ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 九月より、新しい職場で働く事になりました。つきましては、仕事のやり方を覚える為に更新頻度が下がるかもしれません。趣味に書いているSSですのでエタる気はありませんが、ご了承下さい。


第八十三話「踊る人形達」

 会談が終わり、玉座の間には階層守護者達———シャルティア、ナグモ、コキュートス、アウラ、マーレ、デミウルゴス、セバス———そしてアルベド以外は退出した。

 ナザリックの外で偽装の身分を作っているナグモやアウラとマーレに変装を解いて楽にして良いと告げ、アインズは玉座の上で———無い筈の胃をキリキリと痛ませていた。

 

(やべえ………読み間違えてた)

 

 骨しかない身体だが、額から冷や汗が流れる様な錯覚をする。心境的にはそのくらい切羽詰まっていた。

 

 ヘルシャー帝国の侵攻がエヒトの暗躍によるものと予測していたアインズ。それ故に皇帝をナザリックまで呼び出し、何が起こっても対処出来る様にと高レベル帯のPOPモンスター(シモベ)達でガハルドを取り囲んだのだ。ナザリックの最奥である玉座の間まで通すリスクはかなり高いが、逆に言えばナザリックで一番守りが固いのがこの場所だ。エヒトがガハルドを操りながら監視していたとしても、ナザリックの中で一番守備や防諜能力が高い玉座の間ならばエヒトに情報を抜き取られる事なく、鼠取りに掛かった鼠の様にガハルド達を暗殺する事も可能だった。あわよくば、逆にガハルド達を洗脳して二重スパイに仕立て上げる事も可能だと踏んでの行動だった。

 そんなわけで各階層守護者達にシモベ達を厳選する様に命じ、ガハルド達に洗脳が有効か調べる為にデミウルゴスの「支配の呪言」まで使わせて臨んだ会合だったが————支配した皇帝から、エヒトとは全く無関係だったと伝わったのであった。

 

(エヒト関係無かったじゃん……守護者達に色々と準備させたのにほとんど要らなかったです、とか今度こそ軽蔑されるうぅぅぅ!? しかも何だよ! 何で俺はフェアベルゲンの王様になる事になったの!? 亜人族達に了承取ってないし、やめた方が良いって!!)

 

 場に流されるままに頷いてしまった事に今更ながら後悔してくる。ガハルドが言っていた事も尤もである。アインズがフェアベルゲンの大迷宮で神代魔法を習得する日まで、今回の様にフェアベルゲンを侵攻されるのは困るのだ。そのリスクを減らせるならガハルドの言った通りにフェアベルゲンをアインズの支配下とし、帝国を通じて人間達を牽制する必要があるのは分かっている。

 ただし、頭で理解していても中身が小市民であるアインズには話が大き過ぎた。もはやストレスのあまり、今や一本も生えていない頭髪が抜け落ちる感覚までしてくる。そこでようやく精神の沈静化が働き、冷静になってくる。

 

(いや、待てよ。この際だから守護者達には正直に俺にとって予想外の事態だった、と白状すれば良いんじゃないか? どういうわけか皆は俺が完璧だと思っている節があるけど、俺だって間違える事はあるよと知らしめるべきだよな)

 

 土台、一企業の平社員であったアインズ(鈴木悟)に組織のトップをやれというのが無理のある話だったのだ。自分の無能ぶりが露呈してしまうのは恥ずかしいが、今後にナザリックの舵取りを危うくしない為にも素直に謝るべきだろう。

 

「アインズ様」

 

 スッとデミウルゴスが手を上げた。

 

「まずは先程の帝国の皇帝との交渉、お見事でした。さすがは至高の御方の纏め役であらせられた御方。このデミウルゴス、感服致しました」

 

 ああ、これは皮肉なんだろうなとアインズは覚悟する。自分よりも何倍も頭が良いデミウルゴスがアインズのミスに気付かない筈がない。

 

「つきましては、他の者達とも情報を共有する為に私の口から説明しても宜しいでしょうか?」

「……許そう」

 

 アインズはいつもの癖で支配者ムーブで尤もらしく頷いた。

 これから始まるのは吊るし上げだろう。皆でどんな風にアインズの読み違いをしたか指摘する会議が始まるのだ。社会人一年目のプレゼン発表の練習で、先輩や上司に酷評された時の事を思い出してアインズは胃が痛くなってきていた。

 デミウルゴスは立ち上がると、アインズに背を向けて守護者達を見回せる位置についた。

 

「さて諸君……帝国の皇帝の働きにより、フェアベルゲンにアインズ様を王とした国が作られる事となった。……今のところは全てアインズ様の御計画通りだ」

 

 え? とアインズは声に出さずに首を傾げた。しかしながらアインズに背を向けているデミウルゴスはそれに気付かなかった。

 

「これにより……アインズ様の主たる目的である世界征服計画の足掛かりが得られる。分からなかった愚か者は居ないだろうね?」

 

 デミウルゴスの問いに守護者達は当然、と沈黙で返していた。デミウルゴスからしても軽い冗談のつもりだったのだろう。あのシャルティアですら余裕の笑みを返しているのだから。

 そして玉座には話が見えてないポンコツ・ウール・ゴウンがただ一人。

 

(え……えええぇぇええええっ!? 世界征服ぅ!? なんでそんな話になってんの!?)

 

 ガハルドといい、エヒトルジュエといい、トータスを征服するのが流行りなのか!? とアインズが混乱する中、デミウルゴスは確認する様に守護者達に問い掛けた。

 

「コキュートス、亜人族達の教育の進捗は十分なんだろうね?」

「問題ナイ。彼等ハ元ヨリアインズ様ニ救ワレタ事デ、深イ恩義ヲ感ジテイル。ソノ後ノ軍事教育デ、亜人族達ハアインズ様ヲ神ノゴトク崇メ奉ッテイル。今更、アインズ様ガフェアベルゲンノ王トナル事ニ異論ヲ唱エル者ハイナイダロウ」

「ナグモ、改造した亜人族の強さはどうなんだい?」

「ユグドラシルのレベルで平均して40オーバー。先の戦いで能力を覚醒させた個体———シア・ハウリアはレベル50といったところだ。今後はこの個体情報を基に、アインズ様が帝国から取り戻した奴隷達を改造する予定だ」

「よろしい。アインズ様の働きにより、追加の奴隷達が帝国より来る。これらもアインズ様の御国の国民とし、来たるエヒトルジュエとの決戦における兵力として教育する事で、アインズ様を君主とした千年王国が設立されるのだ!!」

 

 「おお!」、「さすがです、アインズ様!」と守護者達はデミウルゴスの宣言に喜びの騒めきを上げる。まさに一大プロジェクトの決議案が上層部に通ったかの様な喜び様だ。

 

(や、やべえ……いまさらそんなの知らないよ? って絶対に言えない流れだこれ。どうにか大口契約を取ってきた社員達に、「あ? そんな計画したか?」とか言って上司が覚えてないとか悲惨過ぎるぞ!?)

 

 この時ほど骨しかない身体に感謝した時は無い。そうでなければ、真っ青で冷や汗ダラダラになったアインズの表情がバレていただろう。

 ふとデミウルゴスを見ると、先程まで守護者達の方を向いていた筈がいつの間にやらアインズへと振り返っていた。スーツのズボンから生える尻尾が犬の様にブンブンと振られていた。

 覚悟を決めて、アインズは鷹揚に頷いた。

 

「そ、そうか。全て計画通りというわけだな?」

「もちろんでございます。あの時より、アインズ様の御計画通りにナザリックの全ての者が動いております」

「あの時か……」

「ええ、そうでございます」

「……あの時だな?」

「そうでございます!」

 

 どの時だよ!? とアインズは心の中でシャウトする。

 

「質問してもよろしいでありんしょうかえ?」

 

 スッとシャルティアの手が挙げられた。

 

「あの人間の皇帝を脅す際、アインズ様はエヒト……エヒトラ?」

「エヒトルジュエだよ、それくらい覚えなさいって」

「えぇい、分かっているでありんす! 御方に楯突く神の分際で噛みやすい名前なのが悪いでありんす!」

 

 呆れた顔で訂正するアウラに噛み付いた後、シャルティアはコホンと咳払いする。

 

「そのエヒトナントカとかいう神が人間を傀儡にしている可能性を警戒しろとアインズ様は仰っておりんしたが、そちらはどうなっているのでありんして?」

 

 ほら、来た! とアインズは身を固くする。そして意を決して口を開いた。

 

「あ、あれはだな……」

「シャルティア、貴女そんな事も分からなかったの?」

 

 アルベドが挑発的な微笑みを浮かべながら、憐憫すら感じさせる目でシャルティアを見た。

 

「は、はぁ? どういう事でありんすか? あの皇帝は至高の御方を差し置いて世界征服を出来ると愚かにも勘違いしたから、アインズ様の御国となるフェアベルゲンに侵攻したんでありんしょう?」

「まったく、貴女は……。アインズ様は裏の裏まで読まれていたというのに」

「う、裏の裏ですか?」

 

 シャルティアに並び、マーレも驚いた顔になった。そんな二人をアルベドはやれやれという様に頭を振り、アインズを見た。

 

「アインズ様。他の者達にも御身の深淵なる御考えをお話ししても宜しいでしょうか? いざという時に、アインズ様のご真意を勘違いして行動されては困りますので」

 

 現在進行形で、そのご真意とやらを何か勘違いされてるのですが……。とアインズは頭を抱えたくなった。しかし、アルベドの発言を受けてアウラとマーレ、シャルティアは元より、守護者達全員が「さすがはアインズ様……」とキラキラした眼差しで見てくるのを見て、何も言えなくなった。

 

(……無能な上司で本当すいません)

 

 心の中の葛藤は、守護者達の望む支配者像を壊さない事を選んだ。出来る限り、威厳のある声をアインズは振り絞った。

 

「———許す。アルベドよ、お前が理解した事を他の者達にも説明すると良い」

「畏まりました」

 

 アルベドは頷き、仲間達に話し始めた。

 

「良いかしら? 今頃、あの皇帝は———」

 

 ***

 

 ガハルドを乗せた馬車の一団は帝国への帰り道を走っていた。急な旅程にも関わらず、ガハルドが集めた精鋭の騎士団で構成された護衛隊と帝国の一流の職人によって作られた馬車は、見る者に帝国の勇壮さを知らしめるだろう。

 しかし———今や葬儀の参列の様に、重苦しい空気が蔓延していた。

 

「…………」

 

 最も厳重に警備された馬車の中で、ガハルドは苦虫を噛み潰したような顔で黙り込んでいた。側近のベスタがチラチラと気遣わしげな表情で見てきていたが、ガハルドは無視するかの様に黙り込んでいた。

 

(あれは………魔神の城だ)

 

 思い返すのは、先程までいた荘厳な白亜の宮殿。

 帝国———否、トータス全ての職人が集まってもあれ程の宮殿は決して作れそうになく、そして宮殿にいた異形達はガハルドが今まで対峙してきた魔物など軽く凌駕するだろう。帝国の全兵力を傾けたとしても、軽く蹴散らされるだろうとガハルドは見立てていた。

 そして———玉座に座る「死」。

 いま思い起こしても寒気がしてくる。ガハルドが生涯において死線を潜り抜けたのは一度や二度ではないが、対峙した瞬間に生存への道筋が全く見えなかったのは初めてだった。

 まさにあれこそが魔の神———遍く魔を導く支配者そのもの。

 

(あれ程の魔物が何で今まで存在が露呈しなかった? 過去に聖教教会はエヒト以外の信仰を邪教として、徹底的に資料や宗教施設も焼き払ったと聞いたが……まさか、奴は忘れられていた神だとでも言うのか?)

 

 常ならば誇大妄想と一笑に付す様な考えさえも脳裏に浮かんでくる。

 だが、残念ながらガハルドにはその考察が正しいかどうか検証する術は無い。ヘルシャー帝国の建国は三百年前。積み重ねた歴史ではハイリヒ王国よりも何倍も劣る帝国には、過去の歴史を紐解く資料も学者も全然足りていないのだ。

 

(クソ、軍事にばかりかまけてないでそういった学問方面にも力を入れてりゃ良かったぜ……やっぱり力だけじゃ限界があるか)

 

 自分の失策にガハルドは唇を噛み締めた。ヘルシャー帝国の特色といえば、他国にも轟く自分の勇名さと軍事力だった。良質な魔石が採掘できるオルクス迷宮や観光名所としても名高いウルの町の様な広大な農地を持つハイリヒ王国と曲がりなりにも渡り合えたのは、帝国が(トップ)も身体も強靭な獅子の国だったからこそだ。

 だが、ここに来て頭も身体もドラゴンの国が出現する。それが帝国の今後にどの様な影響を齎すか、今からでも頭が痛くなる思いだった。

 

(いや、まだだ。まだ俺は負けちゃいねえ。力が劣るなら、劣るなりの戦い方がある)

 

 ガハルドは不敵な笑みを浮かべる。それは帝国をトータス最大の軍事国家にのし上げた皇帝に相応しい笑みだった。その笑みにベスタは待っていたとばかりに安堵した。

 

「そうチラチラと見るな。気が散るだろうが」

「陛下……!」

 

 ガハルドは真剣な表情になる。これは戦争だ。直接的に刃を交える様な戦いでなくとも、いかに相手に打ち勝つか? と考えると稀代の戦争屋であるガハルドの脳は冴え渡っていくのだ。

 

「確認するぞ。今回、俺達が対峙したアインズ・ウール・ゴウン……奴の居城から察するに莫大な資産を持っており、軍事力という点を見ても帝国を上回っている。異論はあるか?」

「それは……いえ、ありません。あの場に並んでいた魔物達一匹だけでも、一個中隊以上の戦力があるでしょう」

「それが百匹以上……いや、玉座の間にいただけの数が最大戦力というわけじゃねえだろうから、その数倍は見積もっても良いかもな。そして皇宮に来た奴等は位置的に側近として、それと同レベルの奴が七人。それと玉座の横にいた翼の生えた女は……あれは王妃といったところか? ハン、魔物の王のくせに人材豊富だな」

「陛下、亜人族達もです。あの魔物はフェアベルゲンに復旧支援をしているだけと言っておりましたが、実質的に亜人族はあの化け物の傘下に治まったと見て良いでしょう」

「分かってる。帝国だけじゃ兵力差は絶望的だという事だろ」

 

 改めて言葉にしてみれば、アインズの化け物振りが分かる。しかも本人はアンデッドの兵士をいくらでも召喚できるというのだ。もはや悪夢を見ているとしか思えない出来事だ。

 

「しかし、陛下……そこまで分かっていながら、何故あのアンデッドに協力を申し出たのですか? それに亜人族の奴隷を全て奴に渡すなど……」

 

 帝国では亜人族達は女の兎人族の様な見目麗しい者は娼館や貴族の妾として売り払われるが、それ以外のほとんどは農場や鉱山などで強制労働をさせている。稀に帝国軍の奴隷兵士として組み込まれる場合もあるが、ほとんどは使い捨てられ戦死している。だからこそ帝国の国民は軍人や傭兵といった非生産職に専念でき、ガハルドも帝国の軍事力を高められたのだ。ここで亜人族の奴隷達がいなくなるというのは帝国の一次産業の労働者の大半が消えて、ひいては国力の衰退を意味する。いくら相手との圧倒的な差を見せつけられたとはいえ、祖国の衰退を促す様な協定を結ぶのは側近のベスタであっても苦言を呈さずにはいられなかった。

 

「このままではあの化け物に、我々は子々孫々従わねばならなくなります。これではまだ聖教教会に尻尾を振っていた方がマシだった、という事になりかねません」

「そんなこたぁ、分かってる。だが、あの場でああ言っておかなければ、俺達には反撃の機会すら与えられなかっただろうが」

「反撃、ですか? しかし、どうやって……」

 

 戦場でいかなる窮地に陥っても崩さなかった不敵なガハルドの笑みに、ベスタは頼もしく思うが今回は別だ。兵力も財力も圧倒的な相手にどう反撃するというのだろうか?

 

「良いか? 亜人族の奴隷達の返還は出来る限り引き延ばさせろ。貴族達の一部が反対して中々思う様に進まないとか、色々と理由をつけてな。そして何とか一月先……ハイリヒ王国の式典の日まで粘れ」

「ハイリヒ王国の式典……まさか! ですが、彼等は」

「ああ、伝え聞く限りじゃあまりアテにならないだろうよ。だが、トータスの常識に囚われない相手なら万が一という事もある。そうでなければ、奴等を旗印にして対アインズ・ウール・ゴウン同盟を作って貰う。そういう風に働きかける。帝国は奴等の国をスパイして、聖教教会に売り渡す」

 

 そうでなければ、帝国に生きる道は無い。相手はアンデッド。膝を屈したら最後、生者である人間達をまともに扱うとは思えない。帝国の民が今後も人間としての最低限の生活を送る為にも、アインズ・ウール・ゴウンに屈するわけにいかないのだ。

 

(それに上手くいけば、奴等が共倒れして漁夫の利を狙う事も……)

 

 トータス全土の平定という野望に生涯を賭けると誓ったガハルド。彼の野望の火はこの程度で消えたりはしない。

 

「魔王を倒すのは勇者と物語で決まっているからな。異世界からエヒト神が召喚した神の使徒達……あの魔王を倒す為に、勇者達をぶつける様に式典で働き掛けていくぞ」

 

 ***

 

「なるほど、なるほど……そうですか」

 

 ハイリヒ王国、神山。

 大聖堂でイシュタル——正確にはその姿に化けたドッペルゲンガー——は、手元の紙を見ながら深く頷いた。

 コンコン、とドアがノックされる音がした。入って来た神官が目的の人物の来訪を告げ、イシュタル・ドッペルゲンガーは入室の許可を出した。

 

「失礼します、イシュタルさん!」

 

 入って来た人物は光輝だった。彼はいつも着ている金色に輝くフルプレートメイルから、金の刺繍飾りや飾り紐が目立つ白い軍服姿になっていた。彼の全身からは自信が満ち溢れ、その出で立ちは理想に燃える青年将校といった所だろうか。

 そんな光輝にイシュタル・ドッペルゲンガーは、コピー元の記憶にあった柔和な笑みを浮かべた。

 

「よくぞいらして下さいました。人々を脅かす魔物退治で御多忙を極める中、大変でしたでしょう」

「いえ、気にしないで下さい。俺は勇者として当然の事をしているだけです」

「なんと慈悲深い……光輝様や御仲間の皆様に救われた人々は魔物の脅威に怯えずに済んで、皆様に感謝している事でしょう」

 

 いやー、ははは……と光輝は照れ臭そうに頭を掻く。

 

「あ、でも……この前の戦いでは農園にも被害を出しちゃったけど、大丈夫でしたか? みんな一刻も早くレベルアップしようと張り切っちゃって……」

「ええ、大丈夫です。作農師である愛子殿の御力で全て元通りになりました。彼女が()()()()()()()()、魔物の被害にあった土地など問題になりませぬ」

「そうですか、良かった……畑山先生も、分かってくれたんですね!」

 

 光輝は気難しい相手に自分の意見を理解した貰えた様な、ホッとした表情を浮かべた。

 

「俺達、決めたんです。魔物や魔人族達に苦しめられているトータスの人々の為にも、もっとレベルアップしなければいけないって! そうしたら魔王も倒して、エヒト様が死んだ龍太郎達も生き返らせてくれるんでしょう? だったら、もっともっと魔物を倒してレベルアップしようって決めたんです!」

「その通りです。光輝様の御活躍は、きっとエヒト神も見守っておられるでしょう。光輝様こそ、人々の希望。多くの魔物を倒し、是非とも皆様を御救い下され」

 

 

 はい! と威勢よく返事する光輝に、イシュタル・ドッペルゲンガーは内心でほくそ笑む。自分の上司であるデミウルゴスの言う通り、煽てればどこまでも調子に乗る愚かな勇者(道化)だった事に。

 

「それで、今日はどうしたんですか?」

「おお、そうでしたな。一ヵ月後の式典において、隣国であるヘルシャー帝国の皇帝も参列されるとの事です。これも偏に、光輝様方の御活躍を認めての事でしょうな」

「本当ですか!? 帝国の人達は力が全てと思っている野蛮な人達だと聞いてましたけど、話せば分かる人達だったんですね!」

「ええ、ええ。どうか彼等にもトータスの人々の為に戦う光輝様のお姿を見せて下さい。彼等は力ばかりに囚われ、道を見失ってしまった哀れな兄弟なのです。トータス全ての人々の為に戦う光輝様の御姿を見せ、彼等の目を覚ましてやって下され」

「大丈夫です! きっと話し合えば、分かってくれますよ!」

 

 地球にいた頃の、自分の()()()()から光輝はそう断言した。

 自分の正義を真っ直ぐに疑わない彼に、イシュタル・ドッペルゲンガーはニッコリと微笑む。

 

「式典では、皆様方の御披露目を兼ねております故。期待しておりますぞ、勇者様……いえ。“光の戦士団”団長、天之河光輝様」




>反撃を目論むガハルド

 まず最初に、愚かとは言わないであげて下さい。彼からすれば、自分の国が突然湧いて出た強国に搾取されまいと必死で抗っているだけですから。ぴったりな言葉は……溺れる者は藁をも掴む。

>光輝

 何か久々に書いた気がする……。彼的には「魔物をいっぱい倒す=困っている人達を助けてあげられるし、魔王を倒す為のレベルアップも出来る!」と意気込んでいるんですよ。しかもイシュタル・ドッペルゲンガーは耳触りの良い事しか伝えてないし。
 そして魔王を倒せば、死んだ皆も生き返ってハッピーエンドだと信じてるわけです。ん? 奈落に落ちた香織の事? まあ、おいおいね……作者的にも、もはや理解不能な思考回路で書いているので。

>“光の戦士団”

 で、行き着いたのがこれ。まあ、何です……異世界召喚モノで、自分が特殊部隊の隊長に選ばれるとかアガる展開でしょう?


 上げた分は叩き落とすけど。

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