ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 ゴロゴロしてたって、自動的に小説は書き上がりませんよー。
 それが分かっているけど、休みの日はつい寝転がってスマホやswichを何となくやってしまう。

 最近、ワンピースの映画を見に行きました。Adoの曲とか今まで興味無かったけど、映画を見終わったらCDを即買いしてました(笑) この映画はもう一回見に行っても良いかもしれない。


第七十九話「フェアベルゲン防衛戦 終着」

 フェアベルゲン 臨時避難所

 

 帝国軍から無事に救出されたアルト達の姿はそこにあった。奴隷として過酷な仕打ちを受けた彼女達の傷をミキュルニラが次々と診察していた。

 

「は〜い、とりあえずの応急処置は終わりましたよ〜」

「あ、ありがとうございます……」

「切られちゃった耳とかは〜、しょちょ〜に頼めば元通りになりますからね〜」

「は、はあ……?」

 

 ニコニコと応対するミキュルニラに、アルトはつい気の抜けた返事をしてしまう。そもそも今の状況が未だに把握できていない。突然現れた兎人族の少女が自分達を虐げていた帝国兵達を皆殺しにして、連れて来られた先は帰りたいと夢にまで見ていた故郷だったなど、自分はあり得ない夢を見ているのではないかと実感が湧かないのだ。

 

(このネズミ……ネズミだよね? この亜人女性はどこの氏族の方なんだろう? それに、ここに連れて来られるまで見てきた亜人族はみんな銀髪だったけど、これは一体……?)

 

 フェアベルゲンでは魔物と同じ力———-魔力を持つ者の象徴として忌み嫌われる白銀の体毛。だが、目の前のミキュルニラを除けばここにいる亜人族達は皆が白銀の体毛で、身体のどこかに魔物の様な赤黒い血管を浮き出させていた。

 

「あの……貴方は一体」

「アルト!」

 

 戸惑うアルトに野太い男の声がかけられる。

 

「あっ……」

 

 その声は、アルトにとってとても聞き覚えがあった。ずっと、その声をもう一度聞きたいと願い、辛い奴隷生活でも夢にまで見ていた。

 アルトが振り向いた先————他の亜人族達の様に白銀の体毛と赤黒い血管を腕に浮かび上がらせたジンがそこにいた。

 

「お父、さん……?」

 

 記憶とは少し違う姿にアルトは戸惑った様に声を上げる。ジンは無言のまま、アルトへ歩み寄る。アルトもまた歩み寄ろうとし———途中で思い出してしまった。今回、フェアベルゲンがヘルシャー帝国の侵攻を受けた原因は自分にあるという事に。

 

「……っ!」

 

 アルトの顔が悲痛に歪む。自他共に掟に厳しい父の事だ。樹海の外に出て、帝国軍を引き連れて同胞達を危機に晒した自分を決して許しはしないだろう。そう思うと、アルトは泣きそうな顔で俯くしかなかった。

 気が付けば、ジンは目の前まで来た。手を上げた気配がして、アルトはビクッと身体を固くした。

 ジンは上げた手を振り下ろし———次の瞬間、アルトは毛むくじゃらの腕に抱き締められていた。

 

「え………?」

「このバカ、どこに行ってやがった……! 心配させやがって……!」

 

 アルトは一瞬、何が起きたか理解できなかった。だが、耳元で聞こえる鼻声になった父親の声でようやく父親に抱き締められているのだと理解できた。

 

「ずっと探したんだぞ……! お前がいなくなって、母さんは寝込んじまって……このバカ娘、ようやく帰ってきやがって……!」

「あっ……ああ……!」

 

 痛いくらいに抱き締められ、父親の温もりを全身から感じる。アルトは顔をくしゃくしゃにしながらジンの胸板に顔を擦り寄せた。

 

「ごめんなさい……! ルルを探しに行って、気付いたら樹海の外まで出ちゃって……! 帝国の人間達に捕まって、それで……!」

 

 思い出すのも辛いという様に喉を詰まらせるアルトをジンは強く抱き締めた。

 

「人間達にフェアベルゲンの事は喋ったらいけない、ってお父さんから教わったのに……! あいつら、奴隷にされてた同胞達を笑いながら拷問して……! 喋らなかったら目の前で一人ずつ殺すって言われて、私……私……!」

「バカヤロウ……! もういい、もういいんだ……!」

「お父さん……お父さん……ひぐっ、ああああっ……!」

 

 堰を切った様に泣き出すアルトをジンも涙を流しながら抱き締める。ジンだけではない。無事を聞きつけたのだろう、奴隷にされていた者達の家族は次々と駆け寄って二度と会えないと思っていた子供や兄弟と再会を果たしていた。皆一様に涙を流して、熱い抱擁を交わす。

 

「可哀想に……帝国の奴等、俺の娘の耳を切り落としやがって……! でも安心しな、俺達の神様ならばきっと治してくれるからな」

「お父さん、神様って?」

 

 アルトが不思議そうに父親に聞いた。アルトの知る限り、フェアベルゲンに———というより、亜人族には神に祈る習慣などなかった筈だ。

 そう思っていた矢先だった。

 

「ふむ……君達が奴隷にされていた亜人族か」

 

 威厳を感じさせる男の声が響いた。アルトが声のした方向を向くと、そこに見た事も無い様な豪奢なローブを着た骸骨の魔物がいた。

 

「ア、アンデッド!?」

「待て! 大丈夫だ、このお方はただの魔物じゃねえ!」

 

 突然の魔物の出現に奴隷にされていた亜人族達が色めき立つが、彼等を宥める様にジンが声を張り上げた。そしてジン達は骸骨の魔物———アインズへと跪く。アルト達は何故父親達が骸骨の魔物に跪くのか分からず、「え? え?」と戸惑うしかなかった。

 

「楽にしていい。君達も戦闘をしたばかりで疲れているだろう」

 

 傅かれる事に慣れていながらも、こちらを気遣う様な声が響く。まるでその所作は何度も繰り返されたかの様に自然体であり、アインズを初めて見るアルト達は思わず相手が骸骨の魔物(アンデッド)という事も忘れて見惚れてしまった。

 

「はっ、お気遣いありがとうございます! Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みのままに)!」

「…………ぐぼぁっ

 

 ジン達がアルト達には見た事の無い敬礼をする。ビシッと訓練された様に統一された動きにアインズから呻き声が漏れたが、小さ過ぎてアルト達には聞こえなかった。

 アインズが咳払いをすると、先程より威圧感が少し薄れた様にアルト達には感じた。

 

「んっ、んんっ! 気を取り直して……初めまして、諸君。私はアインズ・ウール・ゴウン。このフェアベルゲンの復興支援を行なっている者だ」

 

 「アンデッドが?」、「まさか……」という戸惑いの声が元・奴隷達から上がる。アルトも驚いて父親を見ると、ジンは神妙な顔で頷いた。

 

「君達はヘルシャー帝国の人間達によって、辛く苦しい日々を強いられてきただろう。だが、もう大丈夫だ。君達は私が保護を約束しよう」

 

 そう言われても、アルト達は戸惑った顔でお互いを見合うしかなかった。父親達は何故か信頼している様だが、トータスにおいて魔物は害悪を与える存在なのだ。しかし、この魔物は何かが違うとアルト達は直感的に理解できた。そもそも人間の言葉を話す魔物など聞いた事がなく、自分達の知識に無い未知の存在故にアルト達は逃げ出すべきかどうか判断できなかった。

 

「ふむ……まずは怪我を治すのが、先決だな。ミキュルニラ」

「はい」

 

 ジン達と同じく跪いていたミキュルニラが顔を上げる。

 

「彼等の傷を全て治してやれ。必要ならば、ポーションの使用も許可する」

「かしこまりました」

「それと———ナグモ」

「はっ」

 

 アインズの背後から一人の少年がアルト達の前に進み出た。

 

「に、人間……!」

 

 帝国の人間達に酷い仕打ちを受けてきた彼等は、人間の少年を見て身体を硬くした。そんなアルトの手をジンが安心させる様に握った。

 

「大丈夫だ……すいません、ナグモ様」

「フン……あんなチンパンジー共と同類と思われる事自体、腹が立つがな」

 

 ナグモは眉間に皺を寄せた表情のまま、アルトへ手を翳した。ビクッとアルトは思わず目を瞑った。

 

「———<中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)>」

 

 ナグモの手から暖かな光が出て、アルトに浴びせられる。一瞬だけ頭が熱くなった様な気がして、アルトは頭を押さえて———ふさふさとした手触りを感じた。

 

「え? これって………」

 

 恐る恐るアルトは頭頂部を触る。そこにはバイアスに笑いながら切り落とされた筈の耳が、元通りになって生えていた。それどころか自分の身体のあちこちにあった生傷まで消え、身体から痛みが消えていた。

 

「あ、ああ……私の耳……私の耳が元通りに……!」

「ありがとうごぜえます! ナグモ様、ありがとうごぜえます!」

「感謝の意はアインズ様に述べろ。その恩義には必ず報いろ」

「はい、はい……ありがとうございます……ありがとうございます……!」

 

 無愛想に言い放つナグモへ、ジンは泣きながら感謝を述べる。アルトもまた自分の耳が戻った事に涙を流して感謝した。それを見て、アインズは宣言する様に言い放った。

 

「見ての通りだ。私は君達の怪我を治す事が出来る。それだけではない、君達が今後奴隷狩りに怯えずに暮らせる様に働きかけよう」

 

 「ほ、本当か?」、「あんな治癒魔法は見た事ないぞ」と元・奴隷達は騒めく。しかし、もはや誰も見た目は恐ろしげなアンデッドの言った事を疑っていなかった。

 アルト達は悟った。この()()……アインズこそが、我々の救世主なのだと。

 

「その為に、少し教えて欲しい事がある。今回の帝国の進軍……彼等は何故、誰の命令でフェアベルゲンへ侵攻しようとしたのか。知っている事があったら教えてくれ」

 

 元・奴隷達は顔を見合わせ、やがてアルトが代表して進み出た。

 

「その……どうして、という理由は分かりません。でも、帝国の皇帝が命じたそうです。これは帝国の繁栄の為にやるんだ、って帝国の軍人達は言ってました。だから、奴隷にして貰えるのはありがたく思え、って……!」

 

 捕虜になっていた時の屈辱的な扱いを思い出し、アルトは唇を噛んだ。それに対してアインズは「ほう、帝国の皇帝が……」と何かを考え込む素振りを見せた。

 

「ふむ、やはりその皇帝とは一度会っておくべきか……。よく分かった、ありがとう。早急にやる事が出来たので、私はこれで失礼させて貰おう。後の事はナグモ、ミキュルニラ。お前達に任せる」

「はっ!」

「はい!」

 

 「では……」と立ち去ろうとするアインズの背中に、「あ、あの!」と声が掛けられる。アインズが振り向くと、奴隷にされていた森人族の男が縋る様な目付きをしていた。

 

「あんたは……いや、貴方様は帝国の皇帝と渡り合える様な御方なのですか? だったら、お願いします! 俺の妹はまだ帝国で奴隷にされているんです! どうか奴隷にされた妹達も……!」

「お、おい! そりゃ図々しいだろ! 申し訳ねえです、ゴウン様!」

 

 ジンが慌てて森人族の男を抑えようとする。しかし、それより前にアインズは無造作に———しかし洗練された動きで手を振った。まさに王者の佇まいといった所作に亜人族達は見惚れて黙り込んだ。

 

「ふむ、そうだな。確約はできないが、ヘルシャー帝国の皇帝に話をつけてみよう。出来る限り、フェアベルゲンにいた亜人族は連れ戻しておきたいからな」

「あ、ありがとうございます……!」

 

 「大迷宮の情報は外に漏らしたくないしな」だとか、「アンデッドを代わりの労働力として派遣すれば……」とアインズはブツブツ言っていたが、亜人族達は聞こえていなかった。慈悲深く救いの手を差し伸ばしてくれたアインズへの感謝のあまりに、感涙で咽び泣く者までいる始末だった。

 

「では今度こそ失礼しよう。これからやる事が山積みとなっているからな」

「はい、はい……ありがとうごぜえます、ゴウン様! この御恩に必ず報います!」

「ありがとうございます……救って頂いた御恩に、必ず報います!」

 

 ジンとアルトは共に跪いて感謝を述べた。彼等親子に続く様にその場にいる亜人族達は皆一様に救いの神であるアインズへ感謝の祈りを捧げていた。

 

「どうか帝国で奴隷にされている同胞達をお願いします! 帝国なんざ、ブッ潰してちまって下せえ! Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みのままに)!!」

Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みのままに)!!』

 

 亜人族達は一斉に、目の前の神に直接創られたという男が口ずさんでいた言葉を口にした。アルト達もまた、見様見真似でジン達と同じく敬礼してみせた。

 

「………ああ、うん。奴隷達の事はどうにかしよう。どうにかするからさ……その敬礼は止めないか?」

 

 その瞬間、アインズに後光が差した様に亜人族達は感じていた。

 

 ***

 

「お帰りなさい〜、しょちょ〜」

 

 アインズが去った後、ミキュルニラはトテトテとナグモに近寄る。

 

「フン、お前は変わりなさそうだな」

「はい〜、元気でやらせて貰ってます〜。しょちょ〜もアインズ様のお供、お疲れ様です〜」

「守護者が御方の為の剣や盾となるのは当然だ。疲労感など感じるわけがない」

 

 気遣うミキュルニラに、ナグモは素っ気なく返した。しかし、ミキュルニラは優しい笑みを浮かべて「そうですか〜」とだけ頷いた。ミキュルニラにとってナグモの反応はある意味、いつも通りだった。

 ふと、ミキュルニラはこれから治療する亜人族達へ目を向ける。ジンとアルトの親娘はまるで会えなかった期間を埋め合わせる様に、笑顔で色々と話し込んでいた。

 

「……良かったです、皆さんが家族とまた会えて」

 

 家族との再会を喜びあう亜人族達。その輪から取り残される様に、ミキュルニラはポツリと呟いた。

 その表情(かお)は彼等の再会を喜んでいる様に静かな微笑みを浮かべ———どこか、自分には手に入れられない物を見つめる様な羨望の混じった眼差しだった。

 

「全く、あの低脳共……さっさと治療室に移動して欲しいというのに」

「……今はもう少し、このままにしてあげましょうよ。しょちょ〜」

「フン、ならこっちは準備に取り掛かるぞ。ポーションの準備をしろ、ミキュルニラ」

「…………はい」

 

 くるりと背を向けて歩き出すナグモに、ミキュルニラはついて行く。ナグモからは死角となって見えなかったが、ほんの少しだけ彼女は寂しそうな表情で再会を喜び合う家族達をチラッと振り返り———。

 

「ああ、そうだ……忘れない内に渡しておくか」

「ふぇ!? な、なんでしょうか〜?」

 

 唐突に足を止めたナグモに、ミキュルニラは慌てていつもの———ナグモの前で振る舞うおっとりとした笑顔を浮かべる。幸いな事に、ナグモはオルクス迷宮で手に入れた“宝物庫”に手を入れて何かを探し込んでいた為に表情の変化は気取られなかった。

 

「ああ、あった……ほら、これをやる」

 

 ナグモは空間から、何かを引き出すとミキュルニラに差し出した。

 それは金属製の栞だった。緻密な細工が施され、端にはカラフルなリボンの装飾が付いていた。

 

「え……ええと〜、これは〜?」

「アインズ様と人間達の町に行った時、市場調査の為に商店をいくつか回った時に見つけたものだ。人間にしてはまあまあ出来が良い物だったから、お前にくれてやる」

「………ひょっとして、私へのプレゼントに?」

 

 ミキュルニラが問い掛けると、ナグモはフンと目を逸らした。その表情はいつも通りの無表情ながら、何処となく照れ臭そうに見えた気がした。

 

「別に……いらないなら捨てていい。お前には副所長としてサポートして貰っているから、気が向いて買っただけだ。まあ、なんだ……詰まらない物だが、土産というか……。香織にも言われたが、一応は同じ創造主から創られた兄妹みたいなものだし……」

 

 ブツブツと言い訳する様に言うナグモをミキュルニラはしばらく目をパチクリさせながら見つめる。そして、差し出された栞をギュッと自分の胸に抱き締めた。

 

「ふふふ……ありがとうございます〜。プレゼントを貰うなんて、生まれて初めてです〜。ありがとうございますね〜、お兄ちゃん♪」

「その呼び方はやめろ。とにかく、さっさと仕事に取り掛かるぞ!」

「は〜い♪ ところで〜、これって香織ちゃんの入れ知恵だったりします〜?」

「まあ、な。品物自体は何を渡せば良いか、香織に聞いてみたりもしたが……」

「やっぱり……駄目ですよ〜、そこは嘘でも自分で選んだ、って言わなきゃ。女の子の扱いというのもちゃんと覚えるべきですよ〜、ナグモお兄ちゃん♪」

「だから、その呼び方は止めろと言っている」

 

 照れ隠しなのか、ナグモはミキュルニラより先にズカズカと歩いて行く。まるで子供の様な行動をする自分の上司の背中が可笑しく、ミキュルニラは栞を大切にポケットに仕舞い込みながら追いかけて行った。

 

 ***

 

「お帰りなさいませ、アインズ様! お風呂にしますか? お食事にしますか? そ・れ・と・も〜?」

「………何の真似だ?」

 

 久方ぶりに戻った自室で、ハートを巻き散らしながら待ち構えていたアルベドにアインズは脱力感を覚えながら聞いた。

 

「はい! 新婚ごっこでございます♡ 単身赴任から帰って来た旦那様を迎えるのに、これ以上の対応は無いと聞きました。はっ!? 嫌だ、私ったら、最終決戦装備である裸エプロンに着替えるべきでしたか?」

「あ、いや、はい……よせ、アルベド。脱がなくていい、脱がなくていいから」

 

 その場でドレスに手を掛けようとするアルベドを何とか宥め、アインズは本題に入った。

 

「さて、此度のフェアベルゲンの防衛戦は見事だった。プレアデス達の力を借りたとはいえ、亜人族達がここまで戦える様になったのは予想以上の出来だ」

「ええ、無力な彼等を一端の兵へと鍛え上げるとは、コキュートスは上々の働きをしたと言えましょう」

「うむ。ナグモの人型キメラ兵士計画も上手くいっている事を確認できた。二人の働きが私の期待を上回ってくれて、嬉しく思う」

「……おっしゃる通りです」

 

 ん? とアインズは内心で首を傾げた。ナグモの話題を出した途端、アルベドの声が一オクターブ下がった様な気がしたのだ。それまで饒舌だったのにナグモに関しては言葉少なく済ませたのが、まるでナグモの活躍ぶりを認める気が無いかの様にアインズは思えた。

 

(いやいや、そんなまさか……何を考えているんだ、俺は? アルベドとナグモは、セバスとデミウルゴスみたいに制作者が仲が悪いわけじゃないし……)

 

 胸の中で疑念が少し生まれたが、いつもの様に淑女然とした微笑みを見せるアルベドを見ているとそれ以上の追及は出来ず、アインズは気のせいだと疑念を振り払った。

 

「まあ、とにかく……目下の問題は今回、侵略してきたヘルシャー帝国だな」

「アインズ様が手ずから救われた地に、軍を差し向けてきた愚か者共達ですね」

 

 アルベドの顔が不快げに歪んだ。

 

「如何致しましょう? アインズ様の御命令があれば、既にナザリック全軍を差し向けるご用意は出来ておりますが?」

「待て、アルベド。それは早計かもしれん」

 

 え? とアルベドはアインズを見た。

 

「つい先日、私は解放者の生き残りであるミレディ・ライセンと出会った」

「解放者……その者達が生きていたのは数千年前と聞きましたが、まさか生きている者がいたとは……」

「うむ。そのミレディの話では、エヒトルジュエは戦争を激化させる手段として自らの配下を使って、権力者を洗脳して戦争の火種を作っているらしい。現に、ハイリヒ王国の国王は以前とは人が変わった様に教会勢力にのめり込む様になったらしいな?」

「はっ。王国の諜報に携わっているデミウルゴスの見立てでは、何らかの精神操作を受けている可能性が高いと。また教皇は飾りに過ぎず、実権は一人の修道女が握っているそうです。その者からは、人間の気配がしないと申しておりました」

「だからこそ、今回の一件もエヒトルジュエが関わっているのではないかと私は思っている」

 

 ピン、と骨の指を立てながらアインズは言った。

 

「そもそも帝国は何故今になって侵攻を始めたのだ? まだ人間達の敵である魔人族の脅威も去ってないというのに? もしかするとエヒトルジュエが裏から操り、大迷宮があるフェアベルゲンを攻め落とそうと考えていたのではないか?」

「では、アインズ様。そうなると帝国は……」

「うむ。恐らくではあるが、そういう事だろう」

 

 アインズは神妙に頷いた。

 

「ヘルシャー帝国の皇帝……奴はエヒトルジュエの手の者に洗脳されて、今回の侵攻を行った。私はそういう可能性を考えている」




 久方ぶりにアインズ様を書いた気がする……。
 そうね、権力者を洗脳して戦争を始めるのはエヒトルジュエの常套手段だよねー。じゃあ、ちょっと皇帝陛下には操られてないか面を貸して貰おうか?

 要するにね、このSSはアインズ様が無駄に警戒しているせいでトータスがヤバい事になるというお話しなんですよ。恨むなら、雑な方法で戦争を煽っているエヒトルジュエを恨んでくだしぃ。
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