きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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今回のサブタイはまちカドまぞくから「心研ぎ澄ませ!魔法少女の新たな力」から。





“友情は真珠のようなものだ。尊く、輝かしいものだが、庇護せねばならぬほど脆いからである。”
 …木月桂一の独白



2021/1/29:本文を一部修正しました。


第8話:心研ぎ澄ませ!タイキックさんの新たな希望

 ウツカイやシャミ子が隠れ家にしている秘密基地……それは、ローリエによって容易に探し出すことに成功したのだが、巨大ウツカイの予想外な力を前にしたきらら達は、ローリエが負傷したのをきっかけに撤退せざるを得なくなった。

 それにより、追手のウツカイも放たれたが、その数は最初の襲撃よりも非常に少ない。しかし、決して油断できない数でもある。

 

 秘密基地から命からがら逃げ出したきらら達もまた、それが分かっていた。

 

 

「な、なんとか逃げ出せたね…」

「あ、足がガクガクする…それに、なんかクラキュ~してきた………余はもう動きたくない…」

「私もちょっと限界……桃は大丈夫?」

「……………平気。」

 

 

 逃げ切った先で、リリスもミカンも桃も、それぞれ戦い&逃走で体力の限界に近づいていた。桃だけは口では平気と言っていたが、明らかに顔色が宜しくない。無理をしている証拠であった。

 だが、無理をしているだけならまだしも、更に酷い精神状態に陥っている人がいた。

 

 

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜………」

 

「うつつさん?」

 

「もうやだぁ…がんばりたくないぃ……おうちに帰れなくても良いぃ〜……」

 

 

 うつつである。

 いつもネガティブオーラをまとってネガティブな言動を繰り返す彼女だったが、今はそれが更に酷く落ち込んでいる様子を全員が感じとった。

 

 

「もう無理ぃ……私はこのまま、この世界の隅っこで岩の下のダンゴムシのようにひっそり暮らすぅ〜……」

 

「うつつさん…」

 

「そんなこと言わないで。私も一緒にうつつの家を探すから……」

 

 

 そんな尋常ではない様子に、きららとランプは手を差し伸べる。その様子には、うつつへの思いやりがあった。

 しかし、それを目にしても、うつつのネガティブオーラは一向に良くならない。

 

「……うつつ。それで良いのか? 確かに、あの巨大なウツカイは強敵だが………」

 

 タイキックは確かめるようにうつつに問う。

 うつつの心が折れかけているのは、やはりあの巨大なウツカイと、「うつつは置いてみんな消えちゃえ」とか言ったあの少女が原因だろう。ならば、それを取り除けば改善されるのでは、とタイキックは思った。

 しかし……それは、タイキックの思い違いであった。うつつは、「心が折れかけている」のではない。「心が折れてしまっていた」のだ。

 

 

「うるさい!ほっといて!!」

 

「なっ……」

 

「どうせあんた達みたいな陽キャに、私の気持ちなんて分かるわけないんだからぁ……!!!!」

 

 

 きららやタイキックの手を振り払い、逃げるように走り出したうつつ。

 あまりに突然のことだったので、手を掴み損ねて逃走を許してしまった。

 

 

「待ってっ!」

 

「迂闊に動くと危険だ!」

 

 

 きららやタイキックの制止の声さえ、うつつを引き止めることができなかった。

 そして、大声を出してしまえば、追手に気付かれない訳もなく。

 

 

「ウツッ!? ウツーーー!」

 

「くそっ! こんな時に!」

「邪魔しないで!」

 

 自分たちを見つけたウツカイの魔の手が、うつつへの道を阻む。

 きららとタイキックは、ままならない現状にいら立ちながらも、道を切り拓くために果敢にウツカイに挑む。

 

 それと同時にランプは、ローリエを起こすことに成功していた。

 

 

「先生!起きてください、先生!!」

 

「………ランプ、か」

 

「大丈夫ですか?」

 

「……あぁ。ちょっと背中が痛むだけだ」

 

「あんな大きなウツカイに殴られたのに?」

 

 

 少し強めに揺らせば、簡単にローリエは意識を取り戻した。

 巨大ウツカイのパンチを真っ正面から受けたにしてはケロッとしている様子のローリエに、桃が疑問を呈するが。

 

 

「あぁ……確かに殴られたが…不思議と、全然痛くない。むしろ、背中の方が階段に叩きつけたぶん痛いくらいだ」

 

「どうして、ですか?」

 

「分からん。ウツカイはまだ謎だらけだ。これから調べるしかねぇだろ……

 それよりも、今どういう状況になっているんだ?」

 

 

 本人も分からない軽ダメージの原因よりも、現状確認を急かすローリエ。

 彼の問いに対して、目の前で起こったことをそのまま伝えるランプ。

 自分の意識が朦朧としてた間の出来事を知ったローリエは、ため息と「なるほど」という言葉を口にした後、こう言った。

 

 

「多分、うつつのヤツ、心が折れちまったんだな」

 

「心が……」

 

「元々、心の強そうなヤツじゃあなかったからな。何もかもがイヤになっちまったんだろ。あんな目に遭った後で逃げたくなっても不思議じゃあない」

 

 

 ローリエの推測を否定するものはいなかった。

 うつつは口を開けばネガティブ発言しかしなかったような少女だ。彼の言う通り、心が折れてしまったのかもしれないと思っても不思議ではない。

 

 

「さて…ランプ、お前はアイツをどうしたい?」

 

「決まっています!うつつさんを助けるんです!

 きららさんも、タイキックさんも同じ気持ちですよ!」

 

 

 心の折れたうつつを助けるのは骨が折れるぞ。

 そういう意味で尋ねた問いに、ランプがそう答えた。きららとタイキックも、ローリエとランプの会話が聞こえたのか、一瞬だけローリエらの方向に顔を向けると、イイ顔をして頷いた。

 どこまでも良い子しかいないなと思いながら、ローリエは武器を取り出した。

 

 

「そういう事なら道を切り開こうじゃあないか。

 さっきまで意識が飛んでた分は、成果で取り返すとしよう」

 

 

 ローリエが、二丁拳銃から弾幕を放つ。

 音速の弾丸たちは、襲い来るウツカイ達の全身に風穴をあけながら、確かにきらら達の道を作ったのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ―――いっぽうその頃。

 うつつは、衝動のまま走れるだけ走りきった後で、何かから逃げるように、あてもなく街中をさすらっていた。

 

「ううぅぅぅぅぅ…………」

 

 遺跡の街の惨状はひどいものだった。

 崩れた建物・遺跡、損傷の激しい死体、それらにしがみついて泣き叫ぶ家族たち。

 うつつにとって、見知らぬ人々の慟哭さえ煩わしいものに聞こえ、叫び声が聞こえてこない方向へ足を進める。

 

 

「きらい、きらい……みんなきらいぃ……」

 

 涙をぼろぼろ流しながら、恨み節を垂れ流す。

 

「なんで桃やミカンは知らない人たちの為に頑張れるの? 忘れちゃった人の為に頑張れるの?

 なんでリリスはこんなわけわかんないとこなのに楽しそうにしてられるわけぇ……?

 なんできららやランプは私なんかに優しくするのぉ………わかんない、わかんないよぉ…!!」 

 

 うつつは、自分自身のこれまでの人生を知らない。

 エトワリアに召喚されてから今までの記憶も、右も左も分からない場所でウツウツ煩いウツカイに襲われる上に、自分だけ特別に狙われるという散々たるものだった。自分自身の命を守るのに精一杯だったのだ。

 そんな彼女からすれば、自分の命を危険に晒して誰かの為に戦うきららや桃、ミカンやタイキックが理解できなかったのだ。見知らぬ土地でも楽しもうとするリリスが理解できなかったのだ。

 

 何より……そんな自分とは全く違う彼女たちが、自分に優しくする理由が分からなかったのだ。

 

 人間、自分とは違う人を受け入れづらいものだ。見知らぬ場所に不安を覚えるものだ。自分に降りかかる危機から逃げたくなるものだ。そして………そんな恐怖や不安が積み重なって、折れてしまう事も多々あるものだ。

 

 

「ううううう、あれ以上あんな陽のものと一緒にいたら…眩しくて、目が潰れて、死んじゃうよぅ…

 逃げたい、逃げたいよぉ………死んだら、楽になるかな? どっか、アイキャンフライできるとこ探さなくっちゃ…」

 

 

 うつつは、召喚されてから今までのストレスが積み重なって絶望してしまっていた。

 自分を狙うモンスターだらけの世界で、生きる目的を見失ってしまったのだ。まぁ…死への抵抗がほとんどなく、諦め癖の強いうつつからすれば、生きる意味など最初から見つからなかったのかもしれないが。

 

 だが、現実はうつつにアイキャンフライを許す程、甘くはない。

 

 

「ウツー…!」

 

「ウツゥ…!」

 

「い、いやぁ……また出たぁ…………!!!」

 

 

 タコ足が特徴的な一つ目のウツカイ・ナイトメアウツカイ。

 羽を複数枚持った、クワガタムシの顔をした郵便タイプウツカイ。

 猿のような姿に四つの目を持った、基本タイプのウツカイもいる。

 それらのウツカイ達が、ウツウツ言いながら、うつつににじり寄ってきていた。

 

 ―――自殺を考えるくらいに死にたいんなら、我らがここで殺してやるから大人しくしてロ。

 

 うつつは、自分に迫るウツカイ達が、そう言っているように見えた。自分の命を飲み込もうとする死の恐怖を目の前に、彼女はあっさりと自分の心根を吐露した。

 

 

「私、やっぱり死にたくないよぉぉぉぉ……!!!」

 

 

 決して、誰にも届く事は無い。きっと、その願いも叶わないんだろう。

 半ばどころか、99%諦めた心情で叫んだうつつの悲鳴は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はあああーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」」

 

「「「「「ウツーーーーー!?!?!?」」」」」

 

「っっ!!?」

 

 

 ―――しかし、最悪の予想通りにはいかなかった。

 空からきららとタイキックが飛んできたかと思えば、うつつに触れようとしたウツカイ達をひと息に薙ぎ払ったのだ。

 

 

「うつつ!大丈夫!?」

 

「しばし待ってろ!こいつらを片付ける!!」

 

「うつつさん!」

 

 

 きららとタイキックは、そう言って『コール』やキックでウツカイ達を次々とブッ飛ばしていく。その無双っぷりに呆けていると、遅れてやってきたランプがうつつを安全な場所まで下がらせた。うつつは、先程自棄になって手を振り払ったのにも関わらず、きらら達が助けに来てくれた事に……

 

「(なんで……どうして、助けに来てくれたの…?)」

 

 疑問だけでなく、恐怖から解放された安堵の息が漏れたのであった。

 

 

 

 やがて、きららとタイキックが無傷で戻ってくる。

 そもそも、うつつを襲ったウツカイの数はそこまで多くはない。弱く、数も少なければ、きらら達が苦戦する理由など存在しなかった。

 

「ぅぅ~~、怖かった、怖かったよぉ!」

 

「よしよし、もう大丈夫ですよ。」

 

「怖かったよね。少し休もっか。」

 

「もう大丈夫だ、うつつ。ウツカイ共は先程一匹残らずタイキックしたからな」

 

 きららにしがみついて号泣するうつつを、三人がそれぞれ慰める。

 ひとしきり泣いた後で、うつつはこう尋ねた。

 

 

「うぅ…なんで、私なんかに優しくするのぉ……?」

 

「理由なんてないですよ」

 

「うん。だって、私たち友達でしょう?」

 

 

 うつつの問いに対して、きららとランプの答えは実にシンプルであった。

 

 

「あ、会ってすぐの人を友達扱いとか………やっぱ陽キャこわい…」

 

「あ、ごめんね。なれなれしかったよね?」

 

「…………ううん。そっちがそう思う分にはいいんじゃない?

 タイキックは…どうなの?」

 

 

 陽キャぶりに引きながらも、きららとランプの友達宣言に対して「まぁ、そっちが思う分には勝手でしょ?」と言ううつつ。同じ質問をタイキックに向けると、タイキックは腕を組んでうーむと唸った後、こう答えた。

 

 

「そうだな………うつつ。私にとってお前が…生まれて初めてできた“仲間”だからだ」

 

「なか、ま? ……え、なんで?」

 

 

 うつつは、タイキックの答えに引いた。会ってすぐの人を仲間とか、この人も馴れ馴れしすぎでは?と。

 だが、タイキックは続ける。

 

 

「私は港町で覚醒してから、私を知る者と出会った事がなかった。私のように、記憶がない者とも出会った事がなかった。会う人全てが、自分自身のことをよく知っていて当たり前のように振る舞っていた。」

 

「!」

 

「私には記憶がない。身に着いた体術と“タイキック”という言葉以外は………全く知らない。本名すら分からない始末だ。

 私からそういう事を聞いた者からよく、向けられたのだ………哀れみの目を。

 悪気はないのだろうが…『記憶が無くなっちゃったなんてかわいそう』と…目を通してそう言われている気になってしまうのだよ。私は、その目がなんとなく苦手だった」

 

 

 うつつは、目を見開いていた。

 そういえば、行動力の化身という陽キャの王道みたいなこの人も、自分と同じように記憶を持っていなくて、自身が誰だかも分からないんだっけ、と。

 しかも、そんな“らしくない”悩みを、人知れず抱えていたなんて、と。今まではこの人はちょっと強引だし行動力の化身だしで、いっちばん苦手な部類の人間だと思ったけど、どうやらそうではないのかもしれない、なんて思い始めている自分自身にうつつは気が付いた。

 

 

「だが、うつつは私を一度もそういう目で見なかったな。それどころか、自分も記憶喪失だなんて言ってくれて……初めて仲間が見つかったみたいで嬉しかったのだ。本当だぞ?」

 

「そ、そんなことを言われても………私、記憶ないのは本当だし、タイキックと違ってダメダメだし、今の話だって、知らなかったし……」

 

「当然だ。いま初めて話したんだからな。まぁそういう訳だから、うつつ。君は、私にとって一番特別な仲間だ。そう思うのは……わがままだろうか?」

 

「わっ、わわわわわがままだなんて! 私からすれば、私が助かった事自体がわがままみたいなものだし………それに、良いの? こんなダメダメで取り柄のないへっぽこ人間を一番の仲間だなんて言っちゃって……」

 

 

 初めて聞いた、タイキックの意外なる脆い部分。それを目の当たりにして、テンパりまくるうつつ。

 そこに、第三者の声が入ってきた。

 

 

「どんなに自分をへっぽこだと思っていても、諦めなければきっと誰かが傍にいてくれる。」

 

「………」

 

 桃だ。彼女は、うつつとタイキックの間に立って、想いを言葉に乗せる。

 それは、誰かが……今の桃では思い出せない誰かが、彼女に言ってくれた言葉だ。

 

「……あきらめなければ、道は拓ける。誰かから、そう言われた気がする。

 なんでだろう。あまりよく覚えてないんだけど……助けたり、助けられたり、そうやって元の世界では、誰かと一緒に…………」

 

「それはシャミ子様のことです!!!」

 

「!」

 

 

 大切な言葉を、誰から教えてもらったのかが分からない……桃は確かに悩んでいた。きっと、思い出せなかったのだろう。ただし、一人だけならば。

 ランプは、桃と仲良く過ごしていた者の正体を知っていた。

 

 

「皆様は一緒に暮らしていたんです! 街で色んな人に出会って、お互いに助け合っていました……魔法少女も魔族も関係なく…!」

 

「ちなみに余はどんな感じだったの?」

 

「シャミ子様に振り回されてる感じでした! 借金を増やされてしまったり!」

 

「退治すべきまぞくはこっちじゃない?」

 

「ノォォォォ!ノォォォォ!! 身に覚えのないことで退治はやめてくれ!?

 余は悪いまぞくじゃあないから! 見逃してくださいなんでもしますから!!」

 

 

 魔法少女と魔族の共存していた物語。それは、まぎれもない『まちカドまぞく』の物語だった。

 ランプは、桃たちが何故か忘れてしまっていた記憶を次々に話していく。その傍らで、リリスがミカンに狙われてなりふり構わず命乞いをして、魔族の威厳を失っていったのはお約束だ。

 

 

「そう………なんだか忘れてしまってるのは悔しいわね」

 

「魔王……いや、シャミ子と友達だったんだね……もう一度会って、話をしてみたいかも。」

 

「それに、このままシャミ子様を放っておけば、原書の聖典もどんどん汚染されて……皆様も消えてしまいます」

 

「「「!!!」」」

 

「それは…………ランプ、それは本当なのか!?」

 

 

 シャミ子だけじゃなく、聖典が汚染されると桃達も消えてしまう。

 念を押すかのように尋ねたタイキックに対して、ランプは首肯する。

 

 

「かつて、同じように聖典が汚染されて聖典が破壊されかけた事件があったそうなんです。

 詳しくは私も知りませんが……私達も急ぐべきでしょう。」

 

「…結局、シャミ子を助けるしかないんだ」

 

 

 過去の聖典破壊未遂事件のことを語り、危機感を提示するランプに、うつつが行動方針を口にする。

 秘密基地で語り掛けてきたあの声は言っていた。「シャミ子を絶望させた」と。「絆を断ち切った」と。きららは絆を断ち切ったという言葉が妙に引っかかっていた。だが、兎にも角にもシャミ子を助けに行かなければならない。そうするしか、桃達が助かる道はないのだから。

 

 

「なら―――目下の壁は二つだ」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「ひとつ、どうやってシャミ子を正気に戻すか。

 ふたつ、あの馬鹿でかいウツカイをどう攻略するか。

 これらを突破しない限り、元凶らしきあのクソガキをぶっ飛ばすことは出来ない」

 

「ローリエ先生、ウツカイを倒してきたんですね!」

「てか、くそがきって……」

 

「基地で聞いたあの声の主だよ。推定、ランプと同年代の女の子だろうな。

 ウツカイとあのクソガキだけなら倒すだけだ。だが、シャミ子が人質になってるからな…」

 

 

 そこに、ローリエが合流した。きららとタイキックがうつつを追う時にウツカイの足止めと露払いを引き受けた彼だが、どうやら残ったウツカイ達も殲滅してからこっちに来たようだ。

 そんなローリエが提示したのは壁だ。きらら達が目標―――『オーダー』された桃達に元の世界に帰ってもらうために必要な事だ。

 シャミ子も、元はと言えばクリエメイトだ。絆を断たれ絶望したことで凶暴な魔王になってしまっているが、どうにかして元に戻さなければならない。

 

 幸いにも―――ローリエには、シャミ子を元に戻す手段に心当たりがあった。

 

 

「シャミ子を正気に戻す方法だけど……リリスさん、あなたの能力でシャミ子の夢の中に入れないか?」

 

「!!? それは余の切り札だぞ!何故知っておるのだ!?」

 

「こっちの世界では、大魔族リリスの名は有名だ。俺の生徒みたいなファンも多い。芸歴5000年の闇の魔女の力をもってすれば、それくらい容易いんじゃあないか?」

 

「だ、大魔族!!? えーと………そうだな!今の余の力をもってすれば、シャミ子……どんな『他人』であろうが夢の中に入れる! おぬしらを連れていくこともお茶の子さいさいというものだ!!!」

 

 

 ローリエは、漫画(せいてん)でリリスがシャミ子に桃の夢に入る方法をレクチャーしていたことを知っている。

 たとえ秘密基地にいるであろうシャミ子に会えなくても、リリスの能力でシャミ子の夢の中に直接アクセスできれば巨大ウツカイの邪魔が入ることなくシャミ子と話せると踏んだのだ。

 リリス本人については、おだてて持ち上げれば乗ってくれると思っていた。そして思惑通りである。思い通りすぎてちょろまぞくだ。どうやら、乗せられるとチョロいのはシャミ子に限らず、一種の血縁だったようだ。

 

 

「えぇ……なんかリリスさん、チョロ過ぎない…?」

 

「あの子孫にこの先祖ありというやつだ。桃もなんとなく分かってるかもしれないが、シャミ子もあれくらいちょろかった」

 

「…なんか心配になってきた……」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

 

 こうして、一行はリリスの能力でシャミ子の夢に潜ることになった。

 その際、きららの能力―――パスを感じ取る能力と、秘密基地の少女の「絆を断ち切った」発言について、「絆=パスを切ったんじゃあないか」と自分自身の推測を共有することになる。

 

 




キャラクター紹介&解説

住良木うつつ
 一回心が折れたが、きららやランプ、タイキックの言葉で落ち着きを取り戻す。この頃はただただネガティブな発言が目立っていて、あまり好きになれないプレイヤーも多かったのではないか。だが拙作では、立ち直るきっかけに、タイキックの人知れぬ葛藤を知りちょっとだけタイキックに心を許すようになる。

タイキックさん
 記憶喪失仲間の為に身体を張って説得したムエタイキックボクサー。誰にも言わなかったが記憶喪失を知った時の同情がほんのちょっとだけ苦手だった。悪気がないのは分かっていたので敢えて言わなかったが、それ故に同じ記憶喪失のうつつに親近感を持てたことを正直に告白。うつつの本当の“記憶喪失仲間”となる。

ローリエ
 きららとタイキックがうつつを助ける為の道を開いた八賢者。銃と爆薬を用いた殲滅戦で、きらら達を囲んでいたウツカイを全滅させた。これで、ヒナゲシ陣営のウツカイはほぼ壊滅したことになる。なお、巨大ウツカイに殴られたダメージはほぼない模様。

リリス
 ローリエに乗せられ、シャミ子の夢に入るために切り札の能力を使う事を快く承諾したちょろまぞく。この先祖にしてあの子孫あり。




△▼△▼△▼
桃「とうとう私達は、シャミ子の夢に潜入した。」
ミカン「でも、シャミ子は私達をまだ敵視してる……!うわっ、攻撃してきた!」
桃「流石は夢魔……こっちで戦うのが本領ってわけか…」
ランプ「桃様!シャミ子様!それ以上戦うのをやめてください!!!」
タイキック「そうだ!友達になりに来たのに戦ってどうするんだ!」
ローリエ「そんなの皆百も承知だが……どうする?どうにかして、シャミ子を止めないといけないぞ!?」

次回『Sの迷宮/闇色防衛線を突破せよ』
桃「次回もお楽しみに。」
▲▽▲▽▲▽
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