶつける。自分より優れた相手には徒党を組んで貶めずにはいられない。だからこそ……僕は人間が嫌いです。関わりたくないし、関わって欲しくもない。改めてじゅーる様が定めた在り方(設定)は正しかった、と思いました」

 

 ナグモは愚かな人間達(元・クラスメイト)を思い浮かべながら、そう吐き捨てた。その姿にセバスは何かを言いたそうだったが、結局は目を瞑って沈黙で応えた。モモンガはポリポリと頬骨を掻く。じゅーるの創った設定にケチを付ける気は無いが……それはそれとして、言いたい事があった。

 

「なあ、ナグモ。お前は人間という生き物が嫌いなのではなく………人間のそういった面を嫌悪しているだけではないのか?」

「え………?」

 

 タイピングを行なっていたナグモの手が止まった。まるで初めて言われた、という顔でモモンガを見た。

 

「お前が嫌悪しているのは、そういった人類の悪性と呼ぶべき面であって、白崎香織はお前が嫌悪する人間像には当て嵌まらなかった……という話じゃないのか?」

 

(なんて、そういう感じの設定があったんだよなぁ。じゅーるさんが薦めてきたSF小説に)

 

 後半部分は口に出す事なく、そう思うだけにした。かつてギルドメンバー達にお気に入りのSF作品を啓蒙していたじゅーるだったが、ナグモの「人間嫌い」というのはその作品の中で、人類に対して失望した科学者や非合理と断ずるマザーコンピュータの類いに見えたのだ。恐らくそういった作品から目の前のNPCの設定を作ったんじゃないか? とモモンガは考えていた。

 

「それは……そんな事、考えた事は一度も……」

「まあ、なんだ……無理に人間達を好きになれとは言わんが、人間個人に対しては別の物、と考えてもいいんじゃないか?」

 

 設定に矛盾してるからと、また薬漬けになられても困るし……とモモンガは心の中で呟く。ナグモは戸惑いの表情を浮かべ、今までに無い考えに躊躇している様だった。

 と、突然ナグモが操作していた画面から電子音が流れる。

 

「っ!」

 

 ナグモはバッと振り向き、コンソールを操作した。

 

「これは……!」

「どうした?」

 

 モモンガが後ろから覗き込むと、画面の一つに洞窟内を流れる川だろうか? その川の中にある岩に、装飾が施された杖が引っかかっているのが見えた。

 

「これは……白崎が持っていた(スタッフ)です。間違いありません」

「ほう……幸先よく、手掛かりが見つかったな」

 

 モモンガは内心でホッと胸を撫で下ろす。何も痕跡が見つからないという最悪の事態は避けられた様だ。

 

「場所は……ここよりも、ずっと地下です」

「よろしい。ならば今から向かうぞ。セバス!」

「はっ」

 

 モモンガはセバスを呼ぶと、ナグモと共に奈落へと身を投じた。

 <全体飛行(マス・フライ)>を使用して、ゆっくりと降下していく。

 一瞬、デスナイトはどうしようか? と考えたが、置いて行く事にした。死体を使わずに召喚した場合の実験を行いたかった。

 モモンガ達はオルクス迷宮の深部へと入り込んでいった。

 

 

 




>閃刃のアベル

 原作ではハジメに突っかかていた王国の金ランク冒険者。本作ではモモンガさんのデスナイト作成の為にコロコロされました。合掌。

>ナグモとセバス、ギクシャク

ナグモ「この前は怒鳴って、ごめんね」
セバス「気にしてないからいいよ」

 ぶっちゃけこれで済む話。でもナグモは気不味くて謝れないのです。何せ、こいつ○○的に○○なんで。

>モモンガさん、ギルドの創作時の話をする

 ナザリック、軟化フラグです。

>ナグモの人間嫌い

 要するにね、SF作品の悪の科学者にありがちな人間嫌いなんですよ。というかコイツは自分の気に入らない人間が嫌いなんです。で、その気に入らない人間が人類のほとんどに該当する的な感じです。

次回は多分、ずっと放置していた吸血姫さんの出番です。

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