きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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どうも。MIKE猫でございます。
今回は、アルシーヴやソラの心情を書いてクッション回にしようと思います。先へ進みたいですが、せいては事を仕損じると言いますからね。それでは、どうぞ。


幕間:彼を思う者たち

「『たった一人の教え子』と『俺らの世界も含めたオリジナルの聖典世界とそこに住まう人々』………どっちを取る?」

 

 

 その問いは、私に深く突き刺さった。

 ヒナゲシの拷問の結果分かった事実をもってしても、リアリスト打倒に事を進めるローリエに対して、カルダモンが確認の質問をした際の回答だ。

 

 それに対して私が怒鳴りつけたのは……ほぼ反射だ。

 聖典の破壊を画策するハイプリスを何とかしようとするのは、神殿の上位の人間からすれば当然ではある。ただ……今回ばかりは、事情が違った。

 

 

 私が筆頭神官になったのとほぼ同じタイミングで、ローリエが教師になった時、初めて担任を受け持ったクラスの生徒達の中にいたのが、ハイプリスだ。

 彼女を含めた最初の生徒達に色々教えるのは大変だったが、ローリエが魔法工学や聖典学を担当してくれた事もあり、無事に卒業までさせる事が出来た。

 残念ながら、その年の生徒達からは、女神適性検査に合格した者はいなかったが……それでも、彼ら彼女らは笑顔で卒業していった。

 

 …そのはずだった。

 なのに、何故……エトワリアを脅かす敵対組織の話の中で…その名前が出てきたのだ。よりにもよって、一番を争うほどに優秀だった彼女が。

 私は、ハイプリスを良く知っていた。成績優秀なのは先述したが、それだけでなくメディアという親友にも恵まれ、将来は貧困地域を救うための聖典を書く事に燃えていた。

 

 私だけではない。

 ローリエにとっても、ハイプリスはかけがえのない『教え子』だったはずだ…!!

 何故、すぐに判断を下せる。

 よりにもよって、担任だったお前が、元教え子に対して……!

 

 

「…馬鹿者が。覚悟を決めるのが早すぎだ……!」

 

 

 私は、似たような状況に陥ったことがある。

 ソラ様をこの手で封印せざるを得なくなった、あの時。このままゆっくりエトワリアが朽ち果てるのを待つか、『オーダー』でクリエメイトを呼び出し、クリエを集めるか………私が取れる手段だと思っていたのはこの二者択一であったのだ。少なくとも、当時の私はそう思っていた。

 その選択肢に待ったをかけ、第三の選択肢を持ってきたのがローリエだ。アレは今になっても、選択肢と言えるほど確実なものではなかったが………よくもまぁ、『オーダーしたクリエメイトを記録したランプの日記を聖典に昇華させる』なんて手を打ったものだ。

 だがそのお陰で今がある。それらのきっかけとなったのは、きららとランプ……そして、ローリエだったのかもしれない。

 

 だと言うのに。

 私が犯しそうになった過ちを…今度は、ローリエが犯しそうになっている。

 何故だ。どうして……私を正してくれたはずの、お前が!

 

「そうよ……私なんて、絶対に決められなかったのに…!」

 

「アルシーヴ様、ソラ様、お気を確かに…」

 

 

 久しぶりの沈んだ声で落ち込むソラ様………ソラを、フェンネルが慰めている。

 

 

「申し訳ありません、お二方。俺の友人がバカやらかして…」

 

「コリアンダー、汝に非は無し。且つ、恐らくローリエにも」

 

 

 事情をよく知らないコリアンダーにも、気を遣わせてしまったようだ。

 …筆頭神官、失格かもしれないな。ただの技術員にこんな姿を見せてしまって…

 

 

「でも…去り際のアイツの質問、どういう意味だったんだ? ローリエの教え子が何か絡んでいるのか……?」

 

「「「………」」」

 

 

 詳しく事情を知らないのであろう。ヒナゲシの通信機を修理しただけと思われるコリアンダーの問いに答えるべきか否かで、私達は顔を見合わせた。

 今回の事件は、あまりにも特殊だ。元神殿関係者によるクーデター……そう取られてもおかしくない程の大事件だ。こんな情報、一般の神殿事務員に話していいものか。いくらなんでも、『ローリエに近しいから』という理由で全て話すわけにもいくまい。

 だが、何も言わないというのも、彼の不審感を招くだろう。下手に探りを入れられるのは、少しマズい。

 

 

「……遺跡の街の襲撃があっただろう? それを指示したのが、ハイプリス…という、私やローリエの生徒だったかもしれないんだ」

 

 

 迷った結果、報告された情報のうち、“リアリストという組織が聖典を破壊しようとしている事”以外の事を話すことにした。

 すると、コリアンダーはなにか納得したような面持ちで「だからか…」みたいな事を言った。

 

 

「何か知っているのか?」

 

「いえ…しかし、そのことを聞くと納得できることがございまして」

 

「納得できることって?」

 

「今日の少し前…ついさっきの事ですかね……ローリエの部屋から、『ハイプリスは俺の生徒だ』って声がしたんです。ローリエの、迷ったような、切羽詰まったような声が」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「アイツのことだから…責任でも感じてるんじゃあないんですか?

 自分が手塩にかけた教え子が悪事に手を染めたんなら、自分が止めなきゃなんない、とか。」

 

 目を見開いた。

 ローリエは、ハイプリスが教え子であるにも関わらず、ではない。

 教え子だからこそ、自分が率先して動くべきだと思っていたのか?

 

「…何ですか、それ。だったら、私達にも言えば良いでしょう!」

 

「まったくだ。俺もそう思う。

 …何でもかんでも背負い込み過ぎなんですよ、アイツ。

 前回のドリアーテ事件だって、全部終わってやっと話してくれたようなモンですし」

 

 ドリアーテ事件、か。

 あの事は特例だったから、私がローリエとハッカに対して箝口令を敷いて、他言しないようにしたのだったな。

 コリアンダーも最初は話してくれなかった事が不満だったようだが、箝口令の件もあり、ローリエが説得したことでなんとかなったと言っていたか(と、言いながらもアイツはギリギリな方法できららに情報をバラシていたがな…)。

 

「一旦落ち着いたらローリエのやつ張り倒して説教くらいするべきかな…」

 

「まぁ…とりあえず、ローリエを一人で行動させないようにはしようと思う」

 

「お願いします。また自室を連日爆破されては堪りませんから」

 

「嗚呼、その折はすまなかったな……」

 

 

 きららを呼んでなにやら実験してた時期もあったな。

 あの時は連日連夜ローリエの部屋が爆発して、叱るのも馬鹿馬鹿しくなる程説教したっけか。

 コリアンダーの部屋はドリアーテ事件の後相部屋ではなくなったとはいえ、ローリエの隣の部屋に移っただけだから、割ととんでもない被害が出ていることだろう。

 

 ともあれ。

 ローリエとはヒナゲシの件について、もう少し話し合わなければならないな。

 「ヒナゲシを連れまわして他のリアリストを釣る餌にする」とか言っていたが、相応の策でも用意していない限り、流石に許可できない。先程コリアンダーに直させた通信機だってそうだ。一応、偽の連絡はしていたが、アレで終わりなのかが疑問なところだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 翌日。

 ソラとともにローリエを呼び出して、奴が考えている策を聞き出す事にした、のだが…

 

「……ってな感じでどう?」

 

「「………」」

 

 やはり予想通りというより、予想の斜め上を行くブッ飛んだ策であった。

 ヒナゲシにあんな煽り文言で取引をさせたのは、リアリストの詳細情報を抜き取るためだけではなく、リアリストにこちらの偽情報を流す為だという。なので、時期を見てヒナゲシを助けに来るであろうリアリストに奪還されるフリをして、ヒナゲシを帰すつもりだというのだ。

 更に、遺跡の街の襲撃映像とシャミ子の洗脳している様子を少しずつ民に放映し、『リアリストという社会の敵』という存在を認知させようとしているのだとも言ったのだ。

 

 ヒナゲシは取引をしたあの夜、我々にその様子を中継されていた事を知らない。あの子からすれば、ローリエから持ちかけられた対等な取引に見えるかもしれないが………その実態は、100%利用する気の恐ろしい策略であったのだ。

 

 ソルトでも思いつかないような、まさしく悪魔の罠。カルダモンが気づいてくれなければ私達も気づかなかったと思うと、ゾッとしない。

 

 

「ねえ…ローリエ。

 そんな手を実行して……罪悪感とか、ないの?」

 

「ソラ?」

 

 ここで、ソラが口を開いた。

 

「あのヒナゲシちゃんって子……見たわよ。ものすっごく傷ついていたわ。

 虐待を受けてたんですってね? それも…『見捨てられる事』をあんなに怖がるくらいには……

 ……ねぇ。そんな子を、これ以上傷つけて、なんになるって言うの?」

 

「ソラちゃん……」

 

「答えて、ローリエ。ヒナゲシちゃんをこれ以上傷つける策を使う利点ってなに?

 私の納得できないものだったら……悪いけど、貴方の策を認めるわけにはいかないわ―――女神の名のもとに、ね」

 

 

 それは、ソラが…『女神』ではなく『ただのソラ』としてローリエに問いかけた疑問に見えた。

 私では到底マネできないような、底抜けな慈悲の心をもって、ローリエを引き止めているように見えた―――いや、実際この策をやめさせたいんだろう。

 

 ローリエは、ソラの訴えを、目を閉じて真剣そのものといった表情で静かに聞いていた。

 やがてソラの質問が終わったところで、瞼を開き、金とオレンジの瞳でソラを見つめながら答えた。

 

 

「ソラちゃん。俺はヒナゲシに追い打ちをかけたいんじゃあない。『リアリストを一刻も早く捕まえたい』んだ」

 

「え? それって……」

 

「まず、だが。ヒナゲシは『ただ虐待に遭って、不幸な人生を送った被害者』じゃあない。

 『自分自身の意志で、聖典を破壊しクリエメイトの殺害を目論んだ犯罪者』だ」

 

「!? な、何を―――」

 

 

 ろ、ローリエ!?

 このタイミングで、ソラに何を言うつもりだ!?

 

 

「だからこそ……リアリストとの戦いは、できるだけ早く、とっとと終わらせたい。奴らがこれ以上罪を重ねるのを、黙って見ていたくない。

 アイツらの企みは…まだ『聖典の破壊』以外にはよく分からないけど……だからこそ、早く突き止めて、早い段階で阻止したい。

 長引けば長引く程、クリエメイトは傷つけられる。取り返しのつかない命が、多く失われるだろう。

 本格的な大戦になったら……八賢者のみんなや、きららちゃん達や、アルシーヴちゃんやソラちゃんや、勿論俺もだが……生き残れる保証もなくなるかもな」

 

「!!!?」

 

「お前……ハイプリスが、軍を率いて神殿に戦争を仕掛ける気だと言いたいのか!?」

 

「今のところは何とも言えねーよ。

 …つまるところ、リアリストに早く対抗して、相手が何かトンでもない事をしでかす前に捕まえたい、ってのが俺の本音だ。

 そうすれば……罪の規模が小さくなって、情状酌量の余地が生まれる」

 

 

 そう語りかけるローリエに嘘はない。

 それどころか、こちらが気圧されそうな程に、普段では絶対に見かけない程に、真剣な感情が伝わってくる。

 

 

「ソラちゃん。ヒナゲシを利用する作戦に、罪悪感が湧かないと言ったらウソになる。

 だが、俺は皆を守りたい。この世界が、そこに住まう人々が、今まで俺達が受け継いできたものが、間違っていないと証明したい。

 そのためならば……俺は、取れる手はいくらでも取る。やることは全部やる。」

 

 

 それだけだ、と断言するローリエに、私達は言葉を失うしかなかった。

 私にはよくわかった。それは、一瞬だけでも狂気に感じたそれは………狂気ではなかった。

 

 ―――信念!!

 

 『何が何でも己の正義を貫く』という信念だったのだ!

 なんという心の持ち主だろうか。

 判断力と行動力が強すぎて少々……否、だいぶ恐ろしく感じられたが…まるで本物の医者のような信念を、今この場で感じたのだ!

 なんと強欲なのか。守るものが多いからこそ…ということなのか。というか、さっき……ハイプリスらの事も鑑みてなかったか?

 

 

「さっき…リアリストを早く止めれば罪も軽くなる、って言ったわね」

 

「ああ。言った」

 

「そこに……ウソはないのね?」

 

「当たり前だろ。余程の事がない限り、命までは取るつもりはないよ。

 聖典やクリエメイトを傷つけるのは許せないけど……それが命を奪う理由にはならない。

 ……ドリアーテに調教されて人格破綻した少年を殺った俺が言うのもなんだけどさ」

 

「確か………生まれてすぐに、ドリアーテに歪んだ常識を教え込まれた子、だったわよね?」

 

「アレに比べれば、ヒナゲシは軽傷なんだろうなーって、思ってさ」

 

 

 ドリアーテに調教された子供……ドリアーテ撃破後に、ローリエから詳細を聞いたな。

 何の意志もなく、ただ主の命を果たす為に動く。暗殺特化の技能を持ち、その過程を邪魔する者は問答無用で殺す。それも、道のアリを踏み潰すかのように……だったか。

 更にどれほどダメージを受けても痛みに苦しまず、更に凶悪な副作用を持つ増強剤をなんの躊躇いもなく投与する。

 ローリエはああ言っているが、その少年は恐らく、ドリアーテの洗脳に染まり切っていて、更生する事さえ不可能だったかもしれないな。

 もし彼がその少年を撃破していなかったら………八賢者が、誰か欠けていたかもしれない。

 

 

「ローリエ。お前の言う事が本当ならば…私はそれに賛成したい。

 リアリストが本格的な行動に出る前に捕まえる……ハードルは高いが、それができれば、民の被害も少なく済むだろうしな」

 

「そうね。できれば……たとえ悪い子でも、これ以上傷つけるのは控えて欲しいけど…ね」

 

 

 そう言うソラの様子は、不安こそ拭いきれたわけではないが……作戦の罪悪感の有無を問うた時のような、いわゆる糾弾のような様子は見えなくなっていた。

 かく言う私も、ローリエの手段の選ばない策略を行った心の正体が『信念』であることに気付き、少し安心できたのかもしれない。

 

 

「ねぇ、ローリエ」

「なに?」

「また、三人で笑える日が来るかしら?」

「そうだなぁ…来るように努力するさ。そういう日が来た暁には、3人で夜明けのコーヒーでも一緒に飲もうか。黄色い太陽が昇るのを拝みながら―――」

「「ハァッ!!」」

ふじこッッ!?!?!? な……何故……」

「え、なんか…えっちなことを言っているような気がしたから……」

「そういうことだ。私の目を誤魔化せると思うなよ」

「ヒドイ………」

 

 

 ……少なくとも、コイツがこんな発言をしている内は大丈夫だろ。

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 聖典の破壊は許せないが、別に〇NEPIECEの赤犬やZ先生のようになりふり構わず命まで奪うつもりはない。ヒナゲシを前に焼肉やったり万丈構文やったりはするけど。元生徒がいるなら尚更。カルダモンには二者択一の質問をしたが、それは『ハイプリスの凶行を出来るだけ早く止める』為であって、『世界の為にリアリストを排除する』のとはイコールにならない。
 被害を出来るだけ減らし、クリエメイトや聖典や、仲間を守る。それが彼の信念だ。ちなみにだが、最後の「夜明けのコーヒー」発言は、1000%イヤらしい意味で言った。

ラオウ「実に甘いわ!」
不審者「ハァ…正しき世界に不要な悪人は粛清(ry」
セフィロス「クックック……ヒーローのフリはやめろ」
えみやん「正義を為したいなら、切り捨てなければ…」
Zせんせー「海賊は根絶やしだ!」
あるしーぶ「帰ってくれないか」

アルシーヴ&ソラ
 今回のメイン。ローリエの決断力の速さに戸惑うが、コリアンダーの指摘をきっかけに、ローリエにこの後どうするかの策を尋ね、その背景にあるローリエの信念を目の当たりにして、一応は大丈夫かと考えるようになる。

コリアンダー
 アルシーヴとソラに、(図らずも)ローリエと話すきっかけを与えた人物。ローリエと木月の会話の一部分を聞き、「教え子のハイプリスが悪行に走ったから、その責任を取ろうとしているのではないか」と考え、それをアルシーヴとソラに伝える。この考えをローリエがしているのはあながち間違いではないが、実際の会話内容はまるで違う。だが、木月の声はローリエにしか聞こえない為、仕方ない部分もあるだろう。

メディうつにタイキックさんを入れたことについてどう思う?

  • メディうつだけの方が良い
  • 新たな形になってて良い
  • 男だったら即死だった
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