きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
“今思ったら、なんだけど…タイキックさんが私でも知ってる事を知らなかったのって、大事な手がかりだったんだなって、思ったのよね…”
……住良木うつつの独白
通信機のサポート機能を本格的に調べようって決めた日の翌日。私達の視界に、街が見えてきた。
「うつつさん、タイキックさん。あれが、写本の街です!」
「アレがか。どんな街なのか、楽しみだな」
「帰りたい……」
「またうつつはそんなこと言って!」
ランプ曰く、ここでソラ様の書いた聖典が写本されるんだって。うつつはまたうつつらしいことを言ってマッチに呆れられてるけど、タイキックさんは大いに楽しみにしてくれてるみたい。私も、写本の街は行ったことがないから楽しみだな。
門をくぐった先で目に飛び込んできたその街並みは、今まで見たことのない美しさだった。
木造住宅は屋根が赤で統一され、窓は白い窓枠の四角い窓が規則正しく並んでいる。
人々が行き交い、活気に満ち溢れていた。
「すごい…!」
「あぁ。これはすごいな!」
「これが、写本の街…!」
「皆さん、着いてきてください! 案内しますね」
ランプの案内で、私達は石畳を歩いていく。私とタイキックさんがうつつの手を繋ぎ、うつつは何だかんだ言って照れながらも振り払うことはしなかった。
そうして、私達は聖典を写本する人達・スクライブが集まる建物………スクライブギルドに辿り着いていた。
「すみませーん! メディア様はいらっしゃいますか?」
「ギルド長でしたら、訓練場にいると思われますが…」
「お、お待たせしました……」
「「「ギルド長!!?」」」
「あ、あれが…?」
「メディア様、なんですけど……」
どういう事だろう?
ランプがメディアさんという方を呼んだところ、灰髪のショートヘアーに青のリボンを付けていて、で左目は前髪で少しだけ隠れた女の子がふらふらと奥からやってきた。
何というか、全力で走り切った後みたいに息を切らしている。汗をハンカチで拭きながら、メディアさんは椅子に座った。
「オイオイ、あの程度でもう歩けねぇって言うのかい?ギルド長サマはよ」
「! こ、この声は……!」
続いて、メディアさん? にそんな事を言いながら現れた男の人に、私・ランプ・マッチは息を飲んだ。
私達はこの人を知っている! この顔つきと鎧と、額の傷跡が目につく年配の男の人を知っている!!
「んお、お前らは……召喚士のきよら?と、あと……松明みたいな名前の子供と、燃えそうな名前の生き物…………何だっけ??」
「きららです」
「ランプです!!」
「マッチね。何でほぼ覚えてないんだよ…」
……もっとも、向こうはちゃんと覚えてくれてなかったみたいだけど……。
この人はナットさん。以前、とある事件をきっかけに知り合った、元傭兵さんだ。ナットさんの姪っ子さんを助ける為に手を組んでからは、少しだけど付き合いはある。ライネさんやカンナさんと知り合いだと知った時は、みんな驚いたっけな。
ただ、根は悪い人じゃあないんだけど、ものすごく面倒くさがりな人でして……
「ナットさん、こちら私達の新しい仲間のうつつさんとタイキックさんです」
「タイキックだ、よろしく!」
「うぅ……何か新キャラきたぁ…こわい…」
「あー…まぁよろしく。オッサンの自己紹介は…しないでいいな。メンドくせーし」
「何で自己紹介を面倒臭がるんですか!!?」
この通り、ランプに叱られても面倒くさくって自己紹介すらしないような人なんですよね。自己紹介面倒臭がると初対面の人に誰だか分かってもらえないのに……
ランプに掴まれているナットさんを見て、うつつさんがちょっと安心したような顔をしたのが少し気になりましたけど、取りあえず今は聞きたい事を聞こう。
「…ところで、どうしてナットさんがここにいるんですか?」
「メディア、頼んだ」
「え、私ですか!?」
「オッサン、この状況話すの超メンドくせぇ」
「「何から何まで人に丸投げしないでください!!」」
流石にそこはナットさん自身が話した方が良いと思います!
そう言うと、ナットさんはものすごく嫌そうな顔をしながらも話してくれた。
なんでも、エイダさんが行きたいと言ったから付き添いで行くことになったそうで、私達が来るちょっと前に写本の街に来たそうです。その時にスクライブギルドの奥義書をエイダさんが見つけたことがきっかけで、メディアさんに『スクライブギルド長奥義』を身につけさせるべく修行をつけてたみたい。
それで、メディアさんもちょっと疲れ気味だったんだね。
「幻魔弾レッツ…なんですって?」
「『
「どこをどう略したらそうなるのよ…」
「フレッシュのフの字もありませんけど……」
「略すと思わぬ名前になんのはむしろ当然だろ。
『パーナムオブイモート・オツマイズム砲』を略して『パイオツ砲』になるのと同じだ」
「誰よ、そのサイテーな略し方したの…」
「オッサンだけど?」
「「「「「…………」」」」」
技名とかナットさんの技の略し方は兎も角、彼が誰かの面倒を見るって珍しいですね。本人は「自分の素性を知ってるローリエとフェンネルがいるから、遅かれ早かれこんなこと頼まれると思っただけ」なんて言ってますが、それでも自分からメディアさんと修行しようなんてなかなか言えません。
やはりエイダさんがいるからなんでしょうか? 言ノ葉の樹で会った時は、自分が働きたくないから作戦を否定したり、途中から聞き込みをサボったりしていましたが、エイダさんと一緒にいる事で、大人の責任感みたいなのがちょっとでも湧いてきたのかな。
「ところで、うつつさんはクリエメイトなのですか?」
「それが………」
「うぅぅ……そんなんじゃあないわよ…悪い?」
「いいえ!とんでもありません! 私は、たとえクリエメイトじゃあなくとも、聖典に記載がなくっても、こことは違う世界の人間と出会えたことが嬉しいんです。色んなお話がしたいですね……例えば、甘党か辛党か、とか」
「えっ」
メディアさんが疲れなど感じさせない雰囲気で、予想外にきらきらさせながらグイグイ来るのに、うつつさんはきょとんとしたかと思ったら、顔を真っ赤にさせながら慌てだした。
「う、うわ、うわ、よ、よよよ陽キャだよぉ!? 陽キャすぎて眩しいよぉ!?
ちょ、誰か、助け…この人を近寄らせないで! た、助けて、タイキック…」
「何を言う、うつつ。私が見た限り、メディアさんは良い人な気がする。いい機会だ、友達になってこい」
「し、しまったァァ!! この人も超絶の付く陽キャだったぁぁぁぁ!?!?」
「不安なら私も友になりに行くぞ」
「行動力の化身ンンンンンンン!?!?!?」
うつつさんは自分とは違う生き物に捕まってしまったような複雑な表情で騒ぎたてながら、メディアさんとタイキックさんに連れ去られてしまった……。
私もランプもマッチも、なにか一声かけようとしたけど、それより先に私達に話しかける人がいた。ナットさんだ。
「言ノ葉の樹ぶりだな。旅の目的?は達成したようでなによりだ」
「まぁ、今は別の事情で旅に出てるけどね」
「また別の旅ィ? メンドくせぇ事情だな」
ナットさんに、軽く今の私達の事情を説明しておいた。
突然、空から召喚された記憶喪失のうつつさん。ある日神殿にやってきた、これまた記憶喪失のタイキックさん。今回の私達の旅は、そのお二人の家と記憶を探すための旅だということ。それと、ここに来る前に、遺跡の街で騒動に巻き込まれた事も。
「遺跡の街……それ、この前テロリストの虐殺があった場所じゃねーか。ンな場所からよく生きて出られたな」
「…知ってるんですか?」
「あぁ。ココでもその噂が持ちきりだったぜ。なんでも、DHなんとかって麻薬常習犯のヒナゲシとかいうのが、人を殺して回ったってな」
「ちょっと待ってくれ。その話…詳しく聞かせてくれないかい?」
「リアリストと名乗ってるテロリストが、街の人を虐殺して回ったんだと。遺跡の街で虐殺してたヤツ……ヒナゲシは最終的に捕らえられたみてーだが……調べてみると、DHなんとかって麻薬を日常的に摂取してたことが明らかになったらしいぞ」
「麻薬……!?」
「そんなものを…!?」
「それは本当なのかい、ナット?」
「知らねーよ。言ったろ噂だって。DHなんとかは、ブッシュナントカが最近見つけたって話だが………重度な依存症を招く上に99%の犯罪者が接種してる、あらゆる毒の主成分だって話だぜ? そんな都合の良いモンが、世の中にあるのかねぇ…」
私達の事情の中の、「遺跡の街に行った」という部分で、ナットさんがそんな話をしてくれたのに対して、私達は顔を見合わせた。噂では、ヒナゲシや彼女の所属しているらしきリアリストって組織が、最新で危険な麻薬を使うテロ組織みたいに言われているけど……
「もしかしたら、あそこまでの極端な聖典嫌いの原因が麻薬である可能性は、ゼロじゃないと思います」
「そうかい? 会話は成立してたし、麻薬を使ってたようには見えなかったけど…」
「ううん、ランプ。私は違うと思う。パスもはっきりしてたし、ヒナゲシがリアライフを使ったのは自分の意志なんじゃないかな。……麻薬を使ってる人のパスを見たことはないけど……」
ランプはナットさんの「噂」を信じて、麻薬で聖典への敵対感情を植え付けられたのかもと思ったみたい。
マッチはだいぶ迷っているみたいだけど、私はヒナゲシの凶行は麻薬なんかのせいじゃない、ってことをはっきり言っておく事にした。
「ナットさんはその噂、どう思うんですか?」
「え、俺?俺は…………麻薬
「麻薬
「街の襲撃は確定だろ。ウツカイとやらが街を壊す映像も流れてるんだ、言い訳のしようがねぇ。だが麻薬云々の話は知らねぇな。データもあるから証拠つきの情報なんだが……なんだかなぁ」
それは勘なのか、それとも他の言葉にしがたい何かなのか。とにかく、ナットさんは噂をぜんぶ鵜呑みにはしていないみたい。噂って、尾ひれがつくこともありますしね…
これは、ちょっと噂の事も調べておいた方がいいかもしれないかな。
「ところで、ナットさん……エイダさんとは、どうですか?」
「エイダか…お前らと会ってからアイツ、ちょっとわがままになってな。ただでさえメンドくせぇのがよりメンドくさくなった」
「エイダさんって…珠輝様とちょっと似ていた…」
「アイツもメンドくせぇガキだったよ。オッサンの何が良いのかねぇ……」
「珠輝様はものすごいファザコン……ご自分のお父様が大好きなんです。その影響で、男性の好みもお年を召したおじさまが好きでして…」
「なんとなく分かるよ、そこは。だから分かんねーっつってんの。
アイツくらいになったら、男を選べる立場だろうによ」
ナットさんの言葉に「何を言っているんですか!」と怒るランプを見ていて、私は思ったことがある。
「ナットさん」
「ん?」
「エイダさんと暮らすのは…面倒くさいですか?」
「……まぁな」
「ナットさんが面倒な事が嫌いなのは、ちょっと付き合いがあれば分かります。
でも…今感じているそれは、家族といる事の温かさだと思います。面倒くさい事じゃないんですよ」
「…わかってるよ」
ナットさんはぶっきらぼうにそう答える。その時の顔は、口角が上がっていて、全然嫌そうじゃない…むしろ、ちょっと嬉しそうな表情でした。
◇◆◇◆◇
うつつを連れ出してメディアさんと出かけたのは、写本の街の中央通りにある、とある店だ。
細い棒のような何かや、黒い液体が入った壺などが置いてある。紙が連なっているものは分かるが……
「メディアさん」
「メディアでいいですよ」
「ではメディア。この瓶は何だろうか? …火炎瓶か?」
「火炎瓶て…」
「あはは、違いますよタイキックさん。それはインクです。ペン先につけて、紙に文字を書くためのものです」
「そうか……じゃあ、こっちの暗器っぽい棒が…」
「それがペンですよ。タイキックさんって、なんだか独特で面白い感性をお持ちですね」
そうだろうか…? “普通”と呼ばれる基準が分からないから、よく分からんな。
だが、ペンやインクはどうやら知名度はけっこう高いようで、メディアはインクを火炎瓶と、ペンを暗器だと言った私に対して笑ってそう教えてくれたし、うつつは私に信じられないものを見たって視線を向けている。
「………」
「どうした、うつつ?」
「えっ!? いや、なんでもない…」
「言ってくれ。でないと伝わらないぞ」
「…怒ったりしない?」
「あぁ。しない」
「……タイキックにも、分からないことってあるんだ」
怒らない? と念押しするから何を言うかと思えばそんな事か。
「ふふふ…」
「な、何がおかしいのよぉ?」
「私にも分からない事がある、なんて……そんなの、当たり前じゃあないか!
むしろ、私は自分の事さえ分からないまであるぞ。お前と同じ、記憶喪失だからな」
「……」
「タイキックさんとうつつさんって、仲良しなんですね!」
一人で何でも知っているなんて、想像できん。想像できんという事実が私の中にあるくらいには、現実離れした気味の悪いことだろう。
「…あ、このペン……」
「きれいなすみれ色のペンですね。気に入ったんですか?」
「ふぇっ、あっ、えっと……うぅ……………」
うつつにメディアが話しかける。
どうやらペンが目に留まったのだろうが、メディアが近いせいでうつつが黙り込んでしまった。
仕方がないから、私がちょっと間に入って、うつつとメディアの距離を離した。
「タイキックさん?」
「済まないな、メディア。うつつはかなりの人見知りでな。
一気に距離を縮めようとすると、逃げられてしまう。徐々に近づくといいだろう」
「なるほど!」
「勝手な事言わないでよぉ……!」
む、メディアの為にもうつつの為にもなることを言ったつもりなのだが、私からも距離を空けてしまったな、うつつは。
イジワルでもなんでもなく、メディアの急に来るのをやめさせるつもりだったのだ。私は大丈夫だが、うつつを見ているとどうもそういうのが苦手な人間もいるみたいで。メディアにもそういう人の事を分かってもらうつもりだったのだが。
そう言おうとして…………嫌な予感を感じた。
「うつつ、メディア」
「え?」
「はい?」
「しばらく、この辺りで買い物を楽しんでてくれ。
―――間違っても、入り口付近には来るなよ」
返事を待つより先に、私は店の入り口の方へ駆け出した。
商品棚をすり抜けて、やがて入り口に出ると………案の定、ウツカイ共が店に入ってこようとしているではないか!
いまだ一匹も入ってきていないのは、店主が死にもの狂いで木の棒を手に耐えてくれるからだ。だがそれも、時間の問題。ならば。
「店主よ、助太刀はいるか!?」
「な…お客さん!? 助かるけど……戦えるのか!?」
「勿論だ。コイツらとは何度も戦ったのでな!」
恐らく、奴らの狙いはうつつだろう。
店の中にいる客はうつつとメディア以外で何人かすれ違ったが……いずれにせよ。
「無粋なウツカイ共め! 全員まとめて―――タイキックにしてくれるわッ!!!」
『ウツカイ、タイキックー!』
「ハァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」
タイキック宣言を背に聞いた私は、誰にも止められない。
この店の中には、誰一人とて通さない。それくらいの固い決意と共に、私は目の前のウツカイに、タイキックをお見舞いした。
キャラクター紹介&解説
きらら&ランプ&マッチ
スクライブのギルド長という新しい出会いと、かつての敵との再会を果たした原作主人公一行。ナットから奇妙な噂を聞き、その内容と実際に見たものとの齟齬を感じ取って、噂の出処や詳細も(時間があれば)調べようと思う。
ナット
きらら達とも再会をしたオッサン。相も変わらず自己紹介や何で写本の街に来ているのかを話すのをめんどくさがるマダオだが、噂を鵜呑みにしないくらいには傭兵経験がある。また、エイダとの生活の面倒くささが、実は家族の温かさだと言う事を指摘され、自覚こそしていたものの嬉しさが表情ににじみ出た。
住良木うつつ
メディアとタイキックのW陽キャに連れ去られ、ショッピングに同行する羽目になった重要キャラ。まだこの段階ではメディアに心を許していない為、すみれ色のペンが気になったことを正直に言えなかった。だが、記憶喪失仲間のタイキックのお陰で、原作のうつつと比べて人としての成長ペースはやや上がっている。
あと、タイキックとメディアのやり取りで、知ってて当たり前の事を知らなかった事に疑問を覚えている。
タイキック
うつつが一人でメディアと友達になるのがハードルが高い気がしたので、同行したムエタイキックボクサー。メディうつの間を掛け持ち、有事には一人でウツカイ相手にタイキックの乱舞を披露する。
メディア
聖典に記載がないけど、別の世界の人に会えてテンション高めのスクライブギルド長。うつつとの距離感を間違えてしまうが、うつつがすみれ色のペンの事が気になっていた事はしっかりと察した。
すみれ色のペン
原作2部2章で登場した、うつつとメディアの絆を繋いだキーアイテム。原作でも2章以降もペンを持っている描写が見られ、うつつのお気に入りになる。拙作ではやや早いタイミングでうつつとメディアがこれを見つける事になり…?
△▼△▼△▼
ローリエ「やぁ、皆!よく写本の街に来たね!楽しんでいるようでなによりだ―――と言いたかったけど…問題発生だ」
フェンネル「スクライブの攫われる数が増えてきた……メディア様にもボディーガードが必要ですわね……ですが!」
うつつ「ひいっ!!」
フェンネル「護衛は信頼できる者でなければ。住良木うつつは信用できません。貴方……もしや、ウツカイと通じているのでは?」
次回『We're ボディーガード!』
フェンネル「…次回もお楽しみに。」
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メディうつにタイキックさんを入れたことについてどう思う?
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メディうつだけの方が良い
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新たな形になってて良い
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男だったら即死だった