きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
テーマは『もしも木月桂一に第2部5章までの記憶があったら』であります。それでは、どうぞ。
「天ッ才・魔法工学者のローリエ・ベルベットの住むエトワリアで謎のテロ組織・リアリストが人々の平穏を乱していた。そこに現れたのは正義のヒーロー・仮面○イダー―――」
「自分で天才とかヒーローとかめちゃイタいんよ、ただの変な記憶持ちの男やろ?」
「うるっさいよ…そう言うコイツは腹ペコ強盗殺人犯のスイセン」
「ウチは強盗も殺人もしてない!」
「そう言ってわんわん泣きつくもんだから、心優しーい俺はなんと彼女を商会の仲間にしてしまったのだった!どうなる第X話!」
「ウチは泣いてない!!」
「ツッコミが遅いよ…」
IF話:エトワリアの新風
エトワリア・神殿から離れた、荒れ果てたスラム街にて。
一人の少年が、行き倒れた少女を見つめていた。
「大丈夫か?」
「おなか…………すいた…………」
少年は黄緑の髪に汚れが目立たぬ黒のコートを羽織っていて、オレンジと金色のオッドアイで少女を見下ろしていた。
少女の方は、男と同じ黄緑の髪を伸ばしっぱなしにして砂だらけの地面に横たわっていた。目に光はなく、うわ言のように食べ物を求めていた。
「立てるか?」
「むり……」
「そっか」
少女が立てないほどに衰弱していると知るやいなや、少年は彼女を抱えあげ、背中に背負う。
「なに、を……」
「飯のある所に連れて行く」
「!!!」
最初は急に体を触られた事に掠れた声を上げるも、少年が恵んでくれると知ると黙って背負われるようになった。
―――これが、ローリエとスイセンの出会いである。
◇◆◇◆◇
「コラァァァスイセン!!また俺のおやつ盗み食いやがったな!」
「へっへーん。ローリエが隠しているのが悪いんだし!」
「今日という今日は許さねぇぞこの野郎!!」
……なんて、奇妙な出会いがあってから5年後。
俺とスイセンは何をしているかというと、ベルベット・パートナーズの本社で追いかけっこを展開していた。
理由は無論、このお腹ペコペコペコリーヌな
「こんの……せいっ!」
「はっ!」
「甘いな!」
俺の追跡から逃れようとするスイセン。だが、三手甘い!
逃げる先を予測して、キャッチだ!
「「あ」」
……しかし、そこで声が被る。
確かに、俺はスイセンを捕まえる事に成功した。
ただし……具体的に言うと、その豊満なボインちゃんを、だが。
さっきまで笑顔で騒いで逃げていたスイセンが静かになる。……………よし。
「こんな時じゃないと触れん。揉んでおこう」
「ダメに決まってるっしょ!? オリーブさーん!またローリエにおっぱい揉まれたー!!」
「ちょ!!? ここで母さんを呼ぶな!この卑怯者!!」
母さんは俺や父さんのハーレム願望に厳しいだけじゃない。セクハラにも厳しいんだぞ!
この状況でそんな悲鳴をあげようものなら………!!
「コラァァァァァァァローリエ!!! またスイセンちゃんにセクハラしたの!!?」
「うわあああああああああああ違う誤解だァァァァ!!!?」
「問答無用!!!」
般若もかくやという勢いで母さんが現れた。
誤解だっつっても聞き入れてくれない!捕まったら裁かれる!サバのように…!!
「待てェェェェ!!」
「ギャアアアアア来るなァァァァァァ!!」
すぐさま母さんから逃走する俺。だが……ただでやられてなるものか!
「待てェェェェスイセン!」
「うわあああああああ来るなァァァァァァ!
オリーブさん! 早くローリエ捕まえて!!」
「待てェェェェ!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」
ただの追いかけっこだったはずが、俺がスイセンを追い、母さんが俺を追う二重追っかけっこに発展した。
……さて、諸君には違和感を抱いている人も多いのではないだろうか。
『何故リアリストであるはずのスイセンが、俺とよろしくやっていたのだろうか』……そう思う人もいることだろう。その理由だが、詳しく話せば長くなる。
前世で『きららファンタジア』の二部をプレイした感想だが……俺はどうしても、リアリストの構成員の少女たちが
例えば、ヒナゲシは「家族にさえも見捨てられた経験から再び捨てられる事を極端に恐れている」ことがバレバレだし、リコリスもリコリスであの攻撃性は「理不尽な理由でイジメられた過去の裏返し」にも見える。そして……そのゲーム内で
だから俺は、父さんと母さんに打診して貧困地域の救済に融通を利かすようにお願いした。リアリストだったあの少女たちがこの世界に絶望して、ハイプリスに目をつけられリアリストに与する前に俺の元へ引き抜けば、もしかしたら更生できるかもしれないと思ったからだ。
最初は2人とも怪訝な顔をしていたが、幸い俺は前世の記憶があり、説得の仕方も覚えていた。
自分にできる事は何でもやったし、父さん母さんは勿論、ベルベットパートナーズの一員になって、組織の力も借りた。経済的な格差をなくすために、前世で有効だった策は躊躇わずやった。
だが世界が広かったのか、手が届かなかったのか、それとも他の要因があったからのか………俺は、スイセンしか見つける事ができなかった。
スイセンを見つけられただけ僥倖なのかもしれないが……15年探して結果一人だけとは流石にないと思った。
人助けに奔走していた俺はある日とある街で『オーダー』が使われたと聞いて、壁を殴ったものだ。
間に合わなかった。スイセン以外の全員が、ハイプリスの魔の手に堕ちてしまった。ソラちゃんが呪われ、アルシーヴちゃんの苦しい日々が始まってしまった、と。
ひとしきり悔しさを噛みしめた俺は、きららちゃん達に接触して、仲間として色々援助をした。彼女たちの旅をサポートして、できるだけ早く確実にソラちゃんを呪いから開放するためだ。
『あの、ローリエさん。どうして、そこまで神殿の事情を知っているんですか?』
『色々教えてくれるのはありがたいですけど……』
『あー……贔屓にしている情報屋があるんだ。』
『情報屋、ですか?』
『芳○社っていう組織なんだけどね』
知る人が聞けば危ない橋を渡りながら、俺はきららちゃんに情報を渡し。
『初めて見る鎧だね、ソルト』
『そうですね、シュガー……貴方は、一体……!?』
『ビルド。それが俺の名だ!
…みんな!ここは俺に任せて先に行け!』
『ローリ…いえ、ビルドさん……ありがとうございます!』
時にはきららちゃんのコールを参考に派生させた
最終的に、ソラちゃんの呪いを解くことに成功した。封印を解除されたソラちゃんに直接会って、色んな話もした。
『ローリエさん、でしたね。貴方の話はとても興味深いわ。貧困地域の人々の救済から始まって、きらら達を陰から支援し続けたのね』
『えぇ。しかし、知恵を回し、組織で動いても救えたのはごくわずかでしかありません。例えば…今同席している、私の用心棒とか』
『ども~ソラ様……痛ったい!!?』
『軽すぎるわこの馬鹿。高級茶菓子しか目に入ってねーのか?』
『ローリエだって、ソラ様のおっぱいガン見してたクセに!』
『見てないわ!なんて恐ろしい言いがかりをすんだコラ!!』
『『『…………』』』
……スイセンが余計なマネをしたせいで、ソラちゃんもきららちゃんも胸元のガードを固めてしまったが……まぁ、命あっての物種だ。まぁいい結果にはなったんじゃあなかろうか?
◇◆◇◆◇
ソラ様の前でローリエに引っぱたかれた頭がまだわずかに痛む。
お茶会を途中退席したウチは、神殿の庭園を特に理由もなく眺めていた。
庭師か誰かが整えたらしきそこは、そこでテーブルを持ち出しておやつをいくらでも食べられるくらいには、良い景色だった。
「スイセンさん!」
「あら…ランプちゃんだったっけ。どったの? ウチみたいに抜けてきた?」
「いえ、それが…『難しい話をするから』ってソラ様に外に出るよう言われまして…」
「大丈夫かな? ソラ様、襲われないよね?」
「だ、大丈夫ですよ! きららさんとアルシーヴ先生もいますし」
神殿を出て、召喚士・きららを見つけるきっかけになった女の子のランプが、庭園に現れた。
お茶会に残ったソラ様がローリエに襲われる(意味深)心配がないと知って、ちょっと安心して息が漏れた。
「あの、スイセンさん」
「ん?」
「ローリエさんが救った用心棒っていうのは…」
「ウチのことよ」
「やっぱり……あの、詳しく聞いてもいいですか? ローリエさんとスイセンさんってどうして一緒にいるのか、とか」
「聞いても面白くないことやけど……良いよ」
どうせしばらくローリエとソラ様の話は長引きそうだし、ウチの昔話を女神候補生だっていうこの子にしてあげることにした。もしかしたら、この世界が良くなるかもしれないから。
「ウチはね……元々、ここよりもずーっと貧しい場所で生まれたんよ。聖典を読むどころか、その日の食べ物にも苦労する……そんなトコでずっと暮らしてた」
「そんな……」
「パパとママが病気で死んじゃってからは、食べ物を得る為になんでもやったよ。盗み、強盗、詐欺……流石に誰か殺したりはしてないけど…それでも、辛かった。
でも、そういう事も失敗続きで、もう立てないくらいにお腹が減ってた時期があった。……その時に、ウチを拾ったのがローリエなんよ」
「そうだったんですね…」
「その後目が覚めた時には綺麗なベッドで寝かされてて、傍にパンとスープがあってさ。
お腹が空いてたから急いで食べたらね………あは、泣いちゃった」
あの時を思い出すと、笑みが零れる。
生まれてこのかた、奪ったものしか食べてこなかったウチが、初めて
今でもありありと思い出せる。パンを齧ってスープを口に流す度に自分の中の何かが満たされて、温かくなっていく感覚を。オリーブさんは『それは愛よ』と言っていた。
『人はご飯を食べる時、愛を心で補充してるのよ。それは誰かから与えられたり、自分の正当な働きで当たり前のように得られるものだけど……誰かから奪ったご飯じゃあ絶対に愛をみたせないからね』
そんな言葉を反芻しながら、ランプに当時の状況を教えた。
「『ご飯と一緒に愛も得る』ですか……素晴らしい人ですね、そのオリーブさんって」
「そんなオリーブさんから何であんな子供が生まれたんやろねぇ」
「? あんな子供?」
「ローリエのこと」
「!!!!?」
あっはっは、面白い顔になっとる。
確かにローリエは隙あればウチのおっぱい触るし、美人を見かければナンパもする最低な男やけど、あれでも一応良いトコロあるんよ?
「それからしばらくしてね、ウチ、ローリエに尋ねたんよ。
『どうしてあの時ウチを拾ったの?』って。なんて答えたと思う?」
「さぁ…」
「『助けを求めてた人が救われるのを見ると嬉しくなるから』って言ったんだ」
「へぇ…!」
オリーブさんのパンとスープと同じくらい、当たり前の事を言うみたいなローリエの言葉でも、ウチは救われた気がする。
もし……飢えていたあの時にローリエに拾われず、オリーブさんのご飯を食べなかったならば……ウチはあのまま飢え死にしていたか―――ご飯を食べられる人を一生、恨み続けていたかもしれないから。
それを…ローリエは、オリーブさんは、ベルベットパートナーズの皆は、救い上げてくれたんだ。
『助けを求めてた奴がな、救われたって顔をしてんのを見るとな。そいつの力になれたんだって思って、嬉しくなって……くしゃってなるんだよ。俺の顔。………鏡がないと見れないけどな』
そう言ったローリエの表情が脳裏に蘇る。
ローリエは確かにそう答えた時、くしゃっとした笑顔を向けていた。
ウチは、それからというもの、ローリエやベルベットパートナーズの力になれないかなって模索し始めた。その時にオリーブさんから戦いの仕方を習って、用心棒と言われるまでに強くなった。………元々、悪い事は大方やったしね。腕っぷしには自信があったんだ。
「スイセンさん…ローリエさんの事、好きなんですね」
「あはは、そんな…好きとちゃうよ? 確かに返しきれん恩はあるけど……あの人基本スケベだし」
「そうなんですか? スイセンさん……ローリエさんのお話をしてる時、すごく優しい顔をしてましたけど」
「!」
ランプに言われ、咄嗟に頬に触る。
そして、無意識で出たその行動にはっとした。
「…ほんとに?」
「はい」
それを誤魔化すように、ランプに確認をとった。
でも……詐欺とか結構やったはずのウチは、今回ばっかりは上手く誤魔化せた自信が無い。
◇◆◇◆◇
ソラちゃんとの対談の結果、ベルベットパートナーズと神殿は協力関係を結ぶことに成功した。しかし、俺のナンパは全くと言っていいほどうまく行かなかった。
だって、セサミやジンジャーやハッカちゃんといい感じになった途端に、スイセンに銃を突きつけられるんだぜ?しかも後頭部に。流石に諦めるしかない。
彼女曰く、『ローリエが神殿におったらソラ様達がみんな妊婦になってしまう』とのこと。文句を言いたかったが、ハーレムものが大好きだったため何も言えなかった。
まぁそんなこともあった後で、俺達はリアリストの活動を阻止するために手を回した。
神殿とパイプ繋いだのも、ハイプリスの痕跡があるかもしれないからだ。2部5章最後のセリフから、アイツは999%元神殿関係者と思われるしな。まぁ、用心深い奴が証拠を残すヘマをするとは思いづらいが……
他にも、色々布石を打った。
遺跡の街や写本の街、芸術の都や水路の街に警備システムや防犯アイテムを売り込む事を筆頭に(特にスクライブには防犯アイテムを超売った)、不穏分子の情報収集。それに、新魔法『レント』の実証実験などなど。
それが功を奏して。
写本の街でヒナゲシを。芸術の都でリコリスを。水路の街でスズランを。それぞれ、捕らえることに成功した。
いやぁ、スズランは強敵だった。『レント』で仮面ライダードライブの力を再現した俺が足止めをした所を、きららちゃん・カルダモン・スイセンのジェットストリームアタックで倒したからな。アイツの戦術眼は大したもんだ。不利と悟ると逃げようとするからな。タイプフォーミュラじゃないと足止め出来ないって、実力ぶっちぎり過ぎだろ。
他に美食の街での戦いは、ヒヤヒヤしたもんだ。
スイセンがこっち陣営になった関係で、4章にちょろっと出てきたエニシダが先行して登場した。自信家なだけあってスズランに迫る戦闘力を持っていて、相対した時はまだこんな切り札隠し持ってたのかと思った。最終的にココア達も救えてエニシダ達の情報を持ち帰る事ができたから良かったものの…だ。
ちなみにそのエニシダだが、次に見つけた時に罠を張ったら、面白いくらいに引っかかって、冗談みたいに簡単に逮捕できた事を明記しておく。「王はその慢心ゆえに毒杯をあおる」という言葉があるが、まさか本当に麻痺毒入りのワインを飲むとは思わなんだ。
まぁそんな感じで『真実の手』を自称するテロリスト達を次々と逮捕していく中、リアリストの本拠地が分かり、総攻撃を仕掛けることとなった。
だが奴らも、最後の抵抗と言わんばかりに苛烈な反撃をしだした。ウツカイを大放出し、モブ男共に自爆特攻をさせる狂乱っぷりだ。
しかし、俺らも負けるわけにはいかなかった。
今まで捕えたリアリストは、俺が間に合わなかった証であり、数えるべき罪だ。それらを背負って進む道は、何者であろうと止めることは不可能だ。
―――そして。
「足止めのつもりですか、ローリエにスイセン。
…正直、私は理解できない。何故首を突っ込むのか。商人は商人らしく商売だけしていればいいものを。」
俺達は、サンストーンと相対する。
きららちゃん達は、ハイプリスの元へ向かわせた。彼女達ならば、ヤツの野望を止められるだろう。
「…足止めかどうか試してみる?」
「貴様ら程度で私を止められるとでも?
即座に終わらせて、私はハイプリス様の元へ向かう。邪魔はさせない」
サンストーンはため息をついて首を振る。そして剣を構える。
だが、コイツは勘違いをしている。
「この期に及んでまだ分からないのか、サンストーン?」
「…なに?」
「俺はお前を倒しに来たんだよ。そしてそれは…実に容易い」
「侮られたものだな」
「事実だ。10対1の勝負が分かりきっているように…100対1の勝負が話にならないように…お前と俺達では決定的な差がある。」
「愚かな…強固な個の前では…何人束になろうが無駄だ!」
「お前もおんなじコトを言うんだな………今まで捕まったヤツらと」
ヒナゲシも、リコリスも、スズランもエニシダも。
皆、絆の力を……そして、それを記した聖典を唾棄して、破壊しようとした。だが、そういう奴らは例外なく絆の力に敗れ去った。
「凶行に及んだ理由も、どいつもこいつもくだらなかったよ。やれ見捨てられたくないだの、やれ金だの、やれ地位名誉だの………そんなもの、人の力の前では些細なモンだ」
「貴様に…何が分かる!」
「分かるよ。俺は……貧困地域に住む人々を救おうとしていたから」
「!!?」
サンストーンの瞳が揺れる。俺は、続けて言葉を重ねた。
「何とかしたいと手を伸ばした。でも、届かなかった事は山ほどある。
掴んで救えたと思ったヤツが、直後に爆撃で塵になった事もあった。手しか残ってなかったヤツもいた。助かったと笑った直後に力尽きたヤツもいた。でも、誰かと力を合わせれば救えたこともあった。ひとりじゃあ絶対に救えなかった人を救えた。
……だから断言する。俺は確かに天才だが……誰かに助けてもらわないと、生きていけない自信がある」
「そんな貴様に……何ができるッッ!!!」
「お前に勝てる」
天才的で不敵でふてぶてしい笑みをこれでもかと浮かべる。
そして、取り出した機械を、腰に添えた。
これは、俺がベルベットパートナーズの社員たちや、コリアンダー氏を中心とした神殿の研究員、アルシーヴちゃんや七賢者達の力添えを持って作り出した、努力と絆の結晶。
かつての世界で俺が見ていた、あるヒーローのアイテムを元にして完全再現したものだ。俺がしょっちゅう『レント』でお世話になっているヒーローの仲間の
全員の願いと技術が集った、力の象徴。その名も―――
【ツーサイドライバー!!】
「!!? 新たなベルト……だと…」
新しいベルトに動揺し、警戒レベルを引き上げるサンストーンをよそに、俺は自作のバイスタンプを起動した。
【ドラゴン!】
そして、それをドライバーのオーインジェクターに押印し、バイスタンプをドライバーのスロットに装填する。
【Confirmed!!】
メタル調の待機音が鳴り響く中、俺はあの言葉と共に、ツーサイドライバーのトリガーを引きながら、ベルトからドライバーを引き抜いた。
「―――変身!」
【バーサスアップ!】
瞬間、変身が開始された。
自分の身体を巨大なスタンプが覆い、その中に真っ赤な液体が満ちる。それは、竜が口から吐き出し、万物を焼き尽くす炎を彷彿とさせるだろう。それが凝縮されたかと思うと、メタリックレッドとゴールドの鎧に変化した。
【Dread On!】
【Blood Born!】
【Heavy Gone!】
【ドラゴン!】
そして、高笑いと共に変わった姿が明らかになる。
俺の姿は、オリジナルのドライバーで変身するエビルの面影を残しているが……基本的には全く別の姿になった。その名は「仮面ライダーゲヘナ」。
この年で変身なんてと思うが、全身強化魔法をかけ続けるよりも何倍も合理的だった。ライダーになったのはぶっちゃけノリだ。
だが……この姿に込められた技術は、想いは、本物だ。
「こけおどしだ!」
現に、今斬りかかってきたサンストーンの刃を、ゲヘナの鎧は全く通さない。ちょっと火花が出ただけで終わりになるくらいだ。
不意打ちのお礼に、俺はツーサイドライバーを引き抜いて変形した剣―――ゲヘナソードに装填してある、ドラゴンのバイスタンプを押した。
【必殺承認!】
【ドラゴン! ダークネスフィニッシュ!!】
「デヤアアアアアアッ!!!」
「―――ッ!?!?!?」
エネルギー波を纏った斬撃で、サンストーンを斬り上げる。
かろうじて武器で防いだようだが……強化された動体視力は見逃さなかった。今の一撃で弾かれたサンストーンの剣に、小さくないヒビが走ったことを。
「……で? どっちがこけおどしだって?」
「……………っ!!!」
「行くぞスイセン。この戦いを終わらせよう」
「オッケーっ! きららちゃんの妹で
「―――ッ!!! 黙れぇっ!!」
俺の頼れる用心棒に一声かける。
陽気な返事が返ってきたのを確認してから、俺達ふたりは目の前の激高するサンストーンに立ち向かっていった。
◇◆◇◆◇
…分かり切った結末を書く必要はない。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
『もしも木月桂一に第2部途中までの記憶があったら』をコンセプトにした、パラレルワールドな拙作主人公。この世界線ではローリエは、幼少期ではアルシーヴやソラと交友を深めるよりも先に『リアリストの構成員をハイプリスに拾われる前に救う』事を優先している。そのため神殿の賢者ではなくベルベットパートナーズの幹部として成長した。その過程できららと接触して「レント」を開発した他、ツーサイドライバーとバイスタンプを独自開発してライダーシステムを生み出した。
スイセン
本来だったら『飢えているところを神殿も聖典も助けてくれなかった』ことで聖典を憎みリアリストに組する事になった少女だったが、ハイプリスより先にローリエに拾われた事で運命が変わった。ベルベットパートナーズの用心棒として所属しており、性格も原典よりも超マトモになっている。ローリエやガリック、オリーブの優しさに触れ、渇き飢えた心が満たされた故の性格改変である。
何故彼女にしたかと言うと、身も蓋もない言い方をすれば「真っ先に救済ルートが思い浮かんだから」である。彼女の運命の転換点は『極限の飢餓』。そこで原作ではそこで通りすがりか何かが聖典を見せたから悪意に目覚めたのだろうか。それは「お腹が減って死にそうだ!助けて!」と言う人に対して「ご飯を食べればいいんですよ!」と言うだけ言って去っていくというレベルの暴挙でしかないのではないか。彼女に必要だったのは聖典ではなく「愛がこもった食事」だったのだと思われる。このIFルートではオリーブがそれを見事に提供した結果、善性のある人間に育った。
きらら&ランプ&マッチ
原作主人公トリオ。この世界線では、ローリエは『掴みどころがないけど的確なアドバイスをくれるお助けお兄さん』として頼られている。ベルベットパートナーズも同様。また、スイセンとの信頼関係を良好に築けている。
アルシーヴ&ソラ
女神&筆頭神官。この世界線では、ローリエとの付き合いがほぼなかったため、接し方がよそよそしい。ローリエのことは噂で慈善事業をする徳の高い人だと思っていたが、直接会ってナンパを実感したため、残念さを感じている。
リアリスト達
メンバーが一人減った。また、ローリエを始めとしたベルベットパートナーズの暗躍の甲斐あって、計画の初段階から大きく躓き、メンバーを失っていって大義を果たすことなくブッ潰れた。ヒナゲシが捕まったことでリコリスが暴走、そこから芋づる式にずるずるみんな捕まったというあっけない最後であった。
本編で言及されなかったメンバーはというとだが、
ロベリア→最後まで軍師として抗ったが数の暴力には敵わず御用
ダチュラ→七賢者全員と戦うという無理ゲーの果てに御用
サンストーン→この後ローリエとスイセンに敗れ御用
ハイプリス→きらら達との激戦の末に敗北を喫する
……といった感じをいちおう考えていた。
アリサ・ジャグランテ&ドリアーテ一味
霊圧が消えた。
レント
ローリエが開発した、『記憶にある物語の登場人物の特殊能力を再現する』魔法。この世界線ではきららと早めに接触できたことでオリジナルよりも早くこの魔法を完成させており、その魔法を使っている。ローリエは前世の「仮面ライダードライブ」を知っていたため、この魔法で変身を再現した。ただし、この方法で変身すると変身時間に制限が出来るという弱点兼裏設定もある。
ツーサイドライバー&ドラゴンバイスタンプ
この世界線のローリエが完成させた、レジェンドの力を「借りる」ことなく変身するためのドライバー。いちおう最新作の「仮面ライダーリバイス」をパク……リスペクトしていて、原典同様二種類の変身が出来る。
仮面ライダーゲヘナ/仮面ライダー??????
ローリエがツーサイドライバーでドラゴンバイスタンプを使う事で変身するライダー。
ちなみにゲヘナとはキリスト教において罪人の永遠の滅びの場所…つまり地獄を指す言葉である。神の教えに背いたり冒涜するような人が落ちて、復活の見込み無く永遠に燃え続けるのだそうだ。
もう一つのライダーだが、名前は考えている。だが、このIFストーリーでは出す暇もなく終わらせてしまったため出せずじまい。いちおう考えているので、暇な人は当ててみよう。ヒントは「前作の次作予告にある」理想郷の名前である。ただし、エデンはもういるのでノーカン。