きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
“
……メディア
「ローリエの授業はどうだったか」という質問に対して
前回分も含めてここで説明しちゃうが、スクライブとは『女神が書いた聖典を写本……つまりコピーして増刷する少女及びその職業』のことである。ソラちゃんがオリジナルを書くだけでは世界に聖典が行き届かないので、コピーして部数を増やす役割が必要だ。それがスクライブである。
そんなスクライブが多い写本の街で、スクライブの子を助けようと思ったら、たまたまアリサとオッサン……ナットに出会った。完全な偶然の産物だった。
スクライブの子を助け起こした後で、二人の事情を聞いてみる。
「アリサ…どうしてここに?」
「スクライブの仕事の見学です。アルシーヴ様からの課題でそういうのがありまして。将来の学習の一環ですよ」
「成程な………オッサンは?」
「あー…アレだ。エイダの付き添い。写本の街に行きてー行きてーって聞かなくてよ」
「エイダちゃんの? 一緒に来てたのか」
「今はスクライブギルドに預けてある。オッサンは、ちょっとした散歩ついでの買い物に来ただけだ」
よくおじさんッ子のエイダちゃんが承諾したな、オッサンの単独行動を。そう思ったが、相も変わらずメンド臭そうな言動をしている為、それ以上聞かない事にした。どうせ「帰ってきたら何かして」とか言われたんだろう。若干可哀想だが、それ自体が「エイダちゃんという家族がいる事で生まれる面倒くささ」だ。それくらいは甘んじて受け入れて欲しいものである。
「それで、先生。その肩のメカは…?」
「これは、メタルバード。飛ぶことは出来ないが、色んな後方支援向きの機能を持っている。
特にこれには、AIが組み込まれていてな」
「えーあい?」
「人工知能……つまり、自我があって、会話が出来る機械って覚えてくれ。
名前もついている。エトワリア発・プロト人工知能のヒナギクだ。仲良くしてやってくれ」
『………』
「………お前のコトだぞ、ヒナギク」
『! あっ、はい! よ、よろしくなの……』
メタルバードの通信先のヒナゲシだが、流石に安易に本名で呼び合う訳にもいかない。なので、30秒くらいかけて『ヒナギク』という偽名を用意したんだが……そんなあからさまに、まるで自分の名前じゃないかのようにキョトンとするのはやめてくれ。オッサンやメディ辺りに気取られたら、誰がフォローに入るか分かってんのか?
ヒナゲシのヒヤヒヤしそうな言動に内心焦りながらも、俺はアリサとオッサンに機械鳥越しに話しかけてくる少女ヒナゲシを、機械鳥に宿った人工知能ヒナギクと偽った。
申し訳ない気持ちでいっぱいだが、俺とヒナゲシの『取引』は、八賢者とアルシーヴちゃん・ソラちゃん以外にはまだ話すわけにはいかないのだ。
「そう言うローリエは、何しにこの街に来たんだよ?」
「スクライブギルド……そこのギルド長に話があるのさ」
俺の本来の目的は、スクライブギルドのギルド長へ情報収集を行うこと。
ギルド長の名前は―――メディア。
俺よりも年下にも関わらず、スクライブ達をまとめ上げている敏腕少女にして………俺の、元生徒でもある。
◇◇◇◇◇
「やっほー、メディ。ひっさしぶり」
「
「スクライブのギルド長を教えてたんですか、先生…!?」
「せ、せん、せい………めでぃ……???」
スクライブギルドに到着すると、受付の子が早速メディに通してくれた。応接室で、相変わらずの雰囲気のメディが、花開くような笑顔で俺とアリサを迎え入れてくれた。ちなみにナットはエイダちゃんに捕まって抱っことかさせられまくっている為、別行動となっている。
ここまでスムーズにメディに会えたのも、俺が事前にスクライブギルドにアポを入れて、メディに「会いに行くよ~」って言ったからである。勿論、大マジな要件である事を念押しした。
このタイミングでメディと一緒にフェンネルとも会えたが、俺とメディがお互いの事を「メディ」「
「最初に先生やった時の教え子よ、メディアは」
「
「…………」
「おーいフェンネル、戻ってこい」
「あ痛!?」
物理的に衝撃を与えてフェンネルを元の世界へ引っ張り戻した後、メタルバードをオートモードにしてからメディに話の本題を振る。
「メディ、俺がここに来た理由は他でもない。『君の親友』のことだ。……今すぐにとは言わない。思い出せる限りのすべてを、俺に話して欲しい」
メディは、覚悟していたように小さく頷いた。
それを見てから、フェンネルに視線を移す。
「フェンネル、アルシーヴちゃんから『詳しくはフェンネルと現地集合してから聞け』って聞いてるんだけど……俺に頼みたいことでもあるのか?」
「ええ。実は―――昨日から行方不明のスクライブが現れているのです。貴方にはそれの捜索をお願いしたいのです」
「成程………分かった。使える魔道具を調達しておこう」
行方不明のスクライブ捜索か………今の世の中、物騒になり始めているし、変な事件に巻き込まれていないといいんだが………
「おーい、メディア様ー!」
「エイダさん!?」
「ちょっと倉で遊んでたらこんなものを見つけたよー!」
二つ返事でフェンネルの頼みを受けて、話がひと段落したところで、エイダちゃんが古びた緑の巻物を持って応接室に飛び込んできたのである。
「えっと、これは…『スクライブ奥義秘伝書』……?
著者は……えーと、パピ・ルーシー・ヒエログリフ?」
「ヒエログリフ!!? それは……初代ギルド長様の御名前です!!」
「えっ、マジ?」
ヒエログリフっつったら、俺の中ではエジプトの超古代文字のことだ。エトワリアにそんな名前の人いたのか?
だがメディにとっては、その名前はものすごく聞き覚えのある名前であるようで、その名をきいた途端に興奮を覚え、フェンネルから(一言許可を取って)ひったくるように巻物を手にした。
なおこの間に、エイダちゃんは追ってきたであろうオッサンに捕まって、「人様の倉庫に勝手に入るな!」と叱られていた。
「これは……!」
「何かあったのですか、メディア様?」
「失われたとされたはずの、伝説の奥義書です!
どうやら、歴代のギルド長に代々受け継がれていたもののようです……!!」
「…………エイダ。お前、あんなの倉庫のどこで見つけてきたんだよ?」
「めくれた床板の下の地面に埋まってたよ」
エイダは倉庫の中のとんでもないところから巻物を見つけてきていたようで、更にオッサンから雷を落とされる。
それをよそに、メディは奥義書を読み進めた。
「私の先々代で途切れたと聞いて、もう受け継ぐことはないと諦めていましたが……
これさえあれば、奥義を受け継げるかもしれません!」
「それほど、重要なものなのですか? ギルド長にとって、奥義とやらを極めることが」
「フェンネルさん、これは私の矜持の問題です!」
スクライブギルドの長という、戦闘とは関わりのなさそうな職が奥義を習得することに疑問を覚えたが……メディは、生き生きした顔でそう言った。
多分、今まで聖典を写本し続けてきたスクライブをまとめる者として、為すべき責務を全うしようとしているのではないだろうか。
昔から、メディは責任感が強い子だったからな……
「今の私なら受け継げるかもしれません。初代ギルド長が残してくださった、最強の必殺技を……
その名も――――
『
メディを除いた全員に沈黙が訪れた。
……うん、気持ちは分かるぞ。
「メディア様…………
なっっっっっがいんですけどーーーーーー!!!?
技名こだわっているのはわかりますわよ!
でも絶対覚えられないわよこんなの!?』
スクライブの初代ギルド長が残した必殺技を前に、フェンネルがツッコミだした。
「いえ、仮に覚えられても……」
『
『くー!』
『きゃあああ!!?』
「技名叫んでる間にやられますけどコレ!!?」
「別に技名を叫ばないといけないルールなんてないと思いますよ」
「でも……折角初代様が考えて下さった技ですから、技名は叫んだ方が良いんじゃないでしょうか……出来るだけ早口で」
「何ですこの嫌がらせみたいな必殺技!!!」
アリサはわざわざ技名を叫ばなくて良いと言うが、メディにとっては初代の必殺技は受け継ぎたい技であると同時に、それなりに思いやりを込めているようだ。
俺は、どうしても必殺技を叫びたいというメディの為に、助け舟を出してやることにした。
「メディ、必殺技の叫び方を工夫するのはどうだろう?
例えば、コレはとある流派の剣技の話になるんだが………
「どこに
「オッサンには、『パーナムオブイモート・オツマイズム砲』っつう長ったらしい必殺技があるから…………略して、『パイオツ砲』と呼んでいる」
「なんて最低な略し方!!?
そっちは全身
エイダの説教が終わったのか、こっちの話に割り込んでくるオッサン。
だが……ん、ちょっと待てオッサン。
フェンネルがうるさいけど、それ…なかなか良い方法なんじゃあないか!?
「それ良いよオッサン。略そう!
この必殺技、長々と書いてあるけど、要するに…
『フレッシュメディカル・ハートシャワー』だろ?」
「どこから持ってきたんですかそれ!?
メディカルハートシャワーって何です!?」
「じゃあ、そこに
『フレッシュ
「そこ隠してどうするんですかアリサ!?
丸々技をパクったみたいになってますわよ!!?」
「それならいっそ―――
『
「メディア様ぁぁぁ!!?
人前で言えない事叫んでるみたいになってます!!」
俺のボケに乗ってくれたおかげで、アリサとメディが完全に面白い事を言ったみたいになっているが、流石の俺も、教え子たちを公衆の面前で放送禁止用語を叫ぶ変態にする趣味も思惑もない。
話がおかしな方向に転がりつつあるので、話を転換することにしよう。
「メディ。技名で躓いてる場合じゃあないぞ。
問題なのは、それがどんな必殺技で、どうやれば修得できるかだと思うんだ」
「! …それもそうですね、
では…巻物の先を、読んでみたいと思います」
メディが巻物を開き、視線をその先へと移す。
「えー…
『
「「「書くの面倒なら最初からそんな名前つけるな!」」」
「『スクライブギルドを運営していくのに必要不可欠になる最古にして最大、最強の秘奥義である。決してこの存在を他の者に知られてはならない』……
………ごめんなさい、もう色んな人にバレちゃってます……」
「いや、大丈夫だ。その奥義の秘匿性も昔の話だろ。先を見てみな」
「えっと…『なぜなら、この秘奥義には世界の
「「「「!!?」」」」
ふざけたネーミングセンスからは想像もつかない力が備わってると知り、一同は息を呑んだ。たまたまこの場に居合わせたオッサンとエイダも同様だ。
しっかし、いったいどんな効果や覚え方が描かれているんだ? 『世界の理さえ変えかねない』って、随分と大きく出たが……下手をすれば、アルシーヴちゃんらに『禁忌』に指定してもらう必要がある―――!!
「『奥義の出し方・敵の攻撃が当たる直前に ←↓↙+S』」
「「「「「…………」」」」」
え、コレ……まさか。
「………何です? この記号みたいなのは?」
「多分、だけど……十字キー横・下・斜め下って押してからの
「…十字キー?ボタン?」
「ゲームのコントローラーについてるヤツだ。で、これは格闘ゲームのコマンドだな。」
「ゲームのコマンドじゃないですかぁぁぁぁ!!
わたくし達人間にそんなボタンとかありませんけど!!?」
フェンネルの事だから、こんな書き方だから、スクライブギルド長の奥義が途絶えるのも当然と思うかもしれないが…
俺から言わせれば、逆だ。むしろ、これくらい分かりやすかったから、先々代とやらまで奥義が受け継がれていたのかもしれないぞ。
幸いな事に、この秘伝書に書かれている事は、俺でも理解が出来た。
「いや、この方が分かりやすいかもしれない。
おそらく、『十字キー横・下・斜め下からの
つまり……敵との距離を逆に詰めて攻撃をいなした後、その虚を突くカウンター零距離魔法!」
まほうつかいであるならば絶対にやらない戦法。
そのセオリーを破った、画期的な攻撃だ。
近づく分危ないが、決まれば回避はほぼ不可能。まさしくハイリスク・ハイリターンな必殺技だ。初代ギルド長・ヒエログリフ。只者ではないな…!!
「なぜこのアホ秘伝書でそこまでわかるのです?」
「俺の秘奥義『入浴中の美女のサービスショット』は、十字キー横・下・斜め下からの
「貴方の宇宙一しょーもない必殺技とスクライブギルド初代秘奥義が一緒ってどういうことです?」
「私の秘奥義『NOZOKIカウンター』も、十字キー横・下・斜め下からの
「制裁ボタンって何ですか!? Sボタンどう使い分けてるのよ貴方達は!!」
ちなみに、アリサの『NOZOKIカウンター』なら何回か食らったことがある。
一緒に入ってたアルシーヴちゃんやセサミ、ジンジャーやハッカちゃんが目当てだったんだが……アリサがいる時にバレた回は、ほぼ確実にカウンターの餌食になってしまった。
いつだったか、シュガーとソルトにも教えている姿を見たことがあったっけか。やめてくれ(懇願)。
「こーいうのはな、いっぺんやってみて体に覚えさせんのが一番だ。メディアの嬢ちゃん、武器を持って訓練場へ行くぞ」
「な、ナットさん!?」
必殺技の概要が分かったところで、オッサンはメディに特訓をつけるつもりなのか、そう言うと武具を取りに部屋を出ていこうとする。
……珍しいな。面倒くさがりのオッサンだったら、絶対に稽古つけるの嫌がるとばっかし思っていたんだが。隣のフェンネルも、表情を見る限り同じことを思ったようだ。
「珍しいですわね、ナット。貴方は、そういうの面倒くさがるとばっかし思っていましたが」
「バカ言え。……ローリエも、そう思っていたのか?」
「えーと……どっか悪いの?オッサン」
「違うわアホ。ただな……
俺が『大地の神兵』だって知ってるヤツがここに二人もいる以上、いずれお前らが、『メディアに稽古つけさせろ』なんて言い出すに決まっている。
そうなるくらいだったら、面倒ごとは真っ先に、速攻で終わらせた方が楽だ。それだけだよ」
振り向かないままそう言ったナットは、そのまま応接室を出ていった。
……ああいう所があるから、メンドくさがりだけど悪いヤツじゃあないんだよな、オッサン。
フェンネルやエイダちゃんも穏やかな顔つきになり、メディとアリサは………あれ、固まってる?
「「あ……」」
「あ?」
「「あの人が『大地の神兵』だったんですかッッッッ!?!?!?!?!?!?」」
「そこかい」
教科書に載ってる有名人に出会えたみたいなリアクションだな。
事実そうなんだろうけども。
「私、おじさんのああいう所も大好きなんです♪」
いや、エイダちゃん。そんなことは聞いてないからね。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
久しぶりに教え子に出会えた拙作主人公。ハイプリスのことをメディアから聞き出すことにOKを貰えたが、フェンネルから「行方不明になったスクライブの調査」を依頼され、これを引き受ける事になった。
アリサ
女神候補生の課題の一環として写本の街に来ていた前作のローリエの助手。現在はローリエと共に行動することはなくなりつつある。メディアが初代スクライブギルド長の奥義を継承しようとしたり、ナットが『大地の神兵』である事を知ったりと、歴史的な事象に今回だけでも結構立ち会っている。
ナット&エイダ
『大地の神兵』とその姪っ子。写本の街には、エイダのワガママで来た。メンドくさがりだが、姪っ子の望みを叶えたり時には叱ったりする辺り、自身の兄夫婦の忘れ形見は大切にしているようだ。なお、ナットはどうしても回避できない『面倒事』は、さっさとやる主義。
フェンネル
メディアの警護役として、写本の街で起こりつつある異変の調査をローリエに依頼した……はずだが、ローリエとメディアの関係を知って宇宙猫になったり、初代ギルド長の奥義の実体を知ってツッコミ役に回ったりしている。
メディア
『きらファン2部』に登場する、写本の街のスクライブギルド・ギルド長。拙作では、ローリエの元教え子としてローリエの事を『
『
ヒナゲシ
リモート機械鳥越しに会話することで、『人工知能ヒナギク』ということになった、リアルな少女。メディアを一目することは叶った物の、途中でメタルバードがオートモードになって通信が切れたため、会話に置いてけぼりにされている。
初代スクライブギルド長
スクライブギルド長に伝わる必殺技を開発した人……だが、本名とその設定以外詳しく覚える必要はない。本名パピ・ルーシー・ヒエログリフ。由来は古代エジプトで使われた紙と文字。
パピルス+ヒエログリフ
多くを語らずともインパクトを残したスクライブギルド長代々の秘奥義。←↓↙+Sボタンで発動できると秘伝書には書いてあったが…?元ネタは言わずと知れた『銀魂』の志村家の秘奥義『邪聖剣烈舞踏常夜(以下略』から。
『入浴中の美女のサービスショット』
ローリエの自称秘奥義。←↓↙+
『NOZOKIカウンター』
アリサの自称秘奥義。←↓↙+
ありさ「昇・竜・拳!」
ろーりえ「ドゥーワッ!ドゥーワッ!ドゥーワッ!(自作エコー)」
しゅがー「すごーい!!」
そると「見事なアッパーカットです」
△▼△▼△▼
ローリエ「メディがオッサンに修行つけてもらってる間に、俺はスクライブの子が消えたって事件?について調べていきましょうかね!」
メディア「期待に答えられるように頑張ります! ただ、気を付けてくださいね。どうやら、
次回『動き出す闇』
メディア「次回もお楽しみに!」
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メディうつにタイキックさんを入れたことについてどう思う?
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メディうつだけの方が良い
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新たな形になってて良い
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男だったら即死だった