ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 仕事で少し嫌な事があって、少し執筆から離れていました。また自分が書いた物語を読んでくれる人がいるなら幸いです。


第六十七話「炎のチャレンジャー! イライラ大迷宮!」

 カチッと床のスイッチが踏まれた。それに連動して天井が開いて大鎌が振り子の様に向かってくる。人間を一刀両断する凶器が風を唸らせながらナグモに向かい———。

 

「………」

 

 ナグモは黒傘で大鎌を殴り飛ばしてバラバラに砕く。しかし大鎌を砕いた直後、今度は壁から巨大な丸鋸が飛び出した。丸鋸は回転しながらナグモ達を両断せんと迫り———。

 

「せりゃあああっ!」

 

 香織が拳と蹴りを丸鋸へ繰り出す。香織の連撃は丸鋸の回転力に優り、丸鋸は大鎌と同じ様に砕けて誰も切断出来ずに終わった。

 

「ナグモくん、大丈夫?」

「ああ。香織のお陰で何も問題は———」

 

 無い、と続けようとしたナグモだが、頭上でパカッと何かが開く音がした。大量の水がナグモの頭に降り注ぐ。

 

「……………」

 

 ポタポタ、と水滴を垂らしながらナグモは前方を見た。そこにはちょうどトラップを抜け出た先となる場所に合わせて、文字が彫刻されたプレートがあった。

 

『お疲れちゃ〜ん! このお水はミレディちゃんからのサービスだよ♪ 頭も冷えてちょうど良いでしょ? キャハハ❤︎』

 

 ビキ、ビキッ!ナグモの額に青筋が浮かぶ。

 

「ナ、ナグモくん……大丈夫?」

「ああ、大丈夫だとも。ただの水だ」

「その……怒ってない?」

「この程度でキレるものか。僕をキレさせたら大したものだ」

「あ、あはは……どこかで聞いた台詞だね……」

 

 眉間に盛大な皺を作っているナグモに、香織は引き攣った笑顔になるしかなかった。

 ライセン大迷宮はオルクス迷宮と違って人工的な迷宮だった。石造りの通路に階段や道が四方八方にあり、行き止まりや一度来た通路に繋がっている道もある。オルクス迷宮と違って魔物の類いは今のところは確認できていない。だが———。

 

「本当に……本っ当に、作った人間の程度が知れる」

 

 香織から渡されたハンカチで身体を拭きながらナグモは努めて平坦な声を出していた。ただしその口元はかなりひくついていた。

 

「ふうむ。解放者の遺した迷宮と言っても、オルクス迷宮とはかなり違いがあるな」

「ん。それにこの魔法分解作用……地上より強くて私には厄介、です」

 

 ナグモ達の後ろでアインズとユエは頷き合う。ライセン峡谷には魔法分解作用が働いていたが、迷宮内ではさらに強く、ユエは得意の魔法の威力が文字通り半減していた。その為、ユエはナグモと香織に前衛を任せて地図を作りながらマッピングしていた。

 

(まあ、分解されるより先に魔力を込め続ければ問題ないけど、それでも魔力の消費がいつもより大きいからMPの節約はしないとな。それにしても、改めて見るとこのダンジョン……)

 

 アインズは思うところがあって考え込んでいると、その視線に気付いたナグモはアインズへ頭を下げた。彼の顔は羞恥に染まっていた。

 

「申し訳ありません! 先程から守護者にあるまじき失態を……この雪辱は必ず果たしてみせます!」

「ナグモくんだけのせいじゃないよ! アインズ様、私の未熟さでお時間をかけてしまって申し訳ありません! でも、どうかナグモくんだけを責めないで下さい!」

「よい。許そう、ナグモ。そして香織よ」

 

 二人揃って謝罪する姿に、アインズはいつもの様に鷹揚な支配者らしく応じる。

 

「お前達が失敗から学び、それを経験として学習すること。それこそが大きな意味がある。だからこそあえて本来の力を封じて迷宮を探索させているのだ」

「アインズ様……ありがとうございます!」

 

 うむ、と頷きながらもアインズは別の事を考えていた。

 

(まあ、欲を言えばアウラあたりを連れて来れば良かったかも……)

 

 ライセン迷宮の至る所に仕掛けられたトラップは全て物理的な物で、迷宮内の魔法分解作用も働いてナグモのマジックアイテムの片眼鏡や感知系の魔法では全ては発見し辛い。ここに高レベルのレンジャー職であるアウラがいれば、探索はかなりスムーズに行えただろう。

 

「あの……アインズ様」

 

 香織が教師に質問する様に恐る恐る手を上げた。

 

「差し出がましいかもしれませんけど、ナグモくんのロボット達を召喚するとか、私が分身を出して人海戦術で迷宮を探索させた方が捗るんじゃないでしょうか?」

「ふむ。それも一つの手段ではあるが……だが、恐らくこの迷宮のコンセプトから外れてしまう可能性が高いと私は見ている」

「迷宮のコンセプト、ですか……?」

「ナグモ。真のオルクス迷宮の正規の入口には警告文があったそうだな?」

「はっ。“六つの証、全てを示せ。さすれば最後の試練への道は開かれる”。と書かれた碑文が、表層の100階層目に設置されていました」

「つまり、解放者の遺した迷宮とは各々が考え出した試練を授ける場だと私は推測している。順番的にはオルクス迷宮が全ての迷宮を突破した後に行くべき場所だったのかもしれんが……思えば、オルクス迷宮の多彩な環境とモンスターは神代魔法を手に入れた人間達を鍛える意味合いもあったのだろう。ならば、このライセン大迷宮も創作者の試練という意味合いが込められていると私は見ている」

「じゃあ、この迷宮の試練って……?」

「強力な魔法分解作用、そして物理トラップの数々……さしずめ、“魔法使用に制限のある状況で対応力を上げる"といったところではないか?」

 

 ゲーマーとしての経験。そしてナザリック地下大墳墓という巨大ダンジョンの創作者の一人として、アインズは自分の考えを披露した。

 

(まあ、魔法使用不可の縛りプレイで戦え、とかダンジョンとしては珍しくは無いからな……)

 

 そんな風に考えていたアインズだが、香織の反応は劇的だった。キラキラとした目でアインズを見ていた。

 

「すごいです……私、そんな事を全く思いつかなくて……さすがはアインズ様です!」

「う、む? まあ、あくまでこれは私の考えだ。実際は違っているかもしれんぞ?」

「いえ! アインズ様の御推察された通りだと思います! アインズ様の御考えに間違いなんてありません!」

「お、おぅ………」

 

 尊敬の眼差しで見てくる香織にアインズは居心地が悪くなってくる。

 

(やめてー! 予想が外れた時にどんな顔すれば良いか分からなくなるから、そんなキラキラした目で見ないでー!)

 

 香織といい、フェアベルゲンの亜人族達といい、どうしてナザリックで生み出されたわけではない彼等までアインズを崇拝しているのだろうか? 中身は廃課金ゲーマーなただのサラリーマンなのに……とアインズは現実逃避気味に考えた。

 

「……まあ、絶対かは置いておくとして。私もアインズ様の御意見を支持します」

 

 香織のやり取りをジッと見ていたユエは少しだけ何かを言いたそうにしながらも静かに頷く。

 

「この迷宮は明らかに魔力に頼る者に制限をかける構成。試練というのが、魔法に頼らない状況での対応力なのは間違いない、です」

「う、うむ。そうか……とにかく、だ。決定的に行き詰まるまでは、しばらくは迷宮のコンセプトに沿って攻略をしてみるのだ」

「かしこまりました! アインズ様!」

 

 ナグモの威勢の良い返事に、とりあえずこれで良しとアインズは心の中で頷いた。

 

(まあ、所々出る煽り文はともかくとして、レベル100以上のナグモと香織が本気でやったらただの力押しでクリアしちゃいそうだからな。簡単に成功するよりも失敗を重ねながらの方が、得るものが多い筈だ。それにしても縛りプレイでダンジョン攻略かあ……状況が違うけど、ペロロンチーノさんの誕生日にやった蓮レチックダンジョンを思い出すなあ。あの時もちょうど四人だったし)

 

 ***

 

 さて———そんな風に仲間達の思い出に浸りながらナグモ達にダンジョン攻略を任せていたアインズだったが。

 

 カチッ。

 

「ご、ごめんなさい!」

「安心しろ、香織。ふん、毒矢か。このくらい撃ち落として……」

 

バシャ!

 

『ミレディちゃんから再びお水のサービス! お礼なんていいよ〜、好きにやってる事だからさ♪ ……ぶふぉっ!』

 

 ……ピキ、ピキ。

 

 カチッ。

 

「……ふん。スロープで滑った先に麻痺毒の蠍を敷き詰めた様だが、この程度で引っ掛かるわけ———」

 

 バシャ!

 

『はーい♪ 水で滑りを良くしてあげたよ〜。スプラッシュなコースターを楽しんで♪ もしかしたらかける場所を間違えたかもだけど……プギャー!』

 

 ピキ、ピキ!

 

「ええい、なんであそこでトラップを踏む!」

「不可抗力。あなたや香織も引っ掛かってる」

「ううむ、一本道に鉄球が転がって来るとはまたベタな……」

「お下がり下さい、アインズ様! この程度の鉄球など粉砕して」

 

 バシャ!

 

『じゃじゃ〜ん! 実はこれ、鉄球並みに硬度を上げた水風船でした! ビビった? ねえ、ビビった? だ、駄目だ。笑うな……しかし……!』

 

 ビキッビキッ!

 

 致死性のトラップは回避したり、事前に避けたりしているのだが、そこへ図った様に水が掛けられ、ナグモの額の青筋が増えていく。しかもその先で見つかる煽り文がまた的確で、最初は煽り文を見つける度に苦笑を浮かべていた香織も、今や他の人が見れば恐れを抱くほどの物凄く良い笑顔を浮かべている。

 

「あー、何だ……致死トラップは解除できてるし、この程度の事でイライラしなくて良いぞ……?」

「御安心を。この程度の事でキレていません……ええ、キレていませんとも」

 

 いや、どう見てもキレてるって。

 無表情を装いながらギリギリと歯軋りが聞こえてきそうな声音のナグモに、アインズはどうにかその言葉を呑み込んだ。

 

(なんというか……このダンジョンは試練とか関係なしに、相手をおちょくるのが目的になってないか?)

 

 このダンジョンを遺したミレディ・ライセンへの評価を微妙に改めつつも、アインズは先程から気になりだした事を考えた。

 

(それにしても、さっきからナグモに集中攻撃する様に水を掛けられてるよな。これって、もしかして……)

 

「アインズ様、今来た通路が……」

 

 ユエが示した先を見ると、アインズ達が通った道に天井から壁が降りてシャッターの様に閉められた。

 

「む? 後戻り出来なくなったか。こんな事は初めてだな……」

 

 そう言いつつも、この展開になんとなくイヤな予感を覚えるアインズ。この手のトラップだらけのダンジョンで、ユグドラシルならある種のお約束展開があった。アインズが閉まってしまった通路から振り返ると、そこには見覚えのある部屋で固まっているナグモと香織の姿があった。

 

『ねえ、どんな気持ち?』

 

 これまた見覚えのある石碑の足下に文字が浮かび上がる。

 

『苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち? ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ』

 

 熊的なナマモノが周りをグルグル回る姿をアインズが幻視する中、文字が次々と浮かび上がる。

 

『あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します。いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです。嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ! ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です。ひょっとして作っちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー!!』

 

 ドゴオオオォォォォッ!!

 

 ナグモの黒傘シュラークによる砲撃と、香織の“聖爆”の魔法が同時に放たれる。レベル100以上の二人の一撃は、石碑ごと地面を抉り取った。

 

「…………上等だっ……!」

「うふ、うふふふふ……!」

 

 率先して前に出てトラップを解除していた二人の身体が細かく震える。ナグモは能面の様な無表情に青筋を立たせ、香織は背後に般若が見えそうな不気味な笑い声を出していた。

 

「アインズ様」

「な、なんだ?」

「申し訳ありません。少し……僕のやり方でこのクズ、ではなく無礼者が造ったダンジョンを攻略してしまって構わないでしょうか?」

「う、うむ。まあ、許そう」

「手伝うよ、ナグモくん。私の魔力も分けるからね」

 

 二人の覇気に気圧されて、アインズは首を縦に振るしかなかった。マッピングしていた地図を仕舞いながらユエは溜息を吐いた。

 

「……ある意味、対応力の訓練にはなったと思います」

「ああ。そうだといいな………うん」

 

 ***

 

「あひゃひゃひゃひゃっ! あのローブの子、マジ最高っ! いやー、私も苦労して作った甲斐があったよ!」

 

 ヒー、ヒー! と笑い転げながら、ミレディ・ゴーレムは自分の予想以上のリアクションをしてくれるナグモに感謝の念を送った。先程から遠隔操作でナグモに放水トラップのターゲットを絞ってよかった。

 

「それにしても傘を武器にするなんて、オーくんのフォロワーかなあ? ひょっとしてオーくんの子孫とか?」

 

 それだったら、どんなに嬉しい事か。もはや自分達の痕跡など残っていない筈の地上に、仲間達の遺した種があったのだとしたら四千年の孤独すら些細な事に思えてくれる。

 

「まあ……それは無いだろうけどね。オーくん、最後は自分の迷宮内でエヒトの正体を暴いてみせると言ってたしね」

 

 果たして、その研究が実ったかどうかミレディには確かめる事は出来なかった。だが、未だに地上はエヒトが神として君臨しているという事は———つまり、そういう事なのだろう。

 

「もしもオーくんの子孫だったとしても、手は抜かないよ。あのクソヤロー(エヒト)を殺すなら、この程度じゃ———え?」

 

 唐突にダンジョン内を映していた映像が消えて、ミレディは驚きの声を上げた。

 

「一体、何が……まさか故障? こんな時に……っ!?」

 

 頭を捻っていたミレディだが、次の瞬間に迷宮内を管理している魔法道具から響いたアラームに無くなった背筋を震わせた。

 見れば、自分の迷宮が次々と破壊されている。それも入口から一直線に、だ。

 

「な、何これ!? ちょっと待ってよ! ここ、クソヤローに対抗するシェルターも兼ねてるから強度に結構自信あったんだけど!?」

 

 それこそ“真の神の使徒”が万単位で攻めて来ようが、籠城に徹すれば凌ぎ切れる自信はある。だが、現に何者かが迷宮内の壁を破壊しながら一直線に進んでいる。その進行先には———!

 

「っ……!」

 

 それを理解した瞬間のミレディの行動は早かった。直ちに迷宮内のコントロールルームだった自室を離れ、最終試練の部屋に向かう。その決断の早さはかつて神に対抗した解放者のリーダーだけの事はあった。

 宙にいくつもの立方体の足場が浮かぶ部屋———そこの番人であり、かつて神に対抗する為に作り上げた見上げる様な巨大な鎧騎士の内部にミレディは搭乗する。

 

(本来なら安全な場所から操って巨大ゴーレムを戦わせる予定だったけど、侵入者は私の本体を目指して来ている———! それなら……ここで迎え撃つ!)

 

 ミレディが巨大ゴーレムと完全に同調し、迎撃準備を整えると同時に最終試練の部屋の天井に罅が入った。見上げると、地響きと共に巨大なドリルの先端が部屋を突き破ってきた。

 

「見つけたぞ……この、ド低脳……!」

 

 巨大な掘削ドリルがついた機械———地底戦車のコックピットで、ナグモは歯を剥き出しにしながら鎧騎士ミレディを睨み付けた。

 

 




>蓮レチックダンジョン

詳しくは「オーバーロード 不死者のOh! 第九巻」を読んで下さい。お嬢様になった至高の御方達が見れます!(笑)

>地底戦車

サンダーなバードの2号のアレとか、ウルトラなセブンのアレなのかは読者の想像に任せます。好きなやつを思い浮かべてください。(というか自分が真っ先に思い付いたのはアンパ●マンのもぐりん……)
最近、シン・ウルトラマンを観てドリルとかの良さに目覚めました(笑)
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