ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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自分「もう無理だよ〜……文章が思い付かないよ〜……」

お気に入り登録しているありふれたSS作家さん達の怒涛の更新ラッシュ

自分「お、面白いぃぃ!? 俺も負けてられるかああああっ!」

そんな感じでバリバリと書いてます。

オーバーロードの新刊、六月に決定! さらにアニメ四期が七月から放送開始! 平伏しながらアインズ様の御勇姿をお待ちしています!


第五十一話「実戦訓練」

 ハルツィナ樹海の奥———アインズ達とは数キロ程に距離を空けた場所で、ナグモは立体画像のディスプレイとコンソールを立ち上げながら、樹海全体を監視していた。

 

「ふむ……今のところは、第三者による監視は無いな」

「……なんていうか。ナグモくんって、本当に何でもありだよね」

 

 監視ドロイド(ステルス・サーチャー)達から送られてくる映像を次々と確認していくナグモに、横で見ていた香織はポツリと呟く。

 

「トータスは剣と魔法の世界だよね? そこにロボット兵器を持ち出すとか、ルール違反じゃないかな……」

「未だに中途半端な自律型兵器しか作れない科学文明とはいえ、地球人らしくない発言だな。そもそも中世ヨーロッパ程度の流儀にわざわざ合わせる必要なんて無いだろう」

「ああ、うん。言われてみればその通りなんだけど……ナグモくんが勇者だったら、魔王城に核ミサイルを撃った方が早く済むとか言いそうだよね」

「あんなオモチャなどわざわざ作るものじゃない。何だったら神気取りの愚か者を信仰している意趣返しに、神の杖を撃ってもいいかもな」

「………つ、作れるの?」

 

 さすがにそこまで出来ないよね? と半ば冗談で言ってみたが、事も無げに言われて香織は引き攣った半笑いになるしか無かった。

 

「しかし……アインズ様は無駄な破壊を好まれない様だ。だから、わざわざこのワールド・アイテムを使用したのだろう」

 

 ナグモは背中に背負った大きな巻物を親指で差した。 

 この巻物型のワールドアイテム———『山河社稷図』は、使用者を含めたエリア全体を特定空間に隔離する効果を持つ。今回、ナグモは事前にアウラが確認した魔人族全てがハルツィナ樹海に入った事を確認した後、樹海全体を閉鎖空間へと変えていた。これにより亜人族も魔人族も誰も気付く事なく、現実世界から切り離されていた。

 

「それにしても、世界から切り離すなんて……何かもう、すごいよね。うん、すごいって言葉だけじゃ足りないけど」

「ワールド・アイテムとは世界すら改変する力を持つアーティファクトだ。それを十一個も持つじゅーる様を含めた至高の御方がいかに偉大か、理解できるだろう?」

「ふふ、本当だね。うん、じゅーる様もアインズ様もすごい方達だね」

 

 お父さん(じゅーる)の事になると、本当に目が生き生きとするなぁ、と香織は生暖かい目で香織はナグモを見ていた。

 

「ところで……そこの吸血鬼、暇なら少しは手伝ったらどうだ?」

 

 ナグモはジトッとした目をこの場にいるもう一人の少女に向ける。ユエは切り株に座り、優雅に足を組んでいた。木漏れ日が絹糸の様な金髪に反射してキラキラと黄金の様に輝き、まるで一枚の絵画の様な光景だ。

 

「ん……お構いなく。手伝いたいけど、偉大な至高の御方に直接作られた貴方の作業スピードには追い付けない」

「ふん、当然だろ。じゅーる様に作られた僕とお前とでは頭の出来が違う」

「なので、残念だけど足を引っ張らないためにも私はここで日向ぼっこするしかない。うん、本当に残念」

「シャルティアの愛妾にでも転職するか? この役立たず」

 

 いけしゃあしゃあと宣うユエに対して、チベットスナギツネの様な目付きでナグモは睨む。

 

「まあまあ。ナグモくんのお仕事を手伝えてないのは私も同じだから……。それにユエは三百年ぶりの外なんでしょう? 少しはゆっくりさせてあげようよ」

「………まあ、香織がそう言うなら」

「貴方って、本当に分かりやすい。じゅーる様か香織関連になると対応が途端に甘くなる」

「良い評価をありがとう、愛すべき我が現地助手。話は変わるが、僕の新しい武器の試し撃ちをしたかったところだ」

 

 ガシャ、と『黒傘“シュラーク"』を構えるナグモを香織は再びまあまあ、と宥めた。

 この黒傘はナグモがオスカーが遺した武器や研究成果を基に改良したものだ。元々の武器である魔導銃『ドンナー&シュラーク』の内、片方の魔導銃『ドンナー』は香織が歪な魔物だった時に食べられて喪失してしまった。じゅーるから貰った武器だけに、とても残念に思ったものの、今までの巨大ゴーレム『ガルガンチュア』の支援を前提にした戦い方では、同格以上との一対一の戦闘では勝ち目が薄いと香織との戦いで証明されてしまった。

 そこでナグモは新たな戦い方を模索した。従来の様に銃撃戦を行いつつ、近接戦闘もある程度は可能な武器———オスカーの隠れ家に遺されていた黒傘は、ある意味で打ってつけではあった。

 

(人間の知恵など借りたくは無かったが……まあ、オスカーという人間は低脳な猿達の中ではマシな方だったわけか)

 

 そしてアインズの許可を得て、大容量データクリスタルとなる神結晶を使用して黒傘と残った魔導銃『シュラーク』を融合させ、完成したのがギミック型万能兵器『黒傘“シュラーク"』だ。先端には魔導銃が仕込まれ、柄はもちろん生地の部分にも錬成師の天職を得たナグモが精錬に精錬を重ね、七色鉱と同等になるまで錬成した金属がナノミクロン単位で炭素繊維の様に織り込まれている。理論上はシャルティアの神器(ゴッズ)級アイテムのスポイトランスと打ち合っても壊れない筈だ。まさにトータスとナザリックのハイブリッド技術の結晶と言えるだろう。

 

「そもそも日光浴が好きな吸血鬼とか、どうなんだか……」

「でも気持ちは分かるかな。私も久々に本物の太陽の光を浴びれて気持ちいいし」

 

 ん〜、と身体いっぱいに日光を浴びる様に大きく伸びをする香織に、ナグモはほんの少しだけ罪悪感を抱いた。オスカーの屋敷で暮らし始めてから、香織の生活圏は基本的にオルクス迷宮であり、たまにメイド研修でナザリックの第九階層に行くくらいだ。

 香織もナグモも元々はハイリヒ王国の召喚された勇者一行(パーティー)のメンバーであり、ましてやナグモは今や王国から「魔人族に与して勇者達を殺そうとした人間族の裏切り者」という扱いだ。香織共々、生存が絶望視されているとはいえ休日には王都でショッピングを楽しむなど気軽には出来ない。香織に不自由な生活をさせてないか、ナグモの中で不安が募った。とはいえ———。

 

「……これから日光浴くらいいくらでも出来る様になるとも。さすがにハイリヒの王都やホルアドには行けないが、今回の作戦が上手くいけば頻繁に外出する様になる」

「え、本当? そういえば、今回はどうして外に出たの? それもわざわざ新しい服まで貰っちゃったけど」

「ん? ミキュルニラからは何も聞いてないのか?」

「新しいお洋服が出来ましたよ〜、としか言ってなかったし……」

「ん。私も装備の性能テストとしか言われてない」

 

 香織の服はいつものメイド服からブラウスにショートパンツと動き易さを重視した服装になっており、拳にはナックルダスター、脚には輝く銀色の脛当てを装備していた。さながらファンタジー風の女性格闘家と言うべきだろう。

 異形化の影響で従来の治癒師(クレリック)よりも前衛職に適性が出来た香織に合わせた装備となっていた。戦闘訓練の教授をしているセバス・チャンに「意外と格闘技の才能があるのかもしれませんね……」と言われ、彼の様な気功使いの格闘家を目指す事にした様だ。さらにはストライカーであるユリやクレリックでありながら何故か近接戦が得意なルプスレギナの協力も得て、香織はモンクとしての才能を開花させつつあった。

 

 対してユエは、まだユグドラシルのレベルで50に満たない事を考慮して、以前の様に機械鎧を装備していた。ただし、さすがにナグモも再びじゅーるの遺品とも言える機械鎧を貸し出す気にはなれず、代わりにというべきかナザリックの技術研究所の粋を集めて製作された機械鎧だ。

 この世界の魔法や“錬成"の技術を実験的に盛り込み、上半身に幾何学的な紋様が浮かんでいる以外はしっかりとした西洋鎧でありながら、下半身は武装されたバトルスカート、両手にはエネルギー刃を展開できる籠手、顔には機械鎧の状態や周辺の地形情報を映し出すモニターが付けられたバイザーが取り付けられるなど、ユグドラシルの機械鎧とは形がいささか異なっていた。

 

「まったく、あのマスコットは……。まず、現在アインズ様が大迷宮への道を確保する為に亜人族達の救援を行なっている。ここまでは良いな?」

「うん、亜人族の人達を助けようとするなんてアインズ様は優しいお方だよね」

「ん。アンデッドなのに生者に対しても慈悲深いとか、本当に不思議」

 

 アインズに救われた二人の賛辞を当然の事としてナグモは頷く。もしもアインズに殺される者がいるとするならば、至高の御方の慈悲を理解できない殺されて当然の愚か者だけだろう。

 

「まあ、魔人族はもう間も無く駆除されるだろう。その後に大迷宮の攻略が行われるわけだが、そこにアインズ様、香織、ユエ。そして不肖ながら僕が向かう事となるだろう」

「わ、私達も?」

「こればかりは仕方ない。偽神……いや、その名称すら甚だしく不愉快だが。愚神エヒトルジュエが篭っている神域という別空間に行くには、七つの神代魔法が必要だそうだからな」

 

 自分の生みの親(機械の偽神)を思い出し、エヒトに対して唾を吐きたくなる気持ちになりながらナグモは話し続ける。

 

「神代魔法の使い手は多ければ多い方が良いが、現状ではナザリック所属で習得できるのが僕達しかいない。今後、アインズ様が各地の大迷宮へ出向く時の供回りを務める事は確実だ」

「そ、そっか……でも、神様が相手かあ……大丈夫かな?」

 

 きゅっと香織は不安そうに自分の腕を抱き締める。

 香織もナグモから、自分達を含めたクラスメイト達がトータスへ召喚されたのは、神を名乗る邪悪な存在エヒトルジュエの暇潰しの為だと伝えられている。そんな事の為に、自分はオルクス迷宮で地獄の様な目に遭わせられたのかと思うと憤りが湧いてくるが、同時に世界を創った神様が自分達の敵だという途方も無い事態に不安になるのだ。

 

「大丈夫、香織」

 

 ユエが安心させる様に薄く微笑む。

 

「私達にはアインズ様がついている。貴女や私を救ってくれた、アインズ様を信じて」

「ユエ……」

「それに……香織の為なら神様でも倒しに行きそうな素敵な旦那様がいるでしょう?」

「も、もう、ユエったら! 旦那様だなんて……旦那様かあ、うふふ」

 

 かあああっと顔を赤くして乙女の笑みを浮かべる香織。それに対してナグモは咳払いをしながら先を続けた。

 

「ん、んんっ! まあ、至高の御方を差し置いて神を名乗る愚か者の事はひとまず置いておくとして……とにかく、今後の為にも二人には戦闘経験の蓄積やレベルアップが必要なのは確かだ。そういう意味では今回の魔人族の襲撃は、良い経験になるだろう」

「でも……大丈夫なのかな? 王宮にいた時は、魔人族は魔力操作の技能がある分、人間より何倍も強いと習ったけど……」

「君が普通の人間の時ならそうだっただろう。だが、今の君は僕と同じ、レベル100以上だ。ステータス的にどう頑張っても、苦戦する方が難しいだろうさ」

 

 むしろ、ナグモの血肉を食らってステータスと同時に一部のスキルまでもコピーされた分、ナグモより強いと言えるかもしれないのだ。

 

「まあ、今回はナザリックからの援軍も用意されているし、あまり気負わずに戦うといい。むしろ、魔人族達には礼を言うべきだろう。我々の新兵器の()()()()に付き合ってくれてありがとう、と」

「わあ……すごい辛辣……」

「でも……香織は大丈夫?」

 

 表情が薄いながらもあくどい笑みを浮かべるナグモに香織がドン引きする中、ユエが少し心配そうに聞いてきた。

 

「香織は元々は争い事の無い平和な国の出身と聞いた。私は戦場に立つのは初めてじゃないし、アインズ様の為に手を汚す覚悟はあるけど……香織は平気?」

 

 むっ、とナグモはその時になって初めて気付いた。ナザリックの階層守護者代理として戦う為に作られた自分と、平和な現代日本でただの学生だった香織とでは戦いに対する意識が違う。戦う事が当たり前の存在(NPC)として生み出された為に、人間だった香織との価値観の相違を失念していた。精神的な面で問題が出ないだろうか? と今更ながらに心配になってきたが……。

 

「………ううん。大丈夫だよ、ユエ」

 

 香織は静かに首を振る。その目に戦いに対する恐怖や忌避感は無かった。

 

「王宮で訓練してた時から、もしかしたら戦争で人を殺す事になるかもしれないって覚悟はしていたの。元の世界に帰る為にはそういう事も我慢しなきゃ、って………アンデッドになっちゃったから、もう地球で元の生活に戻るのは無理になっちゃったけどね」

 

 しかも蓋を開けてみれば、魔人族との戦争に勝ったところで帰還の保証は無く、エヒトルジュエの遊戯の駒として使い潰される羽目になったのだという。香織にとっては、まさに踏んだり蹴ったりな状況だ。

 しかし———今は違う。

 

「私を保護してくれたアインズ様、私にお仕事の仕方を丁寧に教えてくれるユリ先生やセバスさん。それと———アンデッドになっちゃった私を愛してくれるナグモくんがいる。その人達の為なら……私は、戦う事を迷わない」

 

 異形へと変じた自分に人間らしい生活を用意してくれた恩人達の為に。

 そして———死にかけながらも自分を救い出し、愛を告白してくれた少年の為に。

 香織は戦いへの覚悟を決めていた。

 

「————」

 

 その顔にナグモは不意をつかれる。香織の覚悟に何と返すべきか、すぐに言葉は見つからなかった。これがユエが相手ならば、「ナザリックの一員として恥じない働きをする様に」と言えたが、今の香織にそう返すのは何か違う気がした。

 

「……まあ、その……なんだ……」

 

 後ろ頭を掻きながら、ナグモは呟いた。

 

「戦いの後のメンタルケアなら、いつでも受け持つ。元々は君のストレス軽減に付き合うのが、日課だったしな……」

「ふふ、ありがとうね。ナグモくん」

「それに魔人族もある程度は捕虜にする必要があるから、無理に殺さなくても良いぞ」

「だから大丈夫だって、そんなに気を遣わなくても」

 

 どうせニューロニストか恐怖公の部屋にでも送るわけだし、と心の中で呟く。ナザリックの五大最悪と称される者達をわざわざ語らなくても良いだろう。

 

(とはいえ、恐怖公の人柄は好ましい方だと思うのだが……今度、シルバーゴーレムの整備がてらに久々に会いに行ってみるか?)

 

 彼をどうして毛嫌いする者がナザリックにいるのかさっぱり分からない、とナグモが首を傾げていた時だった。

 

「っ! アインズ様、いかが致しましたか?……はっ。かしこまりました、アインズ様」

 

 アインズからの<伝言>にナグモは短く返答し、二人へと振り向く。

 

「さて……アインズ様から魔人族の残党達を始末せよ、と命が下った。やり方はこちらに一任させていただける様だ。行くぞ、二人とも」

「うん、頑張ろうね! ナグモくん」

「んっ、了解!」

 

 ***

 

「な、何だったのだ……さっきの魔力は……?」

 

 樹海の奥。青みがかった銀髪をポニーテールで纏め、スレンダーな肢体をガーランドの上位の軍服で包んだ魔人族の女性———システィーナ・バクアーは、つい先程に感じた莫大な魔力の奔流に動揺を隠せなかった。それは周りの部下達も例外ではなく、皆不安そうにざわざわとお互いの顔を見合わせる。

 

「システィーナ様、先程の魔力は一体……? もしやフリード様の身に何かあったのでは……?」

「莫迦を言うな! 兄様の身に危険など、そんな事があるものか!」

 

 思わず、部下に反射的に怒鳴ってしまう。「し、失礼しました!」と謝る部下に舌打ちしたい気持ちを抑えながらも、祈る様に心の中で語りかけた。

 

(そうですよね? 兄様……)

 

 システィーナにとって、兄のフリードはまさしく英雄だった。誰よりも魔人族の模範的な軍人たらんと努め、人間達との戦争で頭角を現していき、ついには神代魔法を習得して魔王の側近となったのだ。

 そんな兄に万が一の事態などある筈が無い……いつもは氷の美貌と称えられるシスティーナの表情も、この時ばかりは優れなかった。

 

「システィーナ様、前方から何者かが走って参ります」

 

 ふと目を向けると、フリードの側近だった魔人族の姿が見えた。彼はまるで世にも恐ろしい物にでも出くわした様に顔を恐怖で引き攣らせ、まさに逃走と呼ぶのに相応しい足取りでこちらへ向かってくる。

 

「お前は確か、兄様の……! 兄様はどうした!?」

「シ、シシ、システィーナ様……!? ああ、良かった! 無事だったのですね!? どうか、早くお逃げを! 奴が……奴が来る前に!!」

「落ち着け! 兄様はどうした! 答えろ!」

「だ、駄目です! 説明している時間も惜しい! 早く逃げないと、あの化け物に我々が殺される!」

 

 口調は支離滅裂で、目はまるで地震から逃げ出そうとする鼠の様に恐怖に染まっている。まったく要領を得ないが、それで納得などシスティーナはしない。フリードの側近の肩を掴み、何度か大きく揺さぶった。

 

「落ち着け! それでも貴様は誇りある魔国ガーランドの軍人か!? 何が起こったか、至急報告せよ!」

 

 ヒッ、とフリードの側近は息を詰まらせる。システィーナから、これ以上狼藉を働くなら叩き斬ると言外に言われた気がした。そして、彼は何度か口をパクパクさせた。

 

「わ、我々はフェアベルゲンに侵攻中に、謎の人物と激突。奴は、ア、アンデッドの模様! フリード様を含め、先遣隊は……全滅しました!」

 

 瞬間――システィーナに頭を強く殴られた様な衝撃が走った。

 

「何、を……何を言っている!? 兄様が率いる部隊が、全滅……!? そんな、そんな事があってたまるか!!」

「で、ですが……ですが、システィーナ様も感じたでしょう!? あの魔力を! あれは何だったのですか!?」

 

 涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらフリードの側近はシスティーナに詰め寄った。もはやその目は正気を失いつつあった。

 

「分からない……分からないんです、直接対峙した私にも! 分かるのは奴が魔王陛下すら超える様な化け物だという事だけ! それ以外、どう報告しろと言うのですか!」

「口を慎め! それは魔王陛下への侮辱発言と受け取るぞ!」

 

 逆上したフリードの側近に、システィーナはベルトに嵌めた剣に手を掛ける。お互いに同士討ちを始めかねない雰囲気に、周りの部下達もフリードの側近を止めようとした。

 

「おい、落ち着け! 何を言ってるのか、さっぱり分からん! まずは落ち着いて、ゆっくりと報告を———」

「そんな時間などない! お前達は直接見てないから知らないんだ、奴の———アインズ・ウール・ゴウンの恐ろしさを!」

「アインズ……何だって? そいつが、どうしたって言うんだ? 大体、フリード様が敗れるなんて、そんな事があるわけ———」

「だから! 現に全滅したと言ってるだろ! どいてくれ、お前達が逃げないなら、私は………私だけでも、魔王陛下の元へ報告しに行かないといけないんだ!」

 

 宥めようと抑えてくる魔人族達を振り払い、フリードの側近は走り出そうとする。その只ならぬ様子に、ようやくシスティーナの冷静な思考が追い付いた。

 今すぐに駆け出し、兄の安否を確かめたい。

 だが、彼女も一軍を預かる将だ。部下達を放り出して、そんな真似は出来ない。唇を強く噛み、一度だけ兄がいるであろう方向を数秒だけ見つめた後に部下達に振り返った。

 

「くっ……どうやら何か不測の事態が起きたのは確かだな。やむを得ん、撤退する!」

「システィーナ様!? しかし、魔王陛下より下された命令は———」

「我が軍で最強だった兄の身に何かあったのは事実! この事態を至急、魔王陛下に報告する必要がある!」

 

 断腸の思いながら、システィーナは空間魔法で転移門を開こうとする。兄と違い、グリューエン火山の大迷宮しか攻略出来なかったが、システィーナもまた神代魔法を会得していた。ところが———。

 

「っ!? 転移門が発動しないだと! 馬鹿な、何故———」

 

 撤退用の神代魔法が何故か発動しない。神代魔法を防げる魔法など、同じ神代魔法ぐらいしかない筈だ。予想外の事態に慌て出すシスティーナに、無機質な声が掛けられた。

 

「———今更になって気付くのか? だからお前達は低脳だというんだ」

 

 システィーナ達は一斉に声のした方向を向く。

 そこには、金と銀の対照的な少女を従えた黒衣の少年が無機質な目でシスティーナを見ていた。

 




・香織とユエ、バトルスタイルが変化。

 香織はドラクエで言うならパラディン(僧侶+武闘家)、ユエは魔法剣士(戦士+魔法使い)かな。香織の服装はちょっと説明が難しいけど、FF7のティファあたりを思い浮かべてくれれば良い感じです。ユエはFGOの妖精騎士ランスロット的な。

・ナグモ、武器にオスカーの黒傘改良型を使う。

銀魂の神楽みたいな? 銃で撃つも良し、殴るも良し。傘は万能兵器なのだよ(ア○ンストラッシュを構えつつ)

・システィーナ・バクアー

えー、今回の可愛そうな人(ネタバレ)。簡単に言うと……くっころ系。というか見た目はまんま、昔読んだキル○イムコミュニケーションのエルフの18禁ヒロインを思い浮かべてたり(笑)

というかまさか新武器とかの説明に丸々一話使う羽目になるとは……!

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