せめて、今後もあの人がハーメルンでこの作品を読んでくれてる事を願うばかりです。
やってる事は邪悪に過ぎるけど。
追記
頂いた感想は全部読んでます。時間が無いので感想返しができない場合がありますが、作者のやる気になるので気が向いたら頂けると嬉しいです。
「ウオオオオオッ! “浸透破壊"!」
龍太郎の拳がデスナイトへ突き出される。インパクトした瞬間に内部へと衝撃が伝わる拳は今まで魔物を一撃の下に破壊していた。
ガンッ!
タワーシールドから鈍い音が響いたが、それだけだ。即座にデスナイトは大剣を翻して龍太郎の腹に剣を突き立てた。
「ガハッ……!?」
「龍太郎!? お前えええええっ!!」
「皆の者、光輝に続け! あのトラウムナイトを殲滅せよ!」
光輝が怒りのあまり聖剣を振り翳し、フレデリックの号令の下にクラスメイト達は慌てながらも武器を手に取り、デスナイトへと襲いかかる。
「龍太郎! ねえ、しっかりしてよ!」
そんな中、負傷者である龍太郎を鈴は小さな身体で懸命に後方へと引き摺りながら必死に声を掛けていた。龍太郎は荒い呼吸を繰り返していたが、貫かれた腹から血が次々と流れていく。
「綾子! 助けて! 龍太郎が、龍太郎が死んじゃう!」
「いま治療魔法をかけてるの! でも……!」
香織がいない現在、クラスメイト達の中で唯一の治療師である辻綾子が必死に治療魔法をかける。だが、香織よりもステータスが劣っていた彼女では中々思う様に傷が塞がらない。鈴が“聖絶"で安全な治療空間を形成する外では、光輝達がデスナイトへと斬り込んでいく。
「ハアアアッ! “光刃"!」
聖なる光を纏った斬撃がデスナイトのタワーシールドに繰り出される。だがデスナイトは煩わしそうに盾を振り、“光刃"ごと光輝を押し戻して宙に舞わせた。
「うわぁっ!?」
「光輝くん!」
「くっ、か、かかれぇ!」
恵里が倒れ込みながら光輝を受け止める中、フレデリックは配下の騎士とクラスメイト達に突撃を命じる。だが———。
「ギャアアアッ!?」
「グゲェ!?」
デスナイトには攻撃が届かない。ある者は剣で切り裂かれ、ある者はタワーシールドで吹っ飛ばされて頭から着地した時に嫌な音を響かせて動かなくなった。あっという間に五人の生徒と三人の神殿騎士の屍の山が積み上がった。
『クゥゥウウウゥッ………』
返り血を浴びたデスナイトから唸り声が響く。それを見てクラスメイト達は悟った。目の前の魔物は殺戮を楽しんでいる。腐りかけた顔は表情が分かりにくいが喜悦に染まり、弱者である自分達を甚振っているのだと。
怖気と共に理解してしまった。目の前の魔物は———自分達の知っている魔物とは違う、と。
「よくも……よくも、皆を……っ!」
恵里に介抱されて立ち上がった光輝は、死体へと変えられた仲間達を見てワナワナと震えた。
「お前は絶対に許さないっ……! 正義の名の下に、俺はお前を倒すっ!」
光輝は“限界突破"を使い、自身のステータスを三倍化させた。そして、彼の必殺技を詠唱する。
「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ!」
「魔法支援組は光輝に援護魔法をかけよ! それ以外は下がれっ!」
フレデリックの号令により、クラスメイト達は即座に動く。かつてベヒモスに襲われた時とは比べ物にならない連携を見せるのは、彼等もまた成長した証だろう。フレデリックもまた、持てる魔力の限りで光輝に援護魔法をかける。
「神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」
クラスメイト達のブースト、そして“限界突破"による強化。光輝がいま出せる最高の一撃が巨大な極光となった。聖なる極光は
目も眩む様な閃光と共に爆発音が起きる。もうもうと土煙が舞い起き、辺りが見えなくなる。
「ハァ……ハァ……ッ!」
光輝が膝をつく。今のが光輝の出せる最高の攻撃であり、魔力のほとんどを持っていかれてしまった。それでも手応えを感じていた。
土煙が晴れる。そこには………タワーシールドを切り裂かれ、巨大な裂傷を作ったデスナイトの姿があった。
「やった………」
その姿に光輝が喜びの声を上げる。脳裏にあるのはかつてのベヒモスの戦い。あの時とは違い、今度は自分の手でやり遂げた。
デスナイトが崩れ落ちていく。その姿に光輝だけでなく、クラスメイト達も歓声を上げる。
「やった、やったぞ!」
ザンッ!
倒れそうだったデスナイトが踏み留まった。そして腐り落ちた顔が光輝へ向けられる。
「そんな……! 効いてないのか!?」
「て、撤退! 総員、撤退!」
「フレデリックさん!? 待って下さい、仲間を殺したあの魔物を見逃すなんてできない!」
「こ、光輝くん! 今はフレデリックさんの言う通りにしましょう! 龍太郎くんがこのままじゃ———!」
恵里が指を指す先を光輝は見た。そこには———。
「龍太郎! だめ、お願い! しっかりして!」
鈴が必死に龍太郎の手を握って呼びかける。白眼を剥き、ピクピクと土気色の顔を痙攣させた龍太郎に綾子は必死に回復魔法を唱えているが、デスナイトの
親友の危篤状態に光輝は顔を青ざめさせる。この時ばかりはすぐに決断した。
「わ、分かった。みんな、撤退だ! 一旦、後方で待機している永山達の所まで下がろう!」
何人かの生徒が足止め用の魔法などをかけ、龍太郎を素早く担架に載せると撤退を開始する。デスナイトからの追撃を警戒していた光輝だが、そこである事に気付いた。
(追って来ない……? あれはこちらから攻撃しないと反応しないのか?)
何故か、と考えそうになる頭をそんな場合じゃないと打ち消す。そして、龍太郎の元へ戻っていた。
***
『グウウウゥゥゥゥウウウッ……!』
一人残されたデスナイトは自身の身体に刻まれた焼ける様な傷跡に唸り声を上げる。アンデッドである彼に聖なる攻撃は毒に等しい。先程の一撃はデスナイトの偽りの命を刈り取るには十分な一撃だった。だが、デスナイトにはある特殊能力があった。
それは一度だけならば、どんな攻撃でもHP1を残して耐える能力。それがあるからこそ、アインズもレベル的には35程度のデスナイトを盾役として愛用しているのだ。
『カハアアァァアァァアッ……!』
デスナイトは思考する。自らを生み出した御方より下された命令は、「この場所を死守せよ」。いま、御方より守る様に言われた場所を通ろうとした
『——————!』
デスナイトは声なき声でもう一つの特殊能力を発動させる。そして————命令がある為に動けない自分に代わって、
***
「おい、一体何があったんだ!?」
後方で上層への転移門魔法陣の前で待機していた永山達が声を上げる。
意気揚々と迷宮の奥へ行った筈で勇者パーティーが、今は敗残兵という有り様で顔を青ざめさせながら戻ってきたのだ。見れば、見知った顔の何人かは姿が見えない。
「ここにいない奴はどうした!? まさか———!」
「黙っててくれ! 龍太郎が危険なんだ!」
詳しい事情を聞こうとした永山を光輝は怒鳴って遮る。担架の上の龍太郎は腹に急拵えの包帯を巻いているものの、その包帯も赤く染まっていた。血の気が全くなくなった龍太郎の手を鈴は必死に握り、綾子は腹の傷口に向けて癒しの光を放っていた。
「………っ」
しかし———綾子は途中で回復魔法を唱えるのを止めた。
「あ、綾子? まだ龍太郎の傷は治ってないよ? 何で止めるの!?」
「いえ、谷口さん……坂上くんは、もう………」
綾子が俯きながら力なく首を横に振った。鈴が必死に握っていた手も今は冷たくなり、何の力も入っていない。鈴は顔を青ざめさせる。
「嘘だよね? だって、龍太郎だもん。そんな簡単に死ぬわけないじゃん」
「谷口さん………」
「ちょっとしたドッキリだよね? 皆で私をからかっているんだよね? アハハ、ビックリしちゃったなあ。だからさ、もう止めない?」
「谷口さん!」
「だって! さっきまであんなに元気だったじゃん! トラウムナイト相手に、龍太郎が死ぬわけないじゃん!」
周りを見回して訴えるが、誰もが目を逸らすだけだった。光輝は「嘘だ……龍太郎が……そんな……」と焦点の定まらない目で現実逃避する様に視線を彷徨わせていた。
「龍太郎……お願いだから、目を開けてよ……元の世界に帰ったら、一杯色々な所に遊びに行こうって、約束したじゃん……!」
嗚咽混じりの声が迷宮の中に響く。悲哀に満ちた鈴の姿に生徒達は沈痛な顔を伏せるしかなかった。こういう時に真っ先に駆け寄るだろう恵里もまた、皆から離れた場所で座り込んで顔を覆ってブツブツと何か呟いていた。
「谷口……気持ちは分かる、でも今はとにかくここから出ないと。あのヤバい奴が襲ってきたんだろ?」
遠藤の言葉にビクッ! と前線組達が怯えた表情を見せる。しかし、鈴だけは龍太郎の亡骸に縋りついて、イヤイヤと首を振るだけだった。ここに龍太郎を置いていくという選択肢は彼女の中には無い様だ。
「……なあ、どうする?」
「どうするって……フレデリックさんに聞くしかねえよ。なあ、フレデリックさん」
永山はクラスメイト達の教官であるフレデリックに声を掛けた。だが、フレデリックはまるで目の前の事態すら目に入らないかの様に小声でブツブツと呟いていた。
「失態だ……イシュタル教皇猊下より管理を任された神の使徒が……龍太郎ほどの出来の良い兵士が……このままでは私が築き上げてきた
「フレデリックさん……?」
小声で何かを呟き続けるフレデリックに、永山は不審そうに再び声を掛ける。ハッと顔を上げたフレデリックは————目尻を吊り上げて、遠藤を睨んだ。
「貴様、遠藤……どういうつもりだ!?」
「お、俺!?」
「貴様が曖昧な報告をしたせいで、私の部下と神の使徒達が犠牲となったのだぞ! この責任はどうとるつもりだ!!」
「なっ……!?」
あんまりな物言いに遠藤は顔色を失った。そんな遠藤を庇う様に永山達が声を上げる。
「ちょっと待ってくれよ、フレデリックさん! 遠藤は何も悪くねえ!」
「元はと言えば、遠藤が偵察した情報を無視したアンタの責任だろ!」
「黙れ! あんなあやふやな報告しか出来ないのか!? 何の為に“暗殺者"の天職を得たと思っている!」
永山と野村にフレデリックは顔を真っ赤にしながら唾を飛ばす。どうあってもデスナイトで死んだ部下やクラスメイト達を遠藤の責任にしたいという魂胆が見えていた。
「そうか……そういう事だったのか……!」
地の底から響く様な声が響く。光輝は怒りに染まった目で遠藤達をキッと睨んだ。
「遠藤……お前は俺達を嵌めたんだな!」
「ハァッ!? なんで俺がそんな事しなきゃいけないんだよ!?」
「だって永山達と一緒で戦いに協力する事に消極的だったじゃないか!フレデリックさんが与えてくれた仕事もやりたがらなかった!」
光輝は口角泡を飛ばしながら遠藤へと詰め寄る。親友を失った悲しみから、彼も尋常ではない精神状態だった。ここ最近のフレデリックの「特別扱い」は彼の都合の良い様にしか見ない精神性を増長させ、自分の身に起きた不幸の理由を他人に求めていた。こういう時に嗜める役割の雫は、今はいない。
「だから腹いせに俺達を罠に嵌めたんだ!そのせいで龍太郎が……!」
「そ、そうだ、全て奴が悪い! この事は私から教皇猊下に報告させて貰うぞ!」
フレデリックも便乗して騒ぎ出す。彼の頭の中は責任転嫁で一杯だった。
「ふ……ふざけんじゃねえぞ、天乃河ァァァァッ!!」
「てめえ、いい加減にしやがれ!」
あまりにも理不尽な扱いにとうとう遠藤の堪忍袋が切れてしまった。遠藤を擁護する為に永山達も怒りの声を上げる。両者とも武器を握りしめて、一発触発な雰囲気となり———。
「ねえ、待って!」
クラスメイト達が固唾を飲んで見守る中、それまで離れていた場所で俯いていた恵里が声を上げる。
「……何か聞こえない?」
全員が辺りを見回す。まさかさっきの骸骨騎士が追ってきたのか!? と身を固くし———暗がりの中からそれは現れた。
「エドガー! 生きていたのか!?」
先程、デスナイトに盾で殴られて頭から嫌な音を響かせて動かなくなった自分の部下にフレデリックは驚いた声を上げた。エドガーと呼ばれた神殿騎士は頭をグラグラとさせながら、クラスメイト達に歩み寄る。
「ちょうどいい、遠藤を拘束しろ! 奴は、私……ではなく、神の使徒を謀って魔物に殺させた裏切りも———」
フレデリックは遠藤達を指差しながら、エドガーへと近寄る。エドガーは手に持っていた剣を掲げ上げ。
ザンッ!
「の………?」
最後まで言い終わらない内にフレデリックのクビが斬られた。突然の事に、生徒達は悲鳴を上げた。
そして———その悲鳴に呼応する様に、ガバッ! と起き上がった者がいた。
「りゅ……龍太郎!? 生きてたの!」
それまで縋りついて泣いていた鈴は、驚きながらもすぐに顔が喜びに染まる。
「良かった! やっぱり龍太郎が死ぬわけないもんね!」
鈴は抱きつこうとする様に両手を広げた。
彼はそんな鈴の胸に手を伸ばし———次の瞬間、ザクロが潰れる様な音が響いた。
「……りゅ……た……ろ……?」
自分の胸に突き刺さった手刀を鈴は不思議そうな顔で見つめた。
ザシュッ、と手刀が引き抜かれる。鈴は糸の切れた人形の様に崩れ落ちた。
『ヴガアアアアアアッ!!』
龍太郎———否。デスナイトによって生み出された
……ソーリー、鈴。ダイスの女神は君に微笑まなかったんだ。
追記
ありふれのアニメ二期が始まりました! 自分はリアルタイムで見るのは難しいから動画サイトからの視聴ですが、白崎さんがたくさん喋っていて大興奮です。
あとクラスメイト達は王宮組も訓練はしていたのね……自分の作品はクラスメイトアンチに染まった別作品と割り切って下さい(土下座)