きららファンタジア 断たれた絆と蘇る理想郷   作:伝説の超三毛猫

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モンストのジョジョコラボで徐倫当てました。神父をオラオラするの楽しかったです。
アニメも見たんだけど、サンダー・マックイイーンがあらゆるリアリストよりタチが悪いと思ったのは俺だけだろうか…?

今回のサブタイは「仮面ライダーオーズ」風にしました。
第三者視点から書いた部分はジョジョの奇妙なナレーター風に脳内再生してくれると助かります。私はそのつもりで書きました。

“私が見た限り、救いようのない悪党には共通点があった………誰もが嘘つきで、良い人になろうとしなかったという点だ。”
 ……木月桂一の独白


第23話:奥の手と終戦と夜会話

 ―――時間は、ローリエとスイセンの撃ち合いのタイミングに遡る。

 

 スイセンの弾丸によって、脇腹を貫かれたローリエ。

 しかし、それによって脇腹に下げてあった巾着袋に穴が空き、そこからバラバラと魔道具が落ちていった。それらは、まるで生きているかのように物陰に隠れ………そのまま、スイセンの脇を通っていった。

 ……魔道具の名前は、G型魔道具。

 

 黒色だけでなく()()()()()()()()()()()ソイツらは、スイセンやローリエ、きららやランプ、フェンネルやウツカイ達が戦っている脇を、カサカサと通り過ぎていく。

 そのことに、誰も気づかない。当たり前だ、戦闘中にゴキブリに目を奪われるような人間は敵の攻撃の良い的になるに決まっている。よって、誰も―――偶然被弾した巾着袋を持っていたローリエ以外―――G型が二種類いたことも、ソイツらがスイセンの守っていた奥へ歩き去って行ったことも、全く気づかなかったのである。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ―――リアリスト・アジト最奥部にて。

 そこでは、サンストーンがせかせかと、絶望のクリエによって闇堕ちしたスクライブを転送する準備に取り掛かっていた。

 

 

「魔法陣…準備完了。これで良し」

 

 

 転送用の魔法陣の起動はもう終えて、立ち上げている間にスクライブ達を陣へ誘導し、転送するのを待つだけ。それで奴らの目的のスクライブはもう手が届かない場所へ転送される。

 あとは時間稼ぎが上手くいくことを待つだけの、楽な仕事であった。

 ―――そう、イレギュラーさえ起こらなければ。

 

 全てのスクライブを陣に乗せ、後は本格起動を待つばかりだと息をつくサンストーン。

 

「(これでまた…真実に一歩近づく……世界の絆を断ち切れるのも時間の問題だな)」

 

 世界の絆とは何なのだろうか?

 それを断ち切るとは、どういう意味か?

 仮に実行するとしても、どうやって断ち切るのか?

 それらの疑問への答えは、まだ現段階では伏せておく。まだ神殿側は、その目的に誰も気づいていないし、今は語るべき時ではない。

 

 サンストーンはスイセンとスズランの実力を信頼しているが故に、きらら達邪魔者がここに来る前に転送が終わるだろうと読んでいた。

 だから……すぐに気が付くべき異変に、すぐに気付かなかった。

 

 

「…………………? 魔法陣が途切れている?」

 

 

 起動プロセスとスクライブの誘導を終わらせて数分。

 サンストーンは、ふと視界に入った魔法陣の一部が途切れていることに気が付いた。

 さっきは途切れてなかったはずだが、と近づくサンストーン。そうすることで、魔法陣の途切れの正体に気が付いた。

 

 

「なッ!~~~~~~っっっ、(ご、ゴキブリ…!? な、なんだ……途切れてたのではなくコイツが陣の上に乗っていて、魔法陣の光が見えなかっただけか)」

 

 

 そう。ゴキブリが乗っていたのだ。しかも、やや体の小さい、茶色いタイプだ。サンストーンは、その正体に驚くと同時に、少し安堵した。

 サンストーンとて、女性なりの価値観は持ち合わせているし、ゴキブリに対して一般的な生理的嫌悪感を持っている。

 しかし、ここで「キャー」などと悲鳴をあげようものなら、時間稼ぎの為に戦っているスイセンとスズランが何事かと動揺し、撤退戦に悪影響が出てしまうかもしれない。サンストーンは、努めて声を出さないように、そしていつでもゴキブリを安全圏から退治できるように、そいつを視界から出さないように目を合わせつつ、棒切れを取り出せる位置まで距離を取った。

 

 

「ヒナゲシではあるまいし、この程度で動揺するワケには………………?」

 

 

 攫われた仲間である筈のヒナゲシをナチュラルにディスりながらも平静を取り戻そうとするサンストーンは、魔法陣のチャバネゴキブリを観察していくうちに、おかしなことに気付く。

 ……薄暗い明かりだからかたった今まで気付かなかったが、このチャバネゴキブリ、自分に気付かれても動く気配がなかった。それに…あの魔法陣の上でヤツは何をしているのか? あの辺りに、丁度良く偶然にゴキブリが食いつきそうな食べ物のカスか何かが落ちていて、それを食っていたとか?

 …まさか。そもそも自分達はこんな奥で食事なんかしたことがないし、スクライブにも食事は与えていない。与えているのは生命維持の魔法だけだ。

 

 そう思って、サンストーンは棒切れを片手に再びチャバネのGに近づいて……ここで、ようやくソイツが何をしているのかを悟った。

 

 

「な……こ、コイツ!!! ()()()()()()()()()!!

 なんだコイツはぁぁぁッ!?」

 

 

 そう。このチャバネゴキブリ。魔法陣を構成していた魔法の線を、まるでう○い棒か何かのようにむさぼり食っていたのである!

 ゴキブリが2億9000万年も絶滅せずに生き続けていた理由の一つに、幅広い雑食性がある。基本柑橘系・ハーブ・塩以外は文字通り何でも食べ、水一滴で3日、油一滴で5日生きることが出来、人の髪の毛や電化製品のコード、果ては共食いをしてでも生き延びる。これに凄まじい機動力と隠密性、繁殖力まで合わされば、絶滅しろという方が無理なのかもしれない。

 エトワリアにも例にもれず、ゴキブリは存在する。現にローリエは、G型を開発する際に、本物をスケッチしまくって、本物のツヤを参考に、出来るだけクオリティの高いG型魔道具を作る事に成功したのだ。

 

 サンストーンも勿論、エトワリアに忌むべきG型生命体が存在するのは知っている。だが、魔法陣を食うほどの雑食性は聞いたことがなかった。

 

「なにか分からんが、それを食うのはやめろッ!」

 

 Gを退治するため、サンストーンは手に取った棒切れを振り下ろす!………しかし。

 

▶サンストーンのこうげき!

▶チャバネGは ひらりとみをかわした!

 

「ば、バカな……攻撃を察知して避けただと…!?」

 

 殺すつもりで振り下ろした攻撃を、チャバネのGが回避したのを見て、動揺を隠せないサンストーン。

 さっきまでGがいたところがその時初めて見えたのだが、やはりそこは虫食いのように食われていた。

 急いで魔法陣を直すサンストーン。魔法陣の欠陥を放っておいたら、正しく転送が出来ないからである。

 チャバネGが食い荒らしたことで突然にできた、魔法陣の欠陥を修正したサンストーン。しかし、ひと息つこうと思って視線を上げると――――――背筋が粟立つ光景が広がっていた。

 

「なっ!?!?!?」

 

 なんと―――チャバネGが数十匹と、魔法陣に群がって現在進行形で食い破っているではないか!

 

「何ッッ!! コイツら、さっきまでどこにいたんだッ!?」

 

 そこからサンストーンは、魔法陣を食おうとするチャバネGを駆除し、魔法陣を修復する作業に没頭せざるを得なくなった。

 闇堕ちしたスクライブを利用することも考えたが、全員意識を希薄にさせているから大量のGにも無反応なだけで、手伝わせるために意識を戻したら、恐怖で混乱を起こすかもしれない。それに、元々スクライブの転送が目的なのだ。起こす意味がない。兎に角そんなリスクを冒すくらいなら一人でやってやるとチャバネGに立ち向かうサンストーンである。

 チャバネG達を潰そうと攻撃する……だが1匹も当たらない。しかし、それで十分。サンストーンの目的はチャバネGの退治の方ではなく、転送魔法陣の守護と修復だからだ。

 Gどもを追い払っては、食われた部分を修復する。群がってきたGを追い払っては修復。追い払っては修復、追い払っては修復…………そこで、サンストーンは気が付いた。

 

 

「くそっ、数が多すぎて修復が間に合わない……

 それに、妙だ……コイツら、明らかに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!」

 

 

 単純に数が多すぎて、魔法陣の修復が間に合わないこと。

 そして、チャバネGどもが、さっきから魔法陣だけを狙って攻撃してきていることに。

 本気を出したサンストーンは、戦闘とパスの切断にしか使わないサーベル剣を鞘から引き抜いて、魔法陣を傷つけないようにチャバネGだけを狙って斬りかかる。しかし……すんでのところで刃は掠るばかりで、一向に数を減らせないでいる。

 

 

「多分、今攻めてきた奴等の手先か……十中八九、八賢者ローリエ!

 なんて奴だ……魔法を食らう品種(ゴキブリ)を、ここまで訓練するとはッ!?」

 

 

 サンストーンは、頭をフル回転して、その結論を導き出した。

 

 事実は、少し違う。サンストーンが魔法を食う品種のGだと思っていたものたちは、全てローリエの発明品だったのである。

 ―――G型魔道具・タイプBROWN。従来までのG型……情報収集&諜報特化のタイプBLACK*1とは違い、妨害系の諜報型に仕上げた、新たなG型魔道具である。サンストーンは、あまりのG型の再現度と最奥部の薄暗さのせいで、本物と見間違ったのだ。

 

 …極限までチャバネTYPEのGに似せた魔道具。その能力は、G特有の咬合力による破壊工作だ。

 物理的に様々なものを破壊できるのは勿論、G型の牙に対魔法のサイレンサー加工………いわゆる魔法無効化の魔力が宿っており、魔法で作られたあらゆるものを、その口で破壊することができるのである。勿論、G型に備わる機動力・隠密力・飛行能力含めた逃走テクも健在だ。Gの繫栄の秘訣たる雑食性を、可能な限り再現した悪魔的に頭の悪い発明品である。

 

 しかし、その悪魔的な発明品が、いまサンストーンのメンタルを追い詰めていたのは事実だった。現に、彼女はジリ貧を確信していた。

 

 

「(このまま千日手を繰り返すワケにはいかない………じわじわとコイツらに陣を食いつくされるだけだ。そんなことになったら……折角集めたスクライブが、転送できなくなるッ!)」

 

「やるしかない……このまま、転送するしかないッ!」

 

 

 この無駄にスタイリッシュに攻撃をかわしながら、魔法陣を食い続けるチャバネG型の群れ相手は、流石のサンストーンもお手上げだった。……これが例えば、自分を目の敵にする策士や、やたら傲慢で自信家の歌姫、そして触れ合いを求める毒娘がいたら話は違っただろう。しかし……自分一人では明らかに不利だ。

 ならば、コイツらに食いつくされる前に、転送を発動させてしまえば良い。いや、もうそれしか残っていない。

 現に、魔法陣の3割ほどが虫食いのように食われてしまっている。スイセンとスズランに助けを求めるのが論外であり、他の『真実の手』も他の任務で動けない以上、こうするしか手がなかった。

 

 

「よし、いつでも転送できる…!

 今だッ! このスクライブ達を…我らの本拠地まで転送しろォォーーーーーッ!」

 

 

 攫ったのは100人弱ほど。全スクライブの10%程度であり、サンストーンの算段ではもっと攫えても良いハズだと思ったが、この期に及んで贅沢は言っていられない。

 魔法陣が光り輝いた―――が、チカチカと点滅しており、通常通り作動していないのは火を見るよりも明らかだ。だが、あのままジリ貧の防衛戦を続けて転送自体が出来なくなるより遥かにマシだった。

 チャバネGが退散する。それと同時に、転送の魔法が発動。闇堕ちスクライブ全員の姿が消えた。

 

「はぁ…はぁ……そうだ、ハイプリス様に連絡を………」

 

 息を上げて通信機を取り出し、発信を始めた。

 2コール目が終わる前に、ハイプリスが通話に出た。

 

『やぁ、サンストーン。進捗はどうだい』

 

「ハイプリス様…! たった今、スクライブを転送いたしました…確認のほどをお願いします」

 

『あぁ、分かった。少々待ってくれ』

 

 通話がONのまま、ハイプリスが画面から立ち去る。

 そうして、確認が終わり戻ってきたのは何秒だったか、何十秒だったか。

 サンストーンには、それがとても長い時間のように感じた。

 チャバネGどものせいで、魔法陣が不十分のまま転送をしてしまった。不備はないだろうか? 思わぬ事故が起こっていないだろうか? ……起こっていないと思いたいが、アレだけ食われて何もないとは正直考えづらいが……

 

『待たせたね、サンストーン。いま確認が終わったところだ』

 

「そ…そうですか。な、何人、届きましたか?」

 

『? おかしなことを言うね。確認しなかったわけじゃあないだろう』

 

「今、神殿の者が攻めて参りました。撤退をするので捕らえた者すべてを転送したのですが…思わぬ妨害を受けまして」

 

『ふむ…こちらに届いたのは、3()7()()()。一体なにがあったのかな?』

 

「……え」

 

 サンストーンは、全身が凍るような感覚に囚われた。

 100人近く捕らえたはずのスクライブが、37人? じゃあ、残り半数以上は、どこに行ったのだ?

 原因は分かっている。あのゴキブリどものせいだ―――でも、そいつ等から魔法陣を守れなかった自身の責任は?

 

『……サンストーン?』

 

 ハイプリスの、心配するような画面越しの声に、サンストーンはすぐに返事をすることが出来なかった。

 ―――これが、スイセンとローリエらが戦っていた、約10分間の間に起こった出来事である。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 サンストーンの「これ以上ここにいる意味はない」宣言を受けたスイセンとスズランは、すぐさま撤退していった。

 追い討ちをかけようとも思ったが……サンストーンとやらがきららちゃんの視界に入った途端またきららちゃんが泣き出してしまったため、その隙に逃げられた。

 幹部級3人が転移した直後、最奥部に走っていったのだが、そこは文字通りのもぬけの殻だった。

 

 

「そんな…」

 

「スクライブの皆が、攫われて…!」

 

「間に合わなかった…!」

 

 

 きららちゃんもランプもメディも、膝をついた。フェンネルも歯噛みする。うつつとタイキックさんは何か言いたげな目でこっちを見てる。

 

 

「…どうした?」

 

「ねぇ………あの、さ…敵が『最後の最後でやられた』って言ってたのは、何だったの?」

 

「そうだな。あの時の貴方は何か策があって、それがうまいコト成功したかのような様子だった………そんな気がするが」

 

「あぁ、それなんだが―――」

 

 

 俺は、G型のタイプBROWNとBLACK RXを回収し、録画された映像を流した。

 そこには、魔法陣を壊そうとするタイプBROWNのG型の群れと、それ相手に四苦八苦しながら戦うサンストーンが映っていた。魔法陣の破壊を阻止しようとして物量に押されかけ、最後の苦肉の策で無理矢理転送を強行………その結果、自分の思った通りの場所にスクライブが転送できていなかったのか、電話越しの相手に呆然とする姿………その一部始終が全部だ。

 

 

「な…そういうことを仕組んでいたなら先に言ってくださいよ!」

 

「それでも、30人以上は連れ去られちゃいましたし、他のスクライブの皆さんも所在が分かりませんし……」

 

「ローリエ…もう少しどうにかなりませんでしたの?」

 

「無茶言うな。G型を開放したのがバレてたらスイセンとスズランを突破するのだって無理だったんだ。ここまで妨害できたんなら御の字だろ。

 それに……半分以上が行方不明ってことはさ。その半分以上の子は、敵の本拠地以外のどこかに飛ばされたということ。先にこっちが保護すれば、どうとでもなるってことだ」

 

「成る程。皆、ひとまず帰ろう。メディアは救出できたし、他のスクライブの大半も、悪いようにはならないだろう」

 

「タイキック、君はほんとに自信マンマンだね……根拠とかあるのかい?」

 

「無い。強いて上げるなら、『そんな気がしたから』……、それだけだな」

 

「また『そんな気がする』だよ……」

 

 

 今回の戦果は「拉致までのタイムリミットを大幅に稼いだ」………そんなところだ。だが、行方不明のスクライブ6、70人がどこへ飛ばされたのかは流石に分からない。タイプBROWNが噛みつきまくったお陰で転送の魔法陣がメチャクチャだったのだ。どっかへ飛ばされてるに違いない。そしてそれは、100%勝ったとは言えない。

 我ながら粗があるにも程がある。だが今回はシチュエーションが最悪すぎた。人手も時間も足りなかった中で思いついた、最善のヤツだったのだ。

 でも、それらも言い訳にしかならない。こうなったら、行方不明のスクライブを探すしかないだろう。変な所に飛ばされていないかを祈りながら、俺達はスクライブギルドに帰ることにした。

 

 

 ……翌日からの1ヶ月間。その期間において、各地で闇に飲まれたスクライブが発見されるという報告が相次いだ。

 賢者や神官たち、衛兵たちが、港町や山道、言ノ葉の都市や写本の街に派遣され、闇堕ちスクライブが回収されていき、最終的に74人のスクライブが保護されたのであった。

 保護されたスクライブ達は絶望のクリエに汚染されていたためにすぐに写本作業に戻る事が出来ず、また精神的な観点からも、言ノ葉の神殿にて療養という措置がとられたのだが……それはまた、別の話だ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 きららちゃん達は、休むまで複雑な表情だった。

 無理もない。メディは救出できたが、それ以外は間に合わなかったようなものだから。

 それでもメディは、うつつとタイキックさんにお礼を言っていた。

 

 

「助けてくれてありがとうございます、うつつさん」

 

「お、おおおおおお礼なんか言わないでよぉ…ほんと、私今回なんにもしてないんだからさぁ…」

 

「そんなことありません。うつつさんは、私を助ける為に止まらずに来てくれたそうじゃないですか。

 それに、リアリスト達に切った啖呵、かっこよかったですよ」

 

「わ、忘れてぇ……恥ずか死しちゃうぅぅぅ……」

 

「良かったな、うつつ」

 

「タイキックもやめてぇ…」

 

「タイキックさんも、ありがとうございました」

 

「メディアが……うつつの友達が無事なら、何よりだ」

 

「とっ、とととととととと友達ィィィィッ!?!?!?」

 

「む、違ったか?」

 

 

 その過程で、うつつが面白いことになっていた。

 うつつの啖呵を切った場面をメディが覚えていたり、タイキックさんがメディを「うつつの友達」と呼んだことでうつつが真っ赤になりながら、表情をコロコロ変えている。新たな顔芸だな、コリャ。

 そのやりとりで、一時的にだが、きららちゃん一行に笑顔が戻った。

 

 その後、メディの提案により、戦いで疲れた体を癒すために全員がギルドで一泊する流れになり、俺も色々と世話になった。特にメディが夕飯を作り出すなんて言い出した時は全員で焦ったものだ。攫われた一番の被害者にやらせるワケにはいかんと、俺とフェンネル筆頭でてんやわんやしたものである。

 

 …え、風呂のNOZOKIはどうしたかって? やんなかったよ。ランプもメディもうつつも子供体型だし、きららちゃんはまだ成長しきってないだろうし、フェンネルとアリサの監視の目があるし、そもそも戦闘直後な上に、メディに真面目な話があったからな。気分じゃなかったの。

 

 

 

 ……入浴後、後は寝るだけとなった時刻……俺は、メディを探してギルド内を歩き回っていた。

 最初は部屋にいるかと思ったが、ノックしても返事がないし、扉を開けても姿がなかったので、ちょっと探している。そして………その姿は、ギルドの仕事場にあった。

 何してんだよ、数時間前まで攫われてた張本人が。夕飯の時といい仕方ない子だ、ちょっと驚かそう。後ろから少しずつ近づいて……

 

 

「コラッ!」

 

「わあああああああ!!?」

 

「メディ。俺は君をワーカホリックに育てた覚えはありませんッ」

 

師匠(せんせい)!?」

 

 ハッハッハ、イタズラ大成功。メディは、椅子からひっくり返るような勢いで動揺し、慌てた様相でこっちを振り返った。

 

「まったく…こっちはマジな話をしに探したんだぞ。夜会話くらい寝室でさせてくれ」

 

師匠(せんせい)、夜会話ってどういう意味ですか?」

 

「そこは引っかからなくて良い。そう言うメディは、ここで何してたんだ」

 

「それなんですけど…これを見てください」

 

「これは……奥義書?」

 

 メディが見せてきたのは、エイダちゃんがちょっと前に見つけてきた、スクライブギルドの長に代々伝わってきたってアレか。

 実際の所格ゲーのコマンドだったけど、コレが今更なんだっていうんだ?

 

「実は、帰ってきたあと奥義書を調べていたら、続きが隠されていることに気付きまして」

 

「続き?」

 

「これです」

 

 メディが指をさす。その部分には、いつか見た時とほぼ同じく『奥義の出し方・敵の攻撃が当たる直前に ←↓↙+S』と書かれていた………が。

 その下に、なんと俺も見覚えのない文章が浮かんでいた。曰く――――――

 

『奥義の出し方・敵の攻撃が当たる直前に ←↓↙+S』

『―――という技を覚えたら、以下の場所に向かうべし』

 

 ―――それとともに、更には微塵も見えなかったはずの地図が何故か書かれていた。

 

「メディ、これは…!?」

 

「炙り出しです。どうやら、この紙自体がなかなかの耐熱性を持っていて、火で温めないと出てこない特殊なインクを使ったのでしょう。

 その特殊なインクによって、奥義の修得方法が途中から書かれていたようですね」

 

「成程…奥義の情報漏れを防ぐためか………これ、他に知ってんのは?」

 

「さっき見つけたばかりですので私と師匠(せんせい)だけです。場所の解析をして、きららさん達をお見送りしてから、フェンネルさんだけに事情を話して、真の奥義を習得しようと思っています」

 

「そうしてくれ」

 

 なんとまぁ、驚きのニュースがあったもんだ。まさか、あの昇○拳コマンドの必殺技が奥義ではなく、奥義を隠すためのフェイクだったとは。

 となると、奥義の内容がまた謎になるが、それはそれでメディに任せよう。スクライブギルド長の初代が考え出した、「世界の理さえ変えかねない力」を持つってのが大げさな表現じゃあない可能性が出てきたが、多分悪いようにはなるまい。スクライブギルドの奥義だし、メディが使い手なら悪用されるリスクもないだろう。

 ……盛大に脱線したが、メディを見つけることができたのだから、俺の本命の話題に入ろうと思う。

 

 

「ところで、なんだがメディ。お前に訊きたいことがある」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「救いようのない悪党でも、変われると思うか?

 努力さえすれば、誰でも“良いヤツ”になれると思うか?」

 

「―――」

 

 

 俺が聞きたかったこと。

 それはズバリ、リアリスト達の改心の可能性だ。

 

 

「今回襲撃してきた、真実の手って言われてたヤツの中に、スズランって女がいたのは知ってるか?」

 

「…あぁ、あの華美な服装してて、師匠(せんせい)が好みそうなおっぱいしてた、あの」

 

「お前………まぁいい。ソイツな、金目当てで動く傭兵だったんだよ。だから、3倍の金で裏切らせようとしたんだけど…フラれちゃってな」

 

師匠(せんせい)…よくそんな手を思いつきますね」

 

「まぁな。他にもヒナゲシってヤツがいたんだが……アイツはアイツで、『自分は不幸だった』と声高々に叫んでてな。

 どんな不幸だったかはともかく、痛々しかったよ。やったことは許さねぇし、ツケは払わせるけど」

 

「………」

 

「俺もね、色々知ってるから無条件で『変われる』って言えないんだよ。でも、今ここで『変われない』って断言するのも、なんか違う気がしてさ」

 

「そうですか…」

 

 

 メディは最初、急にぶっ飛んだ話題を振られたことに驚いていたが、理由を話していくうちに納得したような顔をして、う~んと唸りながら顎に手を当てて、目を閉じて考え込んでいった。

 ちょっと、難しい質問しちゃったかな。確かに、そう簡単に出る問いでもないし、正解なんてないのかもしれないが。

 そう思って、メディの答えを待っていると、予想外の位置から声が響いてきた。

 

『そんなもの、分かっているだろうローリエ』

 

「(……木月!?)」

 

 木月だ。メディに怪しまれない程度に周囲を見渡すと……自立式の手鏡が、メディの机の上にあったのだ。

 そこに写るメディの後ろ姿と俺の他に、木月が隣に立っていたのだ。無論、鏡でいると予測できる位置を見ても、そこに木月はいない。

 くそ、コイツマジでマン・イン・ザ・ミラーじゃねぇか。

 

『変わる事が出来なかったから、或いは変わろうとしなかったから“救いようのない悪党”なんだ。

 奴等は、「変わりたかったけど変われなかった」などと言い訳をするが……大抵、無自覚な後者なのだ。

 そんな連中に手を伸ばして何になる。自分の愛する者を切り刻まれるのがオチだ』

 

 俺が質問してるのはメディだ。お前が勝手に答えるんじゃあない。心の中でそう叱り飛ばして、努めて木月をスルーする。

 どうやら、メディは木月の声が聞こえていないようだ。そんな状況で俺が木月に対して怒鳴っても、メディは状況についてこられなくなるだろう。

 だから黙っていろ、木月桂一。

 

『分かっているハズだとも言っただろう。君にはこの木月桂一の人生の記憶が全て入っているのだから。

 楽観視はするな。合理的になれ。十の悪人を、億の善人の為に切り捨てれば良いじゃあないか』

 

「(お前、いい加減に―――)」

 

師匠(せんせい)、いいですか?」

 

「『!!!』」

 

 

 メディから声がかかる。そこで初めて、メディの久しぶりの真剣な顔をまっすぐに見ることができた。

 木月も鏡からいなくなったことだし、彼女の話に集中しよう。さっきまで邪魔者に妨害されてたのはマジで悪かったから、一言一句、真剣に聞こう。

 

 

師匠(せんせい)……確かに、私はギルド長になって、色々学びました。この世界にはまだ、戦争も貧困も、差別も搾取さえもあるって。特に聖典を信じないような地域にはそのようなことが非常に多い……ということも。」

 

「……そうか」

 

「だからこそ、私はそんな人達に聖典を教え、希望を与えたいと思っているんです。だから、私は信じます。どんな人間にもやり直しのチャンスはあるし、努力すれば必ず報われると。

 ………そうじゃないと、日々を生きている人達に希望が、潰えてしまいますから」

 

「希望が、潰える?」

 

「人は変われない……悪い事を一度犯したら、一生悪人のままだなんて、あってはならないと思います。

 そんなことがまかり通ってしまったら、“良い人”になるための……良くあろうとする人の努力が、全部ムダになってしまいますから」

 

 

 そこまで聞いて、俺は安心した。

 良かった。メディは卒業前と変わっていない。お人好しで、でも厄介なタイプの優等生だった。

 俺の、木月の意見でささくれかけていた心が、ちょっと和らいだ気がした。

 

 

「ありがとう、メディ。君の意見が聞けただけで満足だ。ムズイ質問だったろうに」

 

「貴方の為になったなら何よりです、師匠(せんせい)。それに…現実は、さっきの質問よりも遥かに難しいことは分かっています」

 

「なら大丈夫だな。メディ、良い夜を」

 

「はい。おやすみなさい、師匠(せんせい)

 

 

 聞きたいことを聞けた俺は、木月がまた話しかけてくる前に寝ようと、さっさと用意された寝室へ向かうことにしたのであった。

 

 

*1
ドリアーテ事件以降に製作された、スパイ能力と再現度が大型アップデートされたものをローリエはタイプBLACK RXと呼んでいるが、そこは省略する




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 スクライブ誘拐を可能な限り阻止していた拙作主人公。戦後にきらら達にしっかり説明していたが、MVPであるはずのG型魔道具は誰にも褒められる事はなかったという。

ろーりえ「ほら見ろ。このチャバネがMVPだ」
女性陣「「「「イヤァァァァァァァァァッ!!」」」」
きらら「す、すぐにしまってください!」
らんぷ「なんで出すんですか!」
ふぇんねる「斬り刻むわよ!?」
めでぃあ「こ、こっちむけないで、師匠(せんせい)…」
うつつ「ゆるして…ゆるして…」
ろーりえ「…これも仮面ゴキブリーダーの宿命というヤツか」
たいきっく「仮面ゴキブリーダーって何だ?」

メディア
 無事救出されたスクライブギルド長。誘拐されたばかりの病み上がりで料理をつくったり深夜残業を始めるなど無茶をするタイプだが、そのおかげでスクライブギルドの秘奥義の謎が明らかになった。拙作2章後は、フェンネルと共に行動する予定。

住良木うつつ&タイキックさん
 拙作第2章で初登場した面々。うつつはハイプリスと繋がっている描写が、ローリエの「こんなこともあろうかと」の犠牲になったが、それでもメディアの精一杯のお礼で自己肯定感が5あがる。タイキックさんもタイキックさんで、うつつとメディアの好感度を順調に稼いでいるようだ。

サンストーン
 実は孤軍奮闘でチャバネゴキブリの群れと戦っていたきら何とかさんの妹。しかしいくらパスを断ち切れるハイプリスの右腕といえども、多勢に無勢な防衛戦では手を焼くしかなく、魔法陣を壊される前に転送するという強硬策に出た。その結果、攫ったスクライブの半数以上が結果的に神殿に取り戻される失態を侵す羽目になる。その後、某溝隠さんに散々プギャーと煽られたとのこと。



G型魔道具・タイプBROWN
チャバネゴキブリをイメージしてローリエが作り出した、妨害工作専門のG型魔道具。Gの雑食性をできるだけ再現し、モノを密かに破壊したり、魔法陣系のギミックをサイレンサー加工されてる牙で破壊したりする。攻撃回避機能も半端ではなく、集団で襲い掛かるため、単独での対処は困難。

G型魔道具・タイプBLACK RX
クロゴキブリをイメージして、ドリアーテ事件後に作られた真っ黒のG型魔道具。高度なスパイ能力はそのままに、再現度・ツヤ・攻撃回避・逃走機能をアップグレードした。念のために言っておくが、登場時に「仮面ゴキブリーダー!ブラァッ!! アーエーッ!!!」って言ったりしない。ただしリアリスト!貴様らは絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛ッ!!!!!



△▼△▼△▼
ローリエ「メディ、修行に行くらしいな」

メディア「はい。スクライブギルド長の秘奥義は、必ずエトワリアに役に立つとありましたので。師匠(せんせい)は如何する予定ですか?またきららさん達に同行しますか?」

ローリエ「イヤ、手を借りようと思う。今回の事件で人手不足に悩まされたからな…」

メディア「手を借りる? それは…どなたからお力を借りるつもりなんですか?」

ローリエ「俺と懇意にしてる連中の中で一番規模がデカい組織………ユミーネ教だ」

次回『キャラットの次号予告は極まれに当てにならない』
メディア「次回もお楽しみに!」
▲▽▲▽▲▽

メディうつにタイキックさんを入れたことについてどう思う?

  • メディうつだけの方が良い
  • 新たな形になってて良い
  • 男だったら即死だった
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