きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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 はい、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 リアリストの正体は色々考察が上がっています。①マジで恵まれなかった人説、②ハイプリスに思想改造された説、③別世界からの刺客説、④①~③の複合説。ハイプリスもハイプリスで我ながら色々正体を考察しています。でもほぼ『神殿の統治or聖典の編集の闇を見てしまった元神殿関係者』だと思われますが……結果的にどうであろうとオリジナル展開は揺らがないようにしていきたいです。
 2022最初のきらファン八賢者のサブタイの元ネタは「仮面ライダー響鬼」より、「蠢く邪心」から。それでは、どうぞ。


“若者に進めたい本、かい? そうだね。まずは―――「孫氏の兵法」を薦めたい。あそこに書かれている教訓はすべて良いものだ。”
 ……木月桂一の独白


第7話:蠢く鬱遣(ウツカイ)

 きららちゃんが立ち直ってすぐに、皆で作戦会議を開くこととなった。

 うつつだけ乗り気じゃなく「どうせ私がいなくても話は進むでしょ」って言ってたけど、タイキックさんがそれを許さなかった。

 

「私がいなくったっていいでしょぉ~~!?」

 

「そうじゃない。話を聞いておく事が重要なんだ」

 

 うつつを論破し羽交い絞めにするタイキックさんを加えながら、作戦会議が始まる。

 俺は、すぐにタブレットで街のマップを映し、その中に唯一反応を示す点を指さした。

 

 

「実は…さっき、シャミ子の尾行を魔道具にさせていた。最終位置がここだから、ここら辺にアジトがある可能性が高い」

 

「なるほど…」

 

「でも、待って。もし敵に尾行されてるのに気づかれたら、罠を張られる可能性があると思うよ」

 

 

 俺の魔道具が送った信号でアジトを探す作戦を提案したところ、桃がそれを逆手に取られる可能性を示してきた。

 確かに、もし尾行に気付かれれば…しかも、魔道具での追跡に気付かれれば、待ち受けられる危険性はグッと上がるだろう。

 だが、俺はこれについては問題ないと思っている。

 

「そう言うと思ったぜ。でも多分大丈夫だ。なにせ、尾行させたのはコイツだからな」

 

 と言って、G型魔道具を見せる。その反応は劇的だった。

 

 

「「「イイぃぃぃぃぃぃヤァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」」」

 

 まず、ランプがきららの後ろに。ミカンが桃の後ろに隠れ、うつつが腰を抜かしてひっくり返る。

 そして、ここでミカンの「動揺すると周囲の誰かにささやかな災難が降りかかる呪い」が発動。驚くリリスさんを、通りすがりの超巨大大蛇が締め上げた。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!? 何故余が締め上げられるのだあああああああああ!!?」

 

ドーモ、ハジメマシテ。ルメインタイパンデス

 

「ギャアアアアアアアアアアアアシャベッタァァァァァアアアアアアアア!!!!?」

 

「リリスさん、ちゃんとアイサツは返してくれよ、スゴイ・シツレイだから」

 

「言ってる場合かァァァァ!!!? 助けて!余を助けて!!!?」

 

 あぁ、あれルメインタイパンだったのか。毒はあるけど人は襲わないタイプだったと記憶してるけど、あそこまで育ったの見るの初めてだわ。そんなことを考えたが、話の論点がずれるから本題に戻ろうか。

 

「……あの、周りが凄まじい事になったけど、それが魔道具?」

 

「そうだ。色・ツヤ・カサカサ度合い、全てを本物のGに似せたG型魔道具だ。スパイ能力やGの再現度を大型アップデートした」

 

「再現度はアップデートしなくていいです~!!!」

 

「しかも。仮にGが平気だったり、この魔道具がGじゃないかもと思われたりしても、コイツを捕まえて確かめることはできない。

 きららちゃん、ちょっとこのGを退治してみて」

 

 

 ランプのアップデートに関する文句をスルーして、情報機密性をもっとプロデュースするために、きららちゃんに退治を頼んだ。きららちゃんはマッチに頼んで余った雑誌を貰い、それを縦に巻いてゴキ叩き棒を即席で作り、G型魔道具を退治しようとする。しかし、だ。

 

▶きららのこうげき!

▶ミス! Gがたに よけられてしまった!

▶きららのこうげき!

▶Gがたは ひらりとみをかわした!

▶きららのそくどきょうか!

▶きららのこうげき!

▶Gがたの そらをとぶ!

▶ミス! Gがたには あたらなかった!

 

「うわぁぁ!空を飛ぶなんてアリですか!?」

 

「きらら、ちょっとその丸めた雑誌を貸してくれ。私がやってみよう」

 

 お、タイキックさんがやるか?しかし、無意味だ。

 

▶タイキックは いきをおおきくすいこんだ。

▶タイキックのこうげき!

▶ミス! Gがたは へんたいてきなうごきで こうげきをかわした!

 

「馬鹿な…!?」

 

「凄まじいスピードで攻撃を避けおったぞ……」

 

「元々隠密用なんだ。逃走・攻撃回避機能には力を入れたぞ。ガチ目に」

 

「ま、魔法少女でも捕まえるのに苦労しそうなレベルね…」

 

 

 きららちゃんから代わったタイキックさんが放った、目にも止まらぬきらら以上の一振りでさえ、G型は煽るように飛んで躱していった。

 目の前で証明したように、タイキックさんでも攻撃を当てるのはほぼほぼ不可能。アップデートを施したG型を捕まえるには、それこそカルダモンでも手を焼くかもしれない。それくらいにした今、G型魔道具が見つかってもまず捕まることはない。そもそも、Gを嫌がって誰も詳しく観察しようとしないだろう。

 ともあれ、俺の魔道具の有用性を(嫌々ながらに)理解してくれたみんなは、俺の魔道具からの応答を元にシャミ子がどこへ行ったのかを探すことにしたのであった。

 

 

 

 G型の反応を追って街を進んでいく。

 その途中でG型が尾行から戻ってきたと伝えるかのように現れて、また大混乱に陥った。

 

 

「「「ひいぃぃぃぃ!!!?」」」

 

「おい、静かにしてくれ。敵に見つかったらどうすんだ」

 

 ランプ・ミカン・うつつの3人がまた怯え、再びミカンの『呪い』が発動。今度は桃が鳥の群れにたかられることになった。

 

「うわっ! なに、こいつら!?」

 

ドーモ、ハジメマシテ。ルインバードデス

頭についてるマシュマロをよこせッ!

イヤーッ!

 

「え…あ。どうも千代田桃です……じゃなくて!これは食べ物じゃないから!」

 

 ルインバードか、アレ。ミカンの呪い―――もといウガルルは絶好調だなと思いながらも鳥たちを追い払う。桃がアイサツしてないってのに襲い掛かるとはスゴイ・シツレイな鳥どもめ。

 まぁそうしてG型についていった結果、俺達は秘密基地の入り口まで辿り着くことができた。

 

 

「―――ここか」

 

「うぅぅぅ……行きたくない……」

 

「じゃあここで待ってるか?」

 

「それも嫌だぁ…」

 

 うつつを説得させながらドアに罠がないか確かめて……ドアノブを回す。

 ………鍵がかかってるな。だが、このくらい想定内だ。

 ローリエ・キックを扉にぶちかましてやれば、蝶番の根本からドアが派手に吹っ飛んだ。

 

「ろ、ローリエさん!!?」

 

「これが一番早い」

 

「確かに」

 

「桃様並みの脳筋手段…」

 

「ランプの課題追加、と」

 

「うぼわぁ」

 

 

 余計な事を言ったランプに課題追加を命じながら、俺らは突入した。

 

 

 そこは、明らかに人の手が行き届いている地下への廊下だった。

 不穏な空気が奥からにじみ出ている。ここから先に、明らかによろしくない感情を持った誰かがいる。そう確信させられるほどに空気が違った。

 振り向けば、きららちゃんや桃、ミカン、タイキックさんも俺の視線に頷いた。どうやら、この4人も違和感に気付いたようだ。残りの非戦闘員4人(マッチは人なのか?)は気付かないのも無理はない。

 

 

「みんな、気を引き締めろよ。こっから先は敵の秘密基地なんだから」

 

 

 ひとこと告げてから、進んでいく。

 すると、長い階段を下りて、四方をレンガで囲まれた広い回廊の先に、両開きの大きめの扉があるのを発見した。

 ―――そして。

 

「こ…これはっ!!」

 

 ヤツが、その扉の奥にある何かを守るかのように、立ち塞がっていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ローリエときらら達が秘密基地に入ってきたのとほぼ同時刻。

 

 

「ど、どうしよう……きららちゃん達が来ちゃったの…秘密基地が見つかっちゃうなんて………しかも、八賢者ローリエまでいるし…!」

 

 

 秘密基地の最奥部にいる花飾りの少女・ヒナゲシは焦っていた。

 彼女は、遺跡の街の秘密基地に根城を構え、シャミ子相手に洗脳を行っていた。

 とある方法でパスを断ち切られ、桃達の記憶を失ったシャミ子にこう囁いた。

 

『聖典はまやかしだらけなの……本当は、シャミ子ちゃんはひとりぼっちなの。何も守れないよわよわまぞくで……みんなに見捨てられちゃうの。』

 

 聖典はまやかしと言っておきながら大嘘を吹き込むことに疑問を覚えるかもしれないが、記憶が無くても心の底から良い子のシャミ子ちゃんはそれを信じてしまった。そこからは泥沼にハマっていく。どろぬまぞくであった。聖典や魔法少女を自分のものを奪う敵として見るようになり、侵略をするようになったのだ。

 その際、ヒナゲシはウツカイにこう命じていた。『聖典を奪え』と。『抵抗するだろうから、力づくでも構わない』と。その結果ウツカイは「それはつまり…ころしてでも うばいとれ ってことだネ!」と殺戮をしてしまったのだが、その事はシャミ子もヒナゲシも知るよしもない。

 

 話を戻そう。

 シャミ子を洗脳して聖典を回収していたヒナゲシだったが、あまりに早い召喚士&八賢者のカチコミに超焦っていた。秘密基地は秘密にしているから秘密基地なのだ。すぐにバレる隠し方はしていないのに何故こんなに早く……という思いでいっぱいだった。

 無理もない。ローリエは、日用品以外の発明はすべて秘匿している。設計図すら残さない徹底ぶりだ。神殿内にてタブーになったG型魔道具を始めとしたローリエの戦い方など、リアリストであるヒナゲシが知るわけがない。

 先程帰ってきたシャミ子も何も言っていなかった。というかお尻が痛いといってほぼ何も語らなかった。つまり、ヒナゲシはきらら一行に秘密基地の存在がバレた理由がマジで分からないのだ。

 

 

「や、やっぱり私じゃダメダメなの……このままあっさりやられちゃったらお姉様に怒られ…いや、いい加減に見捨てられちゃう……いや…それだけはイヤぁ……!!」

 

 

 ヒナゲシは、お姉様と呼ばれる人物に連絡をとっていた。

 彼女曰く、「そっちに行けるように掛け合ってみるけど、もし私が来るまでにしくじったらタダじゃおかない」と。だから、お姉様が来るまでは自分で何とかしなきゃと思っている。

 

「そもそも八賢者なんてどうやって対処すれば……うぅぅぅぅぅ!!」

 

 八賢者という予想外過ぎる襲撃者の件も、すぐに報告すればいいものを、また怒られるかも・見捨てられるかもという思いから、報告できずにいた。

 降りかかるかもしれない恐怖から、自分で持ちこたえなければという考えに囚われたヒナゲシは、「こうなったら最終手段なの!」とシャミ子に向き直る。

 

 

「シャミ子ちゃん…敵が来たの…」

 

「ほげぇ……うぅ、お尻が痛いです……」

 

「…………」

 

「あぁ~~………お尻がぁ~…! タイキックされたお尻がぁ~…!!」

 

「シャミ子ちゃん!」

 

「ほわー! ひ、ヒナゲシさん!? なんですか!?」

 

「なんですかじゃないの!敵なの!」

 

 

 タイキックを受けて悶絶したシャミ子に鞭打つように元の世界に引き戻すヒナゲシ。

 

 

「敵……? 敵、ですか?」

 

「うん。あなたから楽しい事や嬉しい事を奪っていく敵なの。

 健康も、うどんも、なけなしの500円も、鉄板も……ぜんぶ、奪っていくの。」

 

「そ、そんな…やめてください…

 おかーさんや良が、悲しみます…」

 

「―――っ!

 そうしたら、お母さんも良ちゃんも、そんなよわよわシャミ子ちゃんを、見捨てるかも……」

 

「え―――」

 

「だから…シャミ子ちゃんを、世界を、アイツ等を憎んで…憎むの……!!!」

 

 

 そして、憎悪を焚きつける。すると、ヒナゲシの手に持っていた宝石がおぞましく光、シャミ子を闇のオーラが包んでいく。

 

 

「うぅ……憎い…? 憎い……!

 おかーさんや良を守れない私が憎い…世界が憎い……!」

 

 

 タイキックによってやや正気を取り戻したかに見えた瞳が、再び濁っていく。

 そうして生み出された絶望のクリエから、ウツカイが生まれていく。

 その中に、ひときわ大きなウツカイが現れた。天井が高く、広い秘密基地でも窮屈に感じるような、巨大なウツカイだ。

 

 

「すごい…すごいの! こんな巨大なウツカイがいれば、あいつらなんか…!」

 

 

 ウツカイが生まれて喜ぶヒナゲシ。

 その背中を、黒光りする一匹の虫が眺めていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 それは、今まで捌いてきた他のウツカイとはスケールが違った。

 一目瞭然の言葉の通り、そいつは凄まじい巨体を持っていた。まるで、ウツカイにビッグライトを当てたかのようにシンプルな巨大化で、シンプルな強化版だった。

 

 

「今までよりも強敵の予感よ!気を付けて!」

 

 

 ミカンが注意を促した瞬間、巨大ウツカイは襲い掛かってきた。

 振り上げた腕を叩きつけるというシンプルな攻撃を繰り出してくる。巨大な体であるからして、普通の攻撃のスケールがトンデモなくデカい。

 

 

「うわぁっ!」

「きゃあ!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

 マトモに食らえばひとたまりもない。きららちゃん達も魔法少女もそれは分かっているようで、巨大ウツカイの攻撃を回避した。ランプはマッチと協力して、うつつは情けない悲鳴をあげながら逃げ回る。

 

 

「はぁぁっ!」

「でやっ!」

「そこ!」

 

「ウツーー!!!」

 

「…ッ、全然効いてない…!」

 

「はああああああっ!」

 

「ウツー!」

 

「ぬおっ!?」

 

「タイキックさん!?」

 

 

 きららちゃんや桃、ミカンが反撃するも、巨大ウツカイは応えた様子がない。タイキックさんの飛び蹴りでさえ、軽々と投げ返してしまった。

 大きくなったという事は、ただ的がデカくなったというわけではないようだ。攻撃力、防御力、体力……ありとあらゆるスペックが普通のウツカイよりもすぐれたものになっているようだ。

 

「ふっ!!」

 

「ウツーーーーーーー!!?」

 

「……」

 

「ウ…ウツーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

「チッ!」

 

 俺も試しに4つある目のうちのひとつを狙い撃ちしたものの、直撃した時にかなり痛がっただけで、消える気配がない。それどころか、目を潰しかねない攻撃を放ったのが俺だということに気が付いて、こちらに殺気を放っているまである。

 このままではジリ貧だ。一気に高火力でブッ飛ばしてみないと状況が変わらん。

 

 

「来い、アイリス!」

 

 その一言で、何もない場所から魔法陣が現れると同時にショットガン・アイリスが現れる。

 コイツの機能……それは、特殊弾頭と特定のワードで発射される殲滅特化の波動砲『モード・アヴェンジャー』だ。その威力は、廃墟となった街の一部を更地にする程。

 コレを使えば、こんなデカいだけのウツカイなど難なく倒せるだろう。だが、巨大ウツカイごとシャミ子や大事なモンまでブッ飛ばすわけにはいかない。それに、ここは地下だ。下手な方向に撃ったら、俺らも敵も仲良く生き埋めだ。

 

 巨大ウツカイだけを倒せて、仲間を巻き込まず、かつ地上の街に影響が出ないように撃ち込む必要がある。

 そのことをきららちゃん達に伝えようとしたその時、声が聞こえた。

 

 

「飛んで火にいる夏の虫とはこのことなの……」

 

「!」

 

 

 少女の声だ。ランプやアリサくらいの幼さで、地味に暗い。

 

 

「だ、誰!?」

 

「あなたたちに教える気はないの。どうせここで、消えちゃうんだから…」

 

「そんなこと言わずにちょっとだけ。普段なんて呼ばれてるかだけでも」

 

「そんな手には乗らないの」

 

 

 どうやら声の主たる少女は、きららちゃん達をこの場で倒すつもりらしい。名前を教える事すらしないとは、注意深いヤツだ。

 あとな桃、そんな手に乗るのはシャミ子みたいなちょろまぞくくらいのものだぞ。あぁいうヤツから名前を聞き出すなら、もっと煽らないと。

 

 

「『―――』みたくちょろくはないか。………あれ?」

 

「桃、大事な時にぼーーっとするでない!」

 

「こ、こほん。話の続きをするの」

 

 

 いや、煽るのはもうちょっと待つか。

 こういう場合、煽りはタイミングだ。最初から煽ると怒りから話すつもりのことを話さなくなる可能性が出てくるからな。

 

 

「その巨大ウツカイは、シャミ子ちゃんの絶望のクリエをたーくさん使った特別なウツカイ…

 シャミ子ちゃんが絶望すればするほど強くなるの…………シャミ子ちゃんとの絆を断たれたあなたたちに勝ち目はないの……」

 

 

 時間が止まった。

 いや、そう錯覚するくらいには、この少女の言っている事が理解できなかった…理解したくなかったことだったかもしれない。

 

「だから、みんなシャミ子ちゃんと一緒に消えちゃえばいいの。

 あ、でもうつつちゃんだけは残しておくの。捕まえないとお姉様に叱られちゃうから…」

「うぇぇ…な、なんで、私だけぇ………私が何したっていうのよぉ………」

 

 絶望させた、だと? あの魔族としてやっていくにはあまりに善良すぎるあの子を、か?

 何を言ってやがる。どうしてそんなことができる。つまり……俺が今まで倒そうと思っていたあの巨大ウツカイは、シャミ子がそれだけ絶望した証拠であり、まだ見ぬ姿の敵が行った事を如実に証明していた。

 

 それを自覚した瞬間、俺は笑っていた。

 

 

「笑わせるぜ…」

 

「ローリエさん?」

「先生?」

 

「なにが、おかしいの?」

 

 もう煽るだなんだ言ってる場合じゃあない。言いたいこと言わなきゃ、爆発しそうだ。

 

「姿も名前も見せねぇテメェが俺達を消すと言ったのがバカバカしいと言ったのさ。

 いいか? ……お前に俺達は倒せない。決意が違うんだよ。俺達を消したいんなら、ウツカイなんぞに頼らずに出てきたらどうだ。ウツカイとお前の全力が合わされば、ワンチャンあるかもしれないぜ?」

 

「……そんな手にも乗らないの」

 

「そうだ。乗るわけがない。名乗りもしない。ここに来ることもない。

 何故ならお前は―――ウツカイにも劣る、クソ雑魚の臆病者だからだ!!!」

 

「―――ッ!!!!」

 

 

 ぶつけるように吐き出した宣戦布告に、クソガキの声が詰まるような音が僅かに聞こえた。思うに、図星だったな?

 そう思った直後。

 

 

「ウツカイ!! そいつを殴り殺すの!!!!」

 

「ウツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

「ぐッ!!!?」

 

 

 巨大ウツカイの拳が眼前に迫ってきていた。

 啖呵を切った直後で避けるのも間に合わず、真正面から、全身でその拳を受けた。

 俺の身体が地面と平行に飛ばされ、階段に激突した。

 

 

「「「「ローリエ(さん)っ!!!」」」」

 

 

 俺を呼ぶ声が聞こえる。

 背中の痛みに耐えながら、桃ときららちゃんに背負われて階段を上っていくのがわかった。そっから先の会話は、耳に入れる余裕すら生まれなかった。

 一時撤退するのか……そう言いたかったが、背中が痛くて何も言えなかった。

 ただ分かったのは…俺達が一時撤退せざるを得なくなった、という事だけであった。

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 シャミ子のアジトと言う名のリアリストの秘密基地を一発で探り当てた拙作主人公。その奥に見つけた秘密基地でリアリストのシャミ子への仕打ちを知りマジギレ。無意識かつ盛大にヒナゲシの地雷を踏み、巨大ウツカイに殴られる。本文後半にも出てくるように、背中を階段に強かにぶつけたことで凄まじい痛みを味わっている。なお、ウツカイが殴った正面方向へのダメージは……

きらら&千代田桃&陽夏木ミカン&タイキック
 秘密基地で戦った戦闘員。ルメインタイパン=サンの対応やルインバード=サンの対応もしたが、メインは巨大ウツカイとの戦い。しかし、ローリエが殴り飛ばされてしまったため、一時撤退。

ランプ&マッチ&うつつ&リリス
 非戦闘員の面々。巨大ウツカイの攻撃にたいして逃げ回ることしかできなかった。致し方ないといえばそれまでだが、約一名の心がこの戦いで折れた。

ルメインタイパン=サン
 ミカンの呪いで招集された、遺跡に住まう毒持ちの大蛇。リリスに巻き付いた個体は忍殺語を話していたが、これは子ヘビの頃に忍殺語を話す少年に出会ったからである。また、その影響でルメインタイパン種にも忍殺語が流行する。ニンジャ・スピリットは世界を越える。古事記にもそう書いてある。イヤーッ!

ルインバード=サン
 ミカンの呪いで招集された、遺跡に住む群れを成す鳥。ルメインタイパンに広まった言語が伝わり、忍殺語を使うようになる。しかし、ニンジャ・スピリットまでは伝達しておらず、桃にスゴイ・シツレイを働くなど、実力はまだまだサンシタ揃い。

ヒナゲシ
 CVが河野ひ○りさんだということだけが判明した。ローリエに地雷を踏みぬかれ、巨大ウツカイに“初めて自分の意志で”殺しの命令を下した。なお、もう既にウツカイ達が自分の解釈で遺跡の街で殺戮ショーをやっている事は知らない。



原作との違い
 シャミ子がタイキックされたことにより絶望度合が変わり、追加登場したのが巨大ウツカイだけになっている。また、ヒナゲシは焦りから正常な判断が下しにくくなっている。当たり前のように八賢者に秘密基地が暴かれた上に、即座に殴り込んできたので無理もない。



△▼△▼△▼
うつつ「うぅぅぅぅぅぅぅぅ……もうやだぁ!わけわかんないよぉ!なんでみんな、知らない人の為に頑張れるの!桃も、ミカンも、タイキックも、きららもおかしいよぉ!」

タイキック「待て、うつつ!迂闊に動くと危険だ!」

ローリエ「心が折れちまったのか、うつつ……まぁ、あんなデカいウツカイに遭ったんじゃ無理もない。けど……その程度で、放っておく人はここにはいない。きららも、桃ちゃんも、ミカンちゃんも………そして、タイキックさんもだ。」

次回『心研ぎ澄ませ!タイキックさんの新たな希望』
ローリエ「次回もお楽しみに。」
▲▽▲▽▲▽
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