きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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今回のサブタイトルは仮面ライダーゼロワンから「オレが社長で仮面ライダー」を元にしました。
2部がどんどん暗くてシリアスな展開になっていっているから、せめてこっちではギャグに寄せようと思っています。


“ネガティブ思考は危険な病に似ている。己の可能性を閉ざし、身体を鈍らせて、自分自身を腐らせ、果ては周りに伝染していくからだ。”
 ……木月桂一の独白


※2021/11/28:木月の発言の一部を変更しました。投稿してから「あれ、これ利用規約に引っかかるんじゃね?」と思ってしまい、改稿した次第です。混乱を招くかと思いますが、この作品がロックされない為、念の為の処置ですので、どうかご容赦ください。
※2021/11/30:読者様からの指摘を受け、絶望のクリエについての記述を変更しました。


第4話:ワタシがうつつでクリエメイト

 平和になったエトワリアに、温かな陽光が降り注ぐ。

 陽のあたるテラス席にて、赤髪褐色の美少女や桃髪の凛々しい美少女と共に先日の聞き込みの結果を交換している、ライトグリーンの髪と金とオレンジの瞳をした、イカした男は誰でしょう。

 

 そう、俺だ。

 

 

「カルダモン、お前天才か? 噂の元になった組織の名前まで聞き出すなんて」

 

「ローリエもローリエで運がいいよね。君が会ったヘリオスっていう女の子、たぶん“リアリスト”の幹部に近いポストだよ。しかも、その思想をしっかり聞いてくるんだから尚更」

 

「二人とも、よくやった。」

 

 

 カルダモンが手に入れたのは噂の広がり具合とその内容、そして最近動きが見えてる&噂の出所な可能性が高い闇組織・リアリストのことだ。他にも気になる事件の情報はいろいろあったが、一番はそれだ。

 対して俺が手に入れたのは、ヘリオスの過激な主張。聖典は破壊すべし、神殿も敵対視するという主張。カルダモンはそこまで詳しい情報を手に入れられなかったらしく、一定の成果となった。

 

 

「聖典を破壊して真実を掴む……か。

 おそらく、神殿に対する不穏分子に十分なり得るだろう」

 

「警戒は怠らないようにしないとね」

 

 

 不穏分子に対して、警戒を怠らない。確かに、それは大切だ。でも、それだけで良いのだろうか?

 俺は今でも、自称ヘリオスの背中を見送った時のあの思いつきが脳裏に引っかかっている。勿論、あの時下した「手を出すべきじゃない」という判断が間違っていないと思いたい。でも、木月はそうではなかった。「多くの人々の平穏を乱す存在だ」と判断してきた人間を始末してきた…………そいつが何かをする前に、誰にもバレず、法にも触れない方法で。

 まぁそこまでいかなくても、もっと詳しく調べておきたいところだ。

 

 

「もっと積極的に調べてぇ…」

 

「気持ちは分かるが……焦っては駄目だ。下手に動いては、こちらが調べている事を悟られてしまう。リアリストの本拠地や構成員……少なくともそれらが分かるまでは派手に動けん」

 

「だよなぁ…逃がすと厄介そうだし」

 

 

 しかしアルシーヴちゃんの言う通り、情報が未だに足りなすぎる。ジャンクビレッジに噂を浸透させられるくらいだ、絶対に単独犯ではない。

 

「とりあえず、報告はしたからね。あたしは、他の仕事に行かないとだから。それじゃ」

 

 カルダモンが風のように去っていく。

 新しくやってきている不穏な気配にどうするべきか頭を悩ませていると。

 

「アルシーヴ、ちょっといい?」

 

「ソラ様?」

 

 ソラちゃんが不安そうな様子でテラスに来た。どうやら大真面目な話らしいので、神殿内に戻って話がしたいという。

 そうして、戻った先での話題というのは……

 

 

「聖典の光が弱まってる……!?」

 

 

 そう。実物を見せてくれながらの深刻な話題だ。

 ソラちゃんが持ってきた聖典は、確かに光が弱く、くすんでいるように見える。聖典の名前は『まちカドまぞく』。そんな聖典を見て、俺はさる日の言葉を思い出した。

 

『あそこに書かれている絆は…薄っぺらいまやかし。綺麗なところしか書いていない。だから聖典を破壊して、真実を掴むべき。』

 

 ヘリオスと名乗った女の、その言葉だ。

 奴らがもう動いている証拠なのか?もしそうだとしたら、具体的に何をしようとしている?

 というか……そもそもなぜ、聖典の光がここまで弱るのか? 聖典を破壊するとはどういうことか?

 などと、考え始めたところで。

 

 

「先生ーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

「アルシーヴさん! ソラさん!! ローリエさん!!」

 

「「「!!?」」」

 

 

 ばたん、とドアが乱暴に開けられ、そこからきららちゃんとランプ、マッチが転がり込んできた。

 そしてその時、二人と一匹を追うように見知らぬ誰かがついてきたのを見逃しはしなかった。

 

 

「何だランプ、騒々しい。神殿内では静かにしろ」

 

「ま、まあまあ、元気があっていいじゃない。それで、何かあったの?」

 

「あの、この方のことなんですけど………」

 

「………」

 

「あっ、隠れるなよ!ほら、こっち来なって!」

 

「ひ、引っ張らないでよぉ……この変な生き物がいじめる……」

 

「人聞き悪いなぁ」

 

 

 その見知らぬ誰かは、きららちゃんと同年代位の女の子だった。

 髪は黒で、前髪は目にかかりそうなくらいにまで、後ろは脇あたりまで伸ばしている。服装は露出と派手さを控えめにした学校のセーラー服で、まるでクラスのはしっこにいる女子生徒って感じだ。

 何より、本人から溢れ出ている雰囲気?オーラ?がなんか淀んでるような、暗いような………

 

 

「その子は?」

 

「さっき、急に空に魔法陣が現れたかと思ったら、うつつさんが現れて……」

 

「まるでクリエメイトの召喚みたいだな」

 

「私も、うつつさんから似たような雰囲気を感じたんですけど……」

 

「いいえ、この子はクリエメイトではないわ。私が今まで記憶している聖典には…このような子はいなかったのだから」

 

「…悪かったわね。そのクリエメイトとかいうのじゃあなくって。

 うぅ……どうせ私なんて虫ケラみたいなものなのよ。存在自体が小さすぎて、誰の記憶にも残っていないんだわ………」

 

 

 ……何だこの子。

 まるでネガティブ・ホロウを10回も受けたような言動をしておられる。

 きららちゃんとランプ曰く、この子の本名は「住良木(すめらぎ)うつつ」というらしい。

 今の説明の通り、空から急に召喚されたらしく、しかも変な生き物に襲われたというのでここに逃げ込んできたというのだ。その襲ってきた敵と言うのが………

 

 

「…緑と黒の生き物で、ウツウツ言っていた?」

 

「はい…」

 

「なんだその暗そうなモンスター」

 

 

 聞く限りでは、なんとも想像しがたい。

 ランプは動揺のせいか元々の語彙力が災いしてか、あんまりパッとしない。

 うつつって子はあんまり話しかけられる雰囲気じゃあないし、マッチもうつつに毒舌吐かれてショック受けてるっぽいからきららちゃんにでも聞くか。そう思ったが。

 

 

「なっ!!?」

 

「ここまで来るなんて!!」

 

「なんなんだコイツは!!」

 

 

 そこに、モンスターが現れた。黒と暗い緑色を基調とし、猿とカエルが合わさったようなフォルムをしていて、顔の部分から三つの目が見えていた。

 他にも、一つ目でタコの足を持っており、浮遊するモンスターもいた。

 

 

「これが、君らを襲った…?」

 

「はい、そうです……!」

 

 

 成る程、説明を受ける手間が省けた。つまり、コイツ等敵か。

 すぐさまパイソンを引き抜き、発砲。放たれた弾丸は寸分違わず未知の魔物たちの額に命中し。

 

「ウツー!?」

「ウ…ツ……」

「ウツゥ…」

 

 そして、そのまま溶けるように崩れ落ちた。……ってアレ?

 

「コイツら、弱くね……?」

 

 たわいもなさすぎるんだけど。なんできららちゃん達はこんなの相手に撤退したんだ? 数に押されたとかか?

 そう思って観察しながらウツウツうっさい魔物を撃ち払っていく。すると、あることに気が付いた。

 

「コイツら、うつつって子を狙っているな…」

 

 魔物の脆さに見落とすところだったが、なんだかうつつに向かっているようだ。

 彼女を庇いながら戦うきららちゃんには、必然的に多くの魔物たちが襲い掛かっている。助太刀でもしてやるか、と駆けだす。

 

 

 

デデーン

 

「「「「「!!!!?」」」」」

 

ウツカイ、タイキックー!

 

 

 えっ、急になにー!!?

 タイキックってどういうこと!? ウツカイってのはこの魔物のことか!!?

 突如流れた、懐かしすぎる効果音とアナウンスに、俺はもちろん、きららちゃんや魔物たちが、その場の全てが固まった。

 

 

「でやあああああああああああああ!!!」

 

 

 その一瞬の隙に、タイキックさんが現れた。

 鋭い雄たけびを上げて、神殿の廊下を駆け抜けながら、すれ違う魔物―――のケツ(だと思われる)部分にキックしていく。

 

「ウツゥ!?!?!?!?」

「ウ゛ツ゛ーーー!?!?!?!?」

 

 蹴っ飛ばされた魔物たちは、断末魔の悲鳴を上げて消し飛んでいく。

 なんと、あっという間にタイキックさんは全てのモンスターをキックで倒してしまったのだ。

 ……なんだこれ。まるで意味が分からんぞ!!?

 

 

「えええぇぇ、なにこれなにこれ……なんのバラエティなの……?」

 

「ばらえてぃ? 私はタイキックだ」

 

「蹴らないでぇ……お尻を蹴っちゃやだぁ……」

 

「…む?とりあえず、怪しい方を蹴ったのだが…私は間違っていたのか?」

 

 

 いや、とりあえずタイキックさんの助太刀はグッジョブだと思うよ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 その後、駆けつけてくれたタイキックさんと新顔のうつつについて、俺ときららちゃんがそれぞれ紹介した。……お互い、自身の記憶がないことも含めて。

 

 

「そうか、君も記憶を……私がなにか出来るかは分からないが、記憶喪失仲間としてひとつ、よろしく頼む」

 

「なんで、あんたはそこまで堂々としてるわけぇ…?」

 

「そんなの、私がタイキックだからに決まっている」

 

「意味わからないんですけどぉ……」

 

 

 タイキックさんは堂々と、うつつはきららちゃんに背中を押されて嫌々ながらにお互いに向き合ってそんな会話を展開した。

 おんなじ記憶喪失のはずなのに、ここまで違うモンかね、普通。タイキックさんの方、実は記憶あるんじゃねぇかってくらいにうつつと比べて堂々としてんぞ?

 

 

「父……ローリエ。おそらく、うつつはこの世界に順応しきれていないんだと思う。」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ。話を聞く限りでは、ついさっき召喚されたばかりで、更に魔物に襲われたなら尚更だ。

 私の場合は2か月も期間があったから落ち着けたが、記憶喪失直後にアレでは気も休まらないだろう」

 

「成程な…」

 

「記憶喪失歴の長い私から何かしてあげたいとは思うのだが………」

 

「イヤ記憶喪失歴って何だよ」

 

 経験積んだみたいに言うな。お前らは経験を失った側だろ。

 

「あれ、あの魔物、手紙落としましたよ?」

 

「どれどれ…うわっ!なんだこの字……全然読めないよ!」

 

「『しれいしょ ウツカイ達に告ぐ……』」

 

「えっ!? うつつさん、読めるんですか!?」

 

 タイキックさんとなんやかんや話しているうちに、きららちゃん達の方もまた話が進んでいた。

 なんと、魔物―――ウツカイが紙らしきものを持っていて、しかもそこに書いてある文章をうつつが読めるらしいのだ。

 そこには、信じがたい事が書かれていた。

 

 

「『すべての聖典を破壊せよ。そして、住良木うつつを拉致せよ』」

 

「聖典を破壊……?」

 

「それにうつつさんを拉致するって…」

 

「もぉ~、なんなのよ、これ…私が何したって言うのよ~?

 帰りたい…おうちに帰りたいよ……布団の中にくるまって悪い夢だったって、言わせてよぉ~~……」

 

「「「………」」」

 

 衝撃的なことを読み上げてから、泣きじゃくるうつつ。

 その姿は、まるで今にも死にそうだ。あまりのネガティブ具合に、誰も声をかける雰囲気じゃあなくなってしまう。

 だが、その沈黙を破ったのは、この二人だった。

 

 

「ランプ、マッチ、私、うつつの元の世界を捜す旅に出ようって思うんだけど…ダメかな?」

 

「きらら。迷惑でなければ、この私もその旅に同行させてほしい」

 

 

 やはりというべききららちゃんと、意外な事にタイキックさんだった。

 二人の言葉が、この場に温かさを取り戻していく。

 

 

「ナイスアイデアです、きららさん! タイキックさんも、ついて来てくれるならありがたいです!!」

 

「タイキックさんも来てくれるとは、心強いよ。ウツカイってやつらのことも気になるしね」

 

「私の力があれば、うつつのパスが繋がっている場所を探し出せるかもしれない。

 アルシーヴさん、ソラさん、ローリエさん。私達で、また旅に出てもいいですか?」

 

 

 きららちゃんとランプとマッチが、旅に出ると聞いて。俺は、新たな物語の始まりを予感していた。

 そして、ほぼ同時に確信した。これが………前世の俺が、木月桂一が知らない、新たなストーリーモードの幕開けなのだろうと。

 だが、俺はここから先の物語は知らない。未来のことなんて知らなくて当たり前なのかもしれないが……エトワリアでは初めての事態に、全身が緊張する。

 

 

「前に旅に出た時は、誤解で飛び出したランプがきっかけだったな……

 いろいろあったが、その判断は正しかった。今回もその判断を信じる事にしよう。」

 

「いってらっしゃい。また、旅の話をたくさん聞かせてね」

 

 

 アルシーヴちゃんは、みんなを信じようと背中を押す。

 ソラちゃんは、ドリアーテ事件の時の様に、土産話を期待した。

 俺も、きららちゃん達が旅に出ることに異論はない。

 

 

「なんか、変な事件が増えてるみたいだ。俺達も調査しているが……なんかあったら、この通信機で連絡してくれ。俺とアルシーヴちゃんに繋げられる」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 激励と共に、きららちゃんに特製の通信機を渡す。ランプのバックにも入る、小型のスマートフォンタイプだ。だが、みんなに渡したのは特別製だ。タダの通信機は渡さない。

 

 

「通信の他にも、様々な武装を番号タップで呼び出せる。詳しくは説明書を読んで欲しい。充電方法は魔力でできるが、武装を連続で呼び出すとあっという間に充電が切れるから気をつけなよ」

 

「そ、そこまでやります………?」

 

「当たり前だろ。一回は世界を救ったメンバーだぞ? 頼んだぜ」

 

「はいっ!」

 

 

 そうして、彼女たちの旅の支度は整った。

 

 

「うつつ、あなたも私達と旅に出てみない?」

「行くだけ無駄な気がするけど……」

「君はまたそういうことを……」

「はぁ…でも、それしかないんだよね……うぅ、邪魔になったらいつでも捨ててくれて構わないから」

「何を言う、うつつ。君の場所を捜す旅だぞ。本人がいないのでは意味がない」

「なにより、捨てませんよ!」

「あはは…それじゃ、いこう! うつつの故郷を探す旅へ!」

 

 ジメジメとネガティブ発言をして行く気があんま見られないうつつ。タイキックさんはそんなうつつに正論を投げかけてランプと共にその手を取った。

 そうしてきららちゃん達は新たな仲間・うつつとタイキックさんを加えて神殿から出ていき……旅を始めたのであった。

 

「…ローリエ。それで、お前はどうするつもりだ」

 

「コイツらをしっかり調べてみる。それから、きららちゃん達とどっかの街で合流かな」

 

 

 俺は、先程蹴散らしたウツカイなるものの身体の作りとかを調べることにした。

 残骸の一つを手で持ってみる………が、俺の手に染み込むように溶けてしまった。

 

 

「うわっ!!?」

 

「どうした?」

 

「あー…いや、なんでもない。思ったより触った感触がキモかったのと脆かったんで驚いただけだ」

 

「気を付けて扱ってね」

 

 

 もう一度、手に取ってみるが、やっぱり俺の手に染み渡るように溶けてしまう。

 染み渡った手は、変色とかはしてないし、今の所異常はないが、このままでは調べることができない。

 今度はピンセットを使い、直接皮膚に触れないように取ってみる………今度は消える様子はない。

 

「これならいけるか」

 

 顕微鏡、魔法実験キット、あらゆる道具を使って、ウツカイの身体を調べてみる。

 その結果をアルシーヴちゃんに見せると……彼女は、驚きに表情を崩しながらこう語った。

 

 

「これは…『絶望のクリエ』ではないか!!」

 

「絶望のクリエ……だって?」

 

「決して自然に生まれることのない、クリエメイトの命を蝕むクリエだ。なぜこんなものが…」

 

 

 ちょっと待って。それさっき吸収しちゃったんだけど。マズくない!?

 だが、こんなこと言えるわけがない。ただでさえいつも冷静なアルシーヴちゃんがたじろいでいるんだ。これ以上、冷静さを失わせる爆弾を投下するわけにはいかない。

 代わりに、気になったことを尋ねる。

 

 

「自然に生まれないなら、どうやってできるんだよ?」

 

「……とある禁忌で生み出される。『オーダー』以上に厄介な……『不燃の魂術』に匹敵する危険性を持った秘術だ」

 

 すると。アルシーヴちゃんは教えてくれた。『絶望のクリエ』を生み出す、忌避すべき魔法のことを。

 

「………『リアライフ』。かつて、世界を乱したということで最大級の禁忌に指定された禁忌の名前。―――負の感情を絶望のクリエに変える魔法だ」

 

 今後現れる、重要なキーになる『禁忌』の名前を。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 その日の夜の夢にも、再び木月は現れた。

 

 

「………私は、身の回りの整理整頓をしない、だらしのない人間が嫌いだ。

 同じく、『自分なんて何をしても駄目だ』と信じ切る、ネガティブな思考回路が嫌いだ。

 この二者は一見全くもって別物だが、その本質は非常に近しい」

 

 随分と饒舌だな、今夜のコイツは。

 だが、俺の怪訝に思っている様子などスルーして、木月は続けた。

 

「前者は、己自身の怠惰のために。後者は、自分自身への圧倒的な自信のなさから。

 人の話を聞かないんだよ。たとえその人の為を思って忠告しても、だ。

 そういう人に指示を出す時、私は時間と労力の無駄だと思っている。そういう人は言っても聞かない。だから悪意の格好の餌になるし、そういう人たちの寿命は短い。危機回避もできずに死ぬからだ。

 そういう人たちは………医者では治せない、魂を病むものだ。医者にも治せないものが政治家に治せる道理はない」

 

「……何が言いたい?」

 

 嫌な予感がした。

 木月がここまで回りくどい言い方をしたのは、相手に何かしらのダメージを与える時なのだから。そして、そういうものは、大抵精神攻撃だった。前世では暴力が禁じられて秩序が完成しきった世の中だったから「精神攻撃は基本」なのは当たり前だ。

 

 

「住良木うつつは、全力で守るべきだ。そして…利用しつくすべきだ」

 

「……!!」

 

 

 それは、悪魔の一言だった。

 コイツの言葉を認識した瞬間、俺の目つきが鋭く、冷たいものになるのを感じた。

 

 

「お前……いくら前世の俺でも、言って良い事と悪い事があるぞ…!!

 あいつは、召喚されたばかりの記憶喪失で、右も左もわからないんだぞ?

 守るなら兎も角…何に利用する気だ? 答えによっては許さねぇぞ……!!」

 

「まぁ落ち着きたまえ。怒りは平穏な話し合いを遠ざける障害物だ。

 まず彼女だが、神殿に敵意のある手先や、害意ある存在ではないことは確かだ。これは分かるね?」

 

 

 人の怒りを煽っておいて、コイツは現状確認を進めた。

 言う通りにするのはいささか気に食わないが、目の前の男が敵ではないのは俺が一番よく分かっている。もう一人の自分のようなモンだしな。

 で、だ。住良木うつつだが、木月の言う通り、まず自分から進んで悪事を働くような性格ではないしその度胸もない。そんなことをするくらいなら自殺しそうな雰囲気だったし。

 

 

「その通りだ。彼女自身に悪意はない。だが……ウツカイが彼女を狙っているのは確かだ。

 世界には確実に異変が起こっている。ウツカイについても何も分からず、リアリストについても情報が足りない。更に住良木うつつの情報もない。情報が圧倒的に不足している以上、手段を選んでいる余裕はない」

 

 

 そう続ける木月は、笑っていなかった。

 表情からして真剣なのは分かるし、俺と木月は互いの心が読める以上、木月が何らかの目的を隠している、なんてこともない。

 この男はただ純粋に、「エトワリアとこのローリエ(木月桂一)の大切な人を守りたい」と考えている。

 でもなぁ……なんというか、言葉を選んでほしいというか、手段を選んでほしいというか。

 

 

「あー……さっさと動いて情報収集しようって言いたいんならそう言えよ。

 俺もそこは賛成なんだしさ。わざわざ波風立てる言い方する必要あるか?」

 

「すまなかった。私の知らない事が起こっているものだから、少々焦っているのかもしれない。20年のブランクが響いてるな」

 

 

 申し訳なさそうに木月が言うと、咳ばらいをして、「他に、何か気になる事はあるか?」と訊いてきた。

 

 

「…ウツカイの残骸を手に取った時、絶望のクリエが俺に染み込んだんだけど、悪影響はないよな?」

 

「体内に入った絶望のクリエについては、大丈夫だ。私がなんとかしよう。基本的には問題ないが、絶望のクリエの過剰摂取には気を付けたまえ」

 

「そんなアルコールみたいに言われてもな…」

 

 

 こうして、その日の体内会談も無事に終了した。

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 新たな危機の到来を予期する拙作主人公。きらら達とはウツカイを調べるために一時別れたが、第一章から行動を共にする予定。なお、ローリエは第2部の存在を知らない為に、「原作の道筋通りに」という考えをこの物語ではしない予定。

住良木うつつ
 きららとランプに連れられ、神殿に来た第2部新キャラ。ネガティブすぎてローリエに心配をかけるくらいには落ち込んでいたが、木月の受けはあんまり良くなかった模様。当然、本人はそんなこと知るよしもない。タイキックさんに関しては、「グイグイ来るし変な格好だしやだぁ……同じ記憶喪失仲間とは思えないぃ…」とか思っている。今は。

タイキックさん
 きららとうつつがウツカイに襲われている所に、颯爽と助けに来たムエタイボクサー。うつつと出会い、自身と同じように記憶喪失であることを受け、仲間意識を持っている。それがうつつの引いている原因だとは微塵も思っていない。拙作では、きらら達一行と共に旅に出る。

木月桂一
 ローリエの前世である男。ローリエに情報収集を急かすためだけに現れた。20年も回復に専念していたため、政治関係にブランクがあるとは本人の談だが、はたしてどこまでが本当なのだろうか。



リアライフと絶望のクリエ
 リアライフとは、クリエメイトにかける『オーダー』以上の禁忌で、負の感情を絶望のクリエに変換するという禁呪。「きららファンタジア第2部」では、このリアライフを使う集団・リアリストときらら達の戦いを描いている。
 絶望のクリエとは、負の感情から発生する、クリエメイトの命そのものを削るクリエである。ローリエにはあまり効果がないようだが……?






△▼△▼△▼
タイキック「これが次回予告か。成る程。」

きらら「タイキックさん、宜しくお願いします!」

タイキック「ああ、分かった。さて次回なんだが、うつつや私と旅に出たきらら達が、新たなクリエメイトを見つけたようだぞ。その名はリリス。聖典に出てくる彼女だったが、どうやら『オーダー』で呼び出された様子。しかも不自然なことに…彼女の記憶から、シャミ子の記憶がなくなっていて―――」

きらら「うわぁぁぁ!ちょっと、タイキックさん!言い過ぎ!言い過ぎですって!」

タイキック「む、言い過ぎか?」

きらら「次回予告なんですから、もっと短くお願いします!」

次回『少女…Y/ご先祖様はよりしろまぞく』
タイキック「次回予告って難しいな…」
きらら「じ、次回もお楽しみに~!」
▲▽▲▽▲▽

あとがき
 書きたいシーンばかり浮かんで書くべきシーンがまったく浮かばない。創作者あるあるですね。
 ちなみにいくつか書きとめておきますが、どこのシーンで使うかは未定です。ひょっとしたら使わないかもしれないけど、以下の台詞一覧からシーンを想像してみましょう。

①コリアンダー「悲しい時くらい……悲しいって言えよ…!大丈夫なんて言うんじゃねぇよ!!」

②タイキック「私は……私の意志で、貴様らの尻を蹴る。それだけだ!!」

③ローリエ「メディ…お前に訊きたいことがある。救いようのない悪党でも変われると思うか?努力さえすれば、誰でもイイ人になれると思うか?」

④木月「ヒナゲシ…君はお姉さんに聞かなかったんだね。“悪い子になっちゃあいけない理由”その訳を!」

⑤カルダモン「正義のためなら…人間はどこまでも残酷になれるんだよ」
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