ありふれてないオーバーロードで世界征服   作:sahala

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 あ〜あ、お盆休みが終わっちゃう……やっぱり休み終わりは寂しいなあ。しかし、生きる為には働かなくては。また次の連休まで頑張るぞー!


第八十一話「偉大なる御方 “Lord of Death”」

「陛下、間もなくハルツィナ樹海です」

 

 正面から聞こえてきた声にガハルドはうとうととした微睡みから目を覚ました。一瞬、自分の今いる場所が分からなかったが、皇族が乗る大型馬車(キャリオッジ)の豪華な内装を見て思い出してきた。

 

「ああ、そうだったな……ゆっくり昼寝なんざしたのはいつ以来だか。そこだけは“偉大な御方”とやらに感謝だな」

 

 遡ること一週間前。

 

 魔人族と思しき二人の子供により、皇宮の守備にあたっていた騎士団や兵士達のほとんどが全滅させられた。“偉大な御方"の使者を名乗る二人と交渉する事に成功したガハルドは、「“偉大な御方"は自分に縁のあるフェアベルゲンに軍を差し向けられた事に大層立腹しているから、すぐに謝りに来い」という旨を通達されたのだ。

 相手を一国の皇帝と思っていない一方的な対応に、本来なら「ふざけるな!」と一喝すべきだろう。結局、その“偉大な御方”の名前すら明かして貰っていないのだから、ある意味では非礼なのは先方だという見方も出来る。

 

 しかし、皇宮で振るわれた圧倒的な力を目にした後では流石のガハルドも怒りを顕に出来なかった。何より———ガハルド自身、ここまで強大な力を持った魔人族らしき者達を従えている“偉大な御方”に興味が湧いた。

 

(バイアスはオツムは最悪だが、“決闘の儀”で勝ち抜けた程の猛者だ。それにバイアスだけじゃねえ。フェアベルゲンへの侵攻軍はカーライルやゴードンといった強者揃いだったんだぜ? そして一万の大軍……相手方の大将はどんな奴だったんだ?)

 

 この一週間、ガハルドとて時間を無為にしていたわけではない。謝罪の為の贈答品を用意する時間が欲しいなどと理由をつけて稼いだ時間で捜索隊を編成して、ハルツィナ樹海に帝国軍の生き残りがいないか、あわよくば“偉大な御方”について情報が掴めないか調べてみた。

 

 しかし、結果は芳しくなかった。

 まず帝国軍の生き残りだが、一万人の軍を派遣したにも関わらず、数人しか見つけられなかったのだ。大樹の虚や洞穴の中で小動物の様に隠れ潜んでいた生き残りを引っ張り出し、錯乱した様子の彼等をどうにか治療して話を聞き出したが、ガハルドはその証言に大いに首を捻る結果となった。

 

 曰く、魔法を使えない筈の亜人族が魔法を使ってきた。

 曰く、数人のメイドにいくつもの隊が潰された。

 曰く、亜人族に紛れて伝説の魔物“ヴォーパル・バニー”がいて、バイアスを含めた司令官達を皆殺しにした。

 曰く、その魔物が蟲の魔物を率いて生き残りを喰い殺していた……etcetc。

 

 冗談にしか思えない内容だが、証言した者達は皆一様に同じ事をガタガタと震えながら話したのだ。これを嘘だと断ずるのは早計というものだろう。

 

「しかし、“偉大な御方"ですかな? その正体は“ヴォーパル・バニー"なのでしょうか? あれは子供の躾に使われる御伽噺だと思っていましたが……」

 

 ベスタが半信半疑な様子で言ってきた内容に、ガハルドはハッと笑った。

 

「さて、な。異世界とやらから勇者が召喚されるくらいだ。伝説の魔物が現れてもおかしくないだろうよ」

「では陛下は……今回、不遜にもバイアス皇子を弑し、皇宮にドラゴンで乗り込む様に指示した不届き者が“ヴォーパル・バニー”だったと仰るのですか?」

「そこまでは知らねえよ。仮に“ヴォーパル・バニー”だったとして、魔物が魔人族を従えているってのはおかしな話じゃねえか?」

「確かにそうですな……。ならば、相手は魔王という線も考えられるのでしょうか?」

「そういう可能性もあるな。いずれにせよ、謝罪に来いという事は交渉の余地はあるだろ」

 

 ガハルドを殺す気であったなら、皇宮にドラゴンで乗り込んだ時点でそうしていた筈だ。守備兵達を全滅させた二人組の力があれば、ガハルドの暗殺など容易い話だろう。

 

「お前が頼りだぜ、ベスタ。お前の“鑑定眼”で、“偉大な御方"とやらがどれほどのものか測ってくれや」

 

 ガハルドの側近、ベスタ・メイジャー。

 天職は“鑑定士”であり、彼のスキル“鑑定眼”は相手を見ただけで天職やステータスを視る事が出来た。ステータスプレートの様に細かい数値やスキルの全てまでは分からないが、ベスタはこの眼で相手を見極めて上手く立ち振る舞ってきたからこそ、一兵卒からガハルドの側近にまで昇り詰めたのだ。彼がガハルドに従うのも、“鑑定眼”がガハルドの王の資質を見抜いたからこそだ。

 

「お任せ下さい。我が眼で“偉大な御方”とやらの器を白日の下に晒しましょう。もっとも、陛下以上の王などいないと断言致しますが」

「よせよ、照れるぜ」

 

 おべっかなどではない純粋な賛辞にガハルドは当然、という態度で頷いた。そして、ガハルド一行を乗せた馬車はハルツィナ樹海の入り口に辿り着いた。

 

 ***

 

「ここがハルツィナ樹海か……?」

 

 ガハルドは思わず訝しんだ声を出してしまった。本来なら青々とした木々が目に映る筈なのだが、ガハルドの目の前には焼け野原となった森林しかなかった。

 

「おそらく、戦火で焼かれてしまったのではないでしょうか? 少し勿体ないですな、無傷で手に入れれば材木として使えたでしょうに」

「……フン。これをやったのは何処の馬鹿か、凡その見当はつくけどな」

 

 側近のベスタの言葉にガハルドは鼻を鳴らす。その態度にこれから謝罪に行く、という誠実さは見られない。事実、ガハルドは軍を差し向けた事に対して謝罪しようと思って来たわけではない。

 

(まずは相手がどういう奴か見極める必要がある。皇宮に来た魔人族の魔法……あれが長い時間を置いて一発しか撃てないのか、そうでないのか。それで大分話が変わってくるからな)

 

 通常、魔法は詠唱が長ければ長くなる程に強力になっていく。しかし、そのぶん消費魔力も上がっていく為、トータスにおける対軍クラスの魔法は大人数が集まって魔力を束ねて発動させる。それも撃てるのは一日に一度。下手をすれば、数日に一度という戦略級の魔法もあるくらいだ。

 

(あんな規模の地属性魔法は驚いたが、相手が魔人族ならある意味で納得だ。奴等は人間よりも高い魔力を持ってるという話だからな……だが、魔人族といえども過去の戦争の記録を見る限り、対軍クラスの魔法を短期間で何度も撃てねえ。まだ俺にはトータス征服に乗り出す為に集めた兵力があるんだ。この程度で、このガハルド・D・ヘルシャーがビビると思うなよ)

 

 軍事国家ヘルシャー帝国の皇帝として、そしていずれはトータス全土の征服を果たそうとする野望を抱く者として、ガハルドは簡単に頭を下げる気などない。むしろ“偉大な御方”とやらの器を測る為にここに来たと言っても良い。

 

「陛下」

 

 ベスタの声に目を向けると、ガハルド達に近付いてくるメイド服の女の姿があった。背はスラッと高く、黒髪を夜会巻きにした眼鏡の女性だった。その美しさは皇帝として数々の女性と引見したガハルドでもお目にかかれない程だった。

 

「お待ちしておりました。ガハルド・D・ヘルシャー陛下。私は皆様を歓迎する様に任せられましたユリ・アルファと申します。短い間ですが、よろしくお願い致します」

 

 恐らく自分の皇宮に仕えているメイド達よりも遥かに洗練された立ち振る舞いに、ガハルドはしばし呆けた様に見惚れていたが、しばらくしてようやく意識が帰った。動揺を悟られない様に不遜な笑みを浮かべた。

 

「ああ、ご丁寧にありがとうな。あんたみたいな別嬪をつけてくれた“偉大な御方”に感謝するぜ」

「ありがとうございます」

 

 ガハルドからの賛辞にユリは丁寧に頭を下げるだけに留まった。ガハルドは帝国において武力で皇帝の座に就いただけの事はあり、かなりの偉丈夫だ。今まで自分に声を掛けられた女性は自分に対して興味を惹こうとしてきたが、ユリと名乗るメイドは真面目な雰囲気を一切崩さなかった。

 

(これでも女には自信があったが……だが、いいな。簡単に媚びない所が気に入ったぜ。それにあの歩き方……正中線に全くブレが無え。何か武術でもやってるのか?)

 

 先程からユリを見ているが、彼女の立ち振る舞いには一切の隙が無いのだ。

 

「ば、馬鹿な……!」

 

 唐突にベスタが声を上げた。その顔は信じられない物を見る様な目でユリを見ていた。

 

「いかが致しましたでしょうか?」

「い、いえ、何も……失礼致しました!」

 

 ベスタが頭を下げると、ユリはそれ以上追求せずに澄ました顔をするだけだった。ガハルドはこっそりとベスタに話し掛ける。

 

「おい、ベスタ。お前の“眼”で見て、あのメイドはどうだった?」

「そ、それが………」

 

 ベスタは非常に言いにくそうな表情になりながらも、意を決した様にそれを口にした。

 

「お、恐れ多くながらも……あのメイドは帝国のどの騎士達よりも、さらには陛下よりも強いかと……」

「……ほう?」

「で、ですが陛下! 私の“鑑定眼"も決して万能というわけでなく! 単純な魔力の多さだけしか視えていないので実際に戦えば陛下の方がお強いという事も……!」

「よせよせ、俺はお前の“眼”を買って側近にしたんだぜ? お前が俺より強い、と思ったならその通りだろうよ」

 

 自分の主君がメイドより弱い、と鑑定する事に躊躇っているベスタだが、ガハルドはむしろ興味が湧いた様にニヤリと笑った。

 

(そういや生き残りの兵達の話じゃ、とんでもなく強いメイドがいるという話があったが、あれがそうか? 美人で腕っ節も強く、皇帝という権威の前でも簡単に媚びねえときた……良い女じゃねえか)

 

 どうにか交渉して自分の部下兼愛人に出来ないか、とガハルドは野心を抱く。その胸中を知ってか知らずか、ユリは真面目な表情を全く崩さずにガハルド一行に応対した。

 

「それではこれより、皆様を私の主人の住まいまでご案内致します。どうぞこちらへ」

「どうぞ、と言うが……見た所、樹海の中は馬車が通れる様には見えんぞ? まさか、ここから我等に歩けと言うのではないな?」

 

 ガハルドの護衛として同行している騎士の一人が不満げな声をあげる。ハルツィナ樹海は起伏が激しく、また視認できる範囲では焼けて倒木している樹もある事からどう見ても馬車が通れる道は無い。ベスタの様にユリが自分達より強い、という事実を見抜けない騎士達は相手が女性という事から、横柄な態度でユリに迫っていた。

 しかしユリは、そんな騎士達の態度を意にも介さない様に頷いた。

 

「ええ、存じ上げています。ですから———皆様には私の主人の住まいまで、直接行ける様に御手配致しました」

 

 は? とガハルド達が言うより先に、樹海へと続く道の先に突然木枠が現れた。人が余裕で潜れるサイズで、縁は一流の名画を収める額縁の様に見事な装飾が施されている。そして木枠の中は、空間が歪んでいるかの様に黒々とした闇が渦巻いていた。

 

「な、何だ!?」「アーティファクトか!?」

「ではどうぞ、お通り下さい」

 

 初めて見る魔法道具に騎士達が騒然とする。だが、それすらも些事であるかの様にユリは木枠の門を手で示した。まるでこの程度の事など、自分の仕える相手にとっては驚く程でもないという態度だ。

 

「……行くぞ」

「陛下……」

 

 ガハルドは未だに騒いでいる騎士達を一睨みして黙らせると、木枠へと歩き出す。それをやや遅れながら、ベスタや騎士達が続く。

 

(……ビビるな。恐らくは転移魔法に関するアーティファクトだ。相手はそれをどこかで手に入れてるだけだ。そうに違いねえ)

 

 自分に言い聞かせ、虚勢を見抜かれない様に胸を張ってガハルドは木枠の転移門をくぐり抜けた。

 

 そして———くぐり抜けた先の光景に目を奪われた。

 

 そこはまさに別天地だった。天井は見上げる程に高く、床に敷かれた絨毯は足が沈む錯覚がするくらいフカフカと柔らかい。壁側にある調度品は恐らく帝国全ての職人達が集まっても作れないであろう程に精巧で繊細な造りであり、それがいくつも並んでいた。しかも成金趣味の様な嫌らしさは一切感じず、帝国の建築家達では到底及ばない芸術性を感じさせる。

 これこそ、まさしく———至高の存在が住まう宮殿。

 

「さあ、どうぞこちらへ。私の主人が皆様を首を長くしてお待ちしております」

 

 最後に転移門から入ってきたユリは再びガハルド達の前に出て、先導する。

 

「へ、陛下……」

「落ち着け……ビビるんじゃねえ。戦と同じだ。ビビった態度を見せた方が負けだ」

 

 予想外の光景に萎縮する部下達に発破を入れる様に、ガハルドは強い言葉を使う。だが、その声は動揺で微かに震えていた。

 惜しみない財力で建築されたであろう目の前の光景に、今更ながらガハルド達は自覚したのだ。

 自分達は———形容しようが無い程に、とんでもない相手に無礼を働いたのではないか?

 

(落ち着け……落ち着くんだ。ビビるんじゃねえ、財力は確かに凄いかもしれねえが、それだけだ)

 

 カラカラと乾き出す口の中を潤す様に唾を飲み込む。それだけなのに、何故か音が大きく響いた気がした。

 

(俺には……俺にはまだ、トータス全土の征服の為に長年集めた兵力がいる! 兵力は俺の方が上の筈だ……!)

 

 ユリの先導の下、ガハルド達は半球状の大きなドーム状の部屋に辿り着く。精巧に作られた天使と悪魔の彫像が施された巨大な扉が、ガハルドには死後、エヒト神が善悪の魂を選別し、悪しき魂は深い奈落へ突き落とす為に存在するという「審判の門」に見えた。

 ユリが手を触れる事なく、扉がゆっくりと開かれる。

 扉の先は、七色の宝石で作られたシャンデリアがいくつも天井から吊るされた広い部屋だった。扉から真っ直ぐに真紅の絨毯が敷かれ――その両脇には、いくつもの存在がいた。

 悪魔らしき物がいた。巨大なドラゴンがいた。二足歩行をした人型の昆虫らしき物がいた。その他にも、戦場で多くの魔物を狩ってきたガハルドが見た事も無い様な異形の存在がいた。それら全てが普通の魔物とは違い、明らかに知性を感じさせる瞳で広間に入って来たガハルド達を無言で睨んでいた。

 大小様々な魔物達の前には広間の警備兵の様に、鏡の様に磨き上げられた金色の鎧を着た鎧騎士達がいた。だが、その顔は明らかに生者とは違う。

 

「あ……あり得ない……」

 

 不意にガハルドの後ろからカチカチという音と共に、掠れた声が聞こえた。振り向くと側近として重宝している“鑑定士”の男が、歯の根も噛み合わぬまま目の前の現実を否定したいかの様に真っ青な顔でうわ言の様に呟いていた。

 

「あ、あれは……あの鎧騎士達は、トラウム・ソルジャーなのか……? い、いや、あり得ない……あんな、あんなアーティファクト級の装備で全身を固めたトラウム・ソルジャーなんて……それも、何体もいるなんて、そんなの有り得ない………!」

「………なあ、おい。こいつら一匹一匹の強さは、どんなものなんだ?」

 

 聞きたくない。聞かせないでくれ。

 反射的にそう思ってしまったが、ガハルドの中で恐怖からくる好奇心が勝った。手や背中が汗まみれで気持ち悪い。

 ベスタはガハルドの問い掛けに、無理やり引き攣った様な笑顔を浮かべた。

 

「………我等が全員で掛かって……陛下の御寿命が少し延びる程度です」

 

 ……もはや、言葉すらも無かった。それでもガハルドは異形の存在がひしめく広間の中へ足を踏み入れる。本音を言うと今すぐに逃げ出したかったが、帝国の皇帝としての意地がガハルドの中の恐怖をどうにか抑え込んだ。

 

(お……俺には、トータス全土を征服する為に集めてきた兵達が………)

 

 カタカタと背後の騎士達が鎧を鳴らす音がうるさい。それ以上に、自分の心臓の音が耳に大きく響いた。

 

(お、俺は………俺は、トータス全土を統べる為に、“英雄”の天職を持って生まれて……弱肉強食が当たり前の帝国で、実力で皇帝の座を勝ち取って………!)

 

 広間の奥。

 階段となっている場所には、頂上から一段下がった場所に数人の姿があった。

 銀髪の美少女。青白い昆虫の様な直立した異形。蛙とも人とも似つかない仕立ての良い服を来た化け物。皇宮に攻めて来たであろう魔人族の耳を覗かせる仮面を被った二人組。帝国では絶対に作れなさそうな技術力を思わせる造りをした真紅の鎧騎士。執事服を来た大柄な老紳士。

 それらの人影を見た途端、ガハルドは自分の拠り所を探そうとするかの様に脳内で走馬灯が浮かんでいた。

 

 そして、階段の頂上。今いる大広間———玉座の間の最奥。

 

 水晶で出来た巨大な玉座の横に、羽を生やした濡羽色の美女がいた。

 そして玉座には———死の具現がいた。

 七匹の蛇が絡み合った様な異様な杖を持ち、皇帝であるガハルドですら生涯見た事も無い様な豪奢な漆黒のローブ。人間の頭に当たる部分には骸骨の頭部が覗き、流れ出た血の様に赤い光が空虚な眼窩から瞳の様に光っていた。

 ガハルド達はハァハァ、と息切れを起こしたかの様に震えながら死の具現へと近付く。玉座へと歩を進めるガハルド達を見て何を感じたのか、骸骨の化け物から黒いオーラが立ち上がった様にガハルドは感じ取った。

 

(あ………あ、ああ…………!!)

 

 ガタガタとした震えをもはや抑えきれなかった。黒いオーラに当てられた瞬間、ガハルドの目にははっきりと見えた。

 何千、何万という大軍を目の前の化け物に差し向け———そのまま全てが屍の山へと変わる。

 戦場を駆け抜け、戦士としても高い実力を持つガハルドだからこそ、目の前の化け物と自分との超えようのない力量(レベル)差というものをはっきりと感じ取る事が出来た。

 

 ガシャン、と金属質な音が響く。それも一つだけでなく、ガハルドの背後から次々と響いた。

 何の音か———振り返らずとも分かった。そして、それをガハルドは責める気にもなれなかった。ベスタの様に“鑑定眼"を持っていない者でも、目の前の死の具現の恐ろしさが一目見ただけで理解できたのだろう。戦う前から膝を屈してしまった部下達に代わり、せめて自分だけはみっともない姿を見せてたまるか、とガハルドはなけなしの虚勢を振り絞った。

 

「へ……ヘルシャー帝国皇帝……ガハルド・D・ヘルシャーだ……」

 

 戦場でいつもの様に堂々と名乗り上げた時とは程遠い、小さな声がガハルドの喉から絞り出された。

 死の具現はゆっくりと頷き、玉座の上からガハルドを睥睨する。

 

「遠路遥々ようこそ、ヘルシャー帝国皇帝よ。私の名はアインズ・ウール・ゴウン。この地の支配者として君臨する者だ」

 

 ポキン。

 ガハルドの中で、今まで土台にしてきた物がへし折れる音が響いた気がした。




>今回のナグモ

 もち、他の階層守護達と一緒に段上にいます。ただし、元・神の使徒として顔バレしてる可能性を考慮して、じゅーるの機械鎧を着て変装してます。

>ガハルド

 何かとオーバーロード原作の皇帝ジルクニフと比較されますが、彼との能力差はこんな感じ。

賢さ:ジルクニフ>ガハルド
武力:ガハルド>ジルクニフ

 ガハルドは性格的な事もあって、ジルクニフの様に色々と考えを巡らせるより戦場で培った戦士としての直感などで判断します。そして戦士の直感が、アインズの事を「絶対に勝てないから歯向かうな!」と判断しました。なのでジルクニフより早く心が折れちゃいました……気の毒に。

>今回のアインズ様

アインズ(うわぁ……ついに来ちゃったよ、帝国の皇帝。どうしよ、そんな偉い人との会談なんてやった事ないのに……。あ、そうだ! こっちもなんか偉そうに見える様に、オーラを纏ってみるか! 凄い人はオーラが見えるって言うしな!)

 絶望のオーラ:レベルI発動。
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