ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 まだまだ行けないライセン大迷宮。
 私事になりますが、自分は一度、原作への興味が薄れてしまって連載していた二次創作を投げ出してしまった事があるので、この作品は熱意が冷めない内にやりたいネタを書いていく様にしています。そうすれば楽しく書いていけるので。


第五十七話「フェアベルゲンの亜人族部隊」

「ああ〜! どうか罪深い私を許してくれ〜!」

 

 ナグモが亜人族達の治療を行い、ナグモの驚異の医療技術とキメラ細胞の埋め込み手術により、亜人族達は短期間ですっかりと回復していた。アインズに、そしてナグモに自分や家族の命を救って貰った亜人族達は恩義からアインズ達に「一生を掛けてもこの御恩に報います!」と従順になっていた。

 

(ソレハイイ……アインズ様ガ如何ニ偉大ナル御方カ、亜人達ニモ理解デキタトイウコトダ)

 

 フェアベルゲンの復興支援———という名目の、ナザリックによるフェアベルゲン占領地化計画の指揮官となったコキュートスは、亜人族達をナザリックの兵とすべく戦闘訓練を行っていた。ナグモが治療と同時に行った改造手術のお陰で、亜人族達は以前よりも強靭な肉体といくつかの固有魔法が使える様になった。あとは戦闘技術を教えていけば、彼等はアインズに忠実な兵士として生まれ変わるだろう。その筈だったが……。

 

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ! こうするしかなかったの!」

 

 人型キメラ化の証として銀色の髪と手や足に赤黒い血管が浮かんだ兎人族の少女が、まるで狂愛の果てに恋人を刺してしまったかの様に仕留めた魔物に謝り続ける。因みに当人とこの魔物は全くの初対面である。

 

「敵なんだ!今のこいつはもう! なら殺すしかないじゃないか!」

 

 世界の情勢により親友と戦場で敵同士になってしまった兵士の様な言葉と共に悲痛の表情で魔物に突進していく兎人族の青年。因みに当人とこの魔物は全くの初対面である。

 

「どうか……どうか安らかに……ううっ!」

 

 苦痛の果てに死を求めた親友の介錯をしたかの様に、瀕死となった山猫の様な魔物にトドメを刺す兎人族の中年。因みに当人とこの魔物は(以下略)。

 

「………オマエ達ハ、先程カラ何ヲシテイル?」

 

 カチカチ、と顎の鋏を鳴らしながらコキュートスは聞いた。蟲の顔の為に表情が分かりにくいが、人間だったら顔が引き攣っている様子がありありと浮かびそうな声色だった。

 

「すみません! すみません! ウチの家族達が!」

 

 コキュートスの横でシアが必死にペコペコと頭を下げる。亜人族達の中で一番戦闘力のあるシアに目を付けて、ならば彼女の一族であるハウリア族が一番強くなる見込みがあるか? と考えて戦闘訓練を施したコキュートスだが、その目論見は早くも崩れ掛けていた。そんな中、仕留め損なった魔物が最期の一撃とばかりに体当たりをして、シアの父であるカムは倒れた。

 

「ぐっ、これが刃を向けた私への罰か……すまない、私はここまでの様だ……せめて娘を救ってくれたゴウン様に御恩を返したかった……」

 

 自嘲気味に呟くカムに周囲のハウリア族は涙を浮かべながら、倒れたカムに駆け寄った。(断っておくが、カムに外傷は一切ない)

 

「族長! そんなこと言わないで下さい! 罪深いのは皆一緒です!」

「そうです! いつか裁かれるときが来るとしても、それは今じゃない! ゴウン様の為にも立って下さい! 族長!」

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ! でもゴウン様の為に戦うと決めたじゃないですか! 僕達はもう途中で投げ出す事なんて許されないんです!」 

「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼(小さなネズミっぽい魔物)のためにも、そして我等の神、アインズ・ウール・ゴウン様の為にも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

「あの、お父様? 怪我が無いなら早く立ちましょうね?」

 

 確かにハウリア族はシアを甦らせた事で、さらにナグモがパルの治療をした事でアインズへの恩を返そうと戦闘訓練を人一倍頑張っているのだが………いかんせん、その気性が戦いに向かない程に優し過ぎた。訓練用の魔物を殺す度に先の様な小芝居を何度もコキュートスは見せられていた。

 

「……先程カラ、何故ソコデ跳ネル?」

 

 走り込みで不自然な場所でぴょんぴょんと跳ねている兎人族を見て、コキュートスが低い声音で聞いた。

 

「はっ、コキュートス様! ここに蟻の行列があったので、踏み潰さない様に注意しながら走っております! あと、咲いてる花も踏み潰さない様に細心の注意を払っております!」

「…………………」

「あ、あわわわ……!」

 

 フシュウウウウゥゥッ、と極寒の吐息がコキュートスから漏れる。背筋が寒くなってくるのは、きっと冷気のせいだけじゃないだろうとシアは本能的に悟った。

 

「………<フロスト・オーラ>」

 

 ビュオオオオッ! と弱めに放った冷気のオーラが辺りを包み込む。ご丁寧にハウリア族達が避けていた花や虫達だけを凍り付かせた。

 

「ああ、虫さん! 花さんまで!」

「ソコニ、直レ……!」

 

 カチカチになった虫や野花に悲鳴を上げる中、コォォォオオッ、と極寒のオーラを纏いながらコキュートスが低い声を出す。

 

「貴様等ヲ一端ノ兵トスル事ヲアインズ様ニ任サレタ以上、半端ナ真似ハ許サレン……!」

 

 ガタガタ、とハウリア族達が震える中、極寒の支配者(鬼教官)コキュートスが君臨する。

 

「貴様等ノ軟弱ナ精神、叩キ直シテクレル———!」

 

 ***

 

「………ト、イウコトガアッタノダ」

「……ああ、うむ。なんというか……大変だったな、君も」

 

 コキュートスから訓練初日の様子を聞いて、フェアベルゲンの仮設病院でナグモも頭痛を耐える様にコメカミを押さえていた。

 

「いっそ、その兎人族達は戦闘訓練から省いた方が良いんじゃないか?」

「否。ハウリア族達ハアインズ様ノ為ニ真面目ニ訓練ニ取リ込モウトスル気概ハアル。加エテ、小サナ虫デモ見逃サナイ程ニ気配察知能力ハ高イ。スピード系ファイタートシテノ素養ハ十分ニアル」

 

 ナニヨリ、とコキュートスは先を続ける。

 

「アノ一族ノ娘……シアニハ戦士ノ輝キヲ感ジテイル。アインズ様ノ為ニモ、コノママ捨テ置クニハ惜シイ才能ダ」

「戦士の輝き、ねえ………?」

 

 そう言われても学者肌のナグモにはピンと来ない話だ。とはいえ、フェアベルゲンの亜人族達の訓練はコキュートスが任された仕事の領分である。そこにナグモの感性であれこれ口を出すのは道理が違うだろう。

 

「……まあ、いいさ。それで? わざわざ茶飲み話をしに来たわけではないだろう?」

「———知恵ヲ貸シテ欲シイ。ハウリア族達ニ戦士トシテノノ心構エヲ叩キ込ミタイ」

「それはまた難しい注文だな」

 

 二人揃って溜息が出てしまう。そもそもナザリックの階層守護者(フィールドボス)として設定された二人が他人を教育するなどやった事がなく、ましてやハウリア族のような戦いに向かない性格の相手を兵士として教育するなど、彼等にとっては難題でしかなかった。

 

(だが、やらねばならない……アインズ様の御計画を一歩目から躓かせる事は許されない)

 

 と、そこでナグモはある事を思い出した。

 

「……ああ、そうだ。僕が地球にいた時に読んだ書物に、人間共の軍隊の教育法としてこんな物があってな———」

「ホウ……興味深イ話ダナ」

 

 ナグモは地球にいた頃、いつかナザリックに戻る日が来たら役立てようとあらゆる書物を読んでいた経験から、とある軍隊の教育の方法を話した。それを聞いたコキュートスは、感心した様に頷いた。

 

「……ナルホド。確カニソノ方法ナラバ効果的カモシレン。シカシ、我ハ演技ニアマリ自信ガナイガ………」

「それなら、そういう演技に詳しそうな相手に聞いた方が良いんじゃないか?」

「? ソンナ者ガナザリックニイタカ?」

 

 コキュートスの疑問に、ナグモはしっかりと———何故か少し嫌そうな顔で頷いた。

 

 ***

 

 コキュートスと別れ、ナグモは目的の相手を探す為にオルクス迷宮に来ていた。

 採掘物集積所へと続く道を歩いていると、前方に見知った姿が見えた。

 

「ミキュルニラ」

「あ……ナグモ所長」

 

 ミキュルニラはここでナグモとバッタリと会うと思っていなかったのか、驚いた顔になった。

 

(どうしたんだ、こいつ? いつもより物静かだな……)

 

 怪訝そうに目を細めるナグモを見て、ミキュルニラはいつもの能天気なマスコットのような口調を出した。

 

「どうかしましたか〜? しょちょ〜、確かフェアベルゲンで亜人さん達の身体を調べるから残ると言ってませんでした〜?」

「急用が出来たから戻っただけだ。そっちはオルクス迷宮で変わった事があったか?」

「いえ〜、特には無いですね〜」

 

 いつもの間延びした話し方を聞いて、ナグモは気のせいだったか? と思いながら頷いた。

 

「そうか。今後は僕はアインズ様の供回りとして外に出る機会が増える。留守中はお前がここを管理する事になるから、手抜かりは無い様に」

「はい〜、了解です〜」

「用が済んだら、僕はフェアベルゲンに戻る……いや、その前に香織に会って行くか」

 

 一緒に食事するくらいの時間はあるだろう、とナグモは考える。その様子は他の人間から見れば表情が薄過ぎて分かり辛いが、彼をよく知る人間からすれば明らかにウキウキとしていた。

 

「………ねえ、所長」

 

 そんなナグモをミキュルニラは見つめながら、聞いてくる。

 

「所長は……香織ちゃんの事が、大好きですか? いつまでも一緒にいたい、って思ってますか?」

「は、はあ? 何をいきなり……」

「答えて欲しいです」

 

 直球な質問にナグモは怪訝な顔になるが、ミキュルニラは真っ直ぐナグモを見つめた。いつもの能天気さが感じられない真剣な目に怯みながら、ナグモは答えた。

 

「ま、まあ……当然、だな。僕は香織が……好きだとも。香織と今の様な生活がいつまでも続くなら、それ以上の幸せなどない」

「………うん、そうですね」

 

 赤面しながら明後日の方向を向きながら答えるナグモに、ミキュルニラは静かに頷いた。そして———唐突に能天気なマスコットの様な笑顔を浮かべた。

 

「いや〜、香織ちゃんは愛されてますね〜。同じ女の子として、羨ましいのです〜」

「……お前、いったい何の用だったんだ?」

「ん〜? 妹として、未来のお義姉(ねえ)さんがどのくらい愛されているのか、気になっただけですよ〜。エヒトとかいう神様が退治されたら〜、お祝いに香織ちゃんとの結婚式やります〜?」

「ばっ……誰が妹だ! さっさと仕事に戻れ!」

 

 つい、ウェディングドレスを着て幸せな笑顔を浮かべる香織を想像してしまい、ナグモは照れ隠しにドカドカと足早にミキュルニラに背を向けて立ち去った。

 

「………うん。所長の幸せが、私の幸せ。所長が心から楽しく過ごせる様にするのが、私の存在意義なのです」

 

 ———だからこそ、ミキュルニラが小さく呟いているのが聞こえなかった。

 

「香織ちゃんがナザリックに馴染んでくれる様になるなら………何も、問題は無いのです………」

 

 ***

 

 十日後。

 アインズは再びフェアベルゲンに赴いていた。

 

(さて、完全じゃないけど大迷宮の場所は魔人族の指揮官から聞き出せたし、とりあえずは目の前の大迷宮からだよな。それにしても他の場所がなあ……。セイインセキ? とかいうヤツを町の人間が採掘してる火山の中とか、オルクス迷宮の時みたいに変装しないと難しいかも……)

 

 いっそ、危険な土地でも出入りしてもおかしくない冒険者にでも変装した方が良いかも、と考えながらアインズは旧長老会議の議会場に転移した。

 

「オ待チシテオリマシタ、アインズ様」

「ゴウン様、拝顔の栄に浴して光栄の至りですわ」

 

 議会場でアインズの到着を待っていたコキュートスとアルテナに跪拝され、アインズはいつも通りの支配者ムーブをしながら頷く。

 

「うむ。コキュートスとハイピスト嬢も、フェアベルゲンの復興作業が上手くいっている様で何よりだ」

「はい。全ては我々に過大な御支援を下さったゴウン様のお陰ですわ」

 

 心からの感謝を述べながら深々と頭を垂れる森人(エルフ)族の少女に支配者らしく頷いていると、そこで彼女の後ろで同じ様に跪拝するウサギ耳の少女の姿が見えた。

 

「ん? その娘は確か———」

「は、はいっ! シア・ハウリアと申しますっ! こ、この度は! 神様の手で生き返らせて頂き、感謝の言葉もありませんですぅ!」

 

 緊張のあまり言葉を噛みながらも自己紹介するシアに、コキュートスが補足する様に説明した。

 

「コノ娘ハナグモガ強化改造シタ亜人族達ノ中デモ一際強イノデ、亜人族部隊ノ纏メ役トシテ任命致シマシタ」

「ほう、ナグモが強化改造した………え? 強化改造? 亜人族部隊?」

 

 何か不穏な言葉を聞いてアインズが聞き返すと、コキュートスは待ち切れなかった様に嬉しそうな声音を出した。

 

「ヤハリ、気ニナリマスカ。是非トモアインズ様ニ、オ見セシタイモノガアリマス」

「ほ、ほう? それは楽しみだな」

 

 ここで何の話よ? と聞く事も出来ず、アインズはとりあえず頷くしかなかった。

 

(いやいや、ちょっと待て! 亜人族の強化改造? 亜人族の部隊? 何でそんな話になってんの!?)

 

 チラリ、とアインズはシアを見た。シアはドギマギしながらも、コキュートスに追従していた。それは良いのだが………。

 

(そういえば……何で軍服なの? というかあの軍服、何処かで見た事ある様な………)

 

 ***

 

「皆さん、我らの神様、アインズ・ウール・ゴウン様がお見えになられました!」

「「「「「ウオオォォォォッ! 万歳! アインズ・ウール・ゴウン様、万歳!」」」」」

(な………何じゃこりゃあああああっ!?)

 

 壇上のシアの宣言に、その場に整列した亜人族達が一斉に歓声を上げるのを見てアインズは心の中でシャウトした。よくよく見ると亜人族達は全員が軍服――それも“アインズ・ウール・ゴウン"のギルドサインが入った軍帽付き――を被っていた。誰もがアインズに対して絶大な敬意を示しているのが目に見えて、アインズは骨となって無くなった筈の唇がひくつくのを感じていた。

 

「な、なあ、コキュートス。こいつ等は……?」

「ハッ! アインズ様ノ御命令通リ、亜人族達ヲナザリックニ相応シイ兵トシテ教育致シマシタ!」

 

 自信満々に答えるコキュートスに、アインズは「お、おう、そうか……」と何とか答えた。

 

(教育って何!? 俺、そんなの頼んだ覚えないけど!?)

 

 困惑するアインズだが、悲しいかな骨の顔ではそういった動揺は顔に現れない。そして、ここでようやくアインズはシア達が着ている軍服が、非常に見覚えがある事に気付いた。

 

「コ、コキュートス? こいつ等が着ているのは、もしかして………?」

「ハッ! ヤハリ、オ気付キニナラレマシタカ。ソレハ————」

「ン私がデザインした物です! アインズ様!」

「パンドラズ・アクター!?」

 

 いつの間に現れたのか、軍服姿のドッペルゲンガーにアインズは「ゲェ!?」と心の中で叫びを上げた。

 

「お前、どうしてここに!? オルクス迷宮で採掘品の鑑定をしてるんじゃ————」

「はいっ、アインズ様! ナグモ殿とコキュートス殿に頼まれて、亜人族達の新兵教育に携わっておりましたぁっ!」

 

 ビシィ! と敬礼するパンドラズ・アクターに、コキュートスが頷いた。

 

「ハッ、当初ハ兎人族ノ軟弱ナ精神ニ頭ヲ悩マセマシタガ、パンドラズ・アクターニ軍隊式ノ罵倒ノヤリ方ナドヲ指導シテ貰イ、見事ニ兎人族ヲ生マレ変ワラセマシタ!」

 

 アインズが目を向けると、居並ぶ亜人族達の中で野戦服を着たハウリア族達がジョ○ョ立ちのポーズでビシィ! と敬礼してきた。ゴフゥ、とアインズの中で捨て去った筈の心の傷(厨二病)が悲鳴を上げる。

 ………ナグモが参考にした軍隊というのは、とある第三帝国だった。そして制服繋がりでネオナチの軍服を着ていたパンドラズ・アクターを思い出し、彼にコキュートスに協力する様に依頼したのであった。

 そしてパンドラズ・アクターの演技指導の下、見事に某軍曹も真っ青な鬼教官を演じたコキュートスにより、気弱なハウリア族どころか亜人族全体を絶対指導者(アインズ)を敬愛して忠実に動く軍隊を作り上げたのであった。

 

「ささ、コキュートス殿! 今こそ訓練の成果をお見せ致しましょう!」

「ウム、デハ———皆ノ者、アインズ様ニ敬礼!」

(え? 敬礼って、まさか……ちょっ、やめ……!)

 

 パンドラズ・アクターが現れた時点で嫌な予感を感じていたアインズの心の中の叫びも空しく、その場にいたシア達を含めた亜人族達は一斉に軍靴を鳴らしてアインズに向かって唱和した。

 

「「「「「Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)!!」」」」」

 

 アインズに 99999 のダメージ! おお、アインズよ。しんでしまうとはなさけない。

 

 そんなテロップが鎮静化された精神の中で流れた気がした。

 

 ***

 

 ———竜人族の隠れ里。

 

「ムゥンッ!」

「ぐぅっ!?」

 

 セバスの拳が竜化したティオを打ち据え、ティオは苦悶の声を上げた。土煙を上げながら後退りするティオを見て、竜人族の族長であり、ティオの祖父であるアドゥルは唸り声を上げた。

 

「むぅ……よもや、あのティオをここまで手玉に取るとは……」

 

 深い皺の刻まれた顔に驚愕に歪ませながら、アドゥルは自分の知らない竜人族の初老の男を見た。

 

「ティオがエヒトを倒す神を見つけたなどと言うから眉唾に思っていたが、セバス殿の力を見るに強ち嘘では無いのかもしれん……」

「……腕試しという意味なら、これで十分でしょう」

 

 執事服についた土煙を払いながら、セバスは静かに言った。

 

「宜しければ、我が主人であるアインズ様の御言葉をお伝えしたいのですが……」

「……うむ。そなた程の強者の言葉に、耳を傾けぬわけにもいくまいて」

「ま、待って欲しいのじゃ!」

 

 力があっても驕らずに誠実に対応するセバスに、アドゥルも話に応じる態度になったが、ティオが声を上げた。

 

「まだじゃ! まだまだ妾はやれるのじゃ! 爺様、もう少しセバス殿の力試しが必要と存じまする!」

「……と、孫娘は言っておるが、セバス殿はどうか?」

「私は構いませんが……しかし、ティオ様。先程から息が上がっている様ですから、あまり無茶をされない方が宜しいのでは?」

「なに、この程度は疲れた内には入らぬ!」

 

 ハァ、ハァ、と荒い息を上げながらこちらを見てくるティオをセバスは怪訝な顔で見つめる。先程から手加減した拳を何度もティオに打ち込んでいるのだが、打ち込む度にティオの魔力が上がっている気がする。そして荒い息の割には、少し強めに打たないと倒れなくなった気がするのだ。

 

(しかし、気で探ってみた限りではダメージを負う度に興奮状態に陥っている様な……? シャルティア様の“血の狂乱"のようなものでしょうか?)

 

 訝しく思いながらも、セバスは再び拳を握る。先程よりも更に強めに拳に力を込めた。

 

「では———参りますよ、ティオ様!」

「もっとじゃ……もっと、打ち込んで来てたもおおおっ!!」




>亜人族部隊

厨二病(ハウリア族)に、厨二病(パンドラ)を合わせたら、こうなったよ。

これがやりたいだけのネタ。いやー、軍隊として統制が取れて良かったすね!(色々と目逸らし)

>ナグモ

一寸先は闇。こいつは初恋が実った事に浮かれてて、重大な事態に気付いてない。

>セバスの近況

 ……うん、セバスにも春が来たね!(目逸らし)

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