きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
“諸君、歴史は好きかな?アレには沢山の学びがある。例えば―――クーデターを目論んだ者の末路がどうなるか、とかね”
……木月桂一の独白
「どうして……どうして、シャミ子ちゃんたちの絆が元に戻ってるの…?」
秘密基地の最奥部。
ヒナゲシは、これ以上もなく、焦っていた。
さっきまでは速攻で秘密基地を暴かれた事で焦っていたが、巨大ウツカイがローリエを殴り飛ばして、きらら達が退却したことでひと安心していた。
これでもう一回シャミ子を使った侵攻や聖典の破壊を進めようと思ったところで、シャミ子の絆が復活していることが判明し、驚き戸惑っているのだ。
切れた絆が治るはずないのに、どうして元に戻っているの?……その思考が、ヒナゲシを支配していた。
「私は、桃をいつか眷属にするって決めてますから!
確かに私はざこまぞくですけど……全て取り戻すまで諦めません!
おかーさんも良もお父さんも、みんなで仲良く暮らすんです!―――それが私の野望だ!」
「ずるい……そんなの、ずるいの!
クリエメイトはずるいの!! どうして、どんなにダメダメな子でも友達がいるの…!?」
野望に燃えるシャミ子が癪に触ったのだろう。悲痛な声で、クリエメイトを糾弾する。だが、こんな事を言っている時点でたかが知れてるというものだ。
シャミ子は前を、自分の未来を見ている。それに対して、ヒナゲシは後ろ、及び周囲の人間しか見ていない。
幼いながらに憎悪に囚われ、心をかき乱されてるヒナゲシは、その違いに気づかない。
「もしかして、ヒナゲシさんは友達が欲しいんですか? だったら―――」
「うるさい!うるさい!ズルいの!!!
シャミ子ちゃんはわたしとおんなじだから絶望するの!!!」
根から良い子のシャミ子が、ヒナゲシの闇の正体に気づきかける……が、この手の人間はプライベートに踏み込まれるのを極端に嫌う。シャミ子の差し出した手を、ヒナゲシは容赦なく振り払い跳ね除けた。
「リアライフ!!」
「ぐぁぁぁっ!!? これで勝ったと………
……いや、負けるかーー!!!」
「!!?」
「ここで負けたら、また桃に筋トレさせられる!!」
逆上したヒナゲシに再びかけられたリアライフ。
シャミ子はそれに、気合いだけで耐え抜いた。
「シャミ子!今日のご飯なに?」
「それを言いながら突入するのどうかと思うわ!?」
「余、参上だ!!」
「ごせんぞ!桃!ミカンさん!そして…夢で会った皆さん?」
「シャミ子様、お待たせしました!」
「あなたが、ヒナゲシ? シャミ子さんを放して!」
そして、そこにきらら一行が到着したことで。
最初の戦いの火蓋が、落とされる。
◇◇◇◇◇
「あなたが、ヒナゲシ? 今すぐシャミ子さんを放して!」
「イヤ! そんなことしたら……お姉様に見捨てられちゃう!
いいじゃない!みんな不幸になっちゃえば!! だって……わたしは不幸だったもの!!!」
きららの宣告に、ヒナゲシは全力拒否。そして、心の内を吐露した。
自分が不幸だったから、幸せな人物が憎いのだ。そういう人々を、不幸にしようとせずにはいられないのだ。
己が不幸だった故に幸せを取り立てようとする、妄執に囚われた人間の、怨嗟の声。その悲痛な声に、きららたちは何も言う事が出来なかった。
―――ただ、二人を除いて。
「……その気持ち、分かるよ」
「うつつ!?」
「私も幸せになれる気がしないし……この先もずっとダメダメだと思うから……」
「私も、過去の記憶は全くないが……もし、記憶を失う前の人生が辛いものだったなら……と思った日もあった。
下手に思い出したら後悔するかもしれない……そう思わなかったワケではない」
「タイキックまで…!!?」
「だったら、二人もわたしと一緒に……」
「「それはイヤ(ないな)」」
「なんで!!?」
気持ちが分かると言いつつも、ヒナゲシ側に寝返る事を拒否。
二人のその理由は、実に。実に、彼女達らしかった。
「あんた見てたら…分かったんだ。自分が不幸だからって、他人まで不幸にしようとするのは……うん、ダサいって。ダサすぎて死にたくなるって。私は死にたくないから、そういうのは…やめるよ」
「ヒナゲシとやら……色々言っていたが、要するにお前は『自分が不幸だったから不貞腐れて周りに迷惑かけます』と言って駄々を捏ねているだけだ。
幸せは自分で掴むべきだ。それを理解せず、己が不幸だと思い込んで周りに迷惑をかける……そんな輩に手を貸す者などいるワケがないということだ。この私も含めてな」
「!!?」
ヒナゲシの痛ましい言動を見て自分の身の振りを考えたうつつ。
ヒナゲシの主張の本質を身も蓋もなく暴いたタイキック。
二人の冷静な一言に、とうとうヒナゲシの堪忍袋の緒が切れた。
「ダサい…?迷惑……? 好き勝手言ってくれるの……! なんにも知らないくせに…!!!」
怒りの悲鳴と同時に、ヒナゲシは矢を番える。そして、すぐさま弓から矢が放たれた。
風の魔力を纏った矢は、きらら達にまっすぐ飛んでいき。
「ふっ!」
タイキックに、蹴り落とされた。
「いいの……だったら、あなたたち全員を倒せばいい!!
わたしにはもう、それしかないの!!!!
真実の手が一人…『弓手』のヒナゲシが、絶望のクリエを搾り取ってやるの!!」
それが、開戦の合図だった。
「『コール』!」
「行くぞ、きらら! ここが正念場だ!」
「はい!」
きららは『コール』でゆずこを召喚した。一人しかいないのは、不意打ちを受けたため、迎撃の為に『コール』での詠唱時間を最短にしようとした結果である。
「やる気ビーム!」
「そ、そんなの……『ポピーボルト』!」
ゆずこの渾身の一振り。ヒナゲシに向かって真っすぐ飛んでいった斬撃は、ヒナゲシが放った矢によって軌道がズレて、そのまま秘密基地の壁を抉っていった。
それを意にも介さず、ヒナゲシは続けて矢を放つ。
「『スピリットアロー』!」
「あおうっち!?」
「ゆずこさん!」
「だ、だいじょぶだいじょぶ…」
「―――ッ!」
ヒナゲシの魔力を込めた矢がゆずこに当たるも、『コール』されたゆずこにとっては大したダメージにはならなかった。
それが気に食わなかったのか、矢を番える手を止めない。
「はぁーーーっ!!」
「ぬ!? どこを狙って――」
「そこなの!!」
初発の矢の数々が、きららとタイキックの足元に突き刺さり、咄嗟に距離を取った。
だが、ヒナゲシがその次に放った矢が先程の矢の着弾部分に刺さった瞬間……床一体が、大炎上した。
「なに…!?」
「炎が…!?」
「これでもうわたしには近づけないの……!」
「ひえええええ!!? ち、地下の秘密基地で火事とか正気かあやつ~~!?」
「わ、私、帰りたい! こんなところで死にたくないよぉ~~~!!!」
これが、ヒナゲシの黄金パターンであった。
最初に放った矢は、
この戦い方は、本来地下で行うべきではない作戦だ。火の燃え具合が悪くなるし、最悪自分も一酸化炭素中毒で共倒れだが………余裕のないヒナゲシは、形振り構わなかった。
だが、閉鎖空間でものを燃やす行動に、うつつとリリスが早速戦意喪失してしまっていた。
しかし―――きららとタイキックは諦めていない。
「くっ…こんなもの、私の蹴りの風圧でかき消して―――」
「待って、タイキックさん。それよりもいい方法があります」
「きらら?」
力業で突破しようとするタイキックを、きららが引き止める。
部屋が炎上し、更にヒナゲシの矢が襲い掛かるこの状況でも、きららは有効打を打てる確信があった。
何故なら彼女は―――『コール』を使う、召喚士であるから。
「水で鎮火させます。だから、タイキックさんはヒナゲシを」
「…分かった。信じよう」
「え? ちょっときららさん? ひょっとして私をッッッ」
きららがゆずこを帰し、代わりに『コール』でこの状況をひっくり返せるクリエメイトの召喚にかかる。
「させないの!! 必殺『スコールボルト』!!!」
だが、その様子に気付いたのか、ヒナゲシは雨のように山なりに襲ってくる矢を、無数に放った。
きららの頬に冷汗が流れる。『コール』に集中しないといけない以上、回避に専念したら『コール』が途切れてしまう。
と、考えていると。
「させないのはこっちの台詞だ…!」
タイキックが、右足に光を纏って、きららの前に躍り出た。
「『ムエタイキック・カオマンガ』!!!」
それは、まさしく人間が生まれ持った肉体から放つマシンガンであった。
目にもとらえきれない、光り輝く右足の連撃が、きららを襲う無数の矢を全て弾き飛ばしたのだ。
そこには、戦闘に必要な攻撃力だけではなく、洗練された美しさがあった。
目の当たりにした者たちは、連続蹴りによって無惨に蹴散らされた矢の残骸が、弾かれた露のように錯覚したという。
「そ…そんな……」
一瞬ののち、ヒナゲシが目にしたのは、完全に鎮火した炎の跡と、きららの傍らに立つ歌夜・トオル・由紀であった。
タイキックが生み出した時間を使って水属性のクリエメイトを召喚し、すぐに火に薬液や水の魔力をぶっかけたのである。
自身の黄金パターンが破られたその様子を見て、茫然自失としたヒナゲシは気付くのが遅れた。
―――さっき大技を放ったタイキックが正面の視界から消えていることに。
「…!!! さっきの女はどこに―――」
『ヒナゲシ、タイキックー!』
何処からともなくアナウンスが流れる。
軽快な音楽が流れたタイミングでヒナゲシは異常に気づく………が、もう遅かった。
ヒナゲシの背後で、タイキックがヒナゲシの尻に向かってタイキック2秒前の様相で構えていたのだから。
「デリャァァァァァァぁぁぁぁぁ!!」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
ヒナゲシの臀部に直撃した、迅速のキック。
あまりの痛みに、弓と光る宝珠のようなものを取り落として、膝をついた。
タイキックをモロに受けた以上、しばらく立つことも叶わないだろう。勝負は、ついた。
「おや…何か落としたぞ、コイツ……」
「!!! 駄目っ、それは―――」
タイキックが落とした宝珠を拾う。
それは僅かに禍々しい光を放っていたので良くないものだろうと思ったが、ヒナゲシが必死に止めてくるので予想は正しいと判断し、すぐさま足で踏みつけて力を入れた。
小さな宝珠には、それに耐えきれる強度がなかったようで、タイキックに踏み潰されると、粉々に砕け散った。
「そんな……ハイプリス様から頂いた、リアライフの発動体がぁ………!!!」
「ハイプリス様?」
ヒナゲシの今の言葉は、まるで誰か別の人間から任されて遺跡の街を襲撃したみたいではないか。
タイキックが引っかかった疑問に答える間もなく、ヒナゲシはうずくまったまま、何かの魔法の準備をしている。
「覚えておきなさいなの……わたしなんて真実の手の中では一番の小物なんだから―――!!」
「ま、待ちなさい!」
「待って!」
「さっきの言葉、どういう意味だ!」
捨て台詞を吐いて、転移魔法の陣に包まれるヒナゲシ。
きららとランプ、タイキックがそれを止めようと言葉をかけるが、転移をやめる気配がない。
そのタイミングだった。
バァァァン!!!
「ひゃぁぁっ!!?」
「「「「「!!!!?」」」」」
破裂音と共にヒナゲシがのけぞり、転移魔法の陣と光が消え去ったのは。
きらら一同は破裂音の発生源がほぼ真後ろだったことに気付き、即座に振り向いた。
すると、そこには。
「気になる事言ってくれるじゃないか。もちっと残って俺と話をしようじゃないか」
煙を吐く拳銃・パイソンを握るローリエの姿があった。
軽口をひとつ叩いた彼の顔は、全く笑っていなかった。
◇◆◇◆◇
「八賢者、ローリエ………!」
…間一髪、間に合ったってところか。
巨大ウツカイを始末した後、先行させたきららちゃん達に追い付くように全力疾走していたワケだが、到着したと思ったら黒幕であろうヒナゲシがタイキックさんにタイキックされて、意味深なことを言って逃げる10秒前みたいな状況だった。
ここまで来た以上、逃がすわけにはいかない。シャミ子を救出はできたようだが、逃げようとする実行犯に声をかけるあたり、きららちゃん達もまだまだ甘い。
こういう時は―――実力行使で、逃がさないようにするのが圧倒的に早く、合理的だ。
「お前が、シャミ子に街を襲わせた実行犯でいいんだな?」
「わ、わたしじゃないの…シャミ子ちゃんが、シャミ子ちゃんの意志で―――」
「今更とぼけなくていい。ネタは上がっている」
『あなたから楽しい事や嬉しい事を奪っていく敵なの。
健康も、うどんも、なけなしの500円も、鉄板も……ぜんぶ、奪っていくの。』
『そ、そんな…やめてください…
おかーさんや良が、悲しみます…』
『―――っ!
そうしたら、お母さんも良ちゃんも、そんなよわよわシャミ子ちゃんを、見捨てるかも……』
「!!?」
先程回収したG型の映像をつきつける。
そこには、『リアライフ』をかけたシャミ子に残酷な事を吹き込んで、絶望させるヒナゲシの様子がありありと映っていた。
―――正直、はらわたが煮えくり返った。
クリエメイトにこんな事を平気で吹き込んで、絶望させて……最終的には消そうとした。おそらくそれが、ウツカイの指令書にあった「聖典を破壊する」ということなんだろうが…………何様のつもりだ。
何の権限をもってこんな事が許されると思っている?人の命を、幸せを、何だと思っているんだ…!!
「言葉は選んだ方が良いぞ。俺は今スゴく怒っている。女子供だろうが容赦はしない」
「あ…あなたなんかに話す事は無いの!」
転移魔法で逃げようとするヒナゲシ。だが、無駄だ。
「……? なんで…なんで………転移ができないの!?」
「転移は厄介な逃走手段だ。手を打って当然だろ」
最初にヒナゲシに撃ち込んだ弾丸は、魔法封じの弾だ。サイレンサーとおんなじ原理で、弾丸に相手の魔法の発動を大きく妨げる効果を付与した。これで丸一日は、転移魔法すら使えまい。
逃げられないことを察したヒナゲシは、懐に手を伸ばす―――が、そうはさせない。先んじて懐に伸ばした手を撃ち抜いた。
「ぎゃああ!?」
「今、何しようとした」
「やめて!触らない―――あっ…!」
ヒナゲシの懐をまさぐってみれば、そこから出てきたのは通信機だ。これで緊急信号でも出す気だったか。
俺はヒナゲシの通信機を放り投げると、そのまま撃ち抜いてそれを破壊した。
基地の床に、通信機だったものが部品と共に叩きつけられる。
「そん、な…」
「お前を逮捕する。抵抗は無駄だ」
「―――っ!!」
投降通告に唇を噛む少女。
だがまだ諦めていないようで、落ちていた弓を取って番えた矢を俺に向けた。
「ふざけないで!! みんなクリエメイトが悪いのに…
不幸だっていいんじゃない! わたしが不幸だったのに…
だから―――」
そこから先は言わせなかった。
ヒナゲシの持つ弓の
「えっ――」
「だから、何だ」
持っていた武器が壊された隙に接近し、思いきりキックを腹に叩き込んでやった。
つま先が少女の柔らかい腹に食い込んでいくのを感じる。
くの字に曲がったヒナゲシを、そのまま基地の壁に叩きつけた。
「うっ―――があああああ!!?」
「お前のやったことは…只のテロだ!!
人々を苦しめ、クリエメイトを傷つけて……
あげく『私は悪くない』だと? 甘ったれるなよ、このクソガキが!!」
「ローリエさん!!」
「それ以上やったら死んじゃいます!」
ガシャァァァンと基地の壁が音を立て、ド派手にヒビが入った。
そこでようやく、我に返ったのかきららちゃんとシャミ子から制止がかかった、か。
ヒナゲシは………気絶してるか。もう抵抗したり逃げられる心配はない、と。
だったらと、俺はシャミ子に気になったことを聞いてみた。
「…シャミ子。コイツは
「それは……っ、でも、だからって殺すのは間違ってます! そんなおそろしげなことをしたら裁かれますよ!サバのように!!」
「サバのように裁かれるってなに…?」
シャミ子は必死に、シャミ子なりに反論する。
初めてバイオレンスなシーンを見たからか、傍から見ても動揺しまくっているのは丸見えだ。しっぽが大暴れしているし。そんな様子のシャミ子の肩に、桃が手を乗せた。
「ローリエさん。殺されそうになったら抵抗するのは当然です。でも…正当防衛を笠に殺してしまったら、それはもう過剰防衛になる。みんなが幸せになるには……それじゃあダメなんです。シャミ子は、そう言いたいんじゃないんでしょうか」
「あっ……おい、きさま人の台詞を取るな!」
「それに…ローリエさん、その子を殺す気はなかったんでしょ?」
「聞いているのか桃………え、殺す気なかったんですか!?」
「「「「えっ!?!?!?!?!?」」」」
きらら・ランプ・マッチ・うつつの四人はあれだけやっておいて殺す気はなかった事に驚いているが……ミカンとタイキックは別段驚いていないようだな。
流石、魔法少女というべきかなんというか……
「…あぁ。最初に言ったろ? 逮捕するって。抵抗したり逃げたりしないようにしただけだ。まぁ……ちょっとカッとなって、熱が入っちゃったけどさ」
「そうね。もし殺す気だったら、最初の攻撃の直後に、頭を撃ち抜いて終わりにすればいいだけだもの」
「そういうことだミカンちゃん。流石魔法少女だ、『ぶっ殺すって言った時には、その時スデに行動は終わっている』ってことか?」
「いや、そんなギャングみたいなものじゃないけど……」
「そうだったんですか…?」
「あんな怖い先生、初めて見ましたよ! てっきり殺すんじゃないかと…」
「まぁ、様子がいつもと違ったのは確かだね」
「うぅ……スプラッタはナシ? ナシでいいんだよね?」
「やはり、か。まぁ…そんな気はしていた」
殺す気はないと伝わったところで、気絶中のヒナゲシに魔法封じの手錠(コリアンダーら謹製)をかけて、転移の準備を始める。行き先は勿論、神殿だ。
「俺は今から、コイツを連行しなければならない。きらら、シャミ子を帰すことってできるか?」
「えっと、『オーダー』された皆さんをここに繋ぎとめてる楔があるはずなんですが……」
「あぁ、苺香の時のね。あれ、クリエロックって言うらしいよ」
「そうなのか、マッチ?」
「うん。前回の『オーダー』騒動では、クリエケージがクリエロックの役割も果たしていたってアルシーヴから聞いたけど……」
「…これじゃない?」
うつつが指さしたのは、円柱状の入れ物っぽい何かだった。中に、澱んだ色の何かが溜まっている。
「きっとそれですよ!」と大声で反応したランプに驚いたうつつが、その拍子に触った瞬間に入れ物が砕けて、中の澱んだものが澄んだ色になって、シャミ子達の中へ吸い込まれていったけど。
「よし。じゃあ後は任せるよ。俺はコイツの扱いについて神殿に持ち帰らないとだから」
「はい。ありがとうございました、ローリエさん!」
「ローリエがいなかったら、もっとピンチになっていた気がするよ。助かった」
「先生も気を付けてくださいね!」
「はぁぁ……やっと陽キャが一人減った…これで2%くらいは息がしやすくなる、かも?」
みんなの声に送られて(うつつの発言はどうなんだ?)、俺は神殿へ転移するためにキメラの翼を使用した。
………しかし天井に頭をぶつけた、はないからな? エトワリアの転移魔法の都合上、室内で使っても天井に頭をぶつけることはないから、その使い勝手の良さは非常に助かる。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
ヒナゲシ戦に遅刻した八賢者。だが逃走には間に合ったことでそれを阻止、結果的に捕獲に成功するという大金星を挙げた。この後、神殿にてヒナゲシに尋問をする予定。尋問といえばな伝説のネタがあるが、採用できるか否かは不明。
きらら&ランプ&マッチ&住良木うつつ
ローリエの変貌に驚いた原作主人公組。あわやヒナゲシを殺してしまうのではないかと言う気迫にきらら以外は動けなかったが、桃が真意を見抜いた故に安心した。ひとまずは。
シャドウミストレス優子
ヒナゲシの被害に遭っていたクリエメイト。シャミ子にしてみればヒナゲシは「ただ友達が欲しくて彷徨っているように見えた」だけで「敵」という認識はない。が、あまりにバイオレンスなシーンにしどろもどろになった。だが、それでもなんとか口にした言葉には、ヨシュアと清子が名付けた通りの“優しさ”があった。
千代田桃&陽夏木ミカン&タイキック
ローリエがヒナゲシを殺す気がないと最初から分かっていた人物たち。いちおう「逮捕する」とは言っていたが、ローリエの烈火の如き怒り具合にそれが頭から抜けていた人物が多い中、桃とミカンだけは歴戦の魔法少女の勘から殺意のなさを見抜いていた。もしローリエがガチで殺しに来ていたら彼女達3人が止めていただろう。
ヒナゲシ
第一章にてローリエに捕まるという、原作大ブレイクの煽りを受けて原作よりも酷い目にあった被害者。物語内ではガチの加害者であったが、自分は被害者だと本気で思っていたため、ローリエの怒りを買う。だが、彼女は『覚悟が決まり切っていない悪い子』であるために更なるひどい目に遭う事を予感できない。
△▼△▼△▼
フェンネル「わたくし、夢を見ましたの。とても珍妙で理解不能な夢を………え、それどころではない?…分かっております。ですが、ですがあの夢は!嫌でも記憶に残るッ!!」
アルシーヴ「お、落ち着くんだフェンネル。どんな夢を見たかは知らないが…」
フェンネル「ではアルシーヴ様。少しお時間を頂戴して…お話いたします。」
次回『珍夢と拷問と焼肉王』
ローリエ「焼肉やんないのー?」
フェンネル「ローリエ、少し静かに……あぁもう!!次回をお楽しみに!!!」
ローリエ「???」
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