タイトルに深い意味は無いです。ユエが平行世界のキーノとか、そういう話はないです。
追記
アルベドのシーンを加筆しました。本来ならこのシーンも書いてから投稿したかったのですが、休日に出かける用事があって執筆が出来なくなるから「早く投稿したい!」と焦って中途半端なシーンで区切って出してしまいました。
ナグモと香織が買い物デートをしている頃、アインズは冒険者ギルドにいた。目の前には冒険者への依頼書が張り出された掲示板があった。
(やべえ……字が全っ然、分からない)
全身鎧の下で流れる筈のない冷や汗が出てくる。そう、アインズにはトータスの文字が全く読めなかった。もちろん、自主学習はしてきたつもりだ。だが、
(そういや翻訳用のマジックアイテムはセバスに貸したままだったわ。詰んだわ、俺……)
冒険者登録をする時はステータスプレートを受付に出したら、あとはいくつかの書類に名前をサインするだけだったので誤魔化しが利いた。しかし、いざクエストを試しに受けてみようという段階になってようやく字が読めないのはまずいという大問題に気付いてしまった。
(ユエの話だと、トータスでの平民の識字率はそんなに高くないという話だよな? じゃあ、俺も文字を勉強する機会が無かったという事にしておくか? いや、でもナグモが見ている前でそれをやったら今まで支配者ロールで押し通していた俺のイメージが……というか)
アインズはチラリと後ろを振り返る。そこにはユエが紅い瞳でじっとアインズを見ていた。
(ユエが見てるのに出来るわけがねえ……!)
何故ユエがここにいるかというと、この世界固有のアイテムが無いか買いに行かせたナグモに香織とのデート気分を味あわせてやろうという計らいと、二人でイチャイチャしてユエだけが仲間外れ気分になるのは流石に可哀想だというアインズなりの慈悲だった。
(というかこの子もこの子で表情が基本的にあまり動かないから、こっちをどう思っているかさっぱりだ……。こういうのを、何だっけ? クー……クーラー系? とか、ペロロンチーノさんが言っていた様な?)
逃避気味にエロゲーマイスターなギルメンの事を思い返すが、目の前の事態は何も解決してくれない。
(ええい、儘よ……!)
アインズは覚悟を決めると、冒険者モモンとして相応しい声でユエに声を掛けた。
「……ユエ。お前が選ぶといい。お前の意見を私は尊重しよう」
「……よろしいのですか?」
「構わない。そうだな……出来る限り、今の私達のランクで受けられる中で最も難しいクエストを選んでくれ。銅貨数枚をチマチマ稼ぐ為に冒険者になったわけではないからな」
秘技『お前の意見を尊重しよう』。よく分かっていないが、尤もらしく頷く事で威厳を保つ。ナザリックの配下達に何度もやっている支配者ロールをアインズは実行した。
「……かしこまりました」
ペコリ、とユエは頭を下げると掲示板に貼られた一枚の依頼票を手に取り、受付へ持って行った。その所作一つを取っても、上流階級の礼儀作法を学んだ気品が滲み出ていた。そんなユエに遠巻きに見ていた冒険者達はヒソヒソと話し合う。
「お、おい。あの子、すんごく綺麗じゃないか?」
「見た目若過ぎる気がするが、新米冒険者か?」
「俺、思い切って声かけてみようかな?」
「やめときな。ありゃあ、きっと上流階級の出身だな。お前じゃ相手にもされんよ」
「一緒にいた奴も立派なフルプレートアーマーだしな。大方、家督を継げなかった貴族の次男か三男坊が冒険者をやってるんだろ」
「そういえばクデタ伯爵の坊ちゃんも冒険者をやってると噂に聞いたな……」
聞こえてくる内緒話にアインズは堂々とした態度を演じながら、内心で首を傾げた。
(そんなに目立つか、この鎧? ユグドラシル的には
いつもの
これ以上グレードを下げた装備にすべきか、トータスという未知のフィールドで低ランクの装備品で冒険するリスクをどうするか考えていたアインズのもとに、ユエが受付からトコトコと帰ってくる。
「クエストを受理しました、モモンさん。街道に出現する魔獣の討伐クエスト、です」
「ふむ……まあ、最初にやるクエストとして妥当か」
「明日から、すぐに行えます。あの……ところで、モモンさん」
「ん? どうした?」
ユエが何か言いたそうにしている事にアインズは首を傾げる。やがて、彼女は意を決した様に周りに聞こえないくらいの小声で呟いた。
「……ひょっとして、文字が読めないのですか?」
「な、あっ!?」
頭を鈍器で殴られる様な衝撃がして、動揺するがすぐに沈静化が行われる。即座にアインズは得意の堂々とした支配者ロールを行った。
「ふっ……文字が読めないなど、そんなわけが無いだろう」
「…………」
「わざわざお前に選ばせたのは、私がお前を信頼している証だ」
「…………」
「確かにお前が私の下に来てから日が浅いが、ナグモの下でよく働いているという報告は聞いている。ならば、ユエの判断ならばそう間違いはないだろうと私は判断した」
「…………」
「だから……うむ……」
無言でこちらを見てくるユエに、アインズはとうとう言葉に詰まる。内心では凄く冷や汗をかいていた。
(やべえ……バレた。終わった………ああ、そうですよ! 字が読めませんよ! というか小卒のサラリーマンに全然知らない言語を覚えろとか無茶言うな、こんちくしょおおおおっ!!)
心の中でアインズは逆ギレする。とはいえ、さすがにユエにそのまま八つ当たりする様な真似はしない。それくらいの分別はアインズにもあった。
さぞ失望しただろうなあ、と恐る恐るとアインズはユエを見ると———ユエはむしろ納得がいったという顔で頷いていた。
「やはり、そうでしたか……。なんとなく、そんな気はしていました」
「……あー、ユエ? 私の事を……情けないとか、そんな風に思わないのか?」
ふるふる、とユエは首を振った。
「とりあえず……ここではなんですから、宿に戻ってからお話しします」
***
「……ナグモから聞いています。アインズ様は、ユグドラシルという異世界から来たのだと」
アインズ達が拠点にしている宿屋の部屋で、ユエは話し始めた。
「世界すらも違うなら、トータスの文字を読めないのも当然だと思います」
「う、む……そうか」
至極納得のいく返答を貰って、アインズは歯切れが悪いながらも頷いた。とりあえず、ユエはアインズの無学を嘲笑っているわけでは無い様だ。
「むしろ短期間で言語を習得しているナグモ達が異常なだけで、アインズ様がまだトータスの文字を読めないのは仕方のない話かと、思います」
「そうか……そう思うか……」
アインズは心の中で大きな溜息を吐いた。支配者ロールが通じなくても軽蔑されないというのは、日々ナザリックの配下達に「彼等の望む絶対支配者」としての姿を守り続けているアインズにとって大きな安堵感をもたらした。
「……ナグモ達には秘密にしておいて貰えるか? 彼等は私が非の打ち所がない完璧な存在だと思っているフシがあるのだ。私とて間違いは犯すし、言うほど完璧でもないというのに」
「分かりました。この事は、私の胸の内に秘めておきます。それに———アインズ様のお気持ちも、理解はできます」
「ほう………どういう意味だ?」
アインズが興味本位で聞いてみると、ユエはどこか遠い———まるで追憶の彼方に消えてしまった光景を見る様な目で語り出した。
「……王たる者、国民や従ってくれる臣下達の為に不安な顔など見せてはならない。王が不安な顔をしたら、国民達にも不安が伝播して安心した生活を送れなくなってしまう。だから、たとえ苦しくても彼等の前では毅然とした態度でいる様に。そんな風に私はディン……教育係だった者に教わりました」
「……そうか。そういえば、お前は元は吸血鬼達の女王だったのだな」
アインズはユエの身の上を思い出しながら、やっぱり王様は大変なんだな、となんとなく思った。
(俺もナザリックの王様といえば王様だけど……それはNPC達が俺に従ってくれてるだけだからな)
NPCから昇格したナグモを含め、彼等の忠誠を今更疑う気など無い。だが、アインズが
「だから……アインズ様は臣下であるナグモ達の為に、完璧な姿を演じていたと存じ上げています」
「……うむ。その通り、だな」
守護者達はおろかレベル1の一般メイドに至るまで、ナザリックの配下達はアインズを自分の命すら投げ出してでも忠誠を誓う支配者だと信じて疑っていない。彼等の期待を裏切らない為にもアインズは
(いや……それだけじゃないのかもしれない)
アインズはどこか冷めた目で自分を客観視した。
(恐いんだ……。
もしも、自分が彼等が信じている様な完璧なリーダーだったならば。“アインズ・ウール・ゴウン"に、ギルドメンバー達は今もいてくれた筈だ。
(ぶくぶく茶釜さん、ペロロンチーノさん、ウルベルトさん、じゅーるさん、るし★ふぁーさん、ベルリバーさん……他の皆だって、最終日にログインくらいはしてくれたよな)
……それは全てを知る第三者からすれば、傲慢な考えだろう。ギルドを去った彼等は、なにもアインズを見限ってユグドラシルを辞めたわけではない。
現実の生活環境が変わってしまった者、現実の仕事に熱意を傾けた者———そして現実では既に故人となってしまった者。
そういった事情があり、かつてのギルドメンバー達はログインすら出来なくなったのだが、アインズは彼等がギルドを去ったのは自分が魅力の無いギルド長だったからだと思い込んでいた。
(だから……せめて俺を信じてついて来てくれる
アインズが改めて覚悟を決めていると、ユエが遠慮がちに切り出した。
「あの……差し出がましいかもしれませんが、アインズ様に御提案したい事がございます」
「ん? 何だ?」
「私が……アインズ様に、トータスの文字をお教え致しましょうか?」
「……何?」
意外な申し出にアインズは思わず聞き返した。
「今後、冒険者モモンとして活動していく上でも、文字は読めた方が都合が良いと思います。それに今ならば他の臣下達の目を気にされる必要が無いので、勉強するには丁度良いかと思います」
「それは……うむ、確かにそうだな」
「ナグモと香織には今日のように用事を言い付けるか、一緒の部屋に寝泊まりさせれば私が御指導する時間は取れると思います。……どうせあの二人は、二人だけの空間を作るでしょうし」
「う、うむ。確かにな」
フッと遠い目をするユエにアインズも頷いてしまう。
(というか……ユエにこう言われるとかどんだけイチャイチャしてるんだ、あのバカップルは)
とりあえず一緒の部屋にしても冒険者として活動している時は自重する様には伝えよう。緊急事態とかで部屋に呼びに行ったら、行為の真っ最中でしたとか気まず過ぎて顔がまともに見れなくなる自信がある。
「そうだな、すまんがお願いするとしよう。ユエ、私にトータスの文字を教えてくれるか?」
「……ん。お任せ下さい。その代わりと言ってはなんですが、お願いしたい事があります」
「願い、とは?」
「私に……アインズ様を含めた至高の御方と呼ばれる方達の事を教えて下さい」
「………理由を聞いても良いか?」
意外過ぎる申し出にアインズは少しだけ身を硬くしながら聞いた。ユエは覚悟を決めた表情でアインズの目を真っ直ぐに見た。
「私は……ナグモ達の言う至高の四十一人というのを詳しく知りません。新参者の私がナザリックについてもっと詳しく知る為に。アインズ様を御理解する為に、ナザリックを作った至高の四十一人についてアインズ様から直接お話を伺いたい、です」
「ううむ、そういう事か……」
確かになあ、とアインズは内心で頷いてしまう。ユエはアインズが直にナザリックに加えたが、一部のNPC達は「自分達の方が至高の四十一人に直接創造されたから偉く、至高の四十一人すら知らないユエは圧倒的に格下だ」という態度を出す時があるらしい。同じ立場である香織には恋人である
(前々から思うけど、やっぱり問題だよなあ。エヒトを倒す為には、ナザリック以外の外部勢力とも協力していかないといけないのに……)
ならば、ユエがナザリックのNPC達と馴染んで貰う為にも、かつてのギルドメンバー達の思い出を語るのは良い事なんじゃないか? 少なくともユエを至高の四十一人すら知らない奴と侮る者は居なくなるだろう。
(まあ、もちろんそのまま話すわけにはいかないけど。なんかこう、ユグドラシルがゲームだとバレない様に上手く話していけば……)
何より———自分の仲間達の事をユエにも知って貰いたかった。自分にはこんな素晴らしい仲間達がいたんだ、とアインズは他の人間にも自慢したかった。
そんな事を考えて、アインズはよしと頷いた。
「良いだろう。とはいえ、全てというわけにもいかん。それでも良いか?」
「……ん。分かりました」
「では、私の仲間達の思い出を語る代わりにお前は私に文字を教える。それで契約は成立だ。まあ、なんだ……よろしく頼む」
「……ん。こちらこそ、よろしくお願いします」
ユエの口元が少しだけ綻ぶ。
笑うと意外と可愛いじゃないか。
そんな場違いな感想をアインズは抱いた。
***
その夜。ナグモは先に寝た香織を起こさない様に宿の屋根の上で定期報告を行っていた。
「———報告は以上だ」
『ええ、ご苦労様』
<伝言メッセージ>で状況報告を行ったナグモに対して、アルベドは短く返答した。
「この街で手に入れたアイテム類は種類別、産地別など条件を変えながらエクスチェンジ・ボックスに入れろ、とアインズ様は仰った。ポーション類に関しては幾つかはサンプルとして成分分析をする様に技術研究所に伝えて欲しい」
『分かったわ』
必要な情報を伝えていくナグモに対して、アルベドの返答はとても素っ気なかった。
「……………」
『……………』
伝達すべき事を話し終えた二人の間に沈黙が下りる。もしも二人が面と向かって話し合っていたら、ピリピリとした気不味い空気に第三者は胃痛を覚えたかもしれない。
あの日———香織の処遇について揉めた時から、ナグモとアルベドの間に隔たりが出来ていた。表立っての対立はしていない。シモベ同士の不仲でナザリックの業務に支障をきたすなど、
逆を言えば。極めて事務的な内容でしか、二人は会話しなくなっていた。
「………通達すべき事は終わった。また定時連絡をする」
『待ちなさい、ナグモ。まだ伝えるべき事があるでしょう』
これ以上、会話する事などないとナグモは通信を切ろうとした。しかし、アルベドは何故かそこで待ったをかけた。
『その………アインズ様は私に対して何か言ってらしたかしら?』
「……はぁ?」
『何かあったでしょう? やはり小娘二人よりも年上の絶世の美女を連れて来れば見栄えしたとか、頼りになる右腕がいなければ駄目だとか』
念話ごしで期待でソワソワとしてる姿が思い浮かぶ声に、身構えていたナグモは思わず脱力した。だが、じゅーるによって設定された天才的な頭脳は即座にアルベドが望む答えを導き出した。以前、アインズからそれとなく聞いたアルベドへの評価をそのまま伝える。
「……あれほど信頼できる者は他にいない。だから安心してナザリックから離れられる、だそうだ」
『くふー!』
何か妙な鳴き声が聞こえた気がしたが、ナグモは無視した。音声通信ではないので、バサバサ! と興奮で動く翼の音が聞こえてきたのはきっと気のせいだろう。
『よーしよし! その調子でアインズ様に私をアピールしなさい! 難攻不落の要塞と言えど、波状攻撃を仕掛ければいつかは陥落するわ! くふふ、待ってて下さいね! アインズ様ぁ♡』
キンキンと頭に響きそうなピンク色の守護者統括の念話に、ナグモは頭痛を耐える様に顔を顰めた。面と向かっての報告でなくて良かった、とナグモは逃避気味に考えていた。
「……これは本当に必要な事か?」
『最優先事項よ! 至高なるアインズ様の正妃を決める事なのだから! シャルティアよりも一歩先に先んじて、私がアインズ様の寵愛をら賜るのよ!』
おかしい……。念話先の相手はナザリックの内政を取り仕切る頭脳を持つ守護者統括だった筈だ。それなのに何故こんな知能指数が低そうな会話をしているのだろう、とナグモは半眼になっていた。
『あのアンデッド娘の事を私はわざわざ大目に見てあげたのよ? 貴方には私に協力する義務があるんじゃないかしら?』
「…………」
ナグモは舌打ちしたくなる気持ちを必死に抑えた。苛々としてきた態度が表に出そうなのを何とか我慢した。
「………以上だ。アインズ様にはそれとなく聞いておく事にする」
『ええ。将来のナザリックの大局の為に相応しい働きをしなさい』
ブツン、とナグモは<伝言>を切った。電話なら受話器を放り投げている様な乱暴さだった。そして胸の苛立ちを吐き出す様に独り言を呟く。
「………自分が大目に見てやった? 香織の事はアインズ様が直々にお認め下さった事だ」
それをさも自分がどうにかしてやったから言う事を聞け、と恩着せがましい事を言ってきたアルベドに腹が立っていた。「恩には恩を」という
アインズの供回りとして出立する前。ナグモはアルベドから極秘裏にアインズへ「自分がいかにナザリックの正妃として相応しいか」と宣伝する様に命じられていた。この任務にナグモははっきり言って、やる気を感じていなかった。
(そもそも
それなのに自分の方が立場が上だから、と当然の様に命令してきたアルベドにナグモは不満を募らせていた。(実のところ、アルベドもそういう態度を取るのはある時期から気に入らなくなったナグモだけなわけだが)
(何より……僕達の様な臣下風情がアインズ様の伴侶を決めるなど、それこそ不敬というものだろうに)
アルベドとシャルティアがどちらがアインズの寵愛を受けるのに相応しいか、と何かと張り合っているのはナグモも知っている。ついでにデミウルゴスは「偉大なる支配者に御世継ぎは必要だろう」という観点から、二人の恋の鞘当てに興味を示しているらしい。しかし、ナグモにとってはアルベドとシャルティアのどちらが正妃になるとかどうでも良かった。
(アインズ様はナザリックの支配者なのだから、アインズ様が好きな様に伴侶を選んでも良い筈だ。正妃だの、側室だのといちいち気にする様な事か?)
それこそ年齢が若過ぎる気もしなくないがアウラを選んでも良いし、なんだったら
(まあ、至高の御方の御子がどういう存在になるかは科学的に興味が無いないわけではないが……)
アインズの許可さえあれば、アインズの身体の一部や霊的因子を抽出して母体に人工授精させるなどナグモの技術からすれば造作もない事だった。人間から見ればクローン作製の様な倫理的に問題ある方法だが、ナグモからすれば人間の倫理観など考慮するに値しない事だ。
(しかし、自分の世継ぎか……。さすがに今すぐは無理だが、いずれは………)
ふと、ぽっこりと膨らんだお腹を優しく撫でる香織の姿を想像した。そのお腹を興味津々な様子で触ろうとする香織をそのまま小さくした様な幼女の姿まで思い浮かべた所で、ナグモはブンブン! と首を振る。
(って、今はそんな事を考えている場合か! 愚神が駆逐されるまでは、アインズ様の世界征服計画の為に奮進する時だ!)
傍から見れば完っ璧に不審者そのものだが、透明化など万全の注意を払って防諜対策をしているので幸いな事に誰にも見られていなかった。もう休もう、と部屋に帰ろうとしたところでナグモはふと気がついた。
(ああ、そういえば……ユエがアインズ様と同室になってる事を伝え忘れたな)
しばらく考え、すぐにどうでも良いかと結論した。アインズが
(もしも寵愛されるなら、ユエがアインズ様の正妃となるのか……? ハッ、まさかな)
自分の想像を鼻で笑いながら、ナグモは屋根の上から立ち去った。
>ユエ、アインズからギルメン達の思い出話を聞く。
多分これ、アインズに一番必要な事な気がする。NPC達は「至高の御方は偉大だ!」というフィルターがかかって間違った知識でしか創造主を語れないし、アインズは自分が楽しかったギルド全盛期の思い出を誰とも共有できないまま絶対支配者を演じるしかない。アインズに全く非が無いとは言わないけど、オバロ原作で大量殺戮しているのはNPC達が盲信している支配者像を守る為にやってる様にも見えるんですね。
彼が去ってしまったギルメン達への気持ちの整理をつける為にも、アインズの思い出を聞いてあげる存在が必要なんだと思います。
さて、ユエが等身大のアインズこと鈴木悟に気付く事が出来るのか? それは……今はまだ、何とも言えないです。
>ナグモ、アルベドとは相変わらずギスギス
以前、アルベドから香織をアインズの手駒に改造しろと言われた時くら二人は仲が悪いです。原作のナーベみたいにアインズの好感度を上げる様に言われているけど、ナグモは嫌いな相手からのお願いというのもあってやる気ないです。
そして人間嫌いだから他人の心に注目していないから、ユエとアインズが同室になった事も深く考えてないです。