きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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今回のサブタイトルは「仮面ライダーオーズ」風にしてみました。
前回に怒りのガチ回があったとは思えない程ネタに振っています。
それでは、怒涛の連続投稿、フェンネル視点からどうぞ。



“時にどのような崇高な思想も、人間元来の欲望に呆気なく負けうる。”
 ……木月桂一の独白


第12話:珍夢と拷問と焼肉王

「さぁ~みんな、集まって!『ミニシュガーちゃん』が、始まる」

と思っていたのか!

 

「………」

 

 

 ハイテンションなシュガー。それに集まるクロモン達。そこに現れたシュガーとペアルックで悪だくみ顔のローリエ。黙って見ているアルシーヴ様達と残りの賢者4人。それらを少し遠くから眺めているわたくし。

 ―――なんですの、これは。まるで意味がわかりませんわ……

 

 

「はい、ローリエ」

 

「うム。なんですかフェンネルさん」

 

「取り敢えず着替えてください。流石にそれはキツイと言わざるを得ません」

 

 シュガーの格好は、年相応の幼子でないと似合わないというのに、成人男性がそれを着るなど狂気の沙汰です。

 

「えー、もったいないよフェンネル! せっかく面白いのに!」

 

「おぞましいの間違いでは…」

 

『びっくり300円~

 びっくり300円~』

 

「ナニヤツ!!!?」

 

 

 突然ラジカセで意味不明な声が聞こえた。

 ローリエのオーバーリアクションをバックに振り返ると、そこには特徴的な眉毛のおじさんがいた。上裸にジーンズパンツをはき、額にマジックで『び』と書いてある。

 

 

「フフフ…びっくりしただろう…」

 

「い、いつの間に…!」

 

「これは驚いたね…」

 

 セサミ、カルダモン……これ、そんなに驚くことですか?

 驚いたというか、わたくしは全く展開についていけませんが…

 

「オレさまはだれかをびっくりさせることが大好きな―――びっくりおじさんじゃーーーーーーーーッ!!!」

 

「えい!」

 

「へぶっ!!?」

 

 そう大声で叫んだ直後。

 シュガーが自称びっくりおじさんを殴りました……金ダライで。

 

「今だ!畳みかけろ!」

 

「え?え?え??」

 

 目の前で起こった事に戸惑っている間に、他のみなさんが次々とびっくりおじさんを袋叩きにしていきます。

 ソルトは、一斗缶で。カルダモンは、スリッパで。ハッカは、フライパンで。ソラ様に至っては、生きたままのブリで………各々、明らかに武器ではないものを武器にびっくりおじさんを叩きのめしていた。

 

 

「フェンネル、ほら。君の分の武器だ」

 

「え、これ…………ネギですよね?」

 

「違う。首領(ドン)パッチソードだ」

 

「ネギですよね??」

 

「皆! 俺も行くぞ! 魔剣・大根ブレード!!!!」

 

「大根ですよね!?!?!?」

 

 

 あぁ~~もう!!わけがわかりませんわ!!

 ローリエも大根を手に突っ込んでいって、完全に伸びているびっくりおじさんにトドメを刺してしまいました。

 おまけに、セサミとジンジャーがシャベルで穴を掘って、びっくりおじさんを埋めてしまいましたし……そこに至るまで、わたくしは何もできませんでした。………いや、何もしない方が良いのかもしれませんが…

 

 

「さて、びっくりおじさんも倒した事だし……

 ソラちゃん!アルシーヴちゃん! 景気づけにこの練乳を噴射するから、上半身で浴びて欲しい!」

 

「え?」

 

「何故、そんなことを?」

 

「そして、練乳がぶっかかった状態で床にぺたんと座って、上目遣いにコッチを見るんだ」

 

 

 ただ、この指示で何を狙っているのか察しがついたわたくしは、練乳のチューブをローリエから奪い取り、白濁したドロドロでネバネバの練乳を、ローリエの目に思いきり噴射した。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「起きましたか、フェンネル」

 

「セサミ………えぇ、人の尊厳を守る夢を見ましたわ」

 

「人の、尊厳を、守る???」

 

 

 練乳が目に直撃し、アザラシのようにのた打ち回る言ノ葉の街原産のゲス悪魔を、養豚場から出荷される豚を見る様な冷たい目で見た辺りで目が醒めましたわ。

 

 

「お休み中に申し訳ありません。アルシーヴ様から、緊急の招集がかかりましたので、連絡に参りました」

 

「そうだったのですね、セサミ。ありがとうございます。ちなみに……どのような内容で?」

 

「実は……我々神殿に敵対する組織の幹部を、ローリエが捕えたらしいのです」

 

「何ですって?」

 

 

 一体、いつの間にそんなことを。

 わたくしは日々の警護と、その合間に仮眠をとっていただけですのに……

 

「……くっ、ぷふっ」

 

「フェンネル?」

 

「い、いいえ………なんでも、なんでもないのです…」

 

「???」

 

 言えるわけないじゃないですか!「夢でシュガーの格好したローリエが出てきた」なんて!

 夢の内容が内容なだけに、このことを口にしたら……頭の心配をされるに決まっています!

 アルシーヴ様から招集がかかっているのなら、なおさらですわ!!!

 

 

 

 

 

「皆、集まってくれてありがとう」

 

 ソラ様とアルシーヴ様の元には、既にわたくしとセサミ、ジンジャー以外の八賢者は既に集まっていました。珍しくカルダモンが出席していましたが、例のごとくジンジャーは市長の仕事でここには来れないようなので、これで全員集合です。

 

「今回は、我々に敵対する組織とその幹部の捕獲に成功したとのことで、ローリエから話がある。

 ……ローリエ、頼む」

 

「りょーかい」

 

 アルシーヴ様を中心に、緊急会議が開かれ、速報告係であるローリエの話が始まる。

 彼の話によると、先日カルダモンと行ったジャンクビレッジの調査で、神殿…特に聖典に対して反対する動きが現れ始め、聖典の信頼性を疑う噂が流れていたとのこと。その噂の中心にあると疑われたのは、『リアリスト』と名乗る組織とそこに所属すると思われる少女・ヘリオス(仮)の存在。

 そして、旅立ったきらら達が目撃したという遺跡の街の襲撃。ローリエはランプの要請を受けて助太刀に行ったことや、そこで起こった事件の概要と、黒幕であったヒナゲシの事、そして彼女を逮捕した事が次々と明らかになりました。

 

 

「まさか、遺跡の街でそんなことが起こってたなんてね…」

 

「お手柄ですよ、ローリエ。敵の幹部を逮捕なんて、そうそうできるものではありません」

 

「いや、でもなぁ。『真実の手』としか言ってなかったし、何よりシュガーソルトくらいの子供だったんだよ、今回捕まえたの」

 

「それでもだ、ローリエ。今回の手柄が大きいのは間違いない。ヒナゲシについては、目を覚まし次第事情聴取を開始しろ。方法は任せる」

 

「それなんだが…事情聴取で口を割らない可能性が高い」

 

 捕らえた『真実の手』の事情聴取が上手くいかない事を見越したような発言に、会議内が騒然とする。

 まぁ…犯罪者の中にはなかなか口を割らない人間もいるにはいますが……

 

「そもそも…ヒナゲシは聖典及びクリエメイトを強く憎んでいた。そんな連中からすれば、俺達やきらら達に負けることは屈辱以外の何者でもないはずだ。そんな状態の人間が、口を割るとは考えづらいだろう。たとえ自分の組織の勝利が絶望的になっても、せめて相手に得はさせまいと躍起になる。普通の尋問では何も情報は得られないと思った方が良い」

 

「厄介なパターンですね……」

 

「ならば、拷問する…という流れになるのですか?」

 

「えぇーーーっ!? 可哀そうだよソルト!」

 

 事情聴取でも口を割らないとなれば、拷問でもして話を聞き出すしかありません。

 ですが、シュガーが思いきり反対します。なんというか…甘いですね、この子は。敵に温情を与えるなんて。でも、無意識にそういう判断が下せる彼女だからこそ、“甘い”八賢者としてその地位にいるのかも知れませんが……

 

 

「大丈夫だシュガー。今回行う尋問では、暴力・暴言……この二つは使わないと約束しよう」

 

「「「「「「「!!!!?」」」」」」」

 

 

 ローリエ!? 一体、何故そんなことを言うのです!?

 拷問とは本来、暴力的な手段で情報を吐かせること……それなのに、その約束をしてしまっては、拷問にならないではありませんか! まぁ…人道的にはそれで良いのかもしれませんが……

 

 

「それでは、情報が得られないではありませんか!」

 

「なにも『かわいそうだから』とかじゃあない。理由がある」

 

「理由?」

 

「ヒナゲシの身体だが…ちょっと見ただけでも結構な虐待の跡があった。

 それの意味する所は………アイツは組織内、もしくは家庭内で日常的に暴力に遭っていた可能性が高い、ということ。

 そんな人間に暴力的な拷問を行っても、効果は薄いだろうからな」

 

「成程ね。それも厄介だ」

 

「あんな小さな子を、虐待ですって…!?」

 

 

 ソラ様の顔色が目に見えて悪くなる。アルシーヴ様に心配をされるが、「大丈夫よ」と退室を拒否した。

 ローリエの言っている事は分かります。普段から暴力を受けていれば、それの耐性ができるのは当たり前。それが拷問の意味をなくしてしまう……と言う事。

 ですが、ソラ様はローリエが捕えたという幹部の容姿を見たのでしょうか、ヒナゲシの虐待のことを知るやいなや顔色を悪くされました。

 さっき「シュガーやソルトくらいの子供」と言っていたから……そんな事が、この世界で起こっているなんて……。

 

 

「そこで、だ。この後俺が行う拷問を監視と言う名目で一緒に見て欲しい」

 

「なぜ、そのようなことを?」

 

「拷問の体をなしているか第三者の目が要るだろ。それに、ああ言っておいて俺が陰でヒナゲシに暴力ふるったらどうすんだ。監視するくらいの方が丁度いいんだよ」

 

「………」

 

 

 自ら進んで監視される事を望むとは、なんだかローリエにしては怪しいと思いましたが、アルシーヴ様やセサミ等に日常的にセクハラをしまくっているせいかと思い、あまり言及はしませんでした。

 

 

「ぼーりょくふるわないよね?絶対だよ?」

 

「安心しろシュガー。約束は守る。それと…皆。ご飯は後回しにしておいてね」

 

「「「「「「??」」」」」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 約束の時間に集まったのは、欠席しているジンジャー以外の全員…つまり、最初の招集で集まった八賢者全員とアルシーヴ様、ソラ様でした。

 

「お、まさか全員で来るとはね」

 

 そこにジャージ姿のローリエが登場しました。木製の大きな箱をキャスターに乗せて押しながら。

 

「その箱の中身は?」

 

「尋問で使う」

 

 いささか言葉足らずな答えを言うと、言うべきはそれだけだと言わんばかりにヒナゲシの檻の前に向かって歩いていきます。

 ついていった先の檻の中には…戦闘後でややボロついている服の少女がいました。彼女が、ヒナゲシでしょうか? 確かに、年齢的にはシュガーやソルトと大差ありませんね……

 檻の傍らには、何かが置いてありますが……白い布がかぶさって何か分かりません。

 

 

「な…なんなの……そんなに八賢者を集めても、絶対に吐かないんだから!」

 

「………」

 

「あ…あんた達なんか怖くないの! 聖典みたいなまやかしばっかり信じる、現実の見えない馬鹿なんかに負けないの!」

 

「………」

 

「すぐに、お姉様がわたしを助けに来るの! お姉様にかかれば……あんた達なんか、けちょんけちょんなんだから!!」

 

「………」

 

 

 私達を…ローリエを見るなり口汚く罵るヒナゲシ。

 わたくしやカルダモン、アルシーヴ様は動じませんが………ソラ様やシュガーは、やっぱりショックのようね。一目でわかりますわね……。

 ですが、そんなヒナゲシを見ても、ローリエは無言でヒナゲシを観察するかのようにじっと見ているだけ。

 そして、一通りヒナゲシが罵り終わって、静かになったところで。

 

 

「…………フッ」

 

「!!! 今……わたしを笑ったの!!?」

 

「違う違う。笑ったワケじゃあないんだ。

 ただ…想像よりも楽な仕事になりそうだなーって、思ってよ」

 

「何を…わたしは、絶対に喋らないの!

 真実は、必ずまやかしを打ち破るの!!」

 

「……まぁ良い。何を言おうが好きにしてくれ」

 

 ローリエは、呆れたようにヒナゲシを見た。

 

そう遠くない未来、お前は自ら『話を聞いてくれ』と懇願することになるんだからな

 

「「「「「!!!」」」」」

 

 

 ローリエには、もうヒナゲシの口を割る算段がついていると言うのですか!?

 ですが……聖典やわたくし達を憎むのは見ての通りで、虐待されてるから暴力系も効果が薄い相手に、一体何を………

 

 

「そんなわけない!! 誰があなたみたいな……」

 

「俺らとしては、さっさと音を上げてくれると助かる。

 これから行う尋問は、すごく胸が痛くなるからな……」

 

「!!?」

 

「ち・な・み・に………最後にご飯食べたのいつ?」

 

「………は?」

 

「え…?」

 

 

 な、何故このタイミングでそんな事を聞くんですか、ローリエ?

 唐突な謎質問の意図が全く分からない様子で、素っ頓狂な顔をするヒナゲシ。

 みんなも戸惑ってます。ソラ様もアルシーヴ様も、その意図には気づいていらっしゃらないご様子ですが…

 

 

「最後に食事をしたのはいつ?って聞いてんの。それくらいなら話してくれてもいいでしょ?」

 

「え? え? えっと………昨日の―――」

 

 く~~~、と。

 そこで、誰かのお腹の音が響いた。

 シュガーやソルトのかと思いましたが、二人もキョロキョロしており、自分の腹がなったようには見えない。

 そこで檻の方を見てみると、ヒナゲシが固まっていた。そして、ゆっくりと、自分のお腹に視線を向ける。

 

 

「……成る程。好都合だな――――――じゃあ、始めようか」

 

 

 先程の腹の虫がヒナゲシのものだと分かった途端、ローリエは傍らに置いてあった物体の、白い布を取り去った。

 下から出てきたのは………大きな鉄の板が乗った機械が置かれた、テーブルでした。そして、ローリエがその機械のスイッチを入れる。

 しばらくしてから、彼は真っ白い四角形の物体を鉄板の上に落とした。ジュゥゥゥゥ、という音が響く。四角い物体は、鉄板の上で溶けていきます。どうやら、鉄の板はかなり熱くなっているようですが……って!!

 これ、まさか………

 

「あ、そうだみんな。言い忘れてたけど、今からヒナゲシに話しかけたり、何かあげるの禁止だからね」

 

「ちょ……ちょっと待ってローリエ! まさかあなた…これからやる尋問って………」

 

 油が焼ける香ばしい匂いが辺りに充満していく中、ローリエは木箱のフタを開ける。すると、中からは―――大量の生肉が。

 そして……それを、何の躊躇いもなく鉄板に並べだした!!

 

 

「…見て分かるだろう?」

 

「「うわあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」」

 

 

 あぁっ、シュガーとソラ様が膝をついた!

 まさか……こんなタイミングで焼肉だなんて!!

 アルシーヴ様とセサミは「なんだこれ?」って顔をしていますし、ハッカはいつも通り読み取りづらい無表情に見えますが……これは酷い尋問…否、拷問ですわ!

 確かにローリエは「暴力・暴言は使わない」と約束しましたが………それらを使う拷問の方が、遥かにマシに見えてくる!!

 

 

「ローリエ…あなた…!! なんてことを…!」

 

「フェンネルは分かったみたいだね。この尋問の意味が。

 …おいヒナゲシ! ―――喋りたくなったら、いつでも喋っていいからなー!」

 

「!!!」

 

 ジュージューと肉が焼けていく音をバックにかけられたローリエの言葉で、ヒナゲシに衝撃が走る。

 わたくし同様、気づいたのでしょう…………口を割って話すまで、ここで肉を焼き続けると!!

 

「え…?なに、どういうことですか?」

 

「見ての通りだ、セサミ。これからこの鉄板で焼肉を行う」

 

「焼肉……?」

 

「それ以外の何に見える?

 ―――安心しろ、ニンニク控えめだ。野菜もあるぞ?」

 

 少なくとも、セサミが言いたいのはそう言う事ではないと思いますよ?

 

 

 誰が言うでもなく、席に着き始め、食事が始まりました。

 人数分の皿が用意され、そこにしっかり焼かれた肉が乗せられる。

 誰もかれもが手を付けていいか戸惑うところに、ローリエがみずみずしい葉野菜や根菜を取り出し、塩やレモンなどの調味料を並べ、鉄板の空いたスペースに真っ赤な生肉が乗せられていく。

 ローリエだけが食べ始めた、牢屋の前の奇妙な食卓が出来上がった中、アルシーヴ様が気まずい顔でローリエにお尋ねになった。

 

 

「なぁ、ローリエ……何故、焼肉なんだ?」

 

「端的に言っちゃうと……人間、屈辱や苦痛には耐えられても、本能には逆らえないってことだよ」

 

「おにーちゃん……ヒナゲシちゃんに何かあげちゃダメ?」

 

「ダメだ。尋問の意味がねーだろ。どうしても嫌だってんなら帰りな」

 

「ローリエ! 貴方に人の心はないの!?」

 

「何言ってんだソラちゃん。あるに決まってんだろ。

 最初に言ったじゃんか、『すごく胸が痛い尋問だ』って…」

 

 

 アルシーヴ様の問いに対する答えはよく分かるのですが……皆、手をつけていません。

 当然でしょう。腹が減っている人の前で、自分だけがご馳走にありつくなんて良心が咎めます。わたくしだってそうです。

 ですが、シュガーが先に尋問をやめそうな様子やソラ様のお怒りのような悲鳴にも毅然としているのは、なかなか精神が強いの一言では収まらないような気がいたしますが……

 

 

「みんな、気持ちは分かるが、さっき言った通りだ。

 人間、本能には逆らえない。どんな理想や崇高な決意でさえも、たった一個のパンで消し飛ぶこともあるってことだ。

 ……食べてくれ。じゃないと尋問の効果が半減する。…終わらないぞ」

 

「……そう言う事なら、あたしは食べるよ」

 

「「「カルダモン!!?」」」

 

「今はちょっとでも情報が欲しい。ローリエの言い分も、だいぶ理解できることだしね」

 

 

 カルダモンが箸を手に取って、焼肉を食べ始めた。

 そこからアルシーヴ様が箸を取り、ハッカが箸を取り……と、だんだん口を付け始める者が増えていき、最終的にわたくしも腹の虫に負けてご相伴にあずかることとなったのでした。

 ……最初に食べた焼肉は、少し冷えていた。

 

 

「た…楽しいのッ!? こんなことをして楽しいのッ!?」

 

「美味すぎるッッッ! カルビを巻いたご飯って、何故こんなにも美味いんだッ!!」

 

「あ…」

 

「お、なんか言いたそうだな?」

 

「ナンデモナイノ!!!」

 

「あっそ。なんでもないんじゃあ仕方ないな♪アッハッハ!」

 

「ローリエ! せめて静かに食え!!」

 

「…美味。」

 

 ローリエは、よだれをたらして辛抱しているヒナゲシに対して敢えて答えたりせず、食レポを述べながら、これ見よがしに食べまくっていた。流石にそこまでいくとどうかと思いますが………ヒナゲシに対して、この尋問が圧倒的に効いているのは一目瞭然でした。

 

 ―――やがて。

 

 

「も、もう勘弁してぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 ヒナゲシはローリエ考案の焼肉尋問の波状攻撃に、為すすべなく陥落いたしました。

 具体的に言うと、生肉を半分ほど焼いて焼肉攻勢を済ませた後、油の染みついた鉄板で挽肉と玉ねぎとご飯で醤油ベースのガーリックライス(ニンニク控えめ)を焼き、仕上げの胡椒を振りかけたところでギブアップ。

 一心不乱に差し出されたガーリックライスを頬張りながら水を飲む彼女は、それはもうあっさりと仲間の名前と情報を吐いてくれました。………まだ幼い彼女にしては、よく頑張った方ではないでしょうか。

 

 ただ。わたくしは気になりました。

 ヒナゲシから首謀者の名前を聞き出した時の、あの顔を。

 

「ハイプリス、って…!」

 

「……っ、まさか、本当に…!?」

 

「マジかよ……」

 

 ソラ様・アルシーヴ様・ローリエの表情が一気に暗くなり、その理由を尋ねたところ。

 わたくしは―――三人の表情が曇った原因を知ることになるのでした。

 

 

「ハイプリスは―――()()()()()()()()()()だ」

 

 

 代表して答えたローリエに、焼肉を楽しんでいた時の様子はもう残っていませんでした。

 




キャラクター紹介&解説

フェンネル
 人の尊厳を守る夢を見たアルシーヴ近衛騎士。その手の知識は、ユミーネ教のBL本とあっしゅくふぉるだの『アルシーフちゃんシリーズ』から得た。ちなみにお気に入りは『アルシーフちゃん&シェンネルちゃんの大乱〇』と『フェンネル♂×アルシーヴ♂』。拙作のフェンネルも夢女子の素質アリ。

ローリエ
 ヒナゲシに飯テロの波状爆撃を行った拙作主人公。ヒナゲシの虐待の跡を見抜き、普段からぶたれたり殴られたりしていることに耐性があると悟り、飯テロ作戦に変更。これが超ブッ刺さり、情報の抜き取りに成功する。ただ、その情報の中に特大の爆弾があった事には気づけなかったようだが。

アルシーヴ&セサミ&ソルト
 ローリエの尋問を最後辺りまで理解できなかった人たち。当然ながら、最終的にヒナゲシがゲロった事にビックリした。あとアルシーヴは情報の内容にもビックリした。

シュガー&ソラ&ハッカ
 ローリエの飯テロの意図をいちはやく察した人たち。自分自身にやられた場合をイメージした結果、ヒナゲシに何も与えない事に罪悪感を覚えた。ちなみにハッカは、純粋に焼肉を楽しんだという。

びっくりおじさん
 フェンネルの夢に登場するも、出オチでボコられて埋められた。ちなみに元ネタでも埋められている。



フェンネルの珍夢
 様々なところからネタを頂いている。使用した元ネタは、
・ブ□リーのおどるポンポコリン
・絶体絶命でんぢゃらすじーさん
・ドリフのツッコミ(金ダライ、一斗缶、スリッパ)
・ボボボーボ・ボーボボ
 ――といったところなのだが、これ作者の年代がバレるな。ちなみに、最後の練乳のくだりは、ケフィアでも代用が可能。



△▼△▼△▼
ローリエ「ヒナゲシに口を割らせることに成功したぜ!!」
フェンネル「良かったのでしょうか?こんな…人間の心がないような作戦を使って…」
ローリエ「何言ってんだ。人の心ならあるに決まってんだろ。そもそも飯テロなんて、人間以外が発明出来てたまるか」
フェンネル「敵には容赦ナシですわね…」
ローリエ「まだまだだ。ヒナゲシにもう一つ仕掛けるとしようか」

次回『神か悪魔か? 日ノ本の大総統さん降臨』
ローリエ「作戦名は……『コード・エボルト』だ!」
フェンネル「貴方がラスボスになりそうですわね…」
▲▽▲▽▲▽
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