ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 ずっと書きたかった! ようやくあの方の名前を書けた!

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第二十七話「I am “Ainz ooal gown"」

 オルクス迷宮深層。

 そこは表層にいる魔物達とは一線を画す魔物が跋扈しており、表層とは違って階層ごとに様々な環境への対応が試される。その難易度はまさに()()()()()と呼べるだろう。

 しかし———モモンガ達には何の痛痒も感じていない。熱対策、冷気対策、毒対策などあらゆる環境ダメージをスキルやアイテムで無効化できる彼等にとっては、奈落の迷宮は障害足り得なかった。

 

「ふむ……何というか、多種多様な環境が揃ったダンジョンだな」

 

 水棲モンスターが跋扈する地底湖の遥か上を<飛行>しながら、モモンガは独りごちた。

 

「モンスター達もユグドラシルでは見た事の無い物が多いな」

「しかしながら、未知のモンスターであっても至高なる御身のご対応に一切の陰りはございませんな。さすがはモモンガ様です」

「よせ、セバス。私だけの力ではない、お前達の働きが優秀だからでもある」

 

 純粋な賛辞にこそばゆい物を感じながらも、モモンガは気を引き締める。

 

「それと、油断は禁物だ。ここは異世界のダンジョン。警戒は決して怠るな」

「はっ」

 

 セバスが頷くのを見て、モモンガはナグモへと視線を向ける。彼はモモンガ達の後から付いていきながら、ステルス・サーチャー達が集めてきた情報を整理していた。こうして間近で接してみて、モモンガにも彼の無表情の違いも少しずつ分かってきた。その顔は冷静さを保とうとしているが眉間が険しく、あれ以来の手掛かりが見つからない事に焦れてきている。

 

「ナグモ様……まだ迷宮は続いております。もしかしたら、探している人間はその先に」

「気休めは結構だ」

 

 気遣ったセバスに、ナグモは拒絶する様な声音を出す。

 

「そもそもここには資源調査の為に来た。白さ……人間の探索はついでに過ぎない。仮に見つからなかったとしても、当初の目的は達せられる」

 

 そう言いつつも、ナグモは決して画面から目を離そうとしない。その必死な姿に、セバスは何も言わずに下がった。

 

(ここにまで来て意地を張らなくても良いだろうに……あれか? 同僚に人間に恋しました、と知られるのが恥ずかしい的なヤツかね?)

 

 やれやれ、と少し頭を痛めながらモモンガは溜息を吐く。

 

(なんとなく、ナグモの事が分かってきたかも。コイツ、仕事が凄く出来るけどコミュ力ゼロなタイプだわ)

 

 今までNPC達の期待に応える為に支配者としての演技で押し通していたが、他の守護者達と違って人間的な未熟さや精神的な弱さを見せるこのNPCにはモモンガの中の人間の残滓が共感を感じているのだ。ともすれば、鈴木悟の職場にいた気難しい技術職の社員と似た雰囲気を感じていた。

 

(そう考えると同じ頭が良い設定のアルベドやデミウルゴスより、親しみを持てる気がする。あれだ、仕事は出来るけどコミュニケーションが壊滅的に下手な部下が出来たと思えば良いんだな、うん! ……それはそれで別の意味で胃痛案件じゃね?)

 

 今度、最古図書館から『出来る上司のハウツー本』みたいな本をこっそり借りよう。モモンガが密かに決意した、その時だった。

 

「っ、モモンガ様!」

「どうした?」

「この先に生命体の反応を感知しました。これは……人間種の反応です!」

「よし。だが警戒は怠るな。<偽装情報>の様なスキルでモンスターが種族を誤魔化している可能性も考慮して、戦闘態勢に即座に入れる様にせよ」

「はっ!」

 

 そうして、その場所にモモンガ達は辿り着いた。巨人でも通れそうな巨大な石扉。両脇には一つ目の巨人の石像が番人の様に置かれていて、今にも襲い掛かってきそうだ。

 

「今までとは違って、明らかな人工物だな。それにしても……いかにも、という感じだな」

「……トラップ反応を感知しました。扉を開けようとすると、石像が襲い掛かってくる仕掛けです。しかし、これを作った者にはるし★ふぁー様程のセンスが無い様ですね」

「そう言うな。第一、あの人と比べるのは他のゴーレムクラフターが気の毒だろう」

「失礼致しました」

 

 マジックアイテムの片眼鏡を掛けながら調べたナグモに、モモンガは少し懐かしい気持ちになりながらそう返した。

 

(あの人、よく俺をからかってくるから苦手だったんだよなぁ。でも、ゴーレム製作に関しては妥協は許さない人だったもんな……)

 

 るし★ふぁーとの思い出に浸っている間に、一つ目の巨人達は二人の守護者によって瞬殺されていた。

 そうして警戒を怠らず、石扉を開けて中に入る。中は聖堂の様な造りになっており、各々が暗視のスキルを使って部屋の全容を見渡していく。すると………。

 

「………誰?」

 

 部屋の最奥、立方体のオブジェに埋まる様に磔に拘束された人型がモモンガ達へ生気の無い瞳を向けてきた。

 人型は12歳前後の少女だった。金色の髪が入口から漏れる灯りで月明かりの様に反射し、ルビーの様な紅い瞳が暗闇の中でも分かるくらい印象的だった。

 

「こんな場所に女の子、だと……?」

「……どうやら先程の人間種の反応はこの少女のようです」

 

 瞠目するモモンガに対して、ナグモは失望感を滲ませた声で報告する。

 

「誰……? ううん、誰でもいい。お願い、私を助けて……!」

 

 ケホケホ、と咳き込みながら金髪の少女が懇願してくる。まるで久しぶりに声を発した様な枯れ果てた声だった。

 セバスが即座に動こうとするのをモモンガは手で制する。

 

「スマンが、我々にメリットが無いな。まだお前がどんな理由で封印を施されているかも分からん。こちらを利用して、封印を解こうと企む邪悪な存在という線もあり得る」

 

 ハッとセバスの顔が驚愕に歪む。同時に、そんな可能性を露ほどにも考えずに迂闊に動こうとした自分を恥じる様に苦渋の面を浮かべた。

 

(ユグドラシルなら、そういう展開もやりかねない。というかやったよ……)

 

 クエストで救出する様に依頼されたNPCの少女が最後の最後で本性を現して見るも邪悪な異形種に変貌した時、ペロロンチーノが「俺の純情を裏切りやがってえええっ! やっぱり運営は糞だチクショオオオッ!!」と泣きながら矢を撃ちまくっていたのは、ある意味で良い思い出だ。

 

「違う……! 私は……裏切られただけ! 私は、吸血鬼の一族で……殺せないから、封印するって……!」

「吸血鬼?」

 

 何とも胡散臭い物を見る様な目で、ナグモは金髪の少女を見た。

 

「どうした?」

「いえ、トータスの吸血鬼は三百年前に絶滅したと文献にはあったので……」

「ほう。つまり、レ……この世界では今はもういない種族という事か」

 

 一瞬、レア物と言おうとした口をモモンガは閉ざした。さすがに人間扱いしてない表現はどうよ? と残された良心が歯止めを掛けていた。

 

(ユグドラシルの吸血鬼と違って、トータスだと人間種になるのか? それに三百年前に滅んだ種族の生き残りか……ナグモが王宮で集められなかった情報も、ひょっとしたらこの吸血鬼は知ってたりしないか?)

 

 そんな打算をしながら考え込むモモンガへ、金髪の少女は必死で訴えかけた。

 自分は吸血鬼の一族の中でも特異な存在で、不老不死の存在であること。陣や詠唱無しでも魔法を操れる事、12歳で女王に即位して国民の為に頑張ってきたのに、信頼していた叔父に裏切られてこの場所に封印された事など。

 魔法の無詠唱発動が出来るという点には少し興味が出たが、それ以外はモモンガにとってさほど惹かれなかった。鈴木悟だった頃ならもう少し同情的になったかもしれないが、今のモモンガにとっては、結構苦労したんだなという感慨しか思い浮かばなかった。

 だが———。

 

「お願い、します……助けて、下さい……」

 

 モモンガの興味無さそうな態度が伝わったのか、金髪の少女がポロポロと涙を流しながら懇願してくる。

 

「もう……ここで一人だけでいるのは嫌なんです……」

 

 その姿が———円卓の間でたった一人で待ち続けた自分の姿と重なった。

 

「………いかが致しましょうか?」

 

 セバスの声にモモンガは現実に引き戻されかけ———彼の面影に、純銀の白騎士の姿が見えた。

 

『誰かが困っているならば、助けるのは当たり前!』

 

 かつての記憶と共に、たっち・みーの力強い宣言が脳裏に蘇った。モモンガは、ふうと溜息を一つ吐く。

 

(………なんか、今日はよくよくギルメンの皆を思い出す事が多いな)

 

 そして、モモンガは少女へと近付く。同時に、被っていた嫉妬マスクを解除する。現れた骸骨の顔に、少女は息を呑んだ。

 

「アンデッド……! トラウムメイジ……違う。まさか……伝説に記されたナイトリッチ……?」

「違う、オーバーロードという種族だ。聞き覚えは?」

 

 ふるふると頭を横に振る少女に、モモンガはそうかとだけ伝える。自分の様なアンデッド種族はトータスでは珍しいのかもしれない。

 

「見ての通り、私はアンデッドだ。それでも、お前は救いを求めるか? 代価として、私に忠誠を誓えるか?」

 

 背後の守護者達の驚いた気配を感じながら、モモンガは金髪の少女に問う。

 たっち・みーへの義理を果たす意味合いで、少女を無償で助けても良かった。しかし、この世界への深い知識を持っていそうな少女を手放すのは何となく惜しくなり、自分の手元に置いておこうと考えたのだ。

 

(それに、二人にはナザリック外の人間種だからといって無闇に差別しないと宣言しちゃったもんなぁ……)

 

 言った事に責任を持たないといけないなんて上司は辛いな、と元の世界なら無縁そうな悩みに内心で苦笑する。金髪の少女は少し迷う素振りを見せ———首を縦に振った。

 

「構わない…です。私は助けてくれるなら、貴方に忠誠を誓います」

「よし。ナグモよ、お前が新しく覚えた魔法で封印を壊せそうか?」

「……少々、お待ち下さい」

 

 ナグモはいつもの無表情で少女を封印した立方体の石に手を当てて瞑目する。しばらくして、モモンガへと向き直る。

 

「魔力を弾く材質で出来ている様なので、高密度の魔力を流し込む必要がありますが……可能です。多少、お時間を頂く事になりますが」

「構わん、実行に移せ。セバス、お前はこの少女が解放されたら気功で癒やしてやれ」

「畏まりました」

 

 どこかホッとした雰囲気を出しながら、セバスも近寄った。ナグモが“錬成"を使い、立方体の形がゆっくりと変わっていく。その間にモモンガはこっそりと魔法を詠唱する。少女の話が嘘で、罠という可能性もまだ零ではない。もしも封印が解かれて襲い掛かられてもNPC達を守れる様に、モモンガは即死魔法の準備をしていた。

 やがて、ナグモの魔法によって立方体が崩れて少女が解放された。少女は襲い掛かる素振りもなく、その場にペタンと座り込んだ。

 

(杞憂だったか……)

 

 モモンガは魔法を解除しようとし———その直後、部屋の入り口を遮る形で一体の魔物が上空から地響きを立てて降ってきた。

 

『キシャアアアアアッ!!』

 

 サソリによく似た形をした体長5メートル程の魔物が威嚇の声を上げ———。

 

「<真なる死(トゥルー・デス)>」

 

 直後、少女に使おうと用意していた魔法によって、モモンガに即死させられた。糸が切れた様にサソリモドキは倒れ伏す。

 

「あれ程の魔物を指先一つで……それにあの魔法……見た事が無い」

 

 突然の魔物の出現に驚いていた少女だが、それを更に上回る展開に瞠目する。その声には畏怖の念が篭っていた。

 

「貴方は、一体………?」

「私か? 私の名は———」

 

 モモンガ。そう名乗ろうとし、何故か言葉が出なかった。

 それはかつてのギルド長としての名前。たった一人、ナザリック地下大墳墓に残った自分が他人へ名乗るべき名があるとするならば———。

 

「———アインズ・ウール・ゴウン」

 

 その名前が自然と口から出ていた。畏敬を込めて自分を見る吸血鬼の少女へ、ナザリックの支配者は高らかに名乗り上げる。

 

「私こそが、アインズ・ウール・ゴウンその人である!」




>一行、驚異的な速さで迷宮を突破中

 そりゃあね。アインズ様がいたらオルクス迷宮はヌルゲー化しますって。

>金髪の吸血鬼の少女

 今の段階ではまだ名無し。ユエにするか、本名にするかは考え中です。アインズ様はたっちさんへの恩を返すのと、この世界特有の吸血鬼という事で救う事にしました。
 彼女の名前はアンケート収集します。(ただし、アンケート通りの結果にするとは限りません)

>アインズ・ウール・ゴウン

 これはずっと書きたかった。これより、アインズ様とお呼び致します。m(_ _)m
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