ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 ……酒飲んだ後に小説を書くもんじゃあ無いな。翌朝になってすんごく後悔しております。
 あとアンケートは締め切らせて貰いました。まあ、残念ながら彼等には———。


第三十七話「香織のメイド修行 初級編」

「………今日はここまで」

「はい! ご指導ありがとうございました! シズ先生!」

「………ん」

 

 メイド服を着た香織に、シズは表情を変えないながらも満足気に頷いた。

 オルクス迷宮の屋敷で、香織は時々行われるナグモの精密検査を受ける以外は彼の身の回りの世話をして日々を過ごしていた。晴れて恋人となったナグモの世話を焼くのは苦ではないが、転移前では家の手伝いぐらいしか経験の無い香織に出来る家事は限られていた。そこでもっと自分が出来る事を増やしたいと思ってミキュルニラに相談したところ、「それでしたら〜、メイドさんのお仕事を教えてくれそうな子にお話ししてみます〜」と彼女の口利きでプレアデスのシズ・デルタを紹介されたのであった。

 

「……ミキュルニラから頼まれた仕事だけど、香織は覚えがいいから教え甲斐がある」

「そんな……シズ先生の教え方が上手なお陰ですよ」

「むぅ……先生……先生かぁ……」

 

 普段は桜花領域から離れられないオーレオールを除けば、姉妹の中で末っ子(本人はエントマが妹だと主張している)の様に扱われるシズからすれば、自分を目上の人間として慕う香織に悪い気はしてない様だった。

 そんなシズを見ながら、香織はなんとなしに考えてしまう。

 

(それにしても……ナグモくんから聞いていたけど、本当にこの人はロボットなのかな?)

 

 ナグモにOHANASHIさせ———ではなく。説明して貰った内容によるとシズは精巧な自動人形らしいが、香織の知る地球のロボットと比べて何段階も進んだ技術で作られたであろうシズを見ていると、実は人間でした、というオチは無いだろうかと思ってしまう。

 

「……どうかした?」

 

 香織の視線に首を傾げる。不躾な視線を向けてしまったと思い、香織は謝罪した。

 

「っ、ごめんなさい。シズ先生は本当にロボ、じゃなくて自動人形なのかな、と思っちゃって……」

「……? 意味不明。どうしてそんな事を聞く?」

「その……本当にシズ先生が自動人形なら、シズ先生を作った人は本当に凄い人なんだろうな、って」

 

 ナグモから至高の四十一人の事は聞いたが、自分を救ってくれたアインズはもちろん、ナグモというクローン人間を作ったじゅーる、そしてシズを製作したガーネットという人物はまさしく神の如き集団だったのだろう。学校では教師ですら下に見ていた様な態度を取っていたナグモが心酔するのも頷けてしまう、と香織は思っていた。

 

「………ん。ガーネット様はとても偉大な御方。それが理解できる香織は好感が持てる」

 

 シズの平坦な声に少し力が入る。よし、と頷き———。

 

「……これ、香織にあげる」

 

 ぺたりと香織の額に何かが貼られる。

 

「って、何これ!?」

「……お気に入りのシール。香織は可愛いとはちょっと違うけど、特別にあげる」

「え、それはありがとうございます……って、剥がれないよコレ!?」

「……博士の特製。簡単に剥がれない」

「あ、あの嬉しいですけど、出来れば額以外に貼って貰えないでしょうか……?」

「……むぅ、仕方ない。でも、目立つ所に貼ること。……御守りだから」

 

 シズから剥離液を貰い、香織の額からようやくシールが剥がれる。改めて見ると、「1円」と書かれたシールが香織の手にあった。

 

(何で1円……? でも御守りという事は、一応は好意なんだよね……?)

 

 とりあえず、ここでいいかな? と香織はアインズから渡された常時MP回復効果の腕輪に貼る。すると、そこでドアがガチャリと開けられた。

 

「ちわーっす! シズちゃん、遊びに来たっすよー!」

「ルプスレギナ……今日、お休み?」

「そうっすよー。でもユリ姉やナーちゃんはお仕事中だから、暇で暇で仕方なくて。だからユリ姉に聞いて、こっちに来てみたっす」

 

 クレリックを基調にしたメイド服を来た褐色肌の女性———ルプスレギナは妹のシズへ笑顔で話しかける。

 

「それで……そいつが例の?」

 

 スッと真顔になるルプスレギナに香織の背筋に冷たい物がはしる。それでも初めて会う相手に対して、シズから習ったスカートの裾を摘んだ御辞儀(カーテシー)で挨拶する。

 

「は、初めまして。白崎香織と申します。ナグモく———ナグモ様の、御世話をさせて貰っています」

 

 ついナグモくん、と呼びそうになったのを言い直した。プライベートでは親しく接しているが、ナグモはナザリック地下大墳墓の幹部だという事を考えての事だ。

 

「へえ……アインズ様が言っていたアンデッドって、アンタの———」

 

 そこまで言いかけたルプスレギナが香織の手元———腕輪に貼られた1円シールに気付いた。

 

「ん? これは……シズちゃん?」

「………お気に入り」

「……ああ、なるほど! そういう事っすか! こちらこそ初めましてっす、私はプレアデスのルプスレギナ・ベータっす! 気軽にルプーさんと呼んでも良いっすよ、カオちゃん!」

「カ、カオちゃん?」

 

 今までの食肉を観察する様な冷たい目線から一転して、ニカッと快活に笑うルプスレギナに香織は困惑する。シズを振り向くと、「だから言ったでしょう?」と言わんばかりに胸を張っていた。

 

「いやー、ナグモ様もスミに置けないっすね。カオちゃんみたいな可愛い子をメイドに雇うとか、あの方も男の子なんすねぇ」

「ええと……ナグモく、じゃなくて、ナグモ様の御世話は私が好きにやってる事で……」

「ああ、いいっすよ。無理に敬語を使わなくても。カオちゃんが話しやすい様に話して大丈夫っす」

 

 ところで……とルプスレギナは右手の人差し指を立て、左手の親指と人差し指で丸を作り———。

 

「ナグモ様の御世話って、アッチの方も含まれるんすか?」

 

 こう、色々と問題があるハンドサインをした。

 

「あ、アッチの……!?」

「……ルプスレギナ、下品」

「えー、いいじゃないっすか。ここにいるのは女の子だけなんすから」

 

 ジト目でルプスレギナを見るシズを他所に、香織は顔を真っ赤にしていた。

 

「ナ、ナグモくんとは、その、まだ、そんな関係じゃなくて!」

()()? という事は、そういう事を致したいというわけっすね」

 

 あう! と悲鳴を上げる香織に、ルプスレギナはニヤニヤとした笑みを強めた。

 

「いやー、初心に見えて意外と好きモノなんすね、カオちゃんは♪」

「う、うう………」

「というか何で躊躇しているんすかねぇ? あの、人付き合いは嫌いですが何か? と全身で訴えてきてる様なナグモ様が側に置いてるくらいだから、後はパクッといっちゃえばいいのに」

「だって……まだ私の年齢で、そういうのは早いかなって……」

「甘い! 甘いっすよ、カオちゃん!」

 

 真っ赤に俯きながら蚊の鳴くような声でブツブツと言う香織に、ルプスレギナはドーン! と擬音が付きそうな声を出す。

 

「ナグモ様は階層守護者代理! 御同僚の方はアルベド様にシャルティア様、アウラ様と絶世の美形揃い! ナグモ様もその内、ふらふら〜っと靡いちゃうかもしれないっす!」

「ふ、ふらふら〜っと?」

「とくにアルベド様はサキュバスっす! いつかナグモ様が襲われるかも! ……そういえば、ナグモ様は今日はナザリックに出張しているんすよねー」

「サキュバス!? 襲われちゃう!?」

 

 香織はつい想像してしまった。一度だけ背中から翼を生やした黒髪の女性がオルクス迷宮に来た事がある。ナグモからは危険だから、と香織を下がらせたので遠目から見ていただけだが、それでも魔性の美を彷彿させる女性だった。あとで、あれがアインズのシモベ達の中で最上位に存在するアルベドだ、と教わったが、きっと傾国の美女とはあの人の為にある言葉なんだろう。そんな女から見ても完璧な美を持ったアルベドが、ナグモへと覆い被さり———。

 

「ダメーっ! そんなの絶対ダメーっ!!」

「だったら、方法は一つしか無いっすよ」

 

 ポン、と実にいい笑顔で香織の肩を叩くルプスレギナ。

 

「先にやっちゃえばいいんすよ」

「先に……やる……ナグモくんを……」

 

 ブツブツ、と香織は俯いてしまう。事の成り行きを見ていたシズはルプスレギナに咎める様な目線を向けていた。

 

「……あまり揶揄わない。香織は結構純情」

「いやー、でも反応が面白くてつい。こんな話、新人さんしか信じないっすから」

 

 ニシシ、と笑うルプスレギナが目に入らず、香織はブツブツと呟いていた。

 

「そう、だよね……ナザリックの人って、何でか美人さん揃いだもん。御世話係だから、ナグモくんが爛れた生活を送らない様にしなくちゃ……」

「あれー? カオちゃん? もしもーし!」

「それに検査の時に、その……見られているから今更だよね? うん、もう一線を越えてるよね? そう言ってもいいよね?」

「おーい、戻っておいでー!」

 

 ルプスレギナが声をかけるが、暴走機関車(香織)は止まらない。アンデッド特有の真っ赤なお目々がグルグルと光る。屍食鬼(グール)としての本能に精神が呑まれかけ、

 

「コレは御世話係として必要な事だから。人嫌いなナグモくんが女の人とのキチンとした付き合い方を学ぶ為だから………食べちゃっても、いいよね?」

 

 るわけでもなく。何か別の本能に呑まれていた。

 

「……これ、どうするの?」

「んー……面白いから放置で♪」

 

 ***

 

 翌朝。今日もナグモの助手を務める為にユエは出勤した。既にナグモは先に来ており、書類の束を何度も読み返していた。

 

「おはよう、ナグモ所長」

「………あ、ああ。おはよう」

 

 何故か歯切れの悪いナグモにユエは怪訝な顔になる。よくよく見ると、いつもしっかりと身支度してから来る筈なのに髪の毛は寝癖がまだついており、服も襟元が微妙にヨレヨレな気がする。

 

「……何かあった?」

「別に、何も」

「……香織と、何かあった?」

「別に、何も。全くもって」

 

 香織の名前を出した途端、声のトーンが一つ上がる。というか書類の束はさっきからページを行ったり来たりしてるだけだ。

 その反応でユエは長年の経験から察した。

 

「……昨夜はお楽しみでしたね?」

 

 バサバサッ! とナグモの手から書類が滑り落ちる。

 

「な、な、あ………!?」

「普段は表情があんまり無いくせに。香織の事になるとすごく分かりやすくなる」

 

 もはや最初に会った時の人形じみた無表情は何処にやら。目を白黒させながら狼狽するアインズの側近に、ユエはニンマリとした。

 

「へえ……時間の問題だとは思っていたけど、そう。とうとうねえ……」

「そのニヤニヤ笑いを止めろ、今すぐに!」

 

 技術研究所の所長としての威厳を出しながら、部下であるユエにナグモは命じる。

 もっとも、耳まで赤い顔で言われても威厳ゼロだった。

 

「というか前から気になっていたが、他の階層守護者には敬語で喋るくせに僕相手には遠慮が無くないか?」

「ん? 迷宮内で色々と情けない姿とか見てるから、貴方相手に敬語は要らないかなあ、っと思って」

「……シャルティアの引き抜きに応じなかったのを心から後悔してきたな」

「貴方には香織の事で貸しがあると思うけど?」

「本気で厄介だなお前は!」

 

 チェシャ猫みたいなスマイルを浮かべるユエに大きく咳払いをする。これ以上の話題はどう考えても泥沼になりそうだった。

 

「いいから! 報告! 留守中に変わった事はあったか?」

「……デミウルゴス様からの至急の報告が一つ」

 

 ペラっと書類を捲りながらユエは伝えた。

 

「神の使徒と呼ばれる人間の中で———死傷者が出たと言ってた」

 




>香織、シズからシール貰う

 ナザリックで一番生存方法が高いやり方が、シズのお気に入りになる事では無いだろうか? まず無断で入る事じたいが死亡フラグだけど。

>食べちゃった人

 ……うん。詳細はR-18版にて。一度、書いてみたいとは思っていたので。

 さて、書きたいネタは粗方は書いたから。そろそろ……。

>クラスメイト達から死傷者

 オーバーロードらしい事でもやろうか、と。

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