ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

36 / 223
設定が 重たい(←書いた張本人)
というかるし★ふぁーが誰これ? 状態です。

白崎さんの早い救出を望んでる人、ごめんなさい。私の主人公はウジウジしまくってるので、なかなか踏ん切りが付かないんです。


第二十三話「ピノキオ」

「―――これでよし、と。やっと出来たぞ」

 

 その言葉と共に、そのNPCは覚醒した。目の前には六本の腕を持った機械の偽神(デウス・マキナ)と呼ばれる異形種がいた。

 その瞬間、NPCは理解した。自分がナザリック地下大墳墓の第四階層守護者代理として創られた事、そして目の前にいる機神こそが自分が仕える至高の御方であり、自分の創造主なのだと。

 

「やっほー、じゅーるさん。新しい第四階層の守護者は作り終わった?」

「ああ、るし★ふぁーさん。ええ、装備とかはこれから考えますけど、外見はこれで決定ですかね」

 

 部屋に入ってきた天使人形に、機神が応える。天使人形もまた至高の御方なのだと、そのNPCは与えられた知識(インプットされたプログラム)で理解していた。

 

「タブラさんが考えてくれた設定を見て、初期案からかなり変えちゃったんですけどね。でもこれはこれで、よく出来たと思うでしょう? ほら、タブラさんギャップ萌えだから、いかにもなマッドサイエンティストな爺さんより、異形種揃いのナザリックに仕えるのはなんと天才少年科学者とかの方が喜びそうだなと思って。他にもですね―――」

 

 そうして機神は嬉々としてそのNPCの在り方(設定)を語り出した。超科学古代文明の人間のクローンであること、並外れた知能の持ち主である事、それ故に普通の人間を非合理と嫌う人間嫌いであること等………NPCは、それが自身の在り方であるとして了解(インプット)していった。それに対して天使人形はふーん、と気のない返事をしていたが、しばらくして口を挟んだ。

 

「他にもですね、基本的に相手には冷たい対応をするという設定ですけど、実は―――」

「……あのさ、じゅーるさん。そのNPC、年齢は違うけど……じゅーるさんの子供をモデルにしてるんじゃないの?」

 

 それまで饒舌だった機神は口を閉ざした。それを見ながら、天使人形は機神の代わりに喋り出した。

 

「まあ、リアルの方でじゅーるさんの息子さんに会ったのは数えるくらいだったから確信は無かったけどさ、なんとなく似てるよね。……今も生きていたら、ちょうどそのくらいの年齢になってたのかな」

 

 それに、と天使人形はさらに指摘する。

 

「リニューアルした第四階層を見て、何かに似てると思ったけど……あれって、息子さんと一緒に遊びに行ってた頃のテーマパークの星間戦争エリアかい? アーコロジー内のテーマパークに行った事ある人なんて、ウチのギルドにはほとんどいないから、みんな気付かなかったみたいだけど」

 

 ギュッ、と機神の拳が握られる。それを天使人形は感情アイコンを何も出さずに、静かにチャットを送った。

 

「僕も芸術関係の仕事をしてるから、出来の良い作品を自慢の子供と呼んだりしてるけど……それはあくまで、生み出した作品という意味だからね。でもじゅーるさんのそれは、完全にそういった領域を超えてるでしょ。言っちゃ悪いけど、やめた方が良いよ。多分、一番辛くなるのはじゅーるさんだろうから」

 

 どこか諭す様な口調で天使人形は機神へ語り掛ける。

 ……そのNPCには預かり知らぬ事だったが、この二人は同じ大学で学んだ同期だった。性格はまるで違うが、物作りへの情熱が似ていた二人は友となり、卒業後も親交があったのだ。それ故に天使人形は普段のイタズラ好きな態度はなりを潜めて忠告をしていた。

 長年の友人の忠告に機神はしばらく黙っていたが、ようやくチャットを返した。

 

「………分かってますよ、もう息子は……あの子はいないんだって。どんなに似せて作っても、これはあの子じゃない。ちゃんと、ちゃんと分かってますから」

「一つ、聞かせて欲しいんだけど……第四階層のリニューアル案を出した時からそのNPCを作ろうとしてたの?」

「いえ、それは違いますよ。あの殺風景な地底湖をどうせならSF空間にしよう、と思ったのは純粋な趣味ですよ。ただ……どういうSF空間にしようか? と考えていたら、息子とよく遊びに行っていたパークエリアがどうしても頭から離れなかったんですよ」

「……そっか。それで作ってる内に、情が湧いちゃったわけか」

「ええ……馬鹿な話でしょう? もっと上流階級(ゲスト)受けする物に作り直すという会社の方針で、すっかり昔の面影が無くなった思い出の場所を作っていたら、将来は科学者になりたいって息子が言ってたのを思い出したんですよ。それで気付いたら……絵コンテに描いてた科学者キャラを差し替えてたんです」

 

 ……そのNPCには彼等の話の内容があまり分からなかった。ユグドラシルというゲームの中で作られた彼には、それに則した知識しか無かった。だが、自分の姿はどうやら目の前の機神の亡くなった息子を模したものだという事は理解できた。

 

「………せめてユグドラシルの中でその夢を叶えてさせてあげたいってわけか。なんていうか結構ロマンチストだよね、じゅーるさん」

「そうでなきゃテーマパークの設計なんてやってられませんよ。設定的に悪の科学者なんですけどね」

「だって異形種揃いのPKKギルドだもん。どう頑張っても正義の味方にはならないでしょ。いっそ、たっちさんみたいなエフェクト背負わせる?」

「あはは……それはちょっと、ね。………それで、やっぱり消さないと駄目ですか?」

 

 どこか躊躇いがちな様子で機神は天使人形に聞いていた。

 ……息子を模した自分を消すのに躊躇いがあるのだろうか? 正直、そのNPCには何故躊躇うのか理解出来なかった。至高の御方である機神が破棄すると決めたなら自分は破棄されるべきだからだ。

 しかし、天使人形はすぐに返答する事なく、機神と―――そしてNPCをしばらく見つめていた。

 

「……ふう、まあいいよ。今更作り直せ、って言うのも酷だしね。というか、そのキャラでプログラム班にもう発注したんでしょ? 唐突にやっぱり止めた、なんて言われたら良い気分しないでしょうよ」

「……ありがとうございます、るし★ふぁーさん」

「ま、タブラくんには僕の方から誤魔化しとくよ。ただまあ、あまり思い詰めない様にね」

 

 ところで、とるし★ふぁーが唐突にニンマリと笑ったアイコンを出す。

 

「ちょっと面白いゴーレムを作りたいからさ、ホラ、前に二人でクエストに行った時にスターシルバー手に入れたじゃん? あれ、僕に譲ってくれない?」

「え? いやいや、あれは希少金属だから皆に報告しましょうって……」

「へ〜、そっか……。第四階層のマシンゴーレム達のデザイン、手伝ったのになあ」

「うっ」

「その前にもじゅーるさんのレベル上げとか、手伝ってあげたのになあ」

「うぐっ」

「タブラさんの説得も、ちょっと苦労しそうなのになあ……。いや良いんだよ? 僕が勝手にやる事だし? 借りと思ってくれなくても。うん、別に良いよ。借りを返せ、なんて言わないから……ねえ?」

「〜っ、ああ、もう! 分かりました、分かりましたよ! その代わり、これで貸し借り無しですからね!」

「いや〜、悪いね! よっ、さすがは“アインズ・ウール・ゴウン"で一番律儀な男!」

 

 モモンガさんにバレた時どうしよ……と頭を抱える機神の横で、みんなの度肝を抜くやつを作るぞー! と気炎を燃やす天使人形。

 ……NPCは情緒の機微を読む能力は無かった為に分からなかったが。天使人形の出すイタズラ好きな空気が、先程まで悲しい空気を出していた機神を明るくさせていた。

 

「ああ、そうだ。そういえば、この子の名前は何にするの? さすがに息子さんの名前は付けないよね?」

「……さすがにしませんよ、それは」

 

 少し考え込む仕草をして機神は思い付いた様に話し出す。

 

「……ナグモ。うん、ナグモにしましょう」

「それって、ひょっとして大学にいた南雲教授からきてる? あの人もあんな難儀な性格で、よくも授業をやってるよねえ」

「いやまあ……孤高の天才と言うと、あの人が真っ先に浮かぶといいますか。もう少し、学生に優しくても良いんじゃない? と在学中は思いましたけど」

「じゃあ、今度同窓会で伝えとくね。じゅーるさんがそんな事言ってましたよって」

「絶対にやめて下さい!」

 

 ケラケラと笑う天使人形を他所に、機神はNPCの設定欄をコンソールに出して入力した。

 

「ナグモ、っと。それじゃあ……今日からお前が新しい第四階層の守護者だ。よろしくな」

 

 そしてNPC ―――ナグモは、自分の名前を認識した。

 

 ***

 

 それからの日々は、ナグモにとってあまり代わり映えしないものだった。来る日も来る日もガルガンチュアのメンテナンスを続ける。一度、1500人の外敵(プレイヤー)と戦った時もあったが、それ以外は至高の御方(創作者)達が定めた行動(コマンド)に従った生活だった。

 

「ナグモ、元気にしてるか? 今日はモモンガさん達とクエストに行ってな……」

 

 だが―――そんな日常に、変化と呼べるものはあった。毎日ではない。しかし、自分の創作者である至高の御方は、周りに他の御方がいない時は自分へ話し掛けていた。

 

「ナグモ、今度はお前用の部屋を作ってやるからな。茶釜さんがアウラとマーレの家を作ったらしいから、リソースが溜まったら俺も作るからな」

 

 じゅーるの話にナグモは返事をする事は無い。彼には創作者に定められた(プログラムされた)以外の行動を取ってはならないという枷があった。

 

「余ったリソースでお前の友達になりそうな副所長を作ったぞ……まあ、うん。あれはやり過ぎた。反省している」

 

 ……それは傍から見るとさもしい一人芝居に見えただろう。決して返事をする事の無いナグモ(NPC)を相手に、じゅーるはまるで一人の人間を相手にする様に接していたのだから。

 だが、ナグモはそれが何故か嬉しかった。枷がある為に決して感情を表に出せないし、感謝の言葉も伝えられないが、御方達のシモベ(道具)に過ぎない自分を可愛がってくれたのだから。

 

「るし★ふぁーさんには参ったよ……ガルガンチュアを巨大ロボットにしてみたいとは言ったけど、ああ来るとは……。もういっそ鉄○28号でも作るかね。それならお前に合うかもな。……古いアニメなのに、あの子はあれが好きだったんだよな」

 

 ……分かってはいる。創造主が本当に愛情を向けているのは、この姿のモデルとなった亡き息子であり、自分(ナグモ)は代替品に過ぎないという事は。何よりも、自分は至高の御方達の聖地であるナザリック地下大墳墓を守護する為に創られた存在(NPC)。そんな自分が創作者であり、至高の御方であるじゅーるに示すべきは絶対の忠義だけだ。

 ……でも……それでも。もしも、許されるならば。

 

「―――じゃあな、ナグモ。“アインズ・ウール・ゴウン"を……モモンガさんを、よろしくな」

 

 ……あの時の絶望は、今も忘れる事は出来ない。結局、自分は何も出来なかった。創作者(じゅーる)にあれだけ恩を感じながら、何一つ返す事なくじゅーるは去ってしまったのだ。

 ……その後、どういうわけか自分だけナザリックから放り出され、地球という見知らぬ場所に若返って転移した。あの時は発狂しそうだった。

 だが、直前に最後までナザリックに残ってくれた至高の御方―――モモンガに、仕事を労われた事。そしてじゅーるの最後の言葉を胸に、自分は用済みとなった筈はないと奮い立たせ、ナザリックに戻る日が来るまで地球の人間達に混じって過ごすと決めた。

 

 人間に混じって暮らすならば、表面上は人間達に友好的であるべき。

 

 そんな事はナグモにも分かってはいた。だが、ナザリックとの繋がりが絶たれ、この上でじゅーるが残してくれた自分の在り方(設定)すら否定してしまったら、もう自分はナザリックの守護者でも、じゅーるが創り出したNPC(シモベ)ですら無くなってしまう。そんな思いが、ナグモの中に巣食っていた。

 だからこそ、ナグモは地球でも何も変えなかった。『人間を嫌う孤高の天才。同族だろうと何の情も持たない人間』。その姿を保つ事こそが、ナザリックへの、そしてもう居なくなったじゅーるへ示せる唯一の忠義だったのだから。

 ……忠義、だったのだ。

 

 ***

 

「じゅーる、様………」

 

 ナグモはじゅーるから与えられた自分の部屋(所長室)で、静かに涙を流していた。あれだけ薬で抑えつけていた感情の制御は、コントロール出来なくなっていた。じゅーるが創り出してくれた無表情も、もはや保つ事さえ出来ない。

 

「申し、訳、ありません……せっかく、貴方に創って頂いたのに……! 貴方から……モモンガ様を頼むと、お願いされたのに……!」

 

 もはや自分は、じゅーるの定めた在り方(設定)から完全に逸脱した。それをナグモは認める他なかった。

 それは、至高の御方に創られたNPC(シモベ)として、在ってはならない姿。

 

「申し訳、ありません……!」

 

 ナグモはただただ、創作者であるじゅーるに慚愧の思いで謝罪する。

 

 今しがた書き終えた手紙には……「自害届け」と、書かれていた。




>じゅーる・うぇるず

 本作オリジナルの至高の御方の一人であり、ナグモの生みの親。作者的にはゼペット、あるいはゼボットと名付けたかった。

 アーコロジー内に居住する上流階級出身で、現実では某テーマパークの宇宙エリアの設計とデザインを生業としていた。るし★ふぁーとは大学の同期で、家庭を持ってからも交友関係は途切れなかった。……妻を早くに亡くし、シングルファザーで子供を育てる事になっても。そして、一人息子が亡くなった後も。
 “アインズ・ウール・ゴウン"のメンバーには、上流階級出身というのは余計なトラブルの種になる事を危惧して、ギルドマスターであるモモンガと一部のメンバーにしかリアルの事情は明かしていない。ましてや亡くなった息子の事などは、モモンガも知らない。

 ギルドを辞める時、モモンガ達には転勤になったと伝えた。……本当の理由は、最後まで言えず仕舞いだった。

>るし★ふぁー
 
 お馴染み“アインズ・ウール・ゴウン”の問題児天使。本作においては現実でじゅーる・うぇるずと建築大学の同期生だった。本職は建築デザイナー。つまりは富裕層になるわけなのだが、2100年代において建築デザイナーという仕事はさらに上の支配層が喜ぶ様な物を設計するだけの仕事になりつつあった。それに鬱屈して、自分の創造性を自由に発揮できるユグドラシルにハマり、その後に“アインズ・ウール・ゴウン"へ加入した。
 
 じゅーるとは現実でも付き合いがあり、彼の家族とも何度か会ってはいる。じゅーるの息子からは「面白いオジさん」と親しまれていたらしい。

 実のところ、じゅーるがユグドラシルを始めたのはるし★ふぁーに誘われたのがキッカケ。子供を亡くした後、創作意欲をすっかりと無くして日々塞ぎ込んでいたじゅーるを見かね、るし★ふぁーは気晴らしになれば、と自分が遊んでいたゲーム———ユグドラシルへ誘ったのだった。ちょうどSFファン向けのアップデート、『ヴァルキュリアの失墜』が始まった時期でもあった。そしてギルド内では楽しい空気を出そうと、イタズラ(本当に怒られないレベル)を繰り返していたという。

 ……じゅーるが引退してから、彼も程なくして“アインズ・ウール・ゴウン"を脱退した。

「……なんかさ、つまんなくなちゃった」

 そう言い残し、あれだけ拘っていたレメゲトンの悪魔像も67体目で放棄して去ってしまった。

>リニューアル後の第四階層

 言うなれば、じゅーるが亡き息子を偲んで作った思い出のテーマパーク。だが幸運な事に、上流階級しか入れないアーコロジー内のテーマパークに行った事がある人間は“アインズ・ウール・ゴウン"には数える程もいなかった為、一見しただけでは誰にも分からなかった。

>南雲教授

 じゅーる達の大学の教授。平行世界の南雲ハジメではない。自分の研究や論文にしか興味がなく、学生からは冷たい人と認識されていたのだとか。

>自害届け

 私はナザリックのシモベとして在ってはならない存在となりました。よって死んで詫びます。私を復活させるのは至高の御方の財産を無駄に使ってしまうので、決して復活させないで下さい。
 
 そんな旨の謝罪文がモモンガへ宛てられている。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。