きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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“先に言っておくが…あの少女の確保は、俺の感情ひとつの問題じゃあない。街に被害が出てしまっている以上、やるべき事をやらなければならない……そういう、八賢者としての責務もあったんだ。”
 ……ローリエの独白


第10話:町かどタンジェント

 俺の機転によって動きを封じられたシャミ子は、すぐにリリスさんによってチート武器を封印されたのであった。

 

 

「ううぅぅ…チート武器解除ー! ………くっっっさ!?!?!?!? ぐふっ…」

 

「リリス様ー!? お気を確かに…くさいっ!!!」

 

 

 ……おい、あんま「臭い」って連呼しないで?

 俺に言ったんじゃないのは分かるけど、流石に凹むぞ?

 …とはいえ、このバトルフィールドがウ〇コ臭くなったのは確かだ。換気のひとつふたつあると思ったのに、臭いがこもるじゃねーか!!

 俺は特製の鼻栓をしたからある程度大丈夫だけど……

 

 

「誰だ、こんなに臭くしたのは…!」

 

「「「「「あんた(あなた)が言うな(わないでください)ッッッ!!!!」」」」」

 

 

 とりあえず、テンプレのボケをかましたところで、シャミ子の説得フェーズに移る。

 なんとかして、シャミ子の切れたパスを元通りにしなくっちゃいけない。

 ―――と、いうワケで。

 

「やっておしまい住良木さん」

 

「私ッ!? え、普通にイヤなんですけどぉ…!?

 なんでこのタイミングで私に振るの? っていうか、やっておしまいって何をぉ!?」

 

 突然の俺からの無茶ぶりに慌てふためきうろたえながらも、そうツッコむうつつ。

 この人、性格的にツッコミの方が似合っているな。無理やりなにかやらせたくなる人間ってのは、こういう子のことを言うんだろうか。

 だがこれは、決して更なるボケに走ったワケでも考えが及ばなくなった末の投げやりでもない。

 

「さっき、うつつさ……シャミ子の苦悩を『ちょっと分かるかも』って言ってくれたじゃん?」

 

「え、そう………だったような…?」

 

「言ってたから自信持って良いぞ。

 で、だ。そういう風に苦しい感情を理解してくれる奴の説得の方が聞くんじゃないかと思ってな」

 

「む、無理だってぇ…できる気がしないよぉ……私みたいなくそざこダンゴムシの言葉なんか信じても良い事ないのにぃ〜……

 そもそも、人の気持ちなんて簡単に分かるわけないのに……シャミ子のだって、そんな気がしただけだから…」

 

「問題ない。本当に人の気持ちが分からん奴は『分かるかも』とか『分かる気がしただけ』とか絶対に言わないからな」

 

 

 そういうタイプの人間は、大抵人の気持ちについて『時間の無駄だ』と一切聞こうとしないか『本物のバカだよ!』と嘲笑うかのどっちかだ。少なくとも、もっとハッキリした物言いになるだろう。

 閑話休題。

 とにかく、今のシャミ子相手にはうつつに説得してもらった方が良いのではないか、と考えたのだ。俺がやっても良いが、うつつの方が効果ありそう。

 そう思っていると、うつつの肩に手を置く存在がいた。

 

 

「うつつ、大丈夫だ」

 

「タイキック……」

 

「私は、お前を信じる。たった一人の記憶喪失仲間だ。お前は、自分の思ったことをそのまま言えばいい。

 もし失敗しても…私達がなんとか止めてみせるぞ」

 

「う、うぅ……分かったから、ミスっても恨まないでよぉ…?」

 

 

 頼もしくハッキリ言うタイキックさんに背中を押されたのか期待に押し負けたのか、うつつはおっかなびっくりシャミ子に向き直って、深呼吸をひとつ。しかるのちに、シャミ子に声をかけた。

 

 

「あのね…シャミ子。あんたさっきから見捨てられるとか何とか言ってたけど……

 こいつら、あんたを倒しに来たんじゃないんだよ。助けに来たんだよ…?」

 

「え……助け、に?」

 

「あんたの記憶、見たよ。こいつらと、楽しそうにうどん食べてたり、映画見てたりしてた。

 おまけにこんな、真っ暗な夢の中まで助けに来ちゃうような連中だよ?

 私みたいな友達ゼロのゴミムシにはよくわかんないけどさ。あんたたちさ―――本当は、友達だったんじゃあないの………?」

 

 

 するとだ。その時、不思議な事が起こった。

 

 

「友達……?いえ、違います。

 桃は、桃とは…そんな関係じゃなくて………

 …あれ?なんで私泣いてるんだろう。花粉症ですかね…?」

 

「うっすらとだけど、糸が見える…………

 そっか、これが切れたパス! なら、これを繋げば…!!」

 

 シャミ子が泣き出す。それは、悲しい涙ではなく、温かいものだった。

 それと同時に、きららちゃんがシャミ子と桃に向かって走り出す。そして、俺には見えないなにかを手にとって、祈るように叫んだ。

 

「お願い!思い出して! あなたたちの絆は、そんなに弱いものじゃないっ!!!」

 

 きららちゃんの必死の願いが反映されるかのように、その場一帯が、眩く光り輝く。

 十秒近く輝き続けた光が治まった後に見えたのは、呆然とした桃達と、晴れやかな表情を取り戻したシャミ子であった。

 …ってことはつまり…!!

 

 

「桃は、友達よりも大事な……宿敵。

 あー!! そう、宿敵ですよ!! 何で今まで忘れてたんでしょう!?」

 

「私も、急に思い出してきた……!

 なんでこんな大事なこと、忘れちゃってたんだろう?」

 

「よっし…!!!!」

 

 

 シャミ子に…シャミ子達に記憶が戻った!!

 この時をどれだけ待ちわびたか。シャドウミストレスによって街が襲撃されたのを知った、その時からか。それともあのクソガキからトリックを知った時からか。

 それに、今きららちゃんが何をしたのかも分からない。この土壇場で、なんか新しいチカラに目覚めたのだろうか?

 パスを断ち切られたことで皆が記憶を忘れてたってことは……思い出させた…つまり、パスを繋ぎなおしたってコトなのか!?

 詳しい事は後で聞くとしよう。今は、シャミ子が元に戻った事を喜ぼう。

 

 

「う、うううううう………借金の存在を思い出した!

 今回のことも合わせると…雪だるまぞくです……」

 

「まったく、余の子孫ながら、いいように遊ばれおって、情けない!」

 

「大丈夫。借金は、分割して返してくれればいいから」

 

「…おかえり、シャミ子」

 

「うぅ…この借りは、絶対に一括払いします!

 首を洗って待っていろ~~~~ッ! あと臭いのがまだ残ってるッ!!」

 

「うん、待ってる。だから―――いっしょに帰ろう?……なる早で」

 

 

 ともあれ、シャミ子の絆が戻った以上、ここにいる理由はもうない。

 後は、現実世界のシャミ子を取り戻すだけだ。それに…………

 

 

「…やばい、そろそろ鼻がひん曲がって戻らなくなりそう」

 

「あんたの自業自得でしょぉ!?」

 

「そうですよ先生ッ! いくらシャミ子様の足止めとはいえ………何てことをしてくれたんですかッ!!」

 

 

 しょーがねーだろ。もたもたしてたら皆消えちゃうんだから。

 そう弁明する時間もなく、俺達は夢の世界から強制的にログアウトした。

 リリスさんが臭いに耐えかねて能力を解除したのか―――

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ―――現実世界に戻った事を確認した俺は、すぐに鼻の異常を調べた。が、特に問題ナシ。良かった。

 次々に起きた皆も、一様に自分の鼻が曲がってないことを確認しててある意味面白かった。その直後にみんなから叱られたけど。

 

 

「ところで…きららさん、シャミ子様たちが元に戻ったのは、きららさんが何かしたからなんですか?」

 

「うん…シャミ子さん達の間に糸みたいなのが見えて……それを結びなおしたんだ。仲直りしてってお願いを込めながら……」

 

「そっか。きららは切られたパスを復活させる力に目覚めたのかもしれないね」

 

「そいつはすげぇぜ……ここで新能力に目覚めるなんてな!」

 

「新能力といえば、なんですけど…ローリエさんの剣や植物を出した能力は、何だったんですか?」

 

 パスが切られて凶暴化したシャミ子が立ちはだかったこのタイミングでそんな能力に目覚めるとは……流石は『きららファンタジア』の主人公、といったところなのだろうか。

 それと、きららちゃんも夢の中の俺の戦い方が気になったようで聞いてきたので、ランプと全く同じ説明をしておいた。

 

「『レント』……私の『コール』からそんな魔法を派生させてたなんて…」

 

「ローリエ。君は分かっているのか? どんな魔法を生み出したのか、その意味を。

 術者の記憶から物語の人物を反映させる……そんな魔法、前例がないことくらい分かってるだろう?」

 

「当たり前だろ? ランプやソラちゃんが羨ましがるくらいにはスゴイもんだと分かっている。それに……前例なんてもんは、作り出すって気概の方が丁度いい」

 

「………」

 

 

 あれ。マッチの言葉にちゃんと答えたのに、こいつ「そうかもしれないけど……」って顔してるぞ。まぁ、おおよその予想はつくがその辺の話をしだすと脱線する上に時間かかるから後だ。

 シャミ子のパスは元通りにしたのだが、肝心のシャミ子本体はまだあの秘密基地に囚われたままだろう。さっさと助けにいってやらないとな。

 

 

「きららちゃん、シャミ子のパスは感じられるか?」

 

「はい。シャミ子さんのいる場所ははっきりと分かります。これでもっと、クリエメイトの助けになれますね」

 

「なぁ…少し、待ってくれるだろうか?」

 

 ? タイキックさん、どうしたんだ?

 

「うつつがな…」

 

「はぁ………これで私だけが役立たずレベルがあがっちゃったな……」

 

「いや、それは違うぞ。うつつがいなかったら、シャミ子が元通りにならなかったかもしれん。

 それに、うつつがいたから、私は心の内を曝け出せた。

 今でこそ思うが、あの思いは、早めに口にするべきだったんだ。そんな気がする」

 

「わぁー!? うつつさん落ち込まないでー!」

 

 しまった…うつつの事を忘れていた。

 新たな力に目覚めたきららちゃんと新たな力を披露した俺によってネガティブモードが更にネガティブになってしまったうつつをしっかり慰めて、落ち着かせた後、俺達は秘密基地へと急ぐのであった。

 

 

 

 

 

 

「ウゥゥゥゥゥゥツゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

「けっ…やっぱりいやがるな」

 

 

 改めて突入した秘密基地内にて。

 俺達は再び巨大ウツカイと相まみえた。

 

 

「ウツゥゥゥーーーーーーーー!!」

 

「―――ッ!! 問答無用か!」

 

 

 ショットガン・アイリスに弾を込め、右肩めがけて撃ち込めば、風穴が空いて右腕がちぎれた。

 

 

「ウツゥーーーーーーーーーーッ!!!」

 

「皆! 先に行け!」

 

「ローリエさん!!?」

 

「俺がコイツをブッ倒す! だから……早くシャミ子の元へ行ってやれ!!」

 

 

 そう言えば、きららちゃんや桃達は頷いて、悶える巨大ウツカイの隙間を縫うように奥の扉へ向かった。

 巨大ウツカイが、「なにウチのこと無視して先行こうとしとるんじゃワレェェ!?」って様子で襲い掛かろうとしたが、俺はそれをアイリスの二発目の射撃で阻止する。

 

 

「おい、デカブツ。先に俺と戦おうぜ?」

 

「ウツーーーーーーー!!!」

 

 

 きららちゃん達の背中を狙わないように挑発すれば、目と目が合った瞬間激高する巨大ウツカイ。右手を再生させて、襲い掛かってくる。

 ジャンプで両腕のパンチを躱し、両足と片手を使って、しなやかに腕の上に着地。

 腕に乗られてすぐにそれを振り落とそうともう片方の手で薙ぎ払いにかかる、が。

 

「はああああああああああああ!!!」

 

「ウツゥゥゥゥ!?!?」

 

 すぐに弾丸の雨で左手を粉々にする。

 そして、巨大ウツカイの腕から肩へ駆け抜け、顔の目の前まで辿り着いて。

 俺は、パイソンをつきつけた。

 

 

月食弾(エクリプス)!!!

 

 

 放たれた16発のホーミング弾は、一瞬のうちに巨大ウツカイの顔へ、1発たりとも外れずに吸い込まれ、大爆発を引き起こした。

 爆風の衝撃を利用して巨大ウツカイから飛ぶように距離を取って、煙が上がった巨大ウツカイの顔を見る。

 煙が晴れた巨大ウツカイは―――首から上が綺麗さっぱり消し飛んでいて。

 そのまま……体が自壊していった。

 

 

「勝った………か…」

 

 

 巨大ウツカイの身体を構成していたであろう、絶望のクリエが降り注ぐ。それらが、雨のように俺の全身を濡らした。

 これで、俺も先に進める。きららちゃんだけを先に進めさせて、俺が残った甲斐があったというものだ。

 しかし、気になったのは………

 

 

「初見の時より弱くなったか?」

 

 

 最初はきららちゃんたちの総攻撃すらものともせず、俺の銃撃でも傷1つつかなかったはずだけど………絆が戻ったからか? コイツ、俺一人でも普通に勝ってしまえる程に弱体化してしまっていた。違和感レベルではない。明らかに弱くなっていた。

 そういえば最初に殴られた時も全然痛くなかったし…………まぁ、いいや。そんな事よりも優先すべきは。

 

 

「皆、すぐに行くぞ!」

 

 

 きららちゃんたちに任せた巨大ウツカイが塞いでいた道をさっさと進んで、合流する事だ。

 今回の事件……正直、異例といっていい。ウツカイといい、パスを断ち切られたクリエメイトといい…………もう、街にも被害が出てしまっている。

 シャミ子の救助はうまくやるだろう。でも、ここで事件を引き起こした元凶を捕らえられなければ、後が怖い。

 ヒナゲシ………とか言ったか、シャミ子を洗脳したの。

 八賢者の―――いや、俺自身の誇りに賭けて、絶対に逃がさねぇからな。首洗って待っていろ。

 物理的に取るわけじゃあないけど。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ローリエさんに「先に行け」と言われて、ちょっとだけ判断が鈍った。

 

「俺がコイツをブッ倒す! だから……早くシャミ子の元へ行ってやれ!!」

 

 そう言われてなかったら、動けなくなっていたかもしれません。

 

 

「きらら、大丈夫か?」

 

「タイキックさん…」

 

「これから、ヒナゲシとかいう奴と戦う事になるだろう。集中してくれ」

 

「ごめんなさい……」

 

「…父上なら、大丈夫だ。必ず生きて追い付いてくれる気がする」

 

 

 こういう時、タイキックさんの「そんな気がする」は、頼りになるな。

 どうしても不安がぬぐえない時に、不安をなくす魔法みたい。

 

 

「タイキックさん、皆さん、行きますよ!」

 

「「「「「「はい(うん)!!!」」」」」」

 

 

 最後になるだろう扉が見えてきた。後は、あそこまで行ってシャミ子さんを助けるだけ。

 でも……そこで、今までに見たことのない悪意と遭遇するのを、私はまだ知らない。

 

 

 

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 うつつに無茶ブリをしたかと思えば、巨大ウツカイ相手に一人で戦った拙作主人公。ウツカイの生態に謎が多くまだ分からないことが多いが、とりあえず勝てたのでさっさときらら達に合流しようと思っている。

住良木うつつ
 ローリエにシャミ子の説得と言う名のキラーパスを受けてテンパりまくる2部のキーキャラ。ローリエにとってはただのキラーパスではなく、作中で言ったように闇堕ちしたシャミ子の心に寄り添えそうだからという人選だったが、本人にとってはやはりキラーパスでしかない。だが、タイキックのサポートもあり、しっかりと無茶ブリを達成した。

シャミ子&千代田桃&陽夏木ミカン&リリス
 きららによって、絆が復活した。決してクサい仲ではない。夢魔の銀杏爆発のせいとはいえ、そういうことを妄想したいやらしまぞくはお帰り下さい。



まちカドまぞく
 伊藤い○も氏によって2014〜2022現在連載中のファンタジーコメディ。魔族と魔法少女が存在する日本で、吉田優子が魔族の力に目覚め、シャドウミストレス優子と名乗り魔法少女の千代田桃と出会う。そこから始まる、ゆるギャグコメディ。笑い一辺倒ではなく、意味深な描写が多く、そこもまた人気獲得の要因となっている。



△▼△▼△▼
ヒナゲシ「ずるい…ずるいの!シャミ子ちゃんはわたしと同じで弱くてくそざこなのに……クリエメイトはずるいの!」

ローリエ「黙れ。お前とシャミ子が同じワケねーだろ。さっさと口を塞げ。」

ヒナゲシ「わたしは不幸だったの!だから、みんな不幸になっちゃえば―――」

ローリエ「お前、もう喋らなくていいぞ。引導を渡してやる」

きらら「ローリエさん、ダメっ―――」

次回『復讐の少女!罪に哀しみのブルースを』
うつつ「…………次回を見ればぁ…?」
▲▽▲▽▲▽

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