きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷 作:伝説の超三毛猫
今回の七夕編のシナリオが面白かったんで初投稿です。2022七夕イベント『七夜の分かれ星』を見てからの閲覧をお勧めします。
七夕。
エトワリアにも全く同じ伝承があり、織姫と彦星がいるが…エトワリアのその伝承は全く異なる。
彦星と織姫が恋に落ちる……ここまではテンプレだ。だが、織姫の父である天帝が、地球で生まれたそれとはまったく違ってアグレッシブなのだ。天帝は結婚を阻止するためあの手この手で彦星に試練を課す。それを彦星は乗り越えて、結婚する……という話が、エトワリアにはあるのだ。
しかもこっから先はまたオリジナリティのある話だ。彦星と織姫はめでたく結婚となったが、天帝は娘を溺愛していたあまりに、心の底から納得できなかったらしく、積もりに積もった嫉妬心が呪いになって天の凶星として空に昇ったそうだ。それは―――「
まったく、親バカもここまでくると迷惑行為を働くクズ人間と変わらねーな。
エトワリアだから呪いの星で済んでいるが、現実世界だったら殺人事件の温床だぞ。とっとと捕まれ。
とはいえ、魔法が現実と化しているこの世界では、何が起こってもおかしくない。
呪いの星も、実際に起こったことが原因で伝承が生まれたのかもしれないしな。
閑話休題。
まぁ俺は、夜の星々が見守る下で、星の調査と新魔法『レント』の試運転に来ていた。
『レント』とは―――俺が開発した新魔法で、「術者の記憶にある物語の登場人物のスペック・能力をそのまま具現化する」効果を持つ。
ここで重要なのは、
ただこの魔法、開発したてなのでまだ俺の知らない不備があるのかもしれない。ゆえに、日々こうして試運転の毎日を送っているというワケだ。
「―――レント」
【
「日の呼吸・円舞―――」
今回真夜中で演じるのは、鬼を斬る物語に登場した始まりの剣士の技たち。流石に『全集中の呼吸(日の呼吸)』を使うと体がぶっ壊れるかもしれないので、借りるのはそいつの肉体スペックだけだ。
動きは知っている。だから、何の躊躇いもなく剣舞を繋げることができる。一晩中舞う為には呼吸法が必要だけども、それでも型だけを真似続ける。木刀を握りしめ、
しばらくの間、静かな夜の中で木刀が空気を斬る音と茂みを踏む音だけが響く。やがて……人の気配を感じた俺は、剣舞を中断してそっちを見た。
「……おや?」
「すごい…」
「ローリエ、さん?」
「みんな……どうしてここに?」
そこには、コルクと数人のクリエメイトがいた。
それにしても、みんな俺のさっきの剣舞、ひょっとして見てたのか? 心なしか、みんな驚きの表情で見つめてくる。ちょっと恥ずかしいぜ…
「すごいねローリエさん。何流の剣技?」
「何流………とかないんだよね。ただテキトーに舞ってただけだから、実戦には使えないかな」
「え~、ホントに~?」
「そうは見えなかったぞ……まるで剣道かなんかの演武だ」
はっはっは。宇希ちゃん光ちゃん、嘘はついてないぞ。(
こういう時、富岡言語は役に立つぜ。
「まさかこの穴場を他に知っている人がいたとは」
「穴場?」
「星を美しく見れる絶景。知る人ぞ知る隠しスポット」
「あ、そうだったの? 俺はたまたま人のいない場所で剣舞の練習をしてただけなんだけど……邪魔しちゃったらゴメンな」
「問題ない。一緒に見る?」
「マジか! 君みたいな美しい子から誘ってもらえるとは男冥利に尽きるねぇ~」
「「「「……………」」」」
「あはは!なにそれ!」
笑い飛ばしてくれた光ちゃん以外からは「またそんなナンパ文句を言ってー」みたいな顔をされたが、別に誰かが嫌がるわけでもなく、静かな星座観察が始まった。
あおちゃんの彦星と織姫の解説をBGMにしながら、寝転がって空を見上げる。
「きれい…」
「本当だね~、天の川まで良く見えるね~」
「お姉ちゃんにも見せてあげたい」
「そうだな。こはねたちとも一緒に……
…って、秘密の場所っぽかったけど、みんなに教えて良かったの?」
「問題ない。里のみんななら。
それに…先客もいたことだし」
「な、なんか申し訳ないコトしたかな?」
たわいもない話をしていると、夜空をきらり、と動く何かが目に入った。
縁起の良い事だ。流れ星に即座に「盤石なハーレムを築けますように」っと…
「…ローリエさん……」
「あれ、あおちゃん?」
「本気なんですか? その願い」
「やっべ、声に出ちゃってたか」
あおちゃんから、そんな言葉をかけられた。食玩で一番いらないキャラが出た時のような顔が地味に印象に残った。
心配しなくても、ハーレムは神殿の皆で幸せになるためのものだから、クリエメイトの皆には手を出したりしないよ。ナンパはするけど。だから、みんなで若干引くのやめない?傷つくぞ?
そう反論しようとした―――その時だ。
流れ星が―――真っ赤になって、二つに分かれるように爆発したのは。
「流れ星が…はじけた」
「生き物みたいに別々の方向に飛んでったけど…」
「不思議~~、超常現象かな~」
「私も……こんな現象があるなんて知らない………何だったのかな……」
「……うわぁ……うわぁ……」
皆は十人十色に不思議現象に見入っていたが、俺だけが、顔が青ざめていくのを感じた。
―――七夕前日の夜に、二つに分かれる流れ星を見た者は、『一番近しい者への“好き”の感情』を嫉妬の天帝に奪われてしまう―――
……こ、こんな事ある!?
俺だって、今の今までただの伝承だと思ってたから、マジにそんなのがあると思ってないですけど!!?
現代日本では100%眉唾って言われるが、ここはエトワリア。ただのマイナーな伝説とは考えにくい!
やばい。このままでは、俺の感情が奪われる。それだけじゃない。クリエメイトが人質に取られてしまったぞ。みらあおやこは宇希の片割れがここにいる以上、動かない手はない。せっかくの百合が消えてしまうのだけは避けなくては。
「ろ、ローリエさん? どうしたの? 顔が青いけど…」
「あー………えーっと……君達、明日時間ある?」
「え?なんでそんな事言い出すんだ!?」
「私達全員相手にナンパかな~~?」
「ええぇ……やっぱり、私達になにかする気なんですか?」
「違うんだって! 今回ばっかりはマジにやばいんだってば!!
あの星は…エトワリアに伝わる凶星……悪い事の前兆でだな……」
「怪しい……」
さ、最悪だ!
俺はただ、『七夕前夜の呪いの凶星』についての話をしたいだけなのにどんどん立場が危うくなっている! みんながみんな、ジト目でこっちを刺し貫くように見つめているではないか。
こ、このまま諦めるわけにはいかない。クリエメイトにナンパはしてるけどセクハラはしてないんだぞ! こんなことで、信用度を落としてたまるか!!
「イヤイヤ、ほんとにそういう御伽噺があるんだよ。
織姫と彦星の仲睦まじさに嫉妬した親バカの天帝がだな―――」
「それにしたって、私達明日は演劇の本番なんですよね~」
「え? ど、どゆこと?」
「用事があると言う事。済まないが明日は空けられない」
な、なんてこった。
5人が5人とも、先約が入っているだと!?
コルク曰く、子供たちの為に、明日の七夕祭りの際に織姫と彦星のラブストーリーの演劇をやることにしたんだと。
それで、くじ引きで選ばれた彼女たちは、さっきまで劇の練習をしてたそうだ。
「そうか……七夕祭りの演劇なら仕方ない…
……ちなみに、みんな何役で出るの?」
「あはは~、それは内緒ってことで」
「えー? う~~~む。
…あ、わかった。みんな織姫役で、彦星ハーレムの一員か」
「「「「「違う(います)!!!」」」」」
凶星を見てしまった皆から協力を得られないまま、この夜は別れて帰らざるを得なくなった。
◇◇◇◇◇
翌日、俺は神殿の書庫をひっくり返すように漁って、『七夕のもうひとつの伝説』についての記述を探した。
マイナーということもあり、捜査は難航したものの、早朝から始めた図書探索は、昼になる前に成果を上げることに成功した。
「『わかれ星が流れた、その真下に七夕の夜だけ現れる、地を流れる天の川』か……
そこに行って“もう一人の自分”を取り戻せばいいのか」
対策さえ分かれば後は対処可能だ。
俺は陽が沈みかけた時間帯になってすぐに、前日にコルクちゃんらと出会った場所に来て、早速「地を流れる天の川」を探してみる。
しかし…ルーンドローンまで駆り出したのに、それらしい痕跡は見当たらない。陽が落ちて光源がなくなったから見落とした、とかではない。マジでなんにもないのだ。
マズいな。このままじゃあ皆の“好き”が持ってかれちまうぞ。みらあおやこは宇希が見れなくなるとか死刑以上の拷問だろ。あと俺のハーレム願望にも支障が出る。諦めるワケにはいかない。
だが、目的の『地を流れる天の川』が見つからん。早くそれをみつけないと―――
「待てよ……地を、流れる?
地を流れるって、地面を流れるとは違うのか?
もっとこう…比喩的な何かか? それとも、『地』の意味が違うのか?」
地を流れるの『地』は……地面じゃなけりゃ、なんだ?
地表、地殻、地核、地中、地金………地中?
そうか!!
「ルーンドローン! 捜索対象を川から
この辺りに川はない。
だが、洞窟の中……つまり地中に水源があって、それが流れて川みたいになってるところがあるのかもしれない!
正直どうなの?って可能性だが、夜になっても地面の上に川が現れてこない以上、可能性はある!!
その可能性に行き着いてすぐに捜索中のルーンドローンに指示を出したところ――――すぐに、洞窟の入口が見つかり、奥へ行った機体から、神秘的に光り輝く川の映像が送られてきたのだった。
「――ビンゴだッ!」
ルーンドローンの報告の場所へ行くと、そこには確かに洞窟の入口があり、その洞窟を入り、奥へと進んでいくと、映像の通りの景色が広がっていた。
ただ、思ったより川幅が広く、歩いたり泳いだりして渡れそうにない。
「こんな事もあろうかと―――牛さんを連れてきておいて良かった」
「モォ〜〜」
入口からここまでなだらかな道で牛さんも通れたし、道中は蛍光性のあるキノコが道を照らしてくれたから、牛さんも安全にここまで来れた。
牛さんに乗ることで、川を渡っていく。対岸が近づくたびに、肌寒さを感じた。まるでこの世のものとは思えないような………。
「さ〜て、“もう一人の俺”はどこだ〜?」
探してみれば、ほどなくして見つかった。
―――ただし、もう一人ではなく
「な、なんだこれ…!?」
「おう、やっと来たのか。待ちくたびれたぜ」
まず最初に近づいてきた俺が、俺に―――あぁややこしい。この対岸にいた『俺』は便宜上『心』って呼ぶか。
心その1は、外交官のように友好的な笑みを浮かべて俺に悪手を求めてきた。その姿は、
「まったく。呪いとはいえ、ここまで心が分断するなどありえんぞ。」
心その2は、その1の隣で呆れたような言葉をかけた。言動といい男性版にフィーチャーされた筆頭神官服みたいな服装といいなんか
「そうだぞ。ここまで別れたら、廃人になってもおかしくない」
「ま、これが転生者特典、なのかもしれないね」
「ハッハッハ! そりゃ地味な転生特典だな!!」
続いて出てきた俺の心その3~5が身につけていたのは、黒ローブに、エイジアンな民族衣装に、エトワリアの市長服だ。三人とも、そこはかとなく
「まぁでも、本体がやってきたなら話は早い。さっさと帰らせてもらおうか」
「全ては我がハーレムの為に」
最後の俺の心その6と7は、片方が洋風の騎士鎧に身を包んだ姿をしている一方で、もう片方は派手な和服を着こなして伊達男をイメージしている。デザインは性別が違うから全く違うものの、鎧や和服のカラーリングが、
「ど、どういうことだ……!?
もう一人の自分なんて聞いてたから、てっきり一人をイメージしてたが…」
「落ち着くんだ、俺。
もう一人の自分と言うが、その正体は『自分の最も近しい人への好きの感情』だ。
もし仮にだが……『自分の最も近しい人』が複数人いた場合…そのケースはどうなるんだろうな?」
「!!!
ま、まさかお前らは―――」
俺の事を俺と言ってくる、俺の心達は、そこまで言うと、皆イケメンフェイスをニヤリと不敵な笑みにする。
言いたいことは分かったぞ。つまり、1番好きな人が同着で複数人いる人は―――
―――それ即ち、『自分の最も近しい人への好きの感情』も
「―――
「「「「「「「
いやー、嬉しいねぇ。狙っている子達を全員幸せにする覚悟を目に見える形で見れるのは。
ちなみに、シュガーとソルト、ランプやきららちゃんの分がいないのは、みんなまだ子供だからだ。そういう意味では、同着になり損ねたのかもな。
嬉しみのあまり、ソラちゃんっぽい白ローブの心と握手をすると、その俺の心は光の粒子となって溶け、俺の中へ吸い込まれていった。
よしよし、元通りになる方法についての心配はないようだ。他の心もとっとと俺の中に戻しちゃおう。
そうしたら、後はコルクとクリエメイト達のドッペルゲンガーを見つけるだけだな―――
「オトウサンハユルシマセン!!!」
「…お?」
突然、誰かの声がした。
その方向を向くと、帝のような格好をした、真っ黒のマッチが宙から降りてきた。
いや……アレはマッチというより………
「―――天帝、かな?
さっきの発言、どういう意味だい? 俺は織姫に求婚なんざ―――」
「オトウサンハミトメマセン!!!」
「うおっ!?!?」
口からレーザーを放ってきた。
即座に回避できたし、牛さんも無事だが。どうやらあの天帝は………呪いをかけた張本人とかじゃなくて、呪いそのものみたいだな。
雰囲気からしてそんな感じだったし、こっちの言葉も問答無用と言わんばかりに襲ってきた。
はた迷惑なヤツめ。自分の呪いくらい、自分でなんとかしろよ、天帝。
「まぁ、いいか。おい、
あの、犬のフンよりも人様に迷惑をかける呪いをぶっ壊すぞ!!!」
「「「「「「OK!!!」」」」」」
俺の背中に、残っていた6人の心が飛び込んできて融合し、元に戻ったのを実感してから俺は戦闘態勢に入った。
「オトウサンハミトメマセン!!!」
「…いやー。一人でここに来て良かったよ。
それに、天帝の呪いさんよ。お前が意志を持たない、暴走機械みたいな存在なのも良かった。
お陰で―――」
「オトウサンハユルシマセン!!!」
「―――人にはとても使えない力も試せる。
地獄を楽しみな――――――『レント』!」
今日は迷惑な呪いを祓うついでに、誰にも邪魔されずに『レント』の更なる試運転もできる。
せっかくの機会だ。簡単に壊れてくれるなよ?
負の感情はタフって相場が決まっているんだ。せいぜい、いい結果を出させてくれ。
◇◆◇◆◇
ローリエが洞窟突入前にご近所の牧場から借りて同行した牛さんこと、サンディ君(3歳・♂)。
彼は、ローリエに連れられ不可思議な地を流れる天の川を渡ったその日の、ローリエと天帝の戦いを、牧場の仲間にこう語り継いだ*1。
「人間っていうのは、動物界で見れば、物凄く貧弱な生き物なのは知ってるだろ?
山羊みてーなちょっと体の大きい動物の突進に簡単に弾き飛ばされるし、骨も簡単に折れる。
だから……あの恐ろしい技の数々も、その貧弱な人間がどうやって繰り出したのかが、今もワカっていない」
七夕の夜、あの不思議な川を渡って己の分身と融合し、ローリエが天帝の呪いと戦った理由も、サンディは分かっていなかった。せいぜい、「呪いがいきなり襲ってきたから、ローリエも自己防衛のためにやり返した」程度の認識しかない。
「宙を浮く猫みたいな黒い呪いがこう…口からレーザーを放ったのを避けた直後だよ。ローリエの身体に異変が起こったんだ。
なにか、四角い道具をちょいといじった後……彼の姿が変わったんだ。肌の色は真っ青になって、目は二つから六つになって、髪も黄緑から真っ黒に染まっていった。」
「……何を言っているかわからないって?
仕方ないだろう。その通りのことが起こったし、そうとしか言えなかったんだぞ?」
ローリエが獰猛な笑みを浮かべながら『レント』によってその身に宿した力とは―――ある物語に登場した鬼の力である。
名を、
無論、この存在を知っている者は、エトワリア人どころかクリエメイトにも存在しない。
「そして、だ。何か技名を呟いた途端、剣を抜き放った一撃から、無数の月が出てきて、黒い呪いの身体をバラバラに引き裂いたんだよ。まるで、そのままステーキ肉にでもできそうなくらいにね」
『月の呼吸・弐の型―――
『オトッ―――』
ローリエの放った剣技・月の呼吸。
それは、黒死牟の放つ剣技と同じように、攻撃範囲と凶悪性、そして攻撃力の高い技だ。
オリジナル同様、攻撃時に出てくる大小さまざまな三日月にも当たり判定があり、当たった瞬間、熱したナイフで斬られたバターのようにスパッといってしまうことから、防御もほぼ不可能。再現したものながら、ローリエの『物語』の知識からか、その技はオリジナルとほぼ遜色ないチートスペックを誇るようになった。
そんなチートスペックの三連撃を天帝の呪いがかわせるはずもなく、瞬く間に三枚おろし………いいや三十枚おろしになってしまう。
「でも、呪いも呪いだった。ステーキになった欠片を集めてね、また復活したんだ。
ローリエの身体も恐ろしい風貌から元の人間になったから、これはまた大ピンチって思ったさ。
一瞬で敵をおろせる技だ。反動でも来たんだと思ったんだ」
斬られても復活しようとする天帝の呪いに、黒死牟の外見的特徴が消え、『レント』が解除されたと思われるローリエ。
しかし、ローリエが浮かべていた肉食獣のような笑みは、まだ消えていなかった。
「え? 『助けに入ったのか』って?
……とんでもない。俺はただの牛だぜ。呪い相手に、何かできるとは思えない。
それに―――アイツは、俺の助けなんかいらねぇ位に強かったのさ」
『オトウサンハミトメマセン!!!』
『次はコレだ―――『レント』!』
【
『
『オッッ…!?』
「また四角い何かをいじったと思ったら、今度は目に見えないスピードで呪いを殴り抜けたのさ。しばらく打撃音がしたかと思えば、気が付けば呪いは床に叩きつけられながら爆発したね。
………恐らくアレは、まばたきしてなくても、何が起こったのかわからないだろうぜ」
『
続いてローリエが『レント』で再現したのは―――海軍大将と呼ばれた男・ボルサリーノの力だ。
ボルサリーノには、特殊能力が身についている。それは『ピカピカの実の能力者であること』だ。
悪魔の実の一種でもあるそれは、食べた者を全身光人間にしてしまう。光の性質を、自由自在に使えるのだ。
今回、ローリエがやったことは至極単純。光の速度――秒速約30万キロメートルにものぼる――で、天帝の呪いに喧嘩殺法をしかけてぶちのめし、トドメにレーザー付きのキックをお見舞いしただけだ。
「そこで初めて、呪いが明らかに弱った様子を見せた。そこからの幕切れはアッサリだった。
瓶詰めの液体を飲んだローリエが白髪になったかと思ったら、剣で一振り。それでしぶとかった呪いはあっさり消えてしまったんだよ。」
『もう終わりか、たわいない。
……まぁ、これ以上暴れて洞窟が崩れるのもヤだし、そろそろ終わらすか』
『オト…ウ、サン…ハ………ミト…メマ…』
『喧しい。認めるか否かはもうお前が決めることじゃない―――『レント』』
【
『その呪いを断ち切る―――
『ミト…メマ…セン…………ミ、ト……メ―――』
「ローリエがハーレムの願望を持っていたのは、行きの道中で教えてくれたことだけどな。
ハーレムを作る資格があるのは、
ライオンだって、一番強いヤツがハーレムを作るが、強さに陰りがでた瞬間、群れの仲間のオスに下剋上されるって聞いたことがある。
実際に見た
天帝の呪いを迷津慈航斬―――
◇◆◇◆◇
ふぅ、終わった終わった。
ここまで『レント』ではっちゃけたのは初めてかな。
途中で魔力尽きて携帯用の回復薬ガブ飲みしちゃったしなぁ。
とりあえず、天帝の呪いはもう完膚なきまでに消し去れたから良しとしましょうか。妖夢ちゃんの力まで『レント』して、迷いを断ち切ったから成仏はするはず。まぁ仮にしてなくても二度と人様に迷惑をかけられなくなるさ。
さて、他の皆のドッペルゲンガーはどこだろな、と思った所で。
「え!? ローリエさん!?」
「先生!! どうしてここに!!?」
きららちゃんやランプが、昨晩出会ったコルクやクリエメイトを連れて、牛さんその2に乗ってやって来ていた。
ワケを聞くと、5人ときららちゃんも、ランプからもう一つの伝説を聞いてここを探り当ててやってきたそうだ。早く『もう一人の自分』を探して連れ戻そう、という具合に。
俺の方も、ここにいたワケを皆に話した。
もう一つの伝説を既に知っていた事、夕方頃から調査して洞窟から繋がる天の川を見つけた事、俺自身も『もう一人の自分』を連れ戻しに来た事。その途中で天帝の呪いらしきものに阻まれたが、これを破壊したこと。
流石に「もう一人の自分が一人どころか七人いたこと」と「他社キャラの力をレントした事」は伏せたけど、皆俺の事情に納得してくれた。
「つまり昨晩、時間あるかって言ったのは……」
「ナンパではなく、この呪いの調査をしたかったからということなのか……?」
「ご、ごめんなさい、ローリエさん……そうとは思わずに」
「もう気にしてないって。フラストレーションは天帝の呪いにぶつけて粉砕した後なんだからさ」
ナンパだと言い切って引いてしまった事を謝ってくれた子もいたが、そもそも諸悪の根源は天帝なんだから、気にしなくっていいのに。
そう言ってもあおちゃんやコルクの表情が晴れないな……あ、それなら。
「まだ気にするってんならさ―――」
耳打ちをした二人の表情が驚きのそれに染まった。
◇◇◇◇◇
皆がそれぞれの「もう一人の自分」を取り戻し、洞窟を出た俺達が目にしたのは、入口でスタンバってた
「…おや? 彼は…八賢者のローリエ?」
「洞窟の奥で会ったんです。一足先に辿り着いてたみたいで」
「流石だね。…いや、当然というべきかな?
コルク達の話では、貴方も呪いにかかっていたのだから」
「皆で探したんですよ?」
「いやぁ、スマンスマン。他の子達は先約があったって聞いてたんでね。俺は早い段階から伝説を調べてたんだよ」
待ってたクリエメイト達に事情を説明している最中に、コルク達『分かれ星』を見た組がきららちゃんにそれとなく近づき、準備が整う。
俺はさも当然のように取り出したクラッカーを、きららちゃんに向けて引いたのだ。
パンッ!
それを合図に、他の5人も
パンッパパパンッ!!
「えっ!? な、なになに!!?」
「「「「「「きららちゃん、お誕生日おめでとう!!」」」」」」
「…………あーーー!!!」
誕生日を祝われたきららちゃんは、きっかり5秒固まったかと思えば、今思い出したかのように目を見開いて声をあげた。
「そ、そうでした! 今日は七夕だから……
あ、ありがとうございます皆さん! 私、すっかり忘れてました!!!」
「やれやれ、演劇や天帝の呪い騒動に集中してて、自分の誕生日の事を忘れてたのか? ―――ほんとに、君らしいな」
「ご、ごめんなさい…」
自分より人の事を気にかけるきららちゃんらしさを言及すると、小恥ずかしそうに頬を染めるのであった。
今は即席だが、騒動の中心となったクリエメイト達に、クラッカーを渡しておいたのだ。きららちゃんを祝えるように。
「今日は流石に遅いからアレだけど……明日は盛大に祝おうぜ。な?」
「でも、予約とか大丈夫なんですか?」
「もちろん。こんな事もあろうかと、店の予約は済ませている!」
「なんで『こんな事もあろうか』と思えるんだ……」
細かい事は気にしないの宇希ちゃん。みんなで無事に帰ってきたんだから、他のことなんて些細な事だろ?
こうして、俺達が中心の分かれ星騒動は終わりを告げた。翌日はきららちゃん誕生日&生還祝いとしてド派手な宴会が開かれたのであった。ちなみにだが。
「照ちゃん、計画はどう? 順調?」
『全然だめ。双葉ったら、全然食べるスピードが落ちないわ』
「しょうがない。君のお姉ちゃんに出動してもらうしかないか」
『やめてください!お姉ちゃんのジュースは本当にダメなんですって! 私と葉子様まで犠牲になっちゃうから!!』
「……骨は拾ってやる」
『ローリエさーーーん!!!!』
予約先の店の食糧庫の絶滅を防ぐため、宴会に参加する気マンマンだった双葉の胃袋を、店に着くまでにどれだけ埋められるか策を練っていたりもしたけど、結果があまりにも予想出来過ぎるから、別に話さなくてもいいだろ。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
分かれ星を見たことでクリエメイト達と一緒に呪いにかかってしまった拙作主人公。だが七夕祭りでは特に大した役を請け負ってなかったため、翌日は呪いの星の伝承調査に専念できた。その甲斐あって、本来のクリエメイトたちよりも先に地下の天の川に辿り着き、天帝の呪いと対峙している。そこで『レント』を使ってはっちゃけて、呪いを木端微塵に再起不能にした。
コルク&真中あお&小野坂さおり&葉山光&猿渡宇希
イベントの主役たち。ただ、拙作では地下の川に到達した時点で既に先客がいた上に、その人が露払いを実行し終えていたため、何の苦労もなく“もう一人の自分”を取り戻すことに成功した。ただ、前日のローリエの誘いをナンパと思い込んでしまった罪悪感を持ってしまったため、それの払拭の為にきららの誕生日パーティーの準備を積極的に手伝ったという。
牛さん(サンディ)
ローリエの川渡りを手伝った牛。イメージCVは山寺宏一。ローリエの『レント』を使った異次元バトルの唯一の目撃者となり、その姿を動物たちに語り継ぐ。ただし、伝え方も価値観も動物特有であったため、まったく違う伝説として残るのだが、誰も知るよしはない。
黒死牟
『鬼滅の刃』に登場する、鬼の1体。人間だった継国厳勝が、鬼舞辻の血を受け入れたことで生まれた。作中で鬼を滅する技術であるはずの『全集中の呼吸』を使い、鬼のぶっ飛んだ身体能力と合わせてチートスペックを誇るようになる。
継国縁壱
『鬼滅の刃』に登場する、戦国時代の鬼狩りにして始まりの剣士。前述したチートスペックを軽々と超えるチートを公式で受けており、作中最強を譲らない。ローリエの『レント』では一時的に肉体スペックを再現する程度しかできず、もし仮に「日の呼吸」を使おうものなら、ローリエの方が壊れていた。
ボルサリーノ
『ONE PIECE』に登場する、海軍大将のひとり。「ピカピカの実」という悪魔の実の能力者であり、光速移動からの殺法や光り輝くレーザー光線での攻撃を得意としている。また、ピカピカの実が
魂魄妖夢
『東方Project』に登場する、半人半霊の美少女庭師。白玉楼という冥界の屋敷で西行寺幽々子の警護役を務めている。楼観剣と白楼剣という二振りの刀の二刀流で戦い、特に刀にはそれぞれ「幽霊10匹分の殺傷力」と「人の迷いを断ち切る」という力が備わっている。現在の世界1位さん。
あとがき
きららちゃん、誕生日おめでとう!本当はきらら誕生日記念にしたかったけど、この話にきららが脇役程度にしか出てこないのに祝うのはどうなのってことで、ここで祝わせてもらいます!